真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女高生100人 《秘》モーテル白書」(昭和50/製作:日活株式会社/監督:曽根中生/脚本:久保田圭司・杉田二郎/プロデューサー:岡田裕/撮影:水野尾信正/美術:徳田博/録音:紅谷愃一/照明:土田守保/編集:西村豊治/音楽:荒野忠/助監督:相米慎二/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作担当者:山本勉/出演:岡本麗・桂たまき・朝倉葉子・内藤杏子・谷口えり子・夢乃ひとみ・宮崎あすか・鶴岡修・前野霜一郎・信太且久・溝口拳・北上忠行・小見山玉樹・白井鋭・清水国雄・衣笠真寿男・影山英俊・西沢敏朗・池田誉・森高志・神坂ゆづる)。さあて大変な出演者中、そこそこ大きな役の割にポスターに名前が載らない森高志以下、信太且久と北上忠行、白井鋭・清水国雄・衣笠真寿男、西沢敏朗・池田誉に、神坂ゆづるは本篇クレジットのみ。共同脚本の杉田二郎は、何故そんなバカ被る名義にしたのか相米慎二の変名。各種資料に見られる企画の五味春雄を、例によつて本クレは素通りする、スチールの浅石靖も。最後にクレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 ど頭は、“この映画はフィクションであり実在の事件・人物等とは関係ありません”断り書き。暫く観るなり見てゐない気がするけれど、最後にこの旨打つたピンクつてどれになるんだろ。まさかよもやもしかして、封殺された荒木太郎の昭和天皇映画!?生臭いかキナ臭い与太はさて措き、意表を突くモノクロ開巻。情を交した『週刊文秋』記者の早川順子と彼氏(前野)が、事後ああだかうだと、思はせぶるばかりで中身は霞よりも稀薄な遣り取りを経て何となく、あるいは何が何だか別れに至る。部屋の窓から前野のスバル360をぼんやり見下ろしてゐると、順子に新しい記事のネタを振る電話が着弾。“女子高生100人モーテル遊び”なる今でいふパワーワードで火蓋を切り、“その後の彼女達”と提示された企画名を順子が興奮気味にメモを取りつつ、タイトルだけ赤く発色するタイトル・イン。モーテルを舞台とした女子高生の非行が問題となつた、故郷でもある甲南市に降り立つた順子は、甲南署刑事課の旧知・山森三郎(溝口)に接触を図る。
 壊滅的に手も足も出せず、辿り着き得る限りの配役残り。刑事役とされる北上忠行と衣笠真寿男が、シンナー中毒者(も不明)に刺された制服警察官と、犯人の母親が住むアパートに山森と土方に扮して張り込む、刑事のどちらがどちらなのかが早速特定不能。シネフィルに任せロマポを放置して来た要はツケなのだが、日活俳優部攻略の道は遠い。桂たまきと我等が影山英俊は、制服のまゝモーテルに入る朝美とお相手氏。売春容疑で朝美が山森に取調を受ける十九分前、唐突にカラー復帰する、意図もタイミングもてんで解せない。鶴岡修は何かと口が重い山森が順子の矛先を振る、地方紙「甲南日報」記者の三村勲、順子とは元男女の仲。谷口えり子はロストバージンを焦る、メガネはいいとして女子高生なのにオバハンパーマ、略してオバパーのムラカタ優子。清水国雄は、順子が取材する不良男子のリーダー格。宮崎あすかはヤリ倒した末、退学を喰らつたアサダ敏江。そして朝倉葉子が物語の鍵を握るかに見せかけて、案外さうでもない風間ユキ。ハンサムな丘尚輝(a.k.a.岡輝男)風の森高志が、ユキの彼氏・森田隆一。地元の名士で甲南日報社長の父親には、二人の交際を反対されてゐる。そして作品の根幹を揺るがす大問題なのが、信也役とされるみんな大好きスーパーウルトラエクストリームアイドル・コミタマこと小見山玉樹が、カットの隙間を駆け抜ける小見山玉樹を捕捉する、再び略してコミタマるのをロマポを観るなり見る際ゼロ番目の目的に、ポスターに名前が載る以上俄然最初から網を張つてゐたにも関らず、何処に出て来たのかサッパリ雲を掴む件。ユキを輪姦す清水国雄ら三人組の内、黒シャツが実は影英の二役で、残るもう一人もコミタマの背格好に見えなくもなかつた―あと僅かに聞かせる声も―ものの。昌代とペケ子とされる、内藤杏子と夢乃ひとみも不明。仲間内の綽名がペケ子て、ぞんざいな昭和のセンスがクールで堪らない。
 性懲りもなく馬鹿自慢をするやうだが、ソネチューソネチュー矢鱈と持て囃されるところの所以を、依然全く理解してゐない曽根中生昭和50年第三作。「大人のオモチャ ダッチワイフ・レポート」(昭和50)なり、「天使のはらわた 赤い教室」(昭和54)辺りを未だ観てゐないのが悪いのか?ソネチュウ☆徒に悪態をつく悪癖は兎も角、それなりに尺相応の風呂敷を広げておきながら、結局何も変らない煙に巻かれるやうな物語は、例によつて何が面白いのかサッパリ判らない。精々裸映画的には水準的に成立するのが関の山、序盤を丸々―といふほど明確に区切られてゐる訳ですらない―白黒で通す謎の荒業以外には、これといつた過剰な意匠も見当たらないとなると、癪の障り処にも欠く始末。長回しがあるらしいが、あつたつけ?超絶雑なことをいふと、曽根中生の安普請レプリカが細山智明で、更に貧しくしたのが荒木太郎な気すらして来た。

 とこ、ろで。曽根中生のウィキペディア、相米慎二のキャリアがフライング飛翔してないか?


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 「痴漢暴行バス しごく」(1998/製作:多呂プロ/配給:大蔵映画/脚本・出演・監督:荒木太郎/撮影:清水正二・飯岡聖英・岡宮裕/編集:酒井正次/助監督:横井有紀・片桐重裕/制作:小林徹哉/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:《株》東京UT、鈴木誠、敬バス・サービス/出演:河名麻衣・西藤尚・ヒロ・今泉浩一・木立隆雅・小林徹哉・内藤忠司・廣瀬寛巳)。下の名前が寛己は然程珍しくもないにしても、苗字が廣瀬寛巳名義は初めて見た。
 クレジットには素通り―jmdbには音楽担当と記載のある、東京UKI and HIROも―されつつ、堀内満里子の手によるタイトル開巻。鮮やかに意表を突き、要は実際カメラの前に置いたタイトル画が紙芝居風に捌けると、流石にカットの繋ぎは誤魔化して富士を遠目に臨む雪景色。しかも今回、普通の乗合と同じ大きさのバスを現に走らせてゐる。都留市駅から終点富士村までの、富士村営バス。車掌は朗らかな路子(西藤)で、無表情な四郎(小林)がハンドルを握る。ラジオの県内ニュースが、山梨刑務所から前科三犯の男性服役囚が脱走した事件を伝へる。ほかに乗客もゐないにしては不自然極まりなく、大学進学を機に上京、地元に戻つた博物館学芸員の河名麻衣と、詰襟のセイガク二人(今泉浩一と荒木太郎/ただし帽子は微妙に違ふ)が最後尾に詰めて座る。四郎が適宜仕出かす急ハンドルで、セイガク二人は麻衣(大絶賛仮名)に覆ひ被さる格好に。自分のことしか興味のない路子と、超絶の造形を爆裂させ時折「ジャスティス」と独り言を漏らす以外には、生気さへ感じさせない四郎は頑なに干渉しない無法地帯、セイガク二人は何やかやあやをつけ、無抵抗どころか殆ど無反応の麻衣を犯し始める。
 配役残りだからイコール広瀬寛巳の廣瀬寛巳は、富士二里の停留所でバスに乗る御馴染グレーの一張羅。インポのひろぽんが、セイガク二人に無理から促され犯した麻衣の肉体で回春する無体な件も兎も角、大を通り越した超問題がひろぽんは実はインポなどではなく、単に彼女が緩かつただけであつたとする彼女・リカ役が、西藤尚の二役である点。ピンク映画的にはなほさら、こここそヒット・アンド・アウェイで三番手濡れ場要員を放り込む絶好の好機であつたらうに、バスを走らせるので足がついたのか、一枚欠いた女優部の薄さは致命的かつ、無駄な判り辛さに直結する。木立隆雅はセイガク二人が恐れをなす、富士三里で乗つて来た体罰教師。当然といふか何といふか、生徒だ教育だと屁以下の方便を捏ねて麻衣を犯す。内藤忠司は、窓ガラス越しに輪姦される麻衣を目撃、自転車でバスを追ひ駆けて来る駐在。そして荒木太郎前作の薔薇族「旅の涯て」(脚本:内藤忠司・荒木太郎)で主演を張つたヒロが、乗降車するバス停不明の脱走逃亡犯。如何にも満を持して飛び込んで来たかに思はせて、地力の差が露呈したのか、さしたる戦果も挙げずに麻衣を一応犯すだけは犯してバスを降りる。ところで広瀬寛巳が、「旅の涯て」でも廣瀬寛巳名義。
 いよいよ一切の沙汰を聞かなくなつた、荒木太郎1998年薔薇族込みで第二作。果たして当時の荒木太郎は、二十年後にどういふ未来を思ひ描いてゐたのか。
 一面の雪に囲まれ、如何せん抗ひ難い散乱光が日中終始飛び気味ではあるものの、走行中のバスの車内、人形のやうな河名麻衣がなされるがまゝ凌辱される不条理なエロさは、歪んだ琴線を激弾きする。とも、いへ。ひろぽんまではいいとして、小立先生で手数の不足を感じさせ、ヒロ逃亡犯は重用に応へられずほぼほぼ失速。一旦始終が力尽きかけた終盤、四郎以外荒淫に疲れ果てたバスは、終に終点に到着する。とこ、ろが。バスがエンジンを切るや、痴漢バスが轟然と再起動。それまで“ジャスティス”の一言しか発せず、文字通り時計仕掛けに黙々と運転してゐた四郎は、麻衣をバスから救ひだす。素面に吹雪く中、四郎が負ぶつた麻衣に訥々と、決して直線的な表現には至らない愛を囁くシークエンスは紛ふことなく一撃必殺。しかも相ッ当離れた静寂にして怒涛のロングも繰り出し、荒木太郎×小林徹哉が、量産型娯楽映画の枠を易々とブチ壊し、スタージョン・ローをも黙らせる圧倒的なまでのエモーションを見事に撃ち抜いた。にも、関らず。なあんで荒木太郎はそこまで積み重ねた展開を、他愛もない妄想オチ風に畳んでしまふのかな。ピンクに限らず映画史上に―残らんでいいのに―残る蛇の足が李三脚ばりに唸りを上げる、途轍もなく残念すぎて、尻子玉が抜かれさうになる一作、ジャスティス。いかん、四郎の心に開いた穴が伝染つたかも。


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 「SEXアドベンチャー ワンダー・エロス」(2018/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影・照明:藍河兼一/撮影助手:赤羽一真/録音:小林徹哉/助監督:菊嶌稔章・粟野智之/メイク:ビューティ☆佐口/美術:いちろう/スチール:本田あきら/編集:酒井編集室/音楽:與語一平/整音:Pink-Noise/特殊造形:はきだめ造形/タイトル:小関裕次郎/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/協力:Abukawa corporation LLC.・中野貴雄/出演:並木杏梨・真木今日子・桜木優希音・長与純大・池田薫・リリー・小滝正大、五十音順の三十人前後・永川聖二・折笠慎也・山科薫)。出演者中、五十音順の三十人前後は本篇クレジットのみ。
 エッロース!僅かな光の中咆哮する真木今日子のビジョンに、天川真澄(ex.綺羅一馬)とサーモン鮭山を足して二で割つたやうな長与純大が、部屋一面に貼り巡らされた、二次元の嫁々に囲まれたベッドで悪夢風に跳ね起きる。片や公園にて、これで日本チャンプなボクサーのダイナマイト・ジョー(永川)が右もまだしも、とりわけ酷い左ジャブをぺチペチ木に当て練習に一応精を出す。そこに現れた、南洋のアマゾネス島「インラント島」から来日したルシア(並木)は、戦士である旨確認すると、ジョーを多機能トイレに連れ込む。正直ここは、今時のポリコレ的には、感心しない不道徳であるやうにも思へる。どうして然様な些末に一々柄にもなく立ち止まるのかといふと、映画的なスケールを感じさせる画はほぼほぼ皆無―エロスガンに撃たれたジョーが、公園にはふはふの体で敗走するショット程度か―で、とかく今作、骨を折つてロケーションを希求しようとした風情は凡そ窺へない。閑話休題、イッパツ普通に完遂した点に、落胆したルシアはジョーを放置。そんなルシア―姫らしい―をインラント島から、ポチ爺(何か縫ひぐるみみたいな犬種のリリー/声は小滝正大)が諫める。「日いづる国に闇の支配者現れし時、正義のエージェントが光臨する」、ルシアが島に伝はる預言を反芻してタイトル・イン。手首から先状の憑依生物・ゲルド(手動)に体を乗つ取られたジョーは、大雑把なデビルマン風隈メイクでモンスター化する。
 配役残り長与純大と素面あるいは堅気女優部の池田薫は、引きこもりのキモオタ・八波順平とその母・澄江。卓袱台の中に遺影スナップが飾られる国沢実は澄江の亡夫かと思ひきや、順平の祖父、結構再三再四抜かれる。実爺さんが母方なのか父方なのかと、澄江夫の去就は完全に等閑視されるゆゑ不明。澄江が買物に出た八波家を、モンスター・ジョーが襲撃。その場に駆けつけたルシアは、何だかんだしながらも順平に跨ると、すつたもんだ二人声合はせて「セックロース!」。改めて真木今日子は、するとルシアと順平が合体変身する格好の、インラント島預言に謳はれる正義のエージェント、その名もエロス・1。第一声が、必ず「エッロース!」。何時も通りのドヤァぶりを爆裂させる桜木優希音は、衆議院議員・小俣珠代。ドリフ桶よろしく、抜けた底が頭上から降つて来さうな始終の中、途方もない戦歴に裏打ちされた安定感で何気に的確なビートを刻む、山科薫が内閣総理大臣・万栗精士郎。社長程度はザラだらうが、この人史上多分一番出世した役。宰相の跡目で珠代の協力を取りつけ、少子化対策に万栗は射精産業活性化とセクハラの規制緩和、更には生産性のないマスターベーションとコンドームの使用禁止を訴へる、浜野佐知激怒必至の仰天法案を提出する。成立したのかどうかまでは触れられないが、最早ユートピアなのかディストピアなのかよく判らない。折笠慎也は、ゲルドに憑依された珠代が順平とファックロースすることにより爆誕する、こちらは悪のエージェント、ゲルド・1。クリーチャーなフルフェイスの被り物で口元以外顔の全く見えない扱ひを、折笠慎也もよく受けた。そして五十音順の三十人前後は、濡れ場の撮影は許されたのか、ハロー貸会議室にて開かれた総理就任目前の与党幹事長代理の割に、手作り感溢れる小俣珠代演説会の聴衆要員。前の方にゐた周磨要と佐倉萌に太三、最後列付近でウォーリーしてゐる高橋祐太は辛うじてか何故か見切れたものの、予想外の頭数に目を眩まされ、出てゐるとされる若林美保や橘秀樹も兎も角、国沢☆実2013年第一作「家庭教師 いんび誘惑レッスン」(脚本:内藤忠司/主演:早乙女らぶ/今をときめく篠田ゆうピンク初陣)以来で飛び込んで来た、筈の間宮結をロストしたのが何より悔やまれる。あとトレーニング中のエロス1に目を丸くする公園の二人連れが、演出部動員にしては菊りん不在。
 主人公男女がエッサカホイサカ腰を使ひつつセックロース!すると、エッロース!とエロス・1に変身する。ガキ二人がバロムクロスでバッローム!とバロム・1に変身する、特撮テレビ番組―さいとう・たかを先生の原作マンガは、未読につきそもそもバロムクロスの有無から知らん―「超人バロム・1」の、火の玉ストレートなパロディ。要はドルゲを引つ繰り返しただけの、ゲルドのネーミングも火に油を注いで清々しい。万栗の殖産法案含め、馬鹿馬鹿しすぎて誰も広げ―られ―なかつた大風呂敷を、勇猛果敢にオッ広げてみせた国沢実2018年第一作。但し国沢実の限界は、極論すれば両腕のみで完結してしまつたセックロスのアクション。何気にアクロバティックな濡れ場に―時々―気合の入つた冴えを煌めかせる新田栄ならば、たとへば横臥位をアレンジし、絡みそのものでセックロスしてみせた、かも知れない。
 セックロース!とエッロース!、そこだけ掻い摘むと遂に時代を獲る大傑作の予感しかしないにも関らず、さうもならない粒の小ささが良くなくも悪くも国沢実。セックロスがなかなか上手く行かず、ルシアに詰られた順平は俺みたいな役立たずと自虐的に自閉する。登場人物が塞ぎ込み始めると、逆に演出が起動するのは国沢実の、今回は正方向寄りに振れる諸刃の剣。レス・ザン・ナッシングなエロス・1のインナースペース、最終的にルシアと順平が心と心も通はせこぢんまりと結ばれるに至る、ミニマムなエモーション。何はともあれ、出て来る度に一々「エッロース!」と大見得カマす、極大の飛び道具、しかも真木今日子だから途方もなくどエロい。大魚を釣り上げる好機は、幾らでもあつた気がするのだけれど。撮る側の力量と真木今日子の身体能力、どちらが問はれるべきなのか。動かさないのか動けないのかはさて措き、何れにせよエロス・1が、「エッロース!」した後は殆ど動かない。他の名前ばかり挙げ恐縮ではあれ、再び我等が渡邊元嗣ならば、如何にチャチくなつたとてもう少し弾けて呉れたやうにも思へる。順平とルシア双方からこれあれ種は蒔いてゐたにしては、有象無象が右往左往して無駄に犬つころなんて探してゐる内に、結局満足な見せ場のひとつも結実を果たせず。満面の、並木杏梨の笑顔を押さへておかない意味が判らない、ナベに説教して貰へばいい。ついでにルシアが苛烈な宿命に身を投じる方便の、皆の笑顔を守るためだとかの更に前段に控へる、“償ひ”とやらの詳細も完スルー、何を悪さしたんなら。唯一残された希望が、ゲルドが止めを刺されてはゐない、アタシ達の戦ひはこれからだエンド。エロスロッドを工面して来いだなどと到底な無理はいはぬから、今度は玉砕覚悟でカツゲキカツゲキする、捲土重来の続篇が検討されないものか。


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 「終はらないセックス」(1995/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:瀬々敬久/脚本:井土紀州・瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎・坂本礼/撮影助手:佐藤文雄/照明助手:鏡早智/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:細谷隆広・ハラフジ・藤川佳三/出演:工藤翔子・泉由紀子・川瀬陽太・鈴木彰浩・山田奈苗・冨田実希・岡部みゆき・広谷佳徒・小暮明日香・原田久芽・伊藤猛・小林節彦)。
 蝉の音を電子加工したみたいな、謎の音効。ベランダから抜いたカット跨いでカメラが室内に入ると、ベッドの上に、鬼エロい体の女が全裸で横たはる。白シャツの川瀬陽太が、逆光を背負ひホケーッと電車に揺られる、油蝉の接写にスカしたタイトル・イン。地下鉄で通勤する、旅行代理店「レベルワンツーリスト」のOL・マキノ久美子(工藤)がコンビニか個人スーパーで買物して帰宅。直撃リアルタイムの八王子スーパー強盗殺人事件―事件が起きたのが七月末で、今作の封切りが九月末―の、ニュースといふよりはワイドショー寄りぽいテレビを見ながら、久美子は暗い部屋でポケーッとビールを飲む。かと思ふや、尺八を吹く尻のアップが飛び込んで来て、画面奥には吹かれる小林節彦。テレクラを介した、久美子と小林節彦の逢瀬で轟然と濡れ場開戦。枕元では、電話と一体化してゐるのがよく判らないテレコが回つてゐた。久美子は地下鉄から家までついて来た、上司の葉山(伊藤)とも寝る。レベルワンに入つた清掃員の幹生(川瀬)は、久美子が葉山と電話番号を交換したメモ用紙の痕跡から、久美子の電話番号を入手する。恐らく仕事帰り、表の自販機に買ひに行かされたコインランドリーの店内に、洗濯機が回り終るのを待つ久美子と、幹生は一方的に再会する。
 配役残り鈴木彰浩から原田久芽までは、顧客込みのレベルワンと、清掃員隊か。男手が足りないのは、定石的な多分で演出部動員、あるいは協力勢かも。葉山細君の読みが外れた泉由紀子は、幹生が恐らくテレクラで捕まへたか捕まつた女。
 国映大戦第四戦は、前作が川瀬陽太のピンク初陣となる瀬々敬久1995年第二作。瀬々だ井土だといふと如何にもシネフィル~―“フィ”のあとに八分休符を挿む―受けしさうな組み合はせではありつつ、一言でザクッと片付けるとアシッドな一作。ザックリするにも、ほどがある。
 各々持て余す空白が身勝手に飛び交ふありふれたドラマに、この期に及んだ見応へは見当たらない。過去に何処かで観てはゐたのを思ひだすのと、改めて衝撃を受けたのは二度目のコインランドリー、通算三回目に幹生が久美子とミーツする件。久美子が洗濯が終るのを待つコインランドリー店に、幹生も入店。着てゐたシャツ二枚を洗濯機に放り込むと、上半身裸で幹生は久美子に「こんばんは」、「俺のコト覚えてないスか?」。それはねえだろ!下手に狙つた挙句の、大御大越えをも果たす底の抜けたシークエンスに腰骨も粉と砕かれた。その際久美子が貸して呉れたTシャツを、返しに来た幹生を久美子が終に部屋に入れる件も件で、後述する二重の意味含め劣るとも勝らない、もしくは火に油を注ぐ。コバタケにブチ込まれた盗録テープでレベルワンを辞めさせられた、久美子が捨て鉢にシテよといふのに幹生は違ふだだとか、互ひの寂寥を無造作にぶつけ合ふ遣り取りはさながら一種の地獄絵図、棹が萎える萎えない以前の領域で頭を抱へた。止めを刺すのが、幹生がシャツを返しに来る直前に、捻じ込まれる泉由紀子。最終的に話は辛うじて繋がらなくもないにせよ、濡れ場要員の投入で、始終が―よしんば一旦にしても―瓦解するのはピンク映画的には最大の悪手。ラストもそれなりの幻想といふよりは直截に生煮えた消化不良感を残し、工藤翔子×泉由紀子と攻撃的な女優部を擁してゐる割に、裸映画としての訴求力は決して高くない。PG誌主催ピンク映画ベストテンでは当時第三位、あの頃持て囃されたであらうスメルだけは濃厚なものの、所詮は裸を捨て、映画も捕り損ねた一作でしかあるまい。


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 「発情不倫妻」(1991/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:佐野和宏/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:アロンジ・アロンゾ/音楽:遠松孝剛/編集:酒井正次/助監督:山村淳史・小瀬智史/撮影助手:斉藤博・広瀬寛己/効果:協立音響/録音:ニューメグロスタジオ/美術:TOPPI/現像:東映化学/協力:スタジオ・TATOO、ついよし太、原稔、石川章/出演:岸加奈子・水鳥川彩・荒木太郎・上田耕造・伊藤清美《特別出演》・小林節彦《特別出演》・TOPPI・佐野健介・山村まりも・佐野和宏)。撮影部サードの寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。
 陽が差してはゐるけれども、荒涼とした砂浜、油絵具による書き殴りでクレジット起動。クレジットの合間合間はここは8mmなのか粗い砂浜の画像に、同様の公害プロテスト的な雑多なカットが挿み込まれ続ける。クレジットを消化してなほ、公害カット集?が続くのに些か不安がらせた上で漸くタイトル・イン。最終的に公害の“こ”の字も掠らない物語につき、この点を思ひ返すと軽く煙に巻かれる。
 妻子の無理心中を機に―それなり以上に貰つてゐたらしき―サラリーマン生活をドロップアウト、今は画家の佐々木(佐野)が元同僚のヤマザキ(上田)と、佐々木行きつけの小林節彦がマスターのバーにて飲む。但し小林節彦はアテレコ、鼻声に特徴のある人ゆゑ、口を開くと怒涛の違和感が爆裂する。強く誘はれたのか、その夜ヤマザキ家に泊まることになつた佐々木を、ヤマザキの妻・佐知子(岸)は努めて平静に迎へる。佐々木と佐知子は、佐々木妻子の事件以前より不倫関係にあつた。
 配役残り伊藤清美と佐野実子の佐野健介は、寝てゐる一人息子を殺害したのち、風呂場で自害した佐々木の妻とだから息子。手首をカッ切つた血で、ウィリアム・ブレイクの詩の一節を浴室の壁に遺す辺りの面倒臭さが、何となく、もしくはイメージとしての伊藤清美。水鳥川彩は、佐知子の美大を出た妹・ゆかり、何れ菖蒲か杜若の美人姉妹。荒木太郎は同棲してゐるぽいゆかりの彼氏・コージ、目下関係を拗らせてゐる。TOPPIと性別不詳の山村まりもは不完全消去法で、コージに雇はれ―姉に続き―ゆかりを寝取つた佐々木を半殺しにする二人組。その件、録音の問題かも知れないけれどヒャッハーの度が過ぎて、二人組の台詞が殆どどころでなく全く聞き取れないのは間抜けなツッコミ処。それと山村まりもといふのは、現:T-REX FILM代表取締役である山村淳史の変名?
 国映大戦第三戦は「Don't Let It Bring You Down」に惚れ込み早速ランダムチョイスを放棄し佐野二連戦に挑んだ、佐野和宏1991年第三作。ところがこれが、主役は身勝手な男と女が能書と我儘を捏ね繰り回しながらクサクサするばかり。周囲も俗物か声のおかしな小林節彦―とアレな伊藤清美に多分次男―と、何とも似ても焼いても喰へない一作。ある意味、小屋に毛嫌ひされても仕方のない、如何にも国映作といへば如何にもな国映作。反面、何処ロケなのか引いた砂丘の画に矢鱈と固執する辺りは安普請のアート映画―あと佐々木アトリエの、恐らくTOPPIのスタジオ・TATOOは手作りサイバーパンク―じみてゐなくもないものの、要は砂漠をイメージしたにさうゐない佐野とキシカナによる正常位はもう少し寄れよ!といふフラストレーションさへさて措けば、濡れ場は質量とも遜色ない。頭数が足らない分も補つて余りある、超絶の女優部が美麗に咲き誇る足を引くでなく、裸映画的には案外安定する。さうは、いへ。ヤマザキ家泊の翌日、帰宅した佐々木を追ひアトリエを訪ねた佐知子がドヤァと脱ぎ始めて膳を据ゑ、遂に開戦。するや劇伴がズンチャカ鳴り始めたかと思ふと、キシカナの裸身にヌチャーラヌチャーラ絵具を塗りたくり、汚い絡みに突入する煌びやかなまでのダサさには、改めて流石佐野だと感心した。

 とこ、ろで。柳田“大先生”友貴もビックリの驚愕のラストが、砂丘に体育座りでへたり込む佐々木の下に、佐知子が歩み寄る。高さ的に佐知子の太股辺りに佐々木が顔を体ごと預けるロングから、砂と空しかない空間を、何と実に二十秒正パンしてそのまゝ終り。特にこれといはなくとも何もないところにスーッとパンして、何事もなかつたかのやうにまた元のカメラ位置にスーッと戻る。当サイト命名の柳田パンも大概な荒技だが、三分の一分虚空パンにはそれ以上の衝撃を受けた。といふか、異常、もとい以上なのか以下なのか最早よく判らない。但し、あるいは更に。原題インがなかつた点をみるに、もしかすると配信動画には、オーラスまで全部は入つてゐない可能性も残されなくはない。


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 「女子大生 スカートの中」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:杜松蓉子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:冴木直・桜井あつみ・杉原みさお・石神一・白都翔一・坂入正三・朝田淳史)。
 通称“スノー学園”―在学生同士の会話の中では単に“スノー”とも―こと、白雪女子大学の銘板開巻。白女生の亜貴子(冴木)と千浪(桜井)がそこら辺のベンチに腰かけて、暫く大学に出て来ない由香利の話に。由香利は姉夫婦宅に居候してゐるとの設定で、姉要員に板垣有美の顔が浮かんだのは純粋無垢な早とちり。姉宅にかけてみる電話を二人で押しつけ合つて、組み替へる足にタイトル・イン。各個人の携帯電話所有がギッリギリ当たり前でなかつた、時代ならではのアバンではある。
 亜貴子にレポートを書かされるタケシ(白都)が、誘拐されたと助けを求める由香利の留守電に仰天する。一方、その頃シャワーを浴びてゐる亜貴子は早く来た生理に眉を顰めつつ、血は亜貴子の股の間からではなく、天井から落ちて来てゐた。その旨を告げる、亜貴子の尻に血が滴るカットはサスペンス的にも結構な出来であつた、にも関らず。結局上の階のオバサンが、梅漬けの瓶を引つ繰り返しただけとかいふどうでもいいオチには錯乱しさうになる。ねえ、何がしたいの!?その、木に竹も接がない一幕は何のためにあるの!?それなりのサスペンス演出まで繰り出して、何で蛇の足にも満たないエピソードで予め規定された尺を削るの!?意味を解さうとしたら負けなのか、正体不明の敗北感に打ちのめされる。
 兎も角、あるいは気を取り直して配役残り、朝田淳史は、千浪にレポートを書かされるヒロシ。女子大生が、レポートを書かせた男と―課題もそこそこに―セックスする、のが所与の条件として成立してゐる世界観。最早完全無欠、英雄的な天才映画監督と、小林悟を讃へるほかない、自棄起こすなや。再度強ひて気を持ち直し、己を奮ひたゝせ杉原みさおが、一年前の夏、三人で下田に行つた由香利。ツーリング中の石神一の単車に喰ひついた由香利を放置して、亜貴子と千浪は風呂に。その間、軽く二尻を満喫した由香利は、まんまと石神一に犯される。光量はまるでコントロール出来てゐないものの、全裸に剝かれた由香利が木々の中を逃げる画が結構エロい。石神一に中で出されての妊娠疑惑に怯えた由香利は、堕胎費用を稼がうと六本木で夜の街デビュー。酔つたフリしての“抱きつきスリ”―劇中用語ママ―に開眼するも、半ヤクザの柳川(坂入)に捕まり、継続的に手篭めにされるどころか売春を強要されるに至る。斯くもへべれけな転落展開で、映画が暗く地の底まで沈まないのが小林悟は本当に不思議、常に乾いてゐる。
 シネフィルでもあるまいし、国映作づくのもらしかねえなと、息抜きに大御大・小林悟1992年第三作。四の五の野暮な不平を垂れながらも、この人の映画に何だか落ち着く心持ちを感じなくもないのは、絶対にどうかしたか弱つてゐるからにさうゐない。
 今回小林悟が繰り出す、思ひもよらぬ方向から弾が飛んで来るアメイジングな飛び道具が、何と1990年に刊行され何やかや話題を呼んだ呉善花の『スカートの風』。とは、いへ。書名まで挙げ『スカートの風』を切り出しておいて、通俗的未満に他愛ない処女膜談議から、冴木直の「複雑なんだよね」の一言で雑に収束して済ます辺りが、流石の大御大。といふか、よもやまさか公開題がそこから流れて来てゐようだなどと、夢にも思はなかつた。寧ろ小林悟の「女子大生 スカートの中」といふ一作が、呉善花の『スカートの風』をフィーチャーしてゐるかも知れないと考へる方が、エスパーでなければ頭がおかしいかとも思ふが。
 兎に、角。白都翔一と、何故かトメに座る朝田淳史は潔く御役御免で退場した後半。由香利を捜すべく再び下田に入つた亜貴子と千浪が、プリミティブにも由香利の名を大声で呼ぶと、宿の窓から浴衣の由香利がしかも手を振り元気に応へるシークエンスには度肝を抜かれた。大声で呼ぶのかよ!え、呼んだらゐんのかよ!?大wwwww御wwwww大wwwww、この際草でも生やす以外に、もうどうしろつていふんだ、小屋ならリアルに卒倒してゐた気がする。以降は人外のタフネスを大発揮した柳川が、由香利に次いで亜貴子と千浪も連破。それ、なのに。空前絶後の楽天性でヨリを戻すと、改めて『スカートの風』流しの三人仲良く浸かつた湯船にて、TKBで手打ちするラストはグルッと二三周して圧巻、映画をバターにしてしまへ。散発的にしかも果てしなく遠い超俯瞰を繰り出し、柳田“大先生”友貴も大御大のスーパーフリー作劇を補強する。尤もオッパイを三枚並べた布陣は矢張り強力で、裸映画的には水準以上に安定してのける離れ業は、正方向に小林悟なればこそ。同じ純粋裸映画でも、不条理に詰まらないだけの珠瑠美に対し、ベクトルの絶対値―正否は等閑視する―だけは無闇に馬鹿デカい破壊力で楽しませて呉れる小林悟との間には、これでそれでも決して越えられない壁が、幾枚と連なつてゐるのかも知れない。


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 「青春のさゝくれ 不器用な舌使ひ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:大塚学/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:増田秀郎/撮影助手:武藤成美/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:川上奈々美・竹内真琴・美泉咲・細川佳央・櫻井拓也・岡田貴寛・安藤ヒロキオ)。
 公衆トイレの手洗ひで手を洗つた川上奈々美が、顔も拭ひ、鏡で笑顔の練習をする。左から右に流れる、電車の車窓と思しき田舎の風景にタイトル・イン。作りは丁寧だが、タイトルバックの訴求力は薄い。逆に、あへてプルーンな画を狙つたのかな。
 大学生の門脇大智(細川)が、海に近い片田舎の叔母宅を訪ねる。ところが叔母の伊藤小夜子(美泉)は、配偶者ではない門脇の見知らぬ男とニッコニコ親し気にしてゐた。出入りさせてゐる便利屋の、上田義明(安藤)だといふ。大した情報量でもない割に、編集がグッチャグチャで時制が無駄に混濁する序盤を仕方がないのでザックリ整理すると、門脇は恋人の沢村麻利絵(竹内)を他の男(岡田)に寝取られ、恐らく大学を退学まではせず一時的に東京を離れる。消えた門脇を追ひ、後輩の富山千夏(川上)も片田舎に現れ、たまたま帰りの上田に道を教はり伊藤家に辿り着く。一年前の矢張り冬、サークルかゼミか知らんけど、兎も角何某かの合宿で千夏と門脇はそこそこデカい伊藤家を利用。場に馴染めず別室に一人でゐた千夏を、門脇は酔ひ醒ましがてら散歩に誘ひ出す。冬の海を見に行く―門脇的には単なるその場の口―約束をし繋いで呉れた手を、千夏は健気か頑なに覚えてゐた。その件、セミモノクロの色調から、二人の手が繋がれた瞬間フルカラーの色彩がフワッと火を噴くカットは、竹洞哲也らしい繊細なパンチ。散発的に上田を連れ込み絡みの回数を稼ぐ以外には、昼間どころか夜も小夜子―に限らず姿形を一切見せない小夜子の夫も―が一体全体何処で何をしてゐるのか。といふ初歩的だか根本的な謎は豪快にスッ飛ばした上で、門脇は帰れといふのに帰らない千夏を、叔母に見つからぬやう一室にほぼほぼ軟禁する。
 甥と叔母設定の細川佳央と美泉咲が、実年齢は同い年―母方の祖父母が頑張るかやらかしてゐれば、決してなくもない話ではある―といふ地味なツッコミ処はさて措くにしても、通り過ぎられないのが麻利絵役の竹内真琴。三月末で引退した竹内真琴にとつて、黄金週間前封切りの今作が可憐に初土俵を踏んだ国沢実2015年第二作「スケベ研究室 絶倫強化計画」(脚本:高橋祐太)、ビリングに疑問を感じさせるほどの超活躍で今世紀最強の痴漢電車を支へた「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016/監督・脚本:城定秀夫)に続く三作目で、残念ながらラスト・ピンク。と、いひたい気持ちではあつたのだが。全般的にギャルいのみならず背中も汚く、劣化とかぞんざいな単語を使ひたくはないものの、今回映つてゐたのは、少なくとも当サイトが知る竹内真琴ではなかつた。
 配役残り櫻井拓也は、上田が出会つた翌日からのアルバイトを一方的に決めた門脇を、迎へに来る便利屋の従業員・御木本伸介。千夏に、脊髄で折り返した興味を持つ。
 OPP+戦線に於いて山内大輔と無双する、竹洞哲也2018年第二作。原題兼、予告が何故か門脇目線のR15版題が「つないだ手をはなして」で、尺は85分。画期的にブツ切つたラストが、「つな手」も観た方の評によると起承転結を転で端折つた、いはば竹洞哲也が師匠の大御大・小林悟の荒業―兎に角多過ぎて代表例を絞り難いが、とりあへず「小林ひとみの快楽熟女とろける」(1997/脚本:五代暁子)―を継承した格好の代物らしく、さうなるとベルの音に釣られて「小屋に木戸銭落とした客ナメてんのか、この野郎!」とキレる筋合にもあらうところが、案外満更でもない辺りが映画の妙。一度手を繋いだきりのメモリーに文字通りの捨て身で突つ込んで来る千夏と、小夜子ロスも癒えぬまゝ、さういふ晩熟の後輩が鬱陶しくて鬱陶しくてしやうがない門脇。そんな二人による、「何でもいふこと聞きます」とマキシマムに膳を据ゑる千夏を、現に門脇は恣に嬲る。今時にタグ付けするところの肉便器ものは低劣な嗜虐心を激弾きする川上奈々美の持ちキャラにも加速され、細川佳央に対しこの娘に手を上げようものならキルるぞ小僧!とかいふスリリングまで含め、必ずしも悪くない。女に捨てられた御木本の、それはそれとしてそれなりの絶望を千夏が受け止める件も、カッコつけずにもう少し引いて乳尻抜けよといふ不満さへ強ひて呑み込むならば、ピンク映画ならではの名シーン。ついでに竹内真琴はいつそ忘れてしまふとボローンと熟れた、美泉咲のオッパイは激しく悩ましい。事実上ともに濡れ場要員につき、主演以外の番手に意味はない。ブツ切られたラストもラストでショット単体の完成度は高く、画力(ゑぢから)の一点突破で幾許かの一皮剝けた余韻は残す。無碍に処断する議論はひとつの議論として成立し得るにせよ、それもそれで忍びないなかなか複雑な一作である。


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 「性純教師 熱く乱らな吐息」(1998/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川欽也/撮影:中尾正人/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/音楽:OK企画/編集:㈲フィルムクラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:広田淳也/撮影助手:田宮健彦/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学㈱/出演:沢井みづき・西藤尚・西山かおり・河合純・平川ナオヒ・神戸顕一)。OKPが時々仕出かす、物凄く中途半端な位置の脚本クレジットは本篇ママ。
 主演女優と河合純の絡みで開巻、適当に引いて全身を抜いた画にタイトル・イン。補習を終へた高校英語教師の玲子(沢井)に、同僚兼恋人の小泉(河合)が接触。沢井みづきが全体的な小柄以上の小顔につき、河合純の顔面が異様に馬鹿デカく見える。小泉からの食事の誘ひはテストの採点と断つた玲子を、生徒のカワカミ舞子(西藤尚/ex.田中真琴)が神妙な面持ちで待ち受ける。舞子が落とした定期は兎も角学生証を、拾つた相手から取りに来いといはれてゐる。とかいふ聞くから怪しげな話を、挙句妙に切羽詰まつて切り出す舞子を疑ひもせず、玲子もほてほて同行してそこそこ豪勢な及川邸に。そこでオールバック×赤シャツ×咥へ楊枝で颯爽とフレームに飛び込んで来る我等がナオヒーローが、当の拾ひ主・川田(平川)。弾けさせるビート感に加へ、舌をマッキマキにキメるチンピラ口跡も堪らない。返して欲しくば「俺と寝りやいいのさ」と最短距離の内側で肉体交渉を求めて来る川田に対し、助けを呼ばうとした玲子が応接間を飛び出しかけると川田の兄貴分・及川(神戸)がノッペリ大登場。あれよあれよと身代り流れで玲子が真珠入りの及川に手篭めにされる一方、応接間では案の定川田と通じてゐた舞子が、あつさりとテヘペロする。小川欽也がしばしば繰り出す、逆に衝撃的なくらゐ早々に姦計を割る気前のいい無頓着。
 配役残り、大概時機を失した終盤に漸く登場する西山かおりは、舞子同様、及川が仕切るデリヘルの嬢・ミサ。真珠に惚れ込み、社長である及川に抱いてと迫る雑な顔見せが、グルッと一周して清々しい。あとメイビーだけど、玲子が飛び乗るタクシーの、運転手の声が多分小川欽也=水谷一二三。
 三作前から名義が欽也で固定される、今上御大・小川欽也(a.k.a.小川和久)1998年最終第五作。舞子が玲子もデリに引き込まうとするなり、高校時代モノを馬鹿にされ真珠を埋めた因縁の女教師の面影を、及川は玲子に見る。思はせぶりな会話で投げた伏線といふほどでもない含みを、回収してのけるのはオガキンにしては驚愕の上出来。いや、虚仮になんてしてないしてない。直截にいふと、それどころでない。未成年で下手を打ち要は性純教師を売つた舞子を、玲子がケロッと赦すアメイジング展開もさることながら、婚約指輪を手に小泉が訪ねて来る最中、何だかんだ真珠に溺れなくもない玲子宅に、及川が遂に乗り込んで来る。残り尺もあと―本当に―僅か、そのまゝその場に出くはした小泉は、御丁寧にもフローバック描写まで噛ませた上で踵を返し、床に落ちた指輪に“終”。だなどと、無造作に極大のバッドエンドを叩き込む後味の悪さ、さへさて措き。今作最大のツッコミ処は、繋ぎのカットで玲子が寝転んで読んでゐるのが、まさかの『ライ麦畑でつかまへて』。それは何か、沢井みづきが持ち歩いてゐた私物なのか?当然勿論いふまでもなく、サリンジャーの“サ”の字の子音のSさへその後の展開に一欠片たりとて掠りもしない最早圧倒的なまでの天衣無縫さには、クソだと痛罵してクソ以下の映画を撮つた小泉剛も吃驚だ。


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 「変態テレフォン☎ O・N・A・N・I・E」(1993/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督・脚本:佐野和宏/企画:朝倉大介/撮影:斎藤幸一/照明:本吃度陽典/編集:酒井正次/助監督:梶野考/演出助手:山田菜苗/撮影助手:斎藤博/効果:協立音響/現像:東映化学工業/録音:ニューメグロスタジオ/協力:水上荘・アウトグロウ・福島清和・青木宏将・吉本直人/出演:岸加奈子、高木杏子、梶野考、佐野和宏、上田耕造、セニョール・ヨネ、今泉浩一、佐野竜馬、佐野健介、津崎公平)。
 風音に“この物語はフィクションである”開巻、「Don't Let It Bring You Down、Don't Let It Bring You Down・・・・」と原題を性急に呟きつつ、ボコられた梶野考が駆けて来てタイトル・イン。この期にぽく改めて感嘆すると、佐野は本当にニール・ヤングが好きなんだな。
 私的に飛行機を飛ばした不祥事に絡み、副操縦士から地上勤務に降格された航空自衛官・沢野か澤野(佐野)が、妻の美奈子(岸)を連れ線路を走つて逃げる。後をある意味判り易く黒尽くめの、進藤か新藤(上田)と部下のセニョール・ヨネが追ふ。何某かの機密書類を握る沢野を見失ふも、進藤は十六年同じ釜の飯を食つた余裕を窺はせる。進藤と沢野が二人ともチェリーの煙草―ただ進藤がのちに自販機で買ふのは、ハイライトぢやないか?―を繋いで、森の中の沢野と美奈子。逡巡する沢野に対し美奈子が恐怖を訴へると、逆パンして棒立ちの不自然な体勢での青姦突入。したかと思ふや即座に今度は正パンするゆゑ、何事かと目を疑ふが単にカットを無駄に跨いだだけ。濡れ場をよしとしない、業態的には不誠実と変らぬ青臭さがなせる業なのかも知れないけれど、“大先生”柳田友貴スレッスレの唐変木なカメラの動きには苦笑する。一方、一息ついてヨネと瓶ジュースを飲んでゐたところ通りすがりの女(山田菜苗?)とミーツした進藤は、女物のパンティで口を塞ぎ女を殺す。
 沢野と美奈子が目指すのは、二度目の発作に見舞はれた義父(津崎)がいよいよチェックメイト寸前の美奈子実家。因みに美奈子実家の、内部が御馴染水上荘、外観は別ロケ。俳優部残り、津崎公平の顔見せ―終始掛け布団に覆はれない顔しか覗かせないが―と、野球のボールがスローモーションで放物線を描く8mm映像を挿んで、「う・ひ・は、へんてこりん」と「トリオ・ザ・3バカ」の日本版限定テーマ曲を歌ひ歌ひハンドルを握る梶野考は、自作8mm映画の上映会で津々浦々を旅する一人キャラバン野郎・タカヒロ、以後うひは。高木杏子は津崎公平の枕元で大好きなニール・ヤングを聴きながら、電話をかけて来た彼氏・ター坊(声の主不明)の求めに応じテレフォンセックスに興じる、美奈子の妹・エリコ。そしてうひはもエリコ彼氏の線も潰へたとなると、いよいよ配役が読めなくなつた今泉浩一が、沢野の監視をヨネに任せ宿に入つた進藤が呼ぶ、馴染の女装男娼。ヘテロの組み合はせ以上に情熱的な、上田耕造と今泉浩一による薔薇の花香る一戦。爆撃的な音効と挿み込み続ける雑多な映像で闇雲に盛り上げた挙句の果て、完遂に至る〆にはボガーンとポップな爆発音を入れてのける、最新作に於いても健在―娘がカラオケで荒れる件―な破壊的センスが実に佐野。正しく佐野、佐野・オブ・佐野。そして、あるいはそんな佐野実子の竜馬・健介兄弟は、劇中設定では沢野の姉に預けて来た、沢野と美奈子の息子・ゼムセルフ。
 国映大戦第二戦は、前年の「痴漢電車 いけない妻たち」(脚本・監督:瀬々敬久/主演:岸加奈子・伊藤猛)に続き『PG』―前身の『NEW ZOOM-UP』―誌主催ピンク映画ベストテンの第四位を受賞した、佐野和宏1993年第一作。お断りといふほどでなく正直にいふが、都度都度何を見るかは、ど・れ・に・し・よ・う・か・なレベルのその時気分で完全適当に選んでゐる。
 まさかの三分残り尺を余してクレジットに突入した際には軽く度肝を抜かれかけたが、後述するクライマックスから完奏する、友部正人の日本語詞「ラブミーテンダー」―全体何故この選曲なのか―に乗せ、8mmで撮影した佐野親子三人のキャッチボール風景と、わざわざ原詞と日本語訳とで「Don't Let It Bring You Down」のサビ部分を各一枚クレジットで打つに及んでは、グルッと一周して呆気にとられた。この頃佐野は離婚してゐたらしく、ほんなら何か?“へこたれてしまつちやだめだよ”。いやしくも量産型娯楽映画のフィールドで、佐野和宏は己を慰めるか百歩譲つて鼓舞するために映画を撮つてゐたのか。実に佐野、正しく佐野、佐野・オブ・佐野。
 「いけ妻」の影響下にあると看做されても仕方のない、自衛官が追ふか追はれるポリティカルな物語は、「いけ妻」よりも更に一層実も蓋もない形で、個人が組織なり体制に力なく抹殺されて終る。そもそも所詮は演出部な梶野考のうひは造形は画期的に鬱陶しく、頭数から不足した女の裸は正真正銘言ひ訳程度で、当サイトも五年前なら「てめえ、裸映画虚仮にしてんのか!」と脊髄どころかチンコで折り返して激昂してゐたやうな、気もすれど。
 うひはのライトバンをヒッチハイクして早々、沢野は実機かレプリカなのかまでは兎も角、航空機が露天展示される博物館に車を止めさせる。傑作練習機T-34メンター、日本名「はつかぜ」を愛でる形でその時点では正体不明の外堀を幾分か埋めた上で、沢野は美奈子の肩を抱き「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。そもそもメンターは音速出ないよ、さういふ無粋な輩の口は進藤にパンティで塞いで貰ふとして、「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。こんなダサい台詞、カッコよく撃ち抜けるのなんて佐野しかゐまい。全ッ力で感動した、小屋で観てゐたら多分ボロ泣きしてゐたにさうゐない。「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。なんてダサくて、そしてそれを撃ち抜く佐野はカッコいいんだ。うひはの8mm映画を、「それにしても酷い映画だな」と匙を投げる沢野に対し、美奈子が「でも時々映る空はとつても綺麗よ」とクソの足しにもならないが擁護する一幕も噛ませての、超絶怒涛のエモーションが爆裂するクライマックス、本来ならば。キチンとした画を作る能力も兎も角袖がなかつた節ならば当然酌めぬではないにせよ、如何せん暗くて近くて、判り辛さは否めない。沢野がプリミティブ極まりなく記録した“証拠”も、結局起動さへしない。限りなく零点に近い裸映画以前に、素の劇映画的にも至らない点ばかり多々見当たらなくもない、にせよ。偶さか俺が万事にくたびれてゐる年頃につき、といつてしまへばそれまでかそれだけの話でもあるものの、佐野が自分で自分の背中を押した今作に、背中を押されるサムシングを感じたことも認めざるを得ない。たとへそれがバッピに劣るとも勝らない棒球であつたとて、ど直球の“へこたれてしまつちやだめだよ”。ピンクとしては明白に駄目で、いい映画では必ずしもないとしても、憚らずにいふが大好きな一作。ランダム縛りを早速放棄して、次も佐野見るかな?


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 「フェチづくし 痴情の虜」(2018/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:髙原秀和/原作:『フェティッシュ』坂井希久子/原作協力:特選小説 綜合図書/撮影監督:下山天/撮影協力:森川圭/音楽:野島健太郎/照明:ガッツ/録音:田中仁志/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック/助監督:加藤義一・江尻大/出演:『噛』涼南佳奈・櫻井拓也・酒井健太郎 『声』NIMO・那波隆史 『匂』榎本美咲・重松隆志・竹本泰志・森川凜子・大迫可菜実・竹内まゆ 高瀬将嗣・長谷川徹・石川均・舞原賢三・金田敬・日笠宣子・山本俊輔・国沢実・小池浩・畠山健一・坂井希久子・亀田彩香・星野宏美・宮下涼太・水越嗣美)。出演者中、森川凜子以降は本篇クレジットのみ。
 ど頭はR18+、加藤映像工房ロゴはスッ飛ばし、原作クレジット開巻。榎本美咲・涼南佳奈・NIMOの順で、「アタシの欲望の扉は・・・」と各々モノローグを繰り返す、コマーシャル風なモノクロのアップを連ねてタイトル・イン。とこ、ろで。NIMOとかいふ変名ぽさも漂はせる形式三番手は、実際その検索し辛い名義で活動してゐる前二人と同様AV部。
 通販会社の宣伝部に勤める瀬田美夕(榎本)と、同じ部署ではないが同期の小森美晴(涼南)が、専ら御馴染高円寺の居酒屋「馬力」にて女同士のサシ呑み。そこにクレーム対応担当の水野晃(那波)と、美夕らの後輩で、美晴にとつては直属の部下となる滝川勇気(櫻井)が現れ、挨拶を交し別のテーブルに着く。既婚者の美夕に対し、三年の社内不倫も経ての美晴は未だ独身。短い何だかんだを経て、二人が“人それぞれ”と何の結論にもなつてゐない着地点にとりあへず落ち着いたタイミングで、第一話―はクレジットされない、以下同―のタイトル“噛”が改めてタイトル・イン。不倫相手で課長(当時)の鹿山茂明(酒井)に美晴は行為の最中噛むやう乞はれ、応じてゐるうちに、自ら男の体に歯を立てる行為に快楽を覚えるやうになる。鹿山と別れて久しく、次第に噛む飢ゑに苛まれた美晴は、セフレ的状態にある滝川―滝川の中では普通の交際関係―に、噛みたいと真情を吐露してみる。その件、櫻井拓也の背中越し滝川の右肩に齧(かぶ)りついた美晴は、もうひとつの手で抱き締めるやう求める。のを、折角熱の籠つたシークエンスなのだから、一手間割いて今度は涼南佳奈の背中越しに、美晴の激情に応へる滝川の左腕を押さへればよかつたのにと、素人考へではあれ軽く過る。実際の画角では、抱き締めるも何も左腕の動きさへ映らない。更に一層特筆すべきなのが、後述するNIMO共々、一話限りで御役御免の酒井健太郎。顔とメソッドに発声、何もかもが徒か過剰に濃く映画のカットの中では下卑てしか見えない。酒井健太郎が本来は舞台を主戦場とした、演劇畑の人なのではあるまいかと訝しんでゐたところ、必ずしもさういふ訳でもないみたいで、なほかつ那波隆史・森川圭・重松隆志と同じく、芸能事務所「STRAYDOG」所属であつた。
 第二話“声”、四十五歳の誕生日祝ひの準備を全ッ力でしたにも関らず、水野が仕事先の長野から雪で帰京出来ない旨の連絡に、同棲してゐるのか否かは微妙に判らない田所由美(NIMO)はアヒル口を尖(とん)がらせる。由美と水野のミーツは、ずばりクレーム対応。由美が通販で買つた皿が、初めから欠けてゐた。至らない担当者(CV:森川凜子)の対応に由美がキレかけた電話に介入した水野は、こゝも、あるいはそもそも不自然だが一人暮らしの女宅に自ら新品の皿を持参する。
 第三話“匂”、帰宅した美夕が家内に違和感を感じてゐると、居間で本を読んでゐた夫・勝男(重松)からは、もつ鍋でも食べて来たのかと尋ねられる。てつきり美晴と馬力で舌鼓を打つて来たのかと思ひきや、美晴は宣材の撮影で出会つたカメラマン・宮本賢太(竹本)と、美晴に語つた劇中台詞ママで“Bまで”致して来たところであつた。匂ひフェチの美夕がよろめいたにしては、全体宮本は如何なる体臭の持ち主なのか。美夕のベクトルないし琴線が、拗れてゐるのだとしたらそれまでの話だが。配役残り、森川凜子以下三名はその他宣伝部要員。高瀬将嗣以降は映画監督を大量動員したとの、ラスト・ショットは店中一斉の乾杯で賑々しく幕を引く馬力隊。
 加藤義一とはどういふ縁なのか、「ロリ色の誘惑 させたがり」(2005/監督:高原秀和/脚本:永元絵里子/主演:綾瀬つむぎ)以来実に十三年ぶりとなる、まさかの髙原秀和ピンク復帰作。2008年のオール讀物新人賞受賞時、現役SM嬢であつた飛び道具エピソードで名前を打つた女流官能小説家の原作を得、三本柱銘々の性的嗜好を軸に据ゑた、最後も締める馬力で美晴は滝川との交際を美夕に報告し、水野も水野で―由美との―再婚を報告する程度に、緩やかに三話がリンクするオムニバス篇。髙原秀和のピンク復帰に関して、“まさか”と筆を滑らせたのはほかでもない。当サイトは「ロリさせ」の時点で既に、二十年選手の癖にどうしやうもない髙原秀和の青より青臭い生硬さは、生れ変つても抜けぬにさうゐないと匙を投げてゐたのだ。あに、はからんや。一旦戦線撤退の翌年に旗揚げした、主宰劇団「lovepunk」の歩みをも含む三十三年の月日は流石に伊達ではなかつたのか、かつて強靭であつたぎこちなさはすつかり影を潜め、かといつて、物語の面白さなり撃ち込んで来るエモーションの重さを感じさせる、でもなく。書き言葉と聞き言葉の違ひもあるにせよ、わざわざ官能小説を原作に戴いた割には思ひきりプルーンなナレーションがよくいへば淀みなく、悪くいへば淡々と進行する、撮影部の手堅さが諸刃の剣スレッスレの、小奇麗なばかりのトレンディな裸映画であつた。尤も、水野の声に一目もとい一耳惚れした由美は玄関口でモーニング・ボイスを録音させて貰ひ、しかも社内で初対面の取引先であつた勝男に、美夕は私にとつてはいゝ匂ひだと破天荒な内角モーションをガンッガン投げ込んで来る。坂井希久子の所為なのか高原秀和がやらかしたのか、大穴を開けておかしくない大(だい)で済まない超飛躍は所々際立つ。とは、いへ。全員普通に若くて美人な、女優部に穴はない。扱ひは均等でビリングの序列に実質的な意味は極めて薄い反面、企図したものか単なる不作為の偶然か、三話を通してオッパイが徐々に大きくなつて行く構成の妙には、映画の神の祝福が透けて見えなくもない。酒井健太郎のトゥー・マッチを除けば阻害要因も見当たらない濡れ場は質量ともひとまづ申し分なく、フラットに女の裸を浴びる分には、満更でもない一作。アクシンデンタルに抹殺された荒木太郎を筆頭に、旧来のローテーション監督が外様に駆逐されて云々。残りの選択肢はほぼほぼ潰へ、いよいよ大蔵の腹積りひとつで何時終に詰んでもおかしくない最中、かういふ缶コーヒー業界でいふところのアメリカンな映画を撮る意義かんぬん。銀幕の中ながら可愛い女の子の―下―心を弾ませる乳尻を前に、その手の無粋な野暮如きさて措いてしまへ。


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