真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「おさはりサロン パンティーのしみ」(1992『最新ピンサロ情報 激写!!生本番』の2006年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:片岡修二/脚本:瀬々敬久/企画・製作:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:村川聡・植田中/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:小川真実・伊藤清美・しのざきさとみ・三波聖・中谷美賀子・忍秀美・田代愛美・青木麻茶・ジミー土田・池島ゆたか・佐野和宏・小林節彦・渡辺元嗣・笠井雅裕・橋口卓明・瀬々敬久・宵松闇四郎・榎本祥太・切通理作・湯原聡・下元史朗)。出演者中、青木麻茶がポスターには青木麻奈で、渡辺元嗣から湯原聡までは本篇クレジットのみ。あと、宵松闇四郎が宵待でないのは本篇ママ。
 実店舗撮影の割にクレジットは通り過ぎる、屋号がAlvvays式のピンクサロン「NEVV P★M」新宿店。表をボーイの松崎(ジミー)が掃き掃除してゐると、何某か大病を患ひ入院してゐる筈の、果歩(小川)が病院を抜け出し出勤、主任のカジタ(下元)もその場に顔を出す。一方、その頃店長(池島)はといふと、アルバイトに応募して来た外資系一流商社とかいふ丸菱商事勤務のOL・村田マキ(三波)の面接。見繕ふやう指示されたカジタが、前ナンバーワンであつた鈴鹿保奈美の源氏名をマキに与へる。保奈美のポラをあや子(伊藤)の隣に掲示した流れで、軍艦マーチが轟然と起動、ミラーボールの回転する天井にタイトル・イン。結局明らかにされず仕舞ひの、果歩の病名が物凄く気になるんだけど。
 もしかすると―往時―現役の嬢も紛れ込んでゐたのか、四番手以降初見揃ひの女優部、以前に。しかもノートの液晶サイズでは、基本薄暗い店内ロングに如何せん太刀打ち出来ない配役残り。しのざきさとみが、目下ナンバーワンの慶子。タッパだけで特徴的なナベは案外見切れず、瀬々敬久が一番目立つ、絡みの恩恵にも結構与る髭の常連客。特定不能の榎本祥太と湯原聡の何れかが、中田新太郎似の常連客、なのかなあ?切通理作は保奈美の水揚客で、ポスターに載りこそすれ、満足に抜かれもしない小林節彦は頭を剃り上げた常連客。寧ろ、限りなく等閑視に近い小林節彦の扱ひには吃驚した。直截にいふと、誰でも事済む。保奈美が初本番を敢行するのは笠井雅裕、宵松闇四郎はその他ボーイ、どうしても名前が残る橋口卓明(a.k.a.橋井友和)も恐らくワンノボーイ。それと登場作の面子的に、闇四郎の正体は原田兼一郎かも。ビリング的に多分青木麻茶が、お股もおつむも緩いりえ。不確かな消去法で中谷美賀子と忍秀美は、子持ちの明菜とその他嬢、どつちがどつちかは知らん。湯原聡と榎本祥太の何れかが、折角あや子が尺八を吹いて呉れてゐるにも関らず、全然気持ちよささうにしない横着ないし頭のおかしな客、かなあ?終盤まで温存される佐野和宏は、保奈美と一悶着起こす七番テーブルの客。兵どもが夢の跡的なラスト、往来に貼り出された求人を見て「NEVV P★M」の敷居を跨ぐ女は、再度のビリング推定で多分田代愛美。
 プリミティブな新題下の句は、すぐに汚してしまふ下着を、ブルセラ仲買人の果歩に売り小遣ひを稼ぐ、えりの姿で回収する片岡修二1992年第三作。公開題が本篇の中身を実際フィーチャーしてゐるだけ、まだマシといふとかく奇々怪々な世界ではあれ、まあた随分と、遠い隙間から拾つて来たものだ。
 荒稼ぎした金を、男に貢ぐ保奈美。そんな保奈美が本番の乱打で荒らした店に、愛想を尽かし慶子は去つて行く。自身の所謂サゲマンを思ひ込む、既に若くはないあや子。女を商品と割り切れない松崎は、保奈美にジミ土らしいメソッドで純情を拗らせる。そして明らかに、シリアスに体を壊す果歩。直球勝負に行け行けどんどんなカジタに対し、絶妙に枯れた店長の店内放送は、そこはかとない物悲しさを醸しだす。一同が明け暮れるか草臥れる、そもそも勝者のゐなささうな消耗戦。激戦区のピンサロを舞台としたアンサンブル映画は、瀬々敬久が何処まで書いてゐたのかに関しては計り知る術も持たないが、全盛期、あるいは映画の撮り方を忘れる前の石川欣なり、絶好調時の北沢幸雄辺りならば兎も角、土台構成力の然程強靭でもない片岡修二では、結局何処にも焦点の絞られない漫然とした印象は否み難い。カジタが保奈美に尺八の作法を仕込むと称して、あれよあれよと突入するソファーの上での正常位には、底を抜いたへべれけさを素直に楽しんだものか、下手に外した破目に頭を抱へるべきなのか、未だ答へを出せずにゐる。中途半端にクッソ可愛い三波聖のルックスも、結実しないドラマの中宙に浮く。突発的に光るのは、店長室でのあや子と店長の劇中最も情感豊かな一戦。心なしか伊藤清美のオッパイが何時もより大きく映つたのは、そんな訳がない気の所為かしら。誰版なのか判らない英語詞の「涙の太陽」始め、営業中BGMで既存のトラックをガンッガン使用してのけるのは、そのまゝのソフト化を断固阻む昔日の大らかさ。「ズンドコ節」から「ほんとにほんとにご苦労さん」に繋がる、ドリフ二連曲には万歳した。


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 「Eカップ女子高戦士 ブルマームーン」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:武田りつ子)。
 往来を歩く女子高生(武田)を、車の中から抜く。カメラがりつ子(大絶賛仮名)の正面に回り込むカット挿んで、多分兄弟と思しき、車を回すのは平本一穂とジャンク斎藤。公園ぽく整備された林に入るのは、どうやら単なる近道の類であつたらしく、再び往来に出たりつ子を平一とジャン斎が襲撃。冬服セーラー服―りつ子が着てゐるのは長袖の夏服―の飾られた、旧旦々舎の煉瓦部屋に拉致る。
 今回それなり以上のヒットを飛ばしたのか、「潮吹き女子校戦士 ブルマームーンS 星野かおり」(1994/監督:柴原光)、「デビュー杉浦あゆみ 18才 ブルマームーンXX」(1995/監督:榎雄二郎)と、現状確認可能な限りで少なくとも三本は制作された、「ブルマームーン」シリーズの栄えある第一作。それにつ、けても。セーラーならぬブルマームーン、本家の連載―と二ヶ月後のテレビアニメ放送―開始が前年。ブームの真只中、冷静に考へると怖気づき二の足を踏んでゐてもおかしくはない、火中の栗を果敢に拾ひに行く胆力が清々しい。
 ジャン斎いはく、二人がりつ子を攫つた目的は“可愛い娘と着せ替へごつこ”。そのまゝりつ子が代る代るあれこれ犯される一方的かつ一本調子の展開は、ロゴを十全にあつらへたブルマームーン的意匠にも、浜野佐知が今なほ、否、最期まで頑強に咆哮し続けるにさうゐない苛烈な女性主義からも一旦遠い。つ、いでに。実は武田りつ子が女学生には煌びやかに映らない地味に障壁の高いキャスティングに関しては、デローンと悩ましいオッパイと、りつ子がジャン斎から着させられる、スクール水着のエモーショナルなエロさに免じて等閑視するべきだらう。
 さうは、いへ。タイトルから脊髄で折り返して容易に想起し得る、いはゆる“美少女戦士”実写版的な特撮はおろか、満足なコスプレ要素すら凡そ皆無。折角“ブルマームーン”なる画期的にグラマラスな意匠に辿り着いておきながら、如何にもな扮装で大見得切つてみせる、一撃必殺絶好のショットを設けない。そもそも浜野佐知にさういつた、雑に括るとオタク的な外連に対する意識の有無から甚だ怪しい辺りには、大いなる、激越な心残りも否み難い。尤も、嬲られ尽くした挙句往来に放棄されたりつ子が、木々に囲まれ何となく回復。したかと思ふと、夜の旧旦をほてほて再訪。兄弟を個別撃破する逆夜這ひを仕掛けたのち、平一はセーラー服を着せ緊縛、ジャン斎は女子の体操着を着せられ檻の中。二人を拘束した上で、颯爽と一撃もとい二撃離脱。旦々舎らしい、ラディカル通り越したアグレッシブ・フェミニズム―あるいはブルータル・フェミニズム―ならば吹き荒れる一作。と、いふか。劇中気配さへ一切窺はせない、旧旦に兄弟以外の同居人がゐなかつた場合、離れて身動きを封じられたこの二人、そのうち確実に息するのやめるよね。


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 「海底悲歌」(2021/製作:大阪芸術大学・映像制作集団カナリヤ/監督:堂ノ本敬太/脚本:松田香織・堂ノ本敬太/卒制担当:大森一樹・冨永憲治・金田敬/撮影:佐藤知哉・古川桂一・近藤戀美/照明:山村拓也・平田葉月・中浦亮典・伊藤大晴/美術:宮下承太郎・林龍太郎・南崎壮一郎/録音:鵜川大輝・小林一晴・小山奈々巴/特機:松井宏将/衣装:近藤綾香/制作:山田翔一朗・奥山颯音/助監督:二村俊之介・大河聡・林菜々子・佐藤桂一/編集:堂ノ本敬太/応援:門田啓・梶川翔・北条弘登・鎌倉千夏・的野ちはる/協力:菅野太亮・三井秀樹・畠中光炎・田仲悠介・上中健児・永澤こうじ・御所市役所地域振興課の皆様・御所実業高校事務局・旧御所東高校・陶芸教室『晃炎』・東川酒店・森川商店・新地商店街・はっぴ~じゃぶじゃぶ・タマキチ洋品店・洞川温泉観光協会・げんき大崎プロジェクト・旅館『角甚』・Tegami Cafe・Morison Cafe/キャスティング協力:高原秀和/出演:燃ゆる芥・長森要・生田みく・住吉真佳・小林敏和・波佐本麻里・フランキー岡村・四谷丸終・桜木洋平・佐野昌平・中岡さんたろう・伊藤大晴・川瀬陽太)。出演者中、住吉真佳から伊藤大晴までは本篇クレジットのみで、キャスティング協力の高原秀和が髙原でないのは、本篇クレジットまゝ。
 どうも実際には洞川温泉(奈良県天川村)ぽい天川温泉、一角に停められた「天川コンパニオン」送迎車。コンパニオンの梨奈(生田)が、高校の同級生である運転手の木村(長森)に、もう一人ゐる新人を残し車を出すやう促す。時制を軽く混濁させる、無造作な繋ぎ。木村と撮つた卒業式当日スナップの飾られた部屋で、伊藤文乃(燃ゆる)が一日の終りに日記をしたゝめる。日記帳のハードカバー表紙にタイトル・イン、“背徳の旋律”と副題で蛇の足を生やす。工藤雅典の電撃大蔵上陸作「師匠の女将さん いぢりいぢられ」(2018/共同脚本:橘満八/主演:並木塔子)で初陣を果たした生田みくが、かれこれ五戦目。そこでこゝに飛び込んで来るフィルモグラフィーといふのも、なかなか所謂“持つてゐる”。
 朝の支度をする文乃の部屋に、同居する父親・義昭(川瀬)が現れる、早速へべれけな状態で。アルコールに脳の浸かつた義昭は、実の娘を亡妻・のりこ(波佐本)と誤認し尺八を吹かせる、のに止(とど)まらず机上に押し倒し正常位、といふ絡み初戦。いざ乳を剝く瞬間、何故カットを無駄に割る。いよいよ挿入して以降も以降で、たとへ女の乳尻も満足に見せずとて、男が腰を振つてさへゐれば絡みだとでも思つてゐるのなら大間違ひだ、当サイトはさう憤る。兎も角さういふ次第で文乃は実父と日常的に関係を持ち、それは何時しか、周囲にも知られてゐた。藤原(フランキー)と柴田(四谷)の座敷に浴衣の梨奈が呼ばれる、着付なんてゐないんだね。豪快にも藤原と梨奈が縁側でオッ始めた超絶の間の悪さで、遅れて来た文乃が水を差す。詳らかは語られないまゝに、かつて木村と梨奈の担任であつた文乃は、コンパニオンに転職してゐた。国沢実がよく使ふ物置と雰囲気の似てゐる、雑然とトッ散らかつた空間に、鍵盤楽器の置かれた謎部屋。ドライバーのゐない送迎車に近づいたところ、何処からか洩れ聞こえて来る「別れの曲」に誘はれた文乃が、本当はピアニストを志してゐた木村と再会する。クローズドなストリートピアノの所有権から判然としない、正体不明のロケーションにて。即ち、アバンに於いて取り残される“新人”が、文乃といふ寸法。行きは常に現場直行の文乃が、帰りだけ送迎車に乗るのかよとそこから満載どころか純度100%のツッコミ処で構成されたが如き、壮絶に頓珍漢なシークエンスに抱へ込んだ頭が圧砕されさうになる、流石アマチュアだ。
 配役残り、如何にも其処ら辺にゐさうな輩に映るのが演技力の賜なのか、単なる地金なのかよく判らない小林敏和は木村の同僚。輩二号の桜木洋平と、オーディションで選ばれた当時大学生にしては、堂々たる脱ぎつぷりで三番手の大役―大きいか?―を十全通り越して十二分に果たす住吉真佳は、文乃と木村が忍び込んだ廃校に、二人の人影か気配を追ひ侵入する駆け落ちカップル・雄二と葵。折角盗んだ送迎車はどうしたのか、木村と文乃は電車で海辺の町に。伊藤大晴は無人販売所から無賃で蜜柑をカッぱらつた文乃らを、すぐ脇の茂みから見咎める農家の人。だからそこに人がゐるのかよと呆れさせるくらゐなら、その頭数別に要らなくねといふのは、潤ひを欠いたレス・ザン・心の余裕。佐野昌平と中岡さんたろうは、大の大人が二人ゐて宿代にも事欠くのか、波止場で寝てゐる文乃と木村に、声をかける地場の漁師。佐野昌平が河屋秀俊(ex.川屋せっちん)に似てゐる方で、中岡さんたろうが見事な彫物を背負つてゐる方、出し抜けに。刺青のスタクレも見当たらないゆゑ、まさかのもしかすると本物なのかしらん。
 大阪芸術大学の卒業制作が裸映画を理由に一旦上映中止、五十音順に大森一樹・金田敬・川瀬陽太らの尽力で、上野オークラでの劇場公開に漕ぎつけたとかいふ箔のついた一作。遥か彼方の超昔に似たやうな話―細山智明の「実録 桃色家族性活」(昭和59)―を耳にした記憶が既に定かでないのはさて措き、2021年作を大体順々に消化してゐる―筈の―KMZの番組が、今月の偶さかか堂ノ本敬太と角屋拓海を飛ばしてしまつた事態に伴ひ、配信で事済ませたものである。問題は角屋拓海の「唄へ!裸舞ソング ふれてGコード」(主演:川上奈々美)に、未だ二次利用の沙汰が一切聞こえて来ない件。ついでで悶着しつつ母校に職を得た堂ノ本敬太が、目下第二作「ただいま、性春。」を準備中とのこと。脊髄で折り返した老婆心、もしくは他愛ない素人考へながら、それはシナリオ題に留めておいた方がいゝ気がする。
 小林敏和が寄こした住所を頼りに、木村が文乃宅を二度目に訪ねると不用心か不自然にも鍵が開いてゐて、今も憧れの伊藤先生は例によつて義昭から犯されてゐた。慌てて木村が制止に入つての、情けなく組んづ解れつする別の意味で見るに堪へない修羅場。文乃は在りし日の父親に買つて貰つた、ハードカバーで義昭を撲殺する。とても成人男性が死にさうには、見えない殴打で。斯くいふ流れでの、ありがちな逃避行。はてさて、とりあへず途方に暮れてみる。粗が多すぎてといふか、要は三番手以外基本全滅全壊の様相を呈する死屍累々木端微塵の一作につき、何処から手をつけたものか考へあぐねる。もうそれ、何処でもいゝんだろ。
 実は音楽を未だ諦めきれてゐない木村が、後生大事に持て余す何某かエントリーシート系と思しき書類は、結局終ぞ抜かず半ば等閑視した状態で済まされる。ピアノの現況を訊かれ「聴いて呉れる人をらんかつたらただの趣味ですよ」と自嘲気味にうそぶく木村に対し、再び聴かせて呉れるやう乞ふた文乃は「そしたら木村君ピアニストやろ?」。実は実に洗練された会話ではある、自意識を拗らせた芸名から生温かく微笑ましい燃ゆる芥の、令和の今くるよを思はせる阿亀顔―と寸胴体型―に目を瞑れば。特に演者を派手に動かさずとも、そこかしこ不調法な堂ノ本敬太の編集に劣るとも勝らず、心許ない口跡よりも寧ろ甚だ申し訳ないけれど主演女優の御愛嬌な面相が、一言一言の台詞単位で映画を支へきれてゐない。第一次伊藤家訪問時、窓に覗く文乃の姿に相好を崩しかけた、木村の表情が強張る。文乃の背後から、義昭が娘に忍び寄る百万遍は目にした類型的なカット割りは百歩譲れなくもないとはいへ、画面左半分が壁で塞がれる、窮屈な画角はもう少し余所で撮れなかつたのか、ロケ狩れよ。大して機能もしない文乃のアディクト設定に、意匠自体の藪蛇さを棚上げすればそれまで懸命に健闘してゐた美術部が、急に精魂尽き果てる一欠片の意欲も感じさせぬゴミのやうなトンネル封鎖。挙句抜ける目的限定のトンネルを抜けた先が、序盤のピアノ部屋に矢張り劣るとも勝らず凄まじく木に竹を接ぐ、闇雲に煌びやかなネオン部屋だなどといふ地獄絵図。そこに転がつてゐるのが驚愕のレコード・プレイヤーで、しかもLPまで御丁寧に放置されてゐて文乃が「別れの曲」を鳴らす執拗さには、気の遠くなるダサさに精神的な殺傷力すら覚えた。その前段、飲み物を買つて来ると称して一旦捌ける木村が、勝手に蹴躓くのも大人しく撮り直せば?大事な最終盤なのに、一応。柴田が文乃に一体何時挿したのかどさくさ不明瞭な、大概な後背位にもガチのマジで怒髪冠を衝いたが、佐野昌平に続き、文乃が中岡さんたろうからもレイプされる件。正常位の体勢から中さんが仰向けに体を倒す騎乗位移行で、燃ゆる芥の上半身がフレームから外れる間抜けさ加減にも勿論ズッこけた、全力でズッこけた。直截に筆を荒げるとバッカぢやねえの、裸映画ナメてんのか。全般的に画的な旨味にさへ欠き、何気に長く回す、木村と文乃が船着場でうだうだ無駄口を垂れるロング。木村の口から「夜の海つて何か綺麗ですね」といはせたいのなら、頼むからもう少し綺麗に撮つて呉れないかな。木村と雄二に葵も加はる、体育館バスケ。ボールが明後日に転がると唐突に暗転、文乃が意識を失つてゐたぽい魔展開や、所々ガッチャガチャでよく聞こえない録音等々、まだまだまーだまだ、色々盛り沢山なのはもう際限がない、先に進め。そんな、過積載なあれやこれやをも根こそぎ薙ぎ倒す、今作最大最悪のどうしやうもない致命傷は。文乃が柴田から手篭めにされた様子を、抵抗しつつ気持ちよささうにしてゐた旨嬉々と報告する梨奈が、泣きだした木村に「女なんてそんなもんやで」。チェックメイト、その瞬間、この映画が詰んだのを確信した。義昭や漁師は明示的に述べ、木村も木村で否定しもしない、女は男に頼つて生きてゐればいゝとする、どうあれ女なんて突っ込まれれば悦ぶ生き物と看做す古色蒼然としたミソジニーを、旦々舎作の苛烈なヒロインのやうに、文乃が毅然か轟然と爆砕する訳でもなく。濡れ場そのものはそこそこ見事なクライマックスの一戦、「ずつと抱かれて来たんやもん」、「今度くらゐ自分から抱かせてよ」とある程度スマートに火蓋を切り、こそはすれ。木村マターで突入しては意味のない二回戦―は中途で端折られる―の、正しく以前に。その情交を、後背位で〆てゐては締めの濡れ場が締まるまい。そこは女が跨つた男を一方的に貪り倒すエモーションを、ショットとして判り易く見せられる騎乗位、より望ましくは男に尻を向ける、背面騎乗にさうゐない。量産型裸映画固有の文法とは、さういふものなのではなからうか。詰まるところ何がいひたいのかといふと、大蔵は格好の話題性含め、上手いこと新しい血を入れてみせたつもりなのかも知れないが、よしんば時代に即してアップデートされたピンク映画を摸索するにせよ、堂ノ本敬太を連れて来るのは根本的に間違つてゐる。端的にクオリティから低い斯様な無様、渡辺護の旧作でも上映してゐる方がまだ出来もマシ、どうせ何れも旧い。降り頻る特機雨の中に文乃が適当に消えた、トンネルに木村がホケーッと無為に立ち尽くす非力なタイトルバックが、スポイルドな一作を象徴する。率直に負けを認めると、顛末にまんまと釣られた格好か。さうなるとそれはそれで、客を呼んだ時点で映画―または小屋―の勝ちと看做すならば、企画的にはある意味秀逸ではある。
 最後に、文乃の尊属殺が当日夜には、少なくとも遺体発見の体で事件化してゐたにも関らず、ネオン部屋で戯れに点けてはすぐに消すラジオの中で、“この事件は昨日”だなどとニュースが読んでのけるプリミティブな粗忽は全く以てどうしたものか。その後文乃と木村が廃校と漁師宅とでそれぞれ一泊してゐる以上、最低でも二昼夜が経過、時空が歪んでゐる。上野に至つた経緯を真に受けると大蔵は兎も角、大芸はセイガクに撮らせる卒業制作の脚本に、事前に目を通さないのかな。

 筆の根も乾かぬうちの付記< どうやら「海底悲歌」は元々上野でしか上映しない、津々浦々に巡らせる弾では端からなかつた模様。成程、それで漸く、公開から一年にも満たない円盤発売と、一年ちよつとでの配信開始。明らかに他と一線を画す、群を抜いた早さにも合点が行く。だとしても、あるいはそれでもなほ。そもそもオーピー肝煎りの新人監督発掘プロジェクトに出自を持つ、角屋拓海が来ない理由は依然不明のまゝ残される。・・・・も、もしかして、といふのがもしかしないのか。俳優部に、榊英雄が名前を連ねてゐるのがよもや禁忌に触れた?時限爆弾かよ


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 「伊豆七島入れ喰ひ逆ナンパ巡り」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:君矢摩子・川原みずき・樹かず)。
 調布飛行場か、徒歩で飛行機に乗り込む搭乗口にズンドコした劇伴が鳴り、カメラは機内にも突入する。女が水の中で水着から尻を出す、世辞にも綺麗とはいへない水中撮影挿んで、機内から捉へた離陸する翼にタイトル・イン。一旦中盤に先走ると、結局伊豆大島から帰京する訳でもない始終にあつて、尺的には折返しを少し跨いだ辺りで唐突に挿入される、矢張り機内から抜く上空カットの意味が何気に全く判らない。
 翼越しに伊豆大島を抜き、機は大島空港に着陸。ロビーを進むネームド俳優部のロングに、原文は珍かなで“性態調査に降り立つた調査隊”のスーパー。基本的なコンセプト―のイントロ―をその一言で事済ます奔放な大雑把さと、それで特に支障も生じない、爽快な薄さとが清々しい。ごつた返す海岸をバリバリ物色風情で散策する君矢摩子が、一人の男にコンタクト。テトラポットの大して隠れてもゐない物陰で、盛大な青姦をキメる。
 浜野佐知が「盗撮!!逆ナンパLive ~B98の誘惑~」に続き君矢摩子を迎へ、二番手に池島ゆたか1993年第一作「新人OL 婦人科検診」(脚本:五代響子)主演の川原みずきを擁したアダルトビデオ。無闇矢鱈に情報量の多いパケによると、新東宝ビデオの十周年周年記念作とのこと。当然名前の入る女優部―まとめて“超セクシー巨乳タッグ”と括られる―に対し、樹かずが“ハイテクナンパ男優”とか逆に字数が三倍に嵩むぞんざいなのか、却つて面倒なのか理解に苦しむ片づけられ方をしてゐるのが琴線を撫でる。ハイテクナンパ男優、プリミティブに面白い、ハイテクナンパ男優。
 二杯目の茶を煎じるほど、神戸軍団を三枚揃へた―そこは一切関係ない―「盗撮!!逆ナンパLive」がどうやら好評を博したらしく、今回は三人編隊で伊豆諸島に足を延ばす一作。“伊豆七島”なる呼称に対し、七島以外の有人島から抗議があがつてゐる状況は寡聞にして知らなかつた。確かに、道理として通つてゐる。
 閑話休題三人に喰はれるのが順に、君矢摩子とテトラポット戦を戦ふのは、体つきと左鰓の黒子から恐らく森純、こゝは結構自信がある。川原みずきが公衆シャワーで接触する、髭のオッサンが一瞬平勘ぽく見えかけたけれど、多分違ふ。君矢摩子が民宿に連れ込むのは、森純との二回戦。君矢摩子と川原みずきが“水着で入る断崖の混浴温泉”にて捕獲する、禿頭―パケ裏面によると御齢六十五―には手も足も出ない。もう少し近づいて撮るなり、喋らせるなりして呉れないと。そもそも、正体を特定しようとする、営みこそが不毛であるのは自覚してゐなくもない。樹かずが正ナンパするのは、水撮要員込みで川原みずきの流用。最後の、川原みずきが民宿に連れて来て君矢摩子も交へた巴戦に雪崩れ込むのは、森純にさうゐなく映る、ものの。流石に再び画が引きすぎてゐて、断定はしかねる。忘れてた、樹かずが流用川原みずきを正ナンする直前、逃げられた君矢摩子が絵に描いた如くポップにむくれる、後ろ髪を縛つた男は一肌脱がない点からも、もしかすると山﨑邦紀かなあ。当時四十五にしては、髪が白い気もするけれど。水撮パートは繋ぎ程度と看做した上で、計六幕の主要エピソード中最もエモーショナルなのは、オッサンが露天風呂で向かうから声をかけて来た、超セクシー巨乳タッグに尺八を吹いて貰ふ。予期せぬ画期的な僥倖の、ドリーミンな歓喜が伝はつて来る禿頭パート。
 基本的には君矢摩子の超絶肢体を黙つて抜いてさへゐれば、幾らでも形に出来たものを。このビデオに於いて君矢摩子さんがセックロス致してゐるのは、あくまで伊豆大島で捕まへた現地男で、なほかつその模様を盗撮したものであります。といふ体裁を頑なに死守する諸刃の剣で、兎にも角にも如何せんカメラが遠い。寄つて呉れよ、カットを割つて画角も狙つて、普通に乳尻撮つて呉れよといふ、精を放つ、もとい血を吐く叫びは禁じ難い。総じて同様に、お相手の首から上にも施さざるを得ない、ただでさへなモザイク面積の爆増に対しても痛痒を否めず。水でも飲むやうにサクッと滞りなく見進められはしつつ、いざ振り返つてみると、物足りなさも少なからず残す一作ではある。


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 「SM 刺青本番」(昭和59/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:片岡修二/製作:伊能竜/撮影:志村敏夫/照明:斉藤正明/音楽:周知安/編集:酒井正次/助監督:渡辺元嗣/録音:銀座サウンド/現像:恐らく東映化学/出演:スージー明日香・花真衣・いとうようこ・麻生うさぎ・狼狂二・ジミー土田・外波山文明・江口高信・BBB《ビーブラッドボーイ》・大杉漣)。BBBまで俳優部は網羅しただけ、マシなうちと評価する南風を吹かせるべきなのか。配信動画が流石に片岡修二はまだしも、スタッフを志村敏夫と斉藤正明しか拾はない。ふざけ倒したビデオ版クレジットにつき、残りは三月に発売された円盤のパケから補つた。よもやまさか、2022年リリースのブルーレイも同じ腐れ仕様ではあるまいな、暴れる奴が現れるぞ。気を取り直して製作の伊能竜と音楽の周知安は、それぞれ向井寛と片岡修二の変名。
 汽笛とエンジンの起動音鳴る港湾風景、カメラが右から左にグルーッと回り込んだ先に、鳥の巣みたいなパーマ頭で肩にボンサック引つかけたスージー明日香。この主人公は流れ者ですといはんばかりの、造形に於けるクリシェが清々しい。助けを呼ぶ女の悲鳴に、ハードロックがズンドコ起動。一応ズベ公らしいものの、メタルフレームのダダッ広いロイドが決してさういふ風にも映らない、奈々(いとう)が当地を仕切る暴走族「ボンバーズ」(ジミー土田とBBBから赤毛と黒マスク)に追はれてゐる。赤毛が投げ縄で奈々を捕縛すると、適当なロケーションにバイパススリップ。挿されはしない程度にいとうようこのオッパイを拝ませた上で、その場に明日香(大体ハーセルフ)が漸く介入する。黒マスクの振るふヌンチャクに何故か切り裂かれたシャツの中から、御尊顔を覗かせる菩薩様?にタイトル・イン。矢鱈鋭利なヌンチャクも兎も角、暴走族が二尻の単車―運転するのはジミ土―から縄を投げ女を捕らへる!アバンから飛ばすに飛ばす、底を抜いてヒャッハーな世界観が堪らない。
 苗字は野沢と思しき、マスターの俊介(江口)が妻の亜紀子(花)と二人で切り盛りする居酒屋「波止場」。たむろする奈々に連れられ、明日香は人手の足らぬ波止場に転がり込む。十人前後は投入される客要員の中から、若かりしナベは見つけられず。自身も墨を入れてゐる亜紀子は明日香に親近感を懐き、明日香が働き始めた波止場がなほ一層繁盛する一方、俊介に対して横恋慕を拗らせるボンバーズの頭・マコ(麻生)は、チームを率ゐ店を襲撃。実は身重の亜紀子と、明日香を豪快に拉致する、法が機能してゐないのか。
 配役残り狼狂二と、ビーブラッドボーイあと三人もボンバーズ頭数。本物の暴走族なのかはたまた劇団の類なのか、BBBの正体には全く以て手も足も出ない。大杉漣は亜紀子と明日香の危機に奈々が頼る、五年ぶりで地元に舞ひ戻つて来てゐた凄腕・佐伯、と来ると下の名前はまづ恭司。二人の関係を俊介も知る、亜紀子にとつては昔の男。何処に如何なる形で登場するのかまるで読めなかつた外波山文明は、二人を救出か奪還すべくボンバーズ根城にカチ込む佐伯が、あへて安物のライフルを調達する銃砲店店主。多分、所謂パラレルな世間での出来事を描いた物語なのだらう。きつとさうだ、さうに違ひない。外波文に話を戻すと、刹那的な端役なのが惜しい、少なくとも片足アウトサイドに突つ込んだガンスミスが様になる。
 特に好きな監督といふ訳でもないのもあつてか、ピンクとロマポ、合はせて四本ex.DMMに未見作を残してゐた、片岡修二昭和59年第五作。通算だと、六と三分の一作。フィルモグラフィに共同監督のオムニバス作が含まれると、カウントがやゝこしくなる。
 無法地帯の港町を舞台に、流れて来た刺青女が点火した騒動に、地場の刺青女も巻き込まれる倶利迦羅紋紋ウェスタン。フリーダムに血の気の多い暴走族と風来坊が激突する、よくいへば大雑把な活劇に、修羅場に際しての壮絶なカット割りに頭を抱へ―バッド―トリップでもする以外には、普通にカッコよく単車を駆る、ジミー土田の意外な雄姿くらゐしか琴線の触れ処は別にない。そもそも二枚看板的なスージー明日香と花真衣が、リアルに背負つた和彫りが確かに見栄えはするにせよ、お芝居の方は共々ぎこちないか心許なく、所詮ドラマツルギー自体へべれけと来た日には、劇映画的には精々御愛嬌。散発的といふか、より正確には暴発するが如く爆ぜてみせるのが関の山。さうは、いへども。そんな中でも最大のハイライトは、明日香が彫れる、もとい惚れる男も特に現れず、どの組み合はせで断行するのか、皆目見当のつかなかつた締めの濡れ場。あまりにも意味が判らなくて、くらくらするほど唐突に明日香と明子が兎に角突入する、出し抜けに狂ひ咲く正しく極彩色の百合には驚かされた。さうか、ガチ刺青女同士の絡み。その飛び道具を隠してゐたんだ。事そこに至る、脈略は木端微塵なんだけど。他方、裸映画として標準的な意味での白眉は、中折れした狼狂二―この人松岡充と大体同じ顔―に、マコがワンマンショーを見せつける件。刺青といふ一種の特殊装備持ちの頭二人は兎も角、いとうようこより低位に甘んじるビリングは正直解せない、麻生うさぎが最も女優らしい地力を披露する。総じての面白くない詰まらないならまあ、それはさて措きとでもいつたところながら、所々ベクトルの絶対値は結構デカい一作。正負は問ふてない、といふか問ふな。

 最後に、BBBともうひとつ謎なのが、ラストにフルコーラス流れる歌謡曲。“女だてらといふけれど”、“女泣かせる世の中にや”、“許しちやならない奴が多すぎる”。歌詞でググッてみたところで何も出て来なければ、スージー明日香がレコードを出してゐたといふ記録も見当たらない。ただ視覚デバイスに劣るとも勝らない節穴で聞いてみた感じ、劇中明日香が発する素の台詞同様、不安定な声色がスージー明日香のヴォーカルに響いたものだが果たして真相は如何に。


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 「人妻淫靡行」(2021『淫靡な女たち イキたいとこでイク!』のOPP+版『人妻、ジャンプする!』の、更にDVD題/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:中尾正人/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽:Project T&K/効果・選曲:AKASAKA音効/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:小関裕次郎/撮影助手:石川真吾・江森聖弥/ポスター:本田あきら/演出部応援:菊嶌稔章/撮影協力:ホテル サンセット・47style・斎藤光司・望月元気/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:加藤ツバキ・あけみみう・七菜原ココ・佐倉絆《特別出演》・石川雄也・橘聖人・安藤ヒロキオ・折笠慎也・山本宗介・小林麻祐子・サーモン鮭山・豊岡んみ・熊谷智穂・板井和美・鎌田一利・きくりん・森羅万象)。出演者中佐倉絆のカメオ特記と、豊岡んみからきくりんまでは本篇クレジットのみ。ついでに予告篇では、橘聖人に括弧新人特記。
 波打際の水面に「判つてる」、加藤ツバキのモノローグ起動。「思ひ描いた通りの人生を送れる人なんて」、「ほんの一握りしかゐないつて」。エプロン姿の専業主婦・江口弥生(加藤)が、こゝ何処?といふ風情で浜辺に立ち尽くす怪訝なフルショットに、「でも私は信じる」。「強い思ひを持てばきつと何時か、こゝぢやない何処かへ羽ばたくことが出来るつて」。屋内履きのスリッパが砂に沈む足下と、海に向かつて振り向いた弥生のソリッドな横顔を抜いた上で、暗転タイトル・イン。スタイルのよさ以前に黙つて立つてゐるだけで女優力漲る、加藤ツバキがロングに映えるアバンは強靭。宣ふ能書の、他愛なさにさへ耳を塞げば。
 品のない飲食店みたいな照明の、マンション一室。「これどういふこと?」、帰宅した弥生の夫・裕樹(安藤)が、穴の開いた靴下に因縁をつける。山内大輔―と安藤ヒロキオ―が古澤健との格の違ひを見せつけ、裕樹が一方的かつ強迫的な偽道徳を粘着質に捏ね繰り回す所謂モラハラに、弥生はといふと細い肩を竦め戯画的に恐縮するばかり。絡みの間も裕樹が間断なく無駄口を垂れ続ける、造形の周到さが裸映画を殺ぐ諸刃の剣に突入する夫婦生活の最中、終に裕樹との関係に耐へかねた弥生は、背面座位を振り切る形で“ブイン”と消失。画面の一部を波打たせる、“ブイン”処理が音効込みで秀逸。書き損じた原稿用紙が散乱する、畳の間に弥生は“ブイン”と出現。パラノーマルな現象に、無論全裸の弥生が当然の如く怯えてオッパイを隠す、加藤ツバキの可憐な御姿がまたエモーショナル。布団の中で寝返りを打つた、眠つてゐるex.ダーリン石川が目を覚ます寸前に往復の復“ブイン”、弥生は上手いこと自宅トイレに帰還する。翌日、今度は味噌汁で難癖つけられた弥生は再び原稿用紙部屋へとテレポート。用でも足して来たのか戻つて来る住人と入れ違ひ、弥生が次は砂浜に飛ぶのが開巻の海岸。潮の香りを深く吸ひ込んだ弥生は、未だ事態は呑み込めないまゝ、もう家には戻らないと覚悟を極める。
 配役残り、石川雄也が件の、原稿を文字通り書き散らかしてゐる藤森祐介。食へない本業は処女作『白いガーベラ』(光弾社刊/文庫のプリミティブな装丁が凄まじい)を一冊出版したきりの小説家で、元職は弥生の高校時代恩師。現職は、出張風俗嬢の送迎、のバイト。砂浜から弥生が更に飛んだラブホテル「Sunset」の102号室に、一発ヌク気運全開で現れる折笠慎也は「ハッピー不動産」の営業マン・田村。如何にもぽく見えるけど多分VANSではない、ピンクのハイカットがカッコ可愛いあけみみうは、田村が呼んだデリヘル「ピーチ倶楽部」の嬢・彩菜、本名は三沢すみれ。秀樹が改名した訳ではない、橘聖人はとりあへずヤサを探す弥生を戸建の賃貸物件に内覧させる、矢張りハッピー不動産の佐藤幹夫、即ち田村の後輩筋。森羅万象は幹夫が―唯一人―常連の、直截に不味くて閑古鳥鳴く小料理屋「みさわ」の主人・三沢。幹夫や義理の娘であるすみれが、店主を捕まへマスターと呼称するのに否応ない違和感を覚える。そこは森羅万象を擁してゐる以上なほさら、どう見ても大将だろ、店構へからマスターの柄ぢやねえ。「Sunset」でポップにwktkするサーモン鮭山は、逆ナン式に誘ひ込んだ弥生が、金だけ先に貰つておいて手洗から消える、サモといふより寧ろ鴨。山内大輔の二作前「はめ堕ち淫行 猥褻なきづな」(2020)で引退した佐倉絆は、幼少の幹夫を連れ藤森と再婚したみゆき、佐藤といふのはみゆきの元々姓。前夫、即ち幹夫の実父(山本)相手に、カメオながら茶を濁して済まさうともせず、全然普通に脱いでガンッガン対面座位で股がつてみせる、万全ないしフルコンタクトぶりには軽く度肝を抜かれた。熊谷智穂は最終的に若い男を作つて逃げた、三沢の妻にしてすみれの実母、この人は存命。そして散々ぱら温存される七菜原ココが、すみれからは一旦フラれた幹夫に一時的に出来た、固有名詞不詳のカノジョ。その他、男女五人の本クレのみ隊は、唐突にカレー屋としてリニューアルするや、俄かな活況を呈する「みさわ」を賑はす客要員。ところで鎌田一利ときくりんは、もう少し美味しさうか楽しさうに飯を食へないのか。といふか山内大輔による演技指導の有無も兎も角、特に菊嶌稔章は自身も演出部である以上、もう少し考へるべきかとは思ふ。オッサンが仏頂面でカレーを突いて呉れとか、些末なリアリズムに囚はれたのであればもう知らん。更にいふと筆鬼一(a.k.a.星野スミレ)では如何せん画が貧しくなるゆゑ、こゝはきくりんの対面がEJDといふ、何気に芳醇なテーブルを拝みたかつた心も残す。何なら、江尻大と菊嶌稔章が、ニッコニコ手を繋いで店の敷居を跨ぐカットがあつてもいゝ、無駄といふ言葉を知らんのか。
 台風十四号の接近に伴ふ鹿児島本線の半ドン運休が早々と発表されたため、外王で円盤を借りて来るプランGに移行した山内大輔2021年第一作。尺から十分強長い、中身の相違に関しては悪びれもせず等閑視する。特攻したところで別にデスりはしないけれど、何せ帰つて来れなくなるのね。
 藪から棒に瞬間移動の能力に恵まれた人妻が、自分の問題は半ば棚に上げ奔走する体の、超常的な人情譚。拙速に斬つて捨てると、今回山内大輔が思ひのほかヤバい、悪い意味で地味でなく派手にヤバい。数少ない見所のうち、最も特筆すべきはその都度その都度完璧な微調整の適宜施される、各ジャンプ時に於けるさりげなく超絶な弥生の所作。あとは―少なくとも―今作時点で何時でもビリング頭に帰つて来れる状態を保つ、佐倉絆の一欠片たりとて減衰してゐない決定力くらゐ。カウンター越しの三沢が、画面奥からすみれの恋路に一喜一憂改め一怒一憂する、森羅万象のロングレンジ至芸を忘れてゐた。其処から届く、圧が凄い。当人は勝手か何となく理解してゐる風なのが片腹痛い、弥生のギフテッド、の因果は甚だ漠然としたまゝ放置。藤森と幹夫を再会させる合目的性は認め得るにせよ、だからその目的なり、弥生に天賦を与へた主体は何なのよ、気紛れな神か。重ねて失はれたあるいは奪はれた、フリーダムを弥生が取り戻す。シンプルな奪還の物語に一点突破すればいゝものを、ゆすみれと幹夫のつかず離れずが弥生の本丸を阻害。連れ子同士で巡り合ふ、一つ目の器用な劇中世間の狭さはさて措き、再婚後僅か半年で山宗と情死に至る。そもそも何故みゆきは藤森と再婚したのか、エクスキューズのeの字も設けられない、木に藪蛇を接ぐ盛大な謎が劇映画上の致命傷。一人ぼつちで全部作り上げた自主映画ぢやなからうに、大の大人が雁首並べて、誰も何とも思はなかつたのか。ver.の差異に留意すると、一時間前後待機を強ひられるスリリングな七菜原ココの用兵は、遅きに失した三番手の投入が展開を爆砕してのける、荒木太郎的―あるいは三上紗恵子脚本的―な破局をハイテンポな離れ業で辛うじて回避、と目して目せなくもないものの、もう一箇所開いた大穴が男主役の橘聖人。少しでも荒げた途端、ずたぼろに割れるキンタマもといボロッカスな発声、に、劣るとも勝らず。この人AV男優部の出自にしては、要は根本的にメソッドが異なるのか、大概な濡れ場下手がピンク映画的な致命傷。締める筈のあけみみうとの一戦が、ものの見事に締まらない。それは果たして、見事なのか。ただ漫然とした外見から脱いでみると意外に作り上げられてゐる、ステルス性能のマッシブは買へる。八年間の結婚生活を捨てる腹を括つた弥生が「私は、自由だー!」とか、キメに来たシークエンスのつもりで、クッソ凡庸な台詞を演者に叫ばせる救ひやうのないダサさにも鼻白む。尤も、物理的にも裕樹が痛い目に遭ふフィジカルな懲悪に免じて、弥生が案外近所でしか飛んでゐない、二つ目の清々しい劇中世間の狭さにはツッコまずに通り過ぎる。結局寸借詐欺と不法侵入で急場を凌ぐ、弥生に勧めるほどの善は別に存在すまい。フレーム内を左から右に進むすみれと幹夫が、逆に右袖からフレームに入つて来た弥生・藤森と間抜けに鉢合はせる、スニーカーしか満足に回収しない、屁のやうなラストが逆の意味で完璧。敢ていふなら外様とはいへ、山内大輔にも草臥れられると―全体の状況的に―結構キツい、消極的な問題作である。
 裕樹のフィジカユな懲悪< 彩菜相手に無理心中を図り、救出に飛び込んだ藤森から金属バットで半殺し


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 「団鬼六 人妻なぶり」(昭和62/製作:オリエント・21/提供:にっかつ/監督:片岡修二/脚本:丘哲民/プロデューサー:奥村幸士/企画:塩浦茂/原作:団鬼六『人妻なぶり‐闇の色事師』《二見書房刊》より/撮影:志村敏雄/照明:出雲静二/録音:神保小四郎/美術:小林正巳/編集:鍋島惇/選曲:林大輔/助監督:笠井雅裕/色彩計測:宮本良博/スチール:田中欣一/現像:IMAGICA/出演:長坂しほり・八田玲奈・瞳さやか・川上順子・下元史朗・中根徹・藤井章人・港雄一・二階堂浩・堀雄司・浅田淳史・甲斐純一)。出演者中、堀雄司以降は本篇クレジットのみで、脚本の丘哲民は片岡修二の変名。どうやら、誰も読みを知らない模様。
 そもそも玉の輿に乗る以前に、そこそこ以上のお嬢様―実家にも使用人がゐる―と思しき、秋山志津子(長坂)が出てみた電話はエロ電話。脊髄で折り返し志津子が受話器を叩き置く一方、叩ッ切られた男の部屋に貼られた、志津子のポスター大ポートレートにパンしてタイトル・イン。立派な社屋を構へる「ORIENT化粧品」、専務と婚約した秘書課の志津子が、台詞はあるけどノンクレの女子社員から言祝がれる。エレベータに皆が乗り込むロングに監督クレジット、志津子の祝言に衝撃を受け、一人その場にポケーッと取り残される小泉ショウゾウ(中根)が、同期の志津子に横恋慕を拗らせるアバン電話の主だつた。小泉の隣室に情婦の道子(八田玲奈/ex.黒木玲奈)と棲む、兄貴分的な仲の色事師・野上(下元)は、良くなくも悪くもナイーブなショウゾウの失恋に際し一肌脱ぐか、寧ろヒン剝く乱雑な姦計を巡らせる。
 配役残り、藤井章人が要は秘書に手をつけた格好の専務・戸田リョウイチで、a.k.a.伊海田弘の二階堂浩が、リョーイチの父親兼ORI化社長。元々、志津子は社長の秘書といふ間柄。終盤の会話を窺ふに、のちORI化も倅に禅譲した模様。最終的には、その代り。話を戻して川上順子は野上と道子のイントロダクションがてら、責められる適当な隷奴、純粋無垢な濡れ場要員。純粋無垢といふか、不純無垢とでもいふべきか。健康的な色香がエモーショナルな瞳さやかは、戸田邸のお手伝ひ・加代。そして、一時間も跨いだタイミングで満を持し投入される港雄一以下、ビリング後ろ三人の本クレのみ隊は筋者と手下の皆さん。この中で、浅田淳史はa.k.a.朝田淳史。手軽に当たれる記録に残つてゐる限りでは、デビュー二年目。その他ORI化社員部と、ロングに見切れる程度の戸田家運転手は兎も角、真正面から画面中央に堂々と抜かれるにも関らず、志津子とリョウイチの結婚式を司る、坂本太と石動三六を足して二で割つたやうな神父役が誰なのか、辿り着けない不明は恥ぢ入るばかり。
 昭和60年第一作「地下鉄連続レイプ」(主演:藤村真美)から、昭和63年第三作「地下鉄連続レイプ 愛人狩り」(主演:岸加奈子)まで。片岡修二昭和62年最終第四作は、全部で七本撮つてゐる買取系ロマポ第六作。ふと戯れに探してみたところ、片岡修二のロマポが全てex.DMMで見られる。そ、れどころか。迂闊にもピンクも二本残してゐた、今後随時出撃する所存。
 野上らに強姦ビデオを撮られた志津子が、お定まりのサドマゾ痴獄に垂直落下。テンプレ通りの展開を忠実に原作を踏襲したものと仮定すると、呼び出しを断られた野上―と道子―が看護婦を連れた医師に扮し、往診と称して戸田邸を疾風迅雷のフットワークで急襲する一幕は、文字情報だけならばまだ誤魔化しが効いたのかも知れないが、それなりに画の厚みもある、実写映画となると流石に無理も否み難い結構な力技。互ひに自らの意思で相手を助けさせる形での、檻に入れた志津子と加代を、滑車で吊り水に沈める結構大掛かりな責め等、腰から下の下賤な琴線を激弾きする、レス・ザン・ヒューマニティーな見せ場には溢れ、つつ。志津子が最初に、野上の倉庫的なアジトの敷居を跨ぐ件。いきなり、いはゆる愛の嵐ばりに何処かの軍服を羽織ひオッパイは丸出しにした二番手が、鞭を構へて待つてゐたりする。天高く浅底抜ける煌びやかに馬鹿馬鹿しいシークエンスないし、最初は内向的で鬱屈した造形の―筈であつた―小泉が、何時の間にか一人前に一皮剥けてゐたりするぞんざいさは、土台一山幾らの物語を、なほ一層十円二十円安くする。尤も、野上からの磊落な要求に忽ち詰んだ志津子は、捨て身の覚悟で二階堂浩に助けを求める。求め、ての。猛毒を以て弱毒を制す豪快なダイナミズムから雪崩れ込む、救ひがあるのか矢張りないのだかよく判らない、且つど定番のラストはケッ作、誰も傑作とはいつてゐない。ちなみに尺は七十一分あるのだけれど、もう少し短いと更に締まつた気もしなくはない、全般的にはなかなか小気味いゝ一作。作劇の面白さなり主題の深い追求なり、まあそれはあれだ。あれば何かの、儲けもの程度。この手の映画に、さういふ色気を出すのも却つて大人気なからう大人の量産型娯楽映画。とでも、いつたところで。


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 「生でドピュドピュ注射して…」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:松下英美)。
 薮中―博章―劇伴に、嬌声が乗る。看護婦の松下英美(ハーセルフ)が秘裂に指を這はせ、暗転して松下英美のみのクレジット。平本一穂に吹く尺八で繋ぎ、再暗転タイトル・イン、アバンはアバン。
 整形外科の入院患者・平本康介(平本一穂)の個室を英美が訪ね、風呂に入れぬらしい平本の代りに体を拭いてあげる。恐ろしく無造作に下半身も剥かれると、平本は勃つ。続けて本格的に一戦交へるのは、英美が辞したのち、マスマスのつてゐた平本のイマジン。
 最早息を吐くが如くクレジット的には等閑視される配役残り、ジャンク斎藤は、あゝだかうだ屁みたいな方便で英美に手をつける医師・金沢。アダルトビデオにして初めて辿り着き得た知見として、この御仁、結構小さいのではあるまいか。何が?ナニが。栗原良は固有名詞不詳の英美彼氏、ハモニカを吹くカットに際しては、ほぼ真上から抜く俯瞰が出し抜けに火を噴く。
 多分これで全部の、公開順に浜野佐知1993年第一作「超いんらん 色情不倫妻」(脚本:山崎邦紀/主演:美咲舞/二番手)と、珠瑠美同年第三作「若奥様 不倫漏らす」(主演:中上絵奈/二番手)。珠瑠美1994年第一作「熟女スワップ 獣のやうに」(主演:珠瑠美/三番手/二番手に二階堂美穂)に、浜野佐知同年第九作「水沢早紀の愛人志願」(脚本:山崎邦紀/主演:水沢早紀/二番手)。ピンクに四本出演してゐる、松下英美を擁した一作。“私のCTスキャンで貴男のジュニアを診てあげる”、パケに踊る下らなさが最高な惹句に心温まる。
 看護婦は男の体に対する耐性がついた結果、羞恥心をなくしてしまふだの。セックスをすると女を取り戻すだとか、あるいは男は幾つになつても子供。取つてつけたやうな看護師の匿名証言―実際取つてつけたのだらうが―で最低限の体裁を整へた上で、松下英美の対平一、対ジャン斎、対栗良。平本との再戦に、金沢も加はる巴戦までを滔々と連ねる。ザクザク切り刻むのでなく、フェードでヌルヌル繋ぐ濡れ場に映画的な旨味は特に見当たらないが、あまりにもぞんざいなカッティングに戦かされることもない以上、ひとまづ落ち着いて女の裸を愛でてはゐられる。金沢のへべれけさに可笑しみを見出す余地も決してなくはないのかも知れないが、そもそもジャンク斎藤に一欠片の魅力も見出さない見出せない、当サイトにはそれも叶はなかつた。

 付記< 仏流炒め物、もといさて。藪から棒に火蓋を切つた、浜野佐知AV戦の初戦に於いては“諸事情につき”と言葉を濁してみたが、とうに上梓されてゐるゆゑ、勝手にカミングアウトしてしまへ。先般出版された浜野佐知の自伝通り越した戦記、『女になれない職業』(ころから刊)巻末のフィルモグラフィー作成に、山﨑邦紀監督から乞はれ微力の彳部程度協力させて貰つた過程で、浜野佐知のアダルトビデオが、相当数配信で見られる僥倖に直面、すはと喜び勇んだものである。とかいふ顛末はどーでもよく、グーグル先生も知らない、出雲静二と秋山和男が同一人物なる衝撃の新事実始め、読み応へ過積載のエモーショナルな一冊につき、当サイトにお立寄りの諸賢にも、御購読をお薦め致す次第


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