レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

星間商事、銃口、もつれた蜘蛛の巣

2009-09-27 07:20:41 | 
 私は、タイトルをカッコでくくらない書き方嫌いなのだけど、短くするために「タイトル」部分では敢えてこうすることがある、

 ひとつきくらいの間に読んで面白かったもの。


三浦しをん『星間商事株式会社社史編纂室』
 会社員川田幸代29才、放浪癖のある恋人がいる。社史編纂室というほとんど窓際のようなヒマな部署にいるが、オリジナルやおい同人誌で小説をせっせと書いている。その活動を知った室長が、我々も同人誌をつくろう!と言いだして、書いてきたヘンテコな時代劇もどき、しかしそれには社の闇の歴史が隠されていたのだった。
 コミケに縁のある者ならば、あるいは関心のある読者ならば、ところどころの講釈にうんうんとうなずいたり笑ったりできるだろう。作中にはさまれる小説中小説も、作者のいろいろな顔(やおい、お笑い、ロマンティック)を発揮している。


三浦綾子『銃口』
 昭和の終わりで幕を閉じるという点で『緋の稜線』を連想した。
 北海道旭川、昭和の初年。良心的な質屋の家に育つ北村竜太は、誠実で信念に満ちた担任の先生に感化されて、自分も教師の道を選ぶ。しかし時代は思想・言論統制が重くのしかかって、恩師は特高警察に捕まって命を落とし、竜太自身も戦地へおくられる。
 幸い、軍隊でもわりあい周囲にいい人が出てくるので、それほど読んでつらくはない。

 ああそれにしても、思想弾圧とは忌まわしいものだ。(だからこそよけいに、「言論の自由なんぞくそくらえ!弾圧しろ!」と言いたくなるような一部の輩ーー痴○サイトだの

 
モンゴメリ『もつれた蜘蛛の巣』
『赤毛のアン』が有名なカナダの作家L.M.モンゴメリの単発作品で、去年『青い城』が角川文庫で復刊したとき、こちらも予告されていたけどようやく実現。
 プリンス・エドワード島のペンハロウ家とダーク家とは長年にわたって縁組をくりかえしていて、実にこんがらがった家系図になっている。その長老であるベッキイ伯母は先が長くないとみて、家宝の水差しの相続人を言い渡そうと一族を招集する。
 たくさんいる親族にはそれぞれキズもアラもあり、いちいちそれに嫌味をたれるベッキイばばあが憎らしいのなんの。でもそれなりに魅力がある・・・のかなぁ、ううむ、リアルで存在感があるのは確か。
 若者の一目ぼれの局面が2種類登場し、片方は、紆余曲折の末にハッピーエンド、もう一つは悲喜劇。ちょっと少女マンガのお約束展開もあり。
 夢見がちなオールドミス(死語)マーガレットの幸せがほほえましい。月を「レディー・ムーン」と呼んで崇拝する変人「月の男」も注目に値するキャラクター。
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2 コメント

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モンゴメリー (加代子)
2009-09-30 17:22:47
中学の頃「赤毛のアン」に夢中になり
クラスの女の子と回し読みで全巻読破。
モンゴメリーの名前が懐かしいです。
「もつれた蜘蛛の巣」、面白そうですね。
お勧めです (レーヌス)
2009-09-30 19:45:26
 私は高校生のときに、邦訳された作品を読破しました。
 『もつれた蜘蛛の巣』や『青い城』も楽しいですよ。角川なのですばやく買うことをお勧めします。
モンゴメリとかオルコットとか、昔の少女マンガにも影響が見られますね。

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