真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女6人 しびれる股間」(1994『妻たちの昼下り 集団不倫』の2017年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/撮影助手:片山浩/監督助手:榎本敏郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:井上あんり・扇まや・風間晶・清水大敬・神戸顕一・林田ちなみ・林由美香・杉原みさお・杉本まこと)。
 タイトル開巻、外は薄明るい夫婦の寝室。井上あんりが身悶え、布団の中から杉本まことの声が聞こえる。恐らく日曜早朝の夫婦生活を経て、鳥海達夫(杉本)の妻で、通訳のスキルを持つ真紀子(井上)は京都で開催される国際会議の通訳を乞はれ、一泊二日で出発。一人になり、真紀子への恋情を達夫がグジャグジャ持て余してゐると、縁側から同僚の望月(神戸)が、不倫相手の野口妙子(杉原)とその友人・里見隆子(林)を伴ひ闖入。望月が達夫に隆子を宛がふ形で銘々オッ始める和室に、専務の花田(清水)がやつてゐるなと登場、勝手に上がつて来たのか。花田に随伴して、社長秘書の深山民子(林田)も現れる。依頼退職予定者名簿に載せられた達夫に、望月は花田の社内派閥に入る救済策を持ちかける。ただそれには不倫を総合的な人間力の指標と称揚する、花田と文字通りが本当に文字通りな裸の付き合ひをする必要があつた。大概底の抜けた方便をも、正体不明の蓋然性で通す清大の突破力。
 配役残り扇まやは、電話越しに豹変した花田が猫撫で声で接する妻・雪江、前社長の末娘。風間晶は、雪江の百合の花香る愛人・美樹。
 少々早いが封切りが十二月中旬となると、倍増の女優部六人態勢は正月映画仕様ではなからうかと思はれる、深町章1994年最終第七作。実は明示された人妻は真紀子と雪江の二人しかゐない―真性ビアンの美樹は確実に違ふ、筈―旧題ないし元題に対し、熟女を安売りする2017年題も何れもちぐはぐではある。2017年題と特別に年次を限定したのは何事かといふと、因みに1997年最初の新版公開時の新題が「不倫妻 ザ・快楽園」で、2003年時には「不倫妻 甘い体臭」。一方下の句が、各々のニュートラルさを共有するのも地味に趣深い。
 要は津田スタからほぼほぼ動かない省力撮影で、ひたすらな濡れ場濡れ場に終始するストロング・スタイルの裸映画。さうはいへ一歩間違ふと単調なお休みタイムに堕しかねないところを、後半急展開が二発火を噴き案外素面で惹きつけさせた上で、小粋なラスト・ショットまで駆け抜ける。達夫が陥つた絶体絶命の危機に、公子が伝授する奇策のスイング感も堪らないが、予想外の真紀子行先には素面で驚かされた。現行のデフォルト尺七十分を戦ふには些か薄いネタ―今作五十六分半―とはいへ、構成の妙で潤沢な裸を見せきる小品である。


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 「極妻レズ イブの快感」(2001『愛染恭子VS小林ひとみ 発≪さかり≫情くらべ』のアダルトビデオ版/製作:ジャパンホームビデオ/監督:愛染恭子/脚本:藤原健一/プロデューサー:寺西正己/ラインプロデューサー:藤原健一/監督補:西保徳/音楽:隼トシヒデ/効果:宮澤謙/撮影:飯岡聖英/照明:東海林毅/録音:川嶋一義/編集:種井亮太・山崎ラブ/スチール:山本千里/ヘアメイク:早津晋二/ヘアメイク《愛染》:久保早苗/ガンエフェクト:近藤佳徳/撮影助手:山本宙/照明助手:シャオチャンサン/撮影機材:テックス/照明機材:アスカ照明/助監督:種井亮太・川野浩司・野尻克己/制作主任:中村和樹/スペシャルサンクス:桜井順二・河田和弘・新里猛作・勝呂均・森角威之・山科薫/編集:KSKスタジオ・STUDIOVAN/衣装:テラーズ・東京衣裳/着物協力:紫苑工房/車両協力:国進産業・kazuロケーション/撮影協力:麻雀野郎・マカティ・飯塚俊子・スナック愛・エレメンツ・稲場秀実・田中ロケーション・アクトレスワールド/協力:双葉社《増刊大衆》/制作協力:Filmworks MOVIE KING/出演:小林ひとみ・千葉尚之・下元史朗・稲葉凌一・深作覚・重水直人・翔見磨子・港雄一《特別出演》・けーすけ・浦野薫・江口琢也・ドミニク西田・我宮大凱・内山一寿・田渕秀幸・重村佳史・近藤佳徳・金丸・藤山浩隆・久保和明・河田和弘・木村由則・星野晃・友松直之《友情出演》・螢雪次郎《特別出演》・稲場秀実・帆足哲郎・村松公江・村松雄二・後藤幸子・熊木ミホ・堀江恵子・吉田誠・山中康夫・広瀬純・田中誠・大乃樹光・ジェフリーシモンズ・アルベルト・河内正太・深澤和明・美咲レイラ・松井早希・青山円・高橋りな・西田ももこ・団鬼六《特別出演》・佐藤慶《ナレーション》・愛染恭子)。さあて大変だ、出演者中深作覚と、浦野薫から友松直之までに、稲場秀実から団鬼六までは本篇クレジットのみ。現像が見当たらない等々、そもそもな変更点もあちこちあるのかも知れないけれど、明らかに怪しい照明助手の名義とか。あと音楽はまだしも、効果の謎高位置。
 裸で絡み合ふ愛染恭子と小林ひとみに、実物の百合を大胆に繋げた上で、開巻に飛び込んで来る第一段ロケットは港雄一。関東一の大組織である染山組組長・染山大吾(港)が翔見磨子を抱く愛人宅に、忍び寄る何者かの影。第二段ロケットが、まさかの友松直之!乗り込んで来たヒャッハーなヒットマン(友松)に、大吾は額の真ん中を一発で撃ち抜かれ即死。両手をパーに広げ、「撃たれちやつた><」なポーズになる大吾の死に様がプリミティブでキュート。それは港雄一がその場でやらかした自発的なメソッドなのか、あるいは愛染恭子の天衣無縫な演出であつたのか。とまれ大吾が射殺されるや、「関東一円を牛耳る大組織染山組組長染山大吾の死は凄惨な抗争への口火となつた」―読点が入らない抑揚は本篇ママ―と、第三段ロケットよもやの佐藤慶によるナレーション大起動。ここのところが何回見直しても前後関係がクリアにならないのだが、跡目に関して大吾が二代目に息子の征二郎(下元)を選んだことに臍を曲げた、組長補佐の小林重政(深作)は小林組を構へ染山組に反旗を翻す。武闘派を集め市街戦感覚で仕掛けて来る小林組が一旦は優勢に立ちつつ、越後会一英組組長・上杉高徳(星野)と東北連合会会長・伊達国光(螢)の協力を征二郎が取りつけ形勢逆転。征二郎の妻・愛子(愛染)とは幼馴染でもある、妻の一重(小林)は逃がしたものの、小林は染山組組員・中村茂(千葉)に仕留められる。仕留めた流れで、「この物語はヤクザの抗争により友情を断たれてしまつた極道の妻・愛子と一重の愛と憎しみの物語である」と締めのナレーションが入り、暗転タイトル・イン、佐藤慶―の声―はここで御役御免。数年後、一重のスナック「愛」を征二郎が訪ね、最終的にはクラブを持たせるレベルの愛人関係に進展。旦那に放置され張形で自らを慰める愛子の姿に、茂は忸怩たる思ひを拗らせるのも通り越し滾らせる。
 辿り着ける限りの配役、幼さも残すくらゐ若い深澤和明(ex.暴威)が、征二郎の二代目襲名式に見切れる。茂を連れ外出する愛子に帯同するほか、のちに1カット顔を見せる運転手は新里猛作。少し前なら田中康文で、今だと菊島稔章の内トラに於けるタイプキャスト。けーすけ(現:ケイチャン)は、愛子にちよつかいをかけるチンピラB、連れのAが判らん。団鬼六は征二郎に持たせて貰つたクラブで一重が接客する、必ずしもヒムセルフとは明示されない程度の鬼六先生。ほかにこれといつた女も見当たらないゆゑ女優部は概ねクラブのホステス隊ではなからうかと思はれるが、征二郎が現れ鬼六先生を任される、実は今作が銀幕初陣の美咲レイラと、画面右隅を掠める西田ももこは見切つた。稲葉凌一と重水直人は茂の兄貴分で、染山邸に恐らく常駐する加倉と山崎、更にこの二人だと山崎が上。ジェフリーシモンズとアルベルトは、一重が誘き寄せた愛子を犯させる棹要員、何れが何れかは不明なれど黒と白。
 確かにクッソ汚かつたキネコに臍を曲げたm@stervision大哥が十分そこらしか御覧にならなかつた、“塾長”愛染恭子監督デビュー作。リアルタイムに地元駅前ロマンで観て以来、何故か頑なに再見の機会に恵まれなかつた。さういふ軽く幻の一作が、二十分弱長いAV ver.でバラ売りされてあるのを、同様の連動企画を採つたPINK‐Xの返す刀で発見。喜び勇んで購入したものである、我ながらどうかしてる。
 三分の一尺が違ふとなると結構な別物にもなりかねないところが、どうせ水増し分は丸ッとピンクよりは過分に過激な濡れ場にさうゐない。と、脊髄で折り返して高を括る以前に。渡世の因縁もさて措く勢ひで征二郎を寝取る寝取られたで対立する一重と愛子が、互ひに互ひを棹要員に凌辱させもした挙句に、何故かケロッと百合の花咲かせ和解する。殊に愛子への純情を弾けさせた茂を筆頭に、血で血を洗ひ屍の山を築いた男達がまるで報はれない所詮は透写紙よりも薄い無体な物語の、差異を論じたところで始まらない。一度しか観てゐないにつきまるで覚えてゐないのかと途中までは思つてゐたが、忘れる以前に、そもそも覚えるだけの中身がなかつた。といふのが、最も直截な印象である、直截にもほどがある。頑なにコートの袖に腕を通さない下元史朗なり、持ち前のバイブレーションで組長の妻(をんな)に対する恋慕をエクスプロードさせる千葉尚之なり、砂の中から針を探す気になれば見所もなくはないにせよ、要は港雄一を友松直之がブチ殺す絶対値の無闇に馬鹿デカいシークエンスと、佐藤慶の無駄に端正な語りが聞けるアバンがピークにして、文句なく必見、あくまでアバンは。黒人男に責められる愛染塾長に琴線を激弾きされて激弾きされて仕方がない、といふブルータルな御仁に異を唱へるつもりは毛頭ないが、残りは大御大とタマキューを足して二の二乗の四で割つた、水が低きに流れもせずに、途中で霞に変るが如き一作である。


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 「煩悩チン貸住宅 淫らな我が家」(2018/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影監督:創優和/録音:シネキャビン/編集:有馬潜/助監督:加藤義一/監督助手:江尻大/撮影助手:佐藤文男・宮永昭典/スチール:本田あきら/協力:SHIN・鎌田一利/選曲:友愛学園音楽部/効果:東京スクリーンサービス/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:きみと歩実・水嶋アリス・美村伊吹・泉正太郎・竹本泰志・なかみつせいじ)。
 タイトル開巻、二階建て戸建の北村家。ハワイでの挙式から帰国した、端から婚活感覚で未練も残さず寿退社した亜美(きみと)と出世頭を見込まれた夫で、三十年ローンを組んだ人事課係長心得・北村翔太(泉)が乳と、もとい遅々と進まぬ新居の片付け。その夜、夫婦の寝室。絡み初戦を飾る夫婦生活のひとつもオッパイ、もといオッ始めるでなく―息するのやめればいいのにな、俺―如何にも関根和美らしい、タマキューの長尺フェードよりも更に度を越して、途方もなく長いロンゲスト・リフレクションに突入。人事課長の阿久津貞夫(竹本)に、翔太は問題の多い新入社員・佐伯優奈(水嶋)の教育係を任される。平成も終らうといふこの御時世をものともせず、昭和感香る古典的な呑みニケーションも経て優奈が徐々にモノになりかけた回想明けのある日。優奈が病欠する一方、翔太は指導の成果が見られないと、渋々の風を装ふ阿久津から降格と減給とを言ひ渡される、派手な刃傷沙汰でも仕出かしたのか。清々しいクッダラなさが魅力的な公開題には反し、女の裸も見せず漫然とした遣り取りに終始する序盤は、盃を交しつつ翔太が優奈に他愛ない処世訓を垂れ倒す店内同様、ダラダラした居酒屋映画の様相を呈する。
 配役残り俳優部よりも先に江尻大と鎌田一利が、その他人事課要員。EJDは、何時になつたら大蔵でデビューさせて貰へるのか、小山悟は何処に行つた。なかみつせいじと美村伊吹は、減給分を補ふべく、阿久津の助言に従ひ翔太が二階を間貸しする、板前の富樫哲也とその妻・恵子。富樫夫婦が聞こえよがしに爆裂させる嬌声にアテられた亜美と翔太も開戦するのが、凡そ三十分を費やしての初TKB。その直後、後背位から背面座位に移行するライズで、美村伊吹の爆乳がフレーム・インするカットの圧倒的ジャスティス感。尤も残念ながらex.緒川凛の美村伊吹は今作のピンクのみならず、裸仕事から完全撤退してゐる。更に非俳優部、翔太が今度は阿久津と入る居酒屋の、手前席に見切れるのは何時の間にかすつかり白髪で驚いた加藤義一、同い齢なのに。銀髪に気をとられ気づかなかつたが、見切れてゐるとした場合、SHINは加藤義一の対面に座つてゐたのか?
 外様の跋扈と梯子を外された荒木太郎はおろかナベの姿すら見当たらない中、池島ゆたかとローテーションのベテラン枠を死守する関根和美の2018年第一作、伊豆映画は縁起物に近い別枠。一年先行する国沢実に、荒木太郎含め同期の清水大敬吉行由実が中堅で、加藤義一(2002)と竹洞哲也(2004)を生え抜きのホープと看做す認識が、そもそもどころでなくどうかしてた。とりあへず、一般映画が一段落したら、旦々舎には轟然と戦線復帰して欲しい。
 際限のない閑話休題、といふか。漫然と筆の滑りゆくまゝにを、今回のNSP“ニュー・関根和美's・ピンク”に軽く寄せてみた、つもり。前述したウダついた序盤から、三番手―となかみつせいじ―が一暴れするや、華麗なヒット・アンド・アウェイで潔く捌ける中盤を経ての終盤が、ある意味関根和美の真骨頂。直截に、悪い意味でといへばよい。加害者被害者双方の言動が欠片たりとて通らない、挙句水嶋アリスがビリングさへ粉砕する急旋回復讐譚が圧巻。理解不能な屁以下の方便と、無理筋しか見当たらない逐一、破綻のみによつて構成された展開にクラクラ来る。幾度とやらかした豪快な粗相から流石に学習したのか、満更でもない、上手い具合に余韻を残す夢オチと現実の境界線を除けば。よくよく振り返るに主人公である筈にも関らず、亜美と翔太の物語が満足に起動すらしてゐない。以前に、ユーナ・ストライクス・バック篇では当事者の一翼を担ふ翔太はまだしも、亜美に至つては一貫して振り回されるか傍観するばかり、登場人物中一番動いてゐない。女優部で水嶋アリスが三回の濡れ場を、何れも唯一人完遂してみせるのも裸映画的には地味に特筆すべき点。転がり込んだ北村家の浴室にて、派手なワンマンショーを仕出かしてのけるのは、どうスッ転んでも底がブエノスアイレスまで抜けてゐるが。等々、素面で考へると凡そ救ひやうのない木端作か微塵作の割に、未だ色気は感じさせず、素の若さで飛び込むしかない水嶋アリス。片やきみと歩実は色気のその先の色香をいい具合に醸成させ、美村伊吹は完全に爛熟する。三花繚乱に咲き誇る女優部と、引き立て役に徹し、かつ穴も感じさせない男優部。手堅い布陣を擁し、デジタル時代のデフォルトにして、標準的ロマポばりの七十分をもよしんば何となくに過ぎないにせよ、微睡ませるでなく見せきるのは曲芸の領域。その不可思議はそれでも矢張り、関根和美だからこそ初めて為し得る、案外ワン・アンド・オンリーな匙加減であるのやも知れない。少なくとも亜美が絶妙な間で翔太にオッカナく詰め寄るカットは、普通に見させる。


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 「痴漢《秘》変態夫婦」(昭和56/製作・配給:新東宝映画/監督:大門登/撮影:塩田敦也/照明:山田明/編集:酒井正次/監督補:石部肇/製作補:北村淳/録音:東音スタジオ/効果:東芸音響/現像:東映化学/出演:中川夕子・栄雅美・笹木ルミ・辻明宮・北村淳・吉岡一郎・久須美護・関口豊・村井浩)。俳優部と製作補を兼ねる北村淳は、ex.北村淳で新田栄。石部肇が演出部に入るのを目にするのは二度目なのと、脚本クレジットが見当たらないのは驚く勿れ本篇ママ、頓着のなさが堪らない。
 階段絡みのパンチラに、のちにもワン・カット登場する謎の小男―これが大門登?―と、北村淳が垂涎する。北村淳が「おゝ、いゝ土手」と漏らす嘆息にタイトル・イン、タイトルバックは諸々の青姦なりオナニーに、久須美護(久須美欽一の旧名義)と吉岡一郎(a.k.a.吉岡市郎)が固唾を呑む。明けて海ショットにパラリラパラリラ、カメラマン・立夫(吉岡)のボンネットに管楽器を載せた喧しい車が、女子大生モデル・圭子(中川)を助手席に撮影地の伊豆を目指す。圭子がハコ乗りも辞さない勢ひで出鱈目な無羞恥露出を仕出かしつつ、車の中から如何にもこれからオッ始める風情のカップル(二人とも、殊にヒゲの男優部が謎)を発見した立夫は、車を停めわざわざ覗きに行く。
 配役残り笹木ルミと北村淳は、女学生強姦プレイを―矢張り屋外で―仕出かす、業態不明の飲食店「民芸茶房」のママ・みどりと、町一番の有力者の倅・兼吉。久須美護と栄雅美は、立夫と圭子が宿を取る「白岩荘」の主人・祐介とその妻・はるみ。客も入る浴場を、日常的に夫婦生活で使ふ。みどり&兼吉といひ、自由すぎるだろ、伊豆、あるいは昭和。それとはるみは、赤貝でシャンパンを開ける荒業を敢行する、凄いマン力だ。心臓動かすのやめればいゝのにな、俺。辻明宮と村井浩は、漁師の娘の千代に、恋人で造船所で働く友平。北村大造から演技力をスポイルしたやうな関口豊は、千代の意は一切介さず、兼吉と結婚させようとする父親・源造。
 如何にも変名臭い謎の監督・大門登の、jmdb準拠で最終第八作。残り七作は全てミリオンで、ex.ミリオンがジョイパック、ex.ジョイパックがヒューマックスといふタイム・ゴーズ・バイ。
 特に口説き落とすでなく、普通にみどりとも関係を持つ祐介が、兼吉と千代の縁談成就を目論む―兼吉父の―尖兵として蠢動する形で、やゝこしく繋がつた伊豆クラスタの相関関係に、ストレンジャー主人公たる立夫と圭子が小耳に挟む程度に首を突つ込む。と掻い摘むと、あたかもそれなりの物語が成立でもしてゐるかのやうに、誤解されてしまふのかも、知れないけれど。実際には漫然とした濡れ場濡れ場にとりとめもなく終始する、俳優部のビジュアルがなほマッタリ見せる真清々しき純粋裸映画。白岩荘をみどりとの逢瀬に使つた兼吉が、強打したのは腰であるにも関らず、何故か片玉潰す大怪我、ものの弾みにもほどがある。騒動に臍を曲げた源造は、脊髄で折り返して千代を兼吉の玉の輿に乗せる皮算用を白紙撤回。祐吉とはるみの密談を盗み聞いた立夫と圭子は義憤ぽい感情に駆られながらも、要は具体的には何もしないまゝに、千代と友平の恋路が勝手に実る。抜けるどころか底の溶けた作劇が、グルッと一周した感興を惹起する。それでゐて、立夫が劇中二度失敗する出歯亀がてらのパンティ釣りに、三度目の正直で遂に成功するに及んで、そこはかとない大団円感を錯覚しかねないのは、何気な展開の妙なのか、あるいは単に、当サイトの元々貧しい脳味噌が、すつかり桃色に煮染められてゐるに過ぎないのか。尤も帰京する車中、立夫に宝物の戦利品を捨てさせた圭子が、パンティよりも中身と軽く膳を据ゑてみせる流れで、くつきりと所謂マン筋の刻み込まれたパンティが正対する画から、後ろを向いてキャストオフ。改めて正対すると照明が落ちた上で、観音様から“終”がグウーッと飛び出て来るラスト・カットは、振り切れたプリミティブさが案外完璧。心身の少なくとも何れかがくたびれた時に、女の裸をのんびり楽しんで、眠たくなれば躊躇なく寝てのける、さういふ用に供するには最適な一作。そしてそれはそれで、量産型娯楽映画が到達すべきひとつの境地であるやうにも思へる。


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 「菊池エリ 巨乳責め」(昭和63/製作:ローリング21/配給:株式会社にっかつ/監督:広木隆一/脚本:石川欣/企画:作田貴志/プロデューサー:北条康・鶴英次/撮影:遠藤政史・富田伸二・渡辺雄志/照明:隅田浩行・古屋熱・田島昌也/編集:沢田まこと/助監督:大工原正樹・常本琢招・金田敬・増田進/音楽:川崎隆男/スチール:田中欣一/メイク:木村たつ子/車輌:土井健/技術:日本VTR/MA:アバコスタジオ/現像:IMAGICA/協力:中野D児・シネマジック・フィルムキッズ/出演:菊池エリ・瞳さやか・高橋めぐみ・碓田健治・恵比寿太一郎・古都秀一・石部金吉)。凄い面子の演出部、増田進は知らんけど。配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 監督が強要する剃毛に頑として首を縦に振らない―その所以は古都秀一で明らかとなる―AV嬢・エリ(大体ハーセルフ)に、助監督のジュンイチ(碓田)が折れる。折れたジュンイチは、その旨を監督兼制作会社社長の吉村(石部金吉/a.k.a.清水大敬)に伝へる。といふ開巻、ジュンイチが別室を出てカメラマンの本木(直招=常本琢招)やスカウトもこなす男優の山下(恵比寿太一郎/a.k.a.日比野達郎)らが待機するスタジオを通過、吹き抜けの二階に上がる。今も全く変らない、如何にも清大らしい狂騒さで吉村がジュンイチに怒鳴り散らしながらスタジオに下りて来ると、何時の間にかエリと山下は絡み―の撮影―をオッ始めてゐたりなんかする。のに介入した吉村がエリに軽く縄をかけた上で、山下を押し退け尺八を吹かせるまでを、何とど頭から三分強の長回し。画質は映画感の欠片もない壮絶なキネコであるにせよ、ここはカメラが文字通り縦横無尽にグイングイン動く。寧ろそのまゝ駆け抜ければよかつたものをと大いに思へなくもない、後背位を蛇足気味に挿入してタイトル・イン、清大の役得しかない。兎も角撮影後、ジュンイチは吉村から監督デビューを言明され、エリとの恋人同士のプライベート・ビデオといふ企画を頂戴する。息を吐くやうに指を鳴らし、「ベターね」と「ポン!」の決め台詞だか口癖を連呼する吉村の造形が、清々しいくらゐに煩はしくて笑けて来る。
 配役残り瞳さやかはジュンイチと同棲する、四年制か短大か専学かは判らんけれど、何某かの学生・ノリコ。壊滅的な大きさのモザイクに阻まれ真偽のほどを推し量る術もないが、事後はフローバックが描写される。高橋めぐみは、山下が連れて来た新人AV嬢・クミコ、自称十九歳。最初の顔合はせ時、山下にクミコの本番OKと年齢を確認した吉村は、脊髄で折り返した処女作の概要を清大持ち前の張りのある低音で「ようしアナルで行かう」。ええええ!となる日比やんのリアクションが爆発的に面白い。クミコの撮影現場、レフ板を持つてゐるのが堀禎一(撮影当時十八歳)に見えたのは、幾ら何でも時空が歪んでゐる、まだ高校生だ。そして古都秀一は、エリのリアル彼氏もしくは配偶者・シューイチ、職業トラック運転手。忘れてた、ススキ野でエリのスチールを撮影するカメラマンが、田中先生ヒムセルフ。
 要はアダルトビデオに敗北したロマポの断末魔、終焉間際に劣悪な色彩の徒花を狂ひ咲かせた、ビデオ撮り過激路線のロマンX。買取系ロマンXといふとなほさら際物感も加速する、広木隆一(a.k.a.廣木隆一)昭和63年第一作。ところで、あるいはついでに。ロマンXよりは近いがそれでもその昔、今は亡き新東宝―死んでねえよ―によるPINK‐Xなる企画もあつてだな・・・・とか明後日もとい一昨日に筆を滑らせてゐて、恐ろしい予感に辿り着いた。今年は撮了二週間を待たず飛び込んで来る驚愕の超電撃作戦を城定秀夫が敢行する、良きにつけ悪しきにつけ話題のOPP+。“プラス”が四十五度傾いて“OPPX”になつた時、終に大蔵といふ最後の牙城も陥落しピンクが終るのか!?ロマンXとPINK‐Xを十七年周期とすると、次にして最後のサード・インパクトが起こるのは、来年である。
 縁起でもない与太はさて措き、男主役たる碓田健治(a.k.a.臼田健治)が如何にもAV畑から連れて来ました的な80年代ヘナチョコで、グジャグジャした遣り取りに終始する助監督立身出世物語なり、恋人関係を偽装するエリとジュンイチに、嘘から実が出て本当の恋愛感情は芽生えるのか。といつた一応それらしくなくもない展開に、一見この期に及んでの見所は見当たらない。寧ろ清水大敬が持ち前の突破力で散発的にシークエンスを貫く“ヌク”のが、余程風通しよく感じられる。正しく、役者が違ふ。裸映画的にはアバンで一旦チョイ見せした菊池エリを、女優部をビリング順に消化する前半は暫し温存。一転後半ジュンイチの部屋に入つて以降は、何はともあれなオッパイの威力で、これでもかこれでもかといはんばかりに畳みかけた挙句、木にシネマジックを接ぐ―結構―ハードSMをも大披露。公開題を偽らないのと同時に、何はなくとも観客の一番見たいものを見せきる至誠は果たす。エリが二言目には振り回す“神秘的”とやらの内実は結局ピンと来はしないものの、徐々に混濁する劇中虚実のレイヤーが、曖昧なまゝなれど確かに結実するラストは、それなりに鮮烈。振り返れば冒頭の長回しの時点で既に、フレームの天井には見るから不自然にガンマイクが見切れてゐる。キネコの所詮負け戦に胡坐をかくでも匙を投げるでもなく、ならばと端から全てが同一化した、セックスならぬユニフィクションな世界を狙ひ澄まして来た意欲的な一作。石川江梨子名義の菊池エリ銀幕デビュー作「団地妻 W ONANIE」(昭和60/構成・監督:奥出哲雄)や、佐野日出夫のjmdb準拠最終作「普通の女の子 性愛日記」(昭和60/白鳥洋一と共同脚本/主演:渡瀬ミク・早見瞳)のあまりにもな何もかもの酷さに匙を投げてゐたが、なかなかどうして、どうやらロマンXにも取り付く島はありさうだ。


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 「変態家族 碧い海に抱かれて」(2018/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:中尾正人/録音:光地拓郎/編集:山内大輔/音楽:Project T&K/音響・効果:AKASAKA音効/特殊メイク・造形:土肥良成/特殊メイク・造形助手:串淵徹也《spitters》・江沢友香《spitters》・長谷部美月/助監督:江尻大/ロケコーディネーター:リチャードTH/撮影助手:戸羽正憲/スチール:本田あきら/監督助手:村田剛志/演出部応援:菊島稔章・小関裕次郎/協力:はきだめ造形・風酔苑、他/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:涼川絢音・霧島さくら・伊織涼子・ほたる・川瀬陽太・森羅万象・竹本泰志・世志男・和田光沙・細川佳央・リチャードTH)。土壇場の情報量に力尽きる。
 波打ち際と、夕焼けショット。日没の早回しに、俳優部が先行するクレジット起動。先に片付けておくと、タイトルは後述するオーラス前に入る。浜辺に二人の女が倒れてゐるロング、画面奥の女が起き上がり、生まれたての小鹿ばりに覚束ない足取りで歩きだす。女が草叢の中に消えると、一転タワーマンション。資産家の三沢(森羅)が、子連れの中年女・容子(伊織)と結婚する。三沢が初婚なのか何度目かなのかは、必ずしも明示されない。容子の連れ子・サユリ(霧島)と三人の、一見如何にも幸福さうな朝食。ところがサユリは小遣ひの無心を断られるや、脊髄で折り返して粗暴な本性を現し家を飛び出して行く。お前の躾が悪いと称しての、朝つぱらからエロい通り越してどエグい夜の営み。容子の乳首を一頻り執拗に責めた上で、観音様に手を伸ばした三沢は「もうビッショビショぢやないか」。森羅万象がビショビショの最初の“ビ”に叩き込む極大のアクセントが、極めて陳腐な紋切型をも決してさう聞こえさせない。一方佐藤(世志男)と援交したサユリは、事後惨殺される。
 配役残り竹本泰志は、再起動後ヒョッコヒョッコ奇怪に移動するミカヨ(涼川)を、結構なスピードの軽トラで撥ね犯す高橋。強盗ならぬ昏睡強姦といふ寸法にしても、加減を仕出かすと殺してまふぞ。話を高橋に戻すと山本宗介のスケジュールが合はなかつたのか、片腕格の真木がゐないだけで造形は殆ど変らないが、一応堅気。ほたるは、今度こそな完璧な家族を求める三沢の飽くなき再婚相手・シズエ、ミカヨがシズエの娘。綺麗にオラッた細川佳央は、ミカヨの彼氏・準一、この男は明確に組に草鞋を脱ぐ。デジタル前後以降の現代ピンク男優部山宗に次ぐ第二の男は、所詮抽斗はひとつきりの櫻井拓也よりも、地力が違ふ細川佳央であると看做すのが適当であるやうに思へる。川瀬陽太はミカヨのチョイスで三沢家が家族旅行で訪ねる、予約客が本当に来ると驚かれるペンションならぬペンシ~ョン「風酔苑」主人・吉井。先輩後輩ではなく、高橋とは今回高校の同級生。リチャードTHは、吉井がミカヨの働き口を乞ふ山羊牧場のをぢさん。ところで風酔苑は実際には、リチャードTHことRichard Ventnerが営むタイ式マッサージ店。となると、リチャードTHのTHはタイのISO国別コードなのかも。そして不脱の和田光沙は、高橋の妻にして、吉井の元妻・明恵。
 四週間後封切りの「再会の浜辺 後悔と寝た女」―物語的には全く別個のお話らしい―と沖縄ロケ二本撮りで涼川絢音引退企画を成す、山内大輔2018年第一作。今上御大の伊豆映画ほどではないにせよ、山内大輔も沖縄づいてゐる印象を何となくか勝手に持つてゐたものだが、改めて振り返つてみると、「情炎の島 濡れた熱帯夜」(2015/主演:朝倉ことみ)があるのみで今作が二本目なのね。それと、“変態家族”といふと周防正行デビュー作「変態家族 兄貴の嫁さん」(昭和59/主演:風かおる)と相場が決まつてゐる感は否めなくもない中、山﨑邦紀の「蜜まみれ変態家族 ~いぢりあひ~」(山崎邦紀名義/1995/主演:桃井良子)や、深町章の「いんらん家族 花嫁は発情期」(1992/脚本:周知安=片岡修二/主演:桜井あつみ)の、剽窃セルフリメイク「変態家族 新妻淫乱責め」(2005/主演:山口玲子)もあるどころか、そもそも関孝二―御齢百六歳!?―の無印「変態家族」(昭和47)が存在するのは知らなかつた。
 裸映画的には伊織涼子が超豪快なスタートダッシュを爆裂させつつ、サユリは別に感じてなどゐない体で、霧島さくらは折角か格好の即物的な素材を、量的には兎も角概ね持ち腐らせる。以降はドラマの展開により重きを置き、場数だけならばこなす割りに、主演女優の裸が一番薄味の印象。尤も涼川絢音が浮世離れた存在感は確かに輝かせる反面、スタイル自体お人形さん的過ぎるのか、日常的な訴求性ないし煽情性は逆に感じさせない人ゆゑ、さういふ女優部先行逃げ切りは構成なり戦法としてそこそこ有効。アスファルトよりも、下が土だとなほさら加速する川瀬陽太の持ちキャラに、飛躍の高い台詞も頑丈に固定してのける、和田光沙の張りと独特の揺らぎとが器用に同居する案外稀有な発声。当然スクリーン映えする、抜けのいいロケーション込みで諸々見所もあるものの、南の島に銘々の欲なり憤怒なり、要は一言で済ますと愛憎が熟れる始終が最終的には一本調子。充実した70分を見せながらも、後には特に何も残らない。量産型娯楽映画的には、それが元来然るべき有様であるのかも知れないけれど。ハッピーなエンドに例によつて冷水を浴びせる、開巻に違へ、死に位置が劇中推移に則してゐるオーラスに関しては、山内大輔の素直に映画を畳むと死んぢやふ病―あるいは親が死ぬ呪ひ―に釣られるだけ馬鹿馬鹿しい気さへして来た。


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 「スペルマーダー 嵐を呼ぶエクスタシー」(2017/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影・照明:藍河兼一/撮影助手:赤羽一真/録音:小林徹哉/助監督:福島隆弘・いちろう・粟野智之/編集:酒井編集室/スチール:本田あきら/音楽:與語一平/整音・効果:シネキャビン/特殊造形:はきだめ造形/タイトル:杉田慎二/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/協力:Abukawa corporation LLC.・中野貴雄・太三/出演:佐倉絆・橋下まこ・桜木優希音・折笠慎也・天木零士・永川聖二・岡村ショウジ・GAICHI)。
 指開き手袋でギュウッと握り込んだ拳を、ブワッと開く。ナイトメアな夢オチ風に警備員の桐崎綺羅(佐倉)が意識を取り戻すと、そこは物置に毛を生やしたやうな殺風景な一室。綺羅はベッドの上に半裸の状態で、傍らにはガスマスクの男が絶命してゐた。激しく混乱する綺羅は、経緯を思ひださうとする。勤務先のイケメン・平野誠(折笠)とラブチューを交し一旦別れた綺羅の背後に、ガスマスクのレイパーズ(後述)が。件の謎部屋―大体何故ベッドが―に連れ込まれ、綺羅は犯される。遺体をどう処理したのかといふ巨大な疑問は豪快にスッ飛ばし、綺羅は依然頭を悩ましながらも普通に帰宅。ガスマスクの下は、見覚えのないオッサン(GAICHI)だつた。綺羅を出迎へた二人暮らしの父親・丈一郎(天木)は、綺羅が殺しの遺伝子を所有してゐるだなどと、突拍子もない大風呂敷を広げる。「殺、し・・・・?」と綺羅が当然再度首を傾げ、安Vシネみたいなスッカスカのタイトル・イン。ググッても何も出て来ないゆゑ、変名かも知れない天木零士の印象をザックリいふと、ハンサムな国沢実。それとアバンでは辿り着けない細部、綺羅が籍を置く警備会社の社名が、虻川警備保障。国沢セキュリティーで国沢実を叩き上げの社長にでもすればよかつたのに、無理から作んないと出すとこないけどね。
 黒いファブリーズ風の噴霧避妊薬「キルピル」でレイパーズが中に出した精子を殺した丈一郎は、綺羅に類型的、もとい衝撃的な出生の秘密を語る。二十一年前、政府の極秘機関で丈一郎は研究職に就いてゐた。配役残り、真希波・マリ・イラストリアスと同じメガネでドヤァ!と大登場をカマす桜木優希音は、丈一郎の同僚・雪村冴絵。最強の人間兵器を生み出す殺しの遺伝子、その名も“スペルマーダー”を開発する。ところで、“スペルマーダー”を体内に持つ人間を作り出すのが、十月十日かゝる一苦労。まづ原液を、結構なデカさの注射器で男―ここでは丈一郎―の尻にお浣腸。精液の中で活性化させた上で性交、受精する必要があるとする、女の裸を銀幕に載せる鉄の意思が清々しい桃色方便。即ち、さうして冴絵と丈一郎の間に生まれて来たのが、綺羅といふ次第。橋下まこは、誠と同居する女子大生か短大生の妹・マミコ。風呂上がりに兄の眼前バスタオルが肌蹴るのを欠片も厭はない、ファンタジーを何気にやつてのけるカットには、観客の他愛ないか下賤な琴線を爪弾くことに全てを賭ける、国沢実のピンク映画監督として至極全うなスピリットが窺へる。永川聖二と岡村ショウジはレイパーズ要員とされるが、マスクをヒッ剥がした中身は何れもGAICHIとなると、しかも大きく動く中大して変らない背格好だけでどれが誰だと見切るのは流石に難しい。改めて最初から顔出しのGAICHIは、レイパーズの強化型モンスター。恐らく衣裳・小道具―もしくは美術―方面の中野貴雄は兎も角、太三が何処かに見切れてゐるのだとすればロストした。
 2016年第三作「性鬼人間第一号 ~発情回路~」(主演:桜木優希音)の寺西徹、前作「「ピンク・ゾーン 地球に落ちてきた裸女」(主演:阿部乃みく)にあつては町田政則。引き続き、SF(スーパー・ファンタ)系国沢組が何気に継続中の、ベテラン男優部サルベージ。国沢実2017年第三作今回の第三弾は、復帰自体は清水大敬2017年第二作「ハミ尻ダンプ姐さん キンタマ汁、積荷違反」(主演:円城ひとみ)が先行するGAICHIことex.幸野賀一。2018年も、山科薫にたんぽぽおさむと企画ないし縛りは活きてゐる。山科薫は常連の清大組以外でも案外チョイチョイ出てゐるが、たんぽぽおさむは確かに大復帰だ。
 映画の中身に話を戻すと、桜木優希音最初の濡れ場込みで、自身が“スペルマーダー”を有する顛末を事細かに聞かされた綺羅は、回想明けの第一声で「なんでパパの初体験の話を」と的を得たツッコミ。膝サポーターが完全に皿の下にずれてゐるだらしなさは減点材料でもあれ、馬場ルックの丈一郎とスク水綺羅の特訓風景は、大胆不敵なオープンで乳尻もしつかり披露しつつ、振り切れた馬鹿馬鹿しさがキラッキラ輝く。佐倉絆の素で顔文字感のある浮世離れたキャラクターが、地に足の着かないシークエンスでこそ素晴らしく活きる。綺羅を二十四時間モニタリングする丈一郎は娘の裸で自動的にマスをかき、エクスタシーで覚醒する筈の“スペルマーダー”が、どうして誠との婚前交渉では目覚めなかつたのか。実も蓋もない最短距離の真相は、男のつらさをさて措けば捧腹絶倒。どうかしたのかと思はせるほど高橋祐太が絶好調、枝葉を飾るギャグが打率十割で走りまくる。佐倉絆と桜木優希音の戦闘服あるいはプロテクター、宇宙船的な正体不明のロケーションと、精一杯ビジュアル面でも健闘。するも、のの。如何ともし難い安普請を流石に回避しきれない展開の貧しさに、物語自体そもそも平板な人間兵器譚が力尽きかけた時。まさかの大技、愛の遺伝子“スペルマリッジ”のクロスカウンターで劣勢を一気に挽回。桜木優希音と天木零士の絡みが、サイコーの思ひつきを形にしたfeat.GAICHIの佐倉絆V.S.折笠慎也をも易々と超え得る、最長不倒のエモーションを撃ち抜く真のクライマックスにならうとはよもや思はなかつた。壊れたまゝ救済されず仕舞ひのマミコの扱ひには一抹の後味の悪さも残すにせよ、執拗にオッパイを拝ませるオーラスに免じて、些末な難癖は放棄してしまへ。コンビ結成時の勢ひが失速した感も若干否めなくもなかつた国沢実×高橋祐太のコンビが、再び軽やかかつ力強い羽ばたきを見せた快作。何度でも同じ与太を吹くやうだが、国沢実は下手にシリアスな映画を撮らせると何処までも沈むか塞いで行く傾向といふか性向の持ち主につき、スッカーンと底の抜けてゐるくらゐでちやうどいいのではあるまいか。


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 「ONANIE 24時間」(昭和59/製作:群星プロダクション/配給:新東宝映画/監督:増田俊光/脚本:しらとりよういち/企画:藤枝三郎/撮影:長町満/照明:石部肇/音楽:住吉十五/唄:沢田かおり/編集:金子尚樹/録音:矢込弘明《ニューメグロスタジオ》/助監督:井上潔/監督助手:高藤雅志/撮影助手:中尾正人/照明助手:佐藤才輔/効果:小針誠一/タイトル:ハセガワ・プロ/現像:東映化学/出演:沢田かほり《新人》・山口理恵・林かえで・大高範子・杉佳代子・牧村耕次・ジミー土田・織田倭歌)。
 深夜の街の画に、歌声以前にメロディから不安定な、アカペラの主題歌起動、クレジットが追随する。鼻差で先にタイトル・イン、ワン・コーラス完唱したところで、明らかに不自然な位置―低過ぎる―の街頭時計は午前四時。渡り廊下で繋がつたマンション、一室に灯りが灯り、消灯する。向かひには、双眼鏡でその部屋を覗く牧村耕次。再び灯りが灯ると、沢田かほりは出歯亀る牧村耕次に気づいてゐるにも関らず、見せつけるやうにオナニーを披露する。翌朝、時計は午前八時前。出勤する沢田かほりに、牧村耕次が接触する。今作ひとつの顕示的な特徴が、のちに林かえで(a.k.a.林香依兌)と織田倭歌のパートでも繰り出す、雑な編集で俳優部を神出鬼没ぽく動かすギミック。果たして当時的には斯様なダサさが通用したのかといふ以前に、繋ぎがあまりにも粗雑で、全く別種の企図があるのではなからうかとさへ煙に巻かれる。ともあれ、追ひ縋る牧村耕次を沢田かほりは振り切る。杉森昌武の自主映画に織田倭歌―や巻上公一(ヒカシュー)―と出演、商業作は恐らく最初で最後の沢田かほりの印象をザックリいふと、きれいな山田花子。
 配役残り大高範子は、沢田かほりにフラれた牧村耕次に、吠えるジュリー(犬種とか知らん)の飼主マダム。帰宅後「人間の男よりずつといい」とか所謂バター犬プレイに戯れつつも、途中から一人遊びに熱中。その隙にジュリーは玄関から逃げる、開いてんのかよ!林かえでは、帰宅途中売春婦に変身する看護婦、ホッつき歩くジュリーと変身後交錯する。山口理恵は授業が休講になつたものの、友人・キョーコは彼氏と映画を観に行くゆゑ、当てをなくす女子大生・エミ。キョーコにかける電話ボックスの足元を、ジュリーが通り過ぎる。織田倭歌とジミー土田は、ケンジ(ジミー)の単車で事故死したヒロシに花を手向けに行くマリ。単車に近づいたジュリーを、マリが拾つて行く。ケンジとヒロシは元々友人で、なほかつマリにケンジが想ひを寄せる三角気味の関係。ジミ土が二枚目不良造形である点には百歩譲つて笑ひを堪へるにせよ、ウェスタンを履いてなほ短い足には声が出る。この人もこの人で、色は普通だけれどハマーン・カーンみたいな髪型がパッと見誰か判らぬくらゐ似合はない杉佳代子は、待ち合はせをスッぽかされるサエコ。ここは変化球、サエコが空いた体を持て余すバーに、ジュリーが見つからず荒れるマダムが飛び込んで来る。その他満足に抜かれはしない、林かえでの客と、サエコとマダムが交錯するバーのバーテンに、マダムに声をかけておいて、サエコは無視するナンパ目的客。
 数へてみると―タグ付きの―残り弾は二本しかない、ビデオ安売王販売の「Viva Pinks!」レーベル作を、配信順に潰して行く殲滅戦。第十二戦は第九戦で昭和57年第二作「純潔を破る!」(真木信介と共同脚本/主演:杉本未央)を見た、増田俊光昭和59年第一作。林かえでが客の要望で自慰を披露するのはそれはそれとしても、マリが無人のキョーコ宅にて出て来たバイブを使つてみるのと、ケンジにジュースか何か買ひに行かせた隙に、マリが波止場でオッ始めてゐたりなんかするのは流石に無理からにもほどがある。にせよ、驚く勿れ実は終ぞ女優部と男優部が絡みはしないまゝに、一日を通して銘々のONANIEを見せきるに徹する、コンセプチュアルな裸映画、ロケーションも案外多彩。林かえでとマリで手口が殆ど変らないのは工夫が力尽きた感もなくはないとはいへ、ジュリーをフレキシブルな―勝手に動き回るともいふ―縦糸に、坦々と経過する時間を刻む時計込みで、断片的な濡れ場の数々を、単に羅列するのでなくひとつの世界に統合しようとする意思は明白。最後にマリを牧村耕次に繋げるプリミティブながら予想外の大技も鮮やかに決まり、全てのピースが納まつた、それなりの完成が結実する。先に触れたダサ雑いギミックに加へ、沢田かほりと牧村耕次の遣り取りと林かえでの独白は、下手に思はせぶりなばかりで、これといつた中身は特にない。モジモジさせられるのを禁じ得ないもどかしさも散見する反面、全体的には気の利いた小品感が心地よい一作。ジミ土のウェスタンに、杉佳代子のどうかしたかやらかしたヘアースタイル。枝葉を狂ひ咲かせる、地味に破壊力の高いふたつの飛び道具も捨て難い。


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