レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

エーリンナ セラクリ3

2018-04-27 10:32:43 | マンガ
「ツイ4」で連載された『うたえ!エーリンナ』by佐藤二葉 の単行本が出た。
「うたえ!エーリンナ 単行本」
 サッポーといえば男尊女卑の古代ギリシアで名を残す唯一の女詩人として知られているが、このマンガのエーリンナも実在する人を元にしていることをあとがきで知った。サッポーのもとに集まる少女たち、多くは花嫁修業の一種と思っているが、エーリンナは嫁に行きたくはなく、詩人を夢見て精進している。サッポーの友人であるやはり詩人のアルカイオス(男性、実在)の弟子の美少年リュコスと初対面からケンカするラブコメお約束展開、でもこのマンガ内ではそれらしい発展はあまり見せない。エーリンナは天然ボケだけど、女とあなどられると黙ってない。リュコスの美貌に動じた様子はなく、歌のほうをほめている点はたぶんリュコスにとっても新鮮だろう(父の客人に、美しいと言われているときにむしろ残念そうな顔をしていたが、歌のことをきかれて嬉しそうに答えている)。二人がホメロスのセリフを使って応酬しているのは清少納言のようでかっこいい。
 仲間が結婚のために出ていって淋しがっている親友に
「私はあなたの時間を歌にとどめておけるような詩人になるわ
バウキスがいつか結婚してこの自由時間(スコーレ)が終わっても思い出がずっと残るように
私たちが死んでも千年も二千年も私たちの楽しい時間が残るように!」
 『むかし・あけぼの 小説枕草子』の好きな人にはお勧めしたい。
 少女たちの絆という点に注目して『セーラームーン』の好きな人にもぜひ読んでほしい。


 ところで、『セーラームーンCrystal』のシーズン1と2(旧作の「無印」と「R」後半、または「ダーク・キングダム編」と「ブラック・ムーン編」にあたる)はニコニコ動画で見られたが「3」はテレビ放映なので見ていなかった。このほどツタヤでようやく見た。アニメ旧作では「S」、「デス・バスターズ編」にあたる。

「セーラームーンCrstal ED OP」

 EDに度肝を抜かれた。そもそもこのパートは、ウラヌス&ネプチューンまたは天王はるか&海王みちるの百合カップルが大人気だったのだが、ED『eternal eternity』でもそれが堂々と描かれている。13回の放映の中で3種類のEDが使われて、2つめはちびうさの歌である『乙女のススメ』元気いっぱい。3つめはタキシード仮面、この絵もけっこうあやしさ狙っている。そして最終回でたぶん一番人気だったであろう初代で閉めた。

 これの最終回ですでに第4部(「デッド・ムーン編」)の始まりにつながっている。続きは劇場版だそうだ。映画館までは行かないけど見たいとは思う。
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『マタ・ハリ伝』

2018-04-20 06:04:12 | 歴史
サム・ワーヘナー『マタ・ハリ伝』 えにし書房

 「女スパイ」の代名詞である「マタ・ハリ」、本名はマルガレータ・ツェレ、オランダの裕福な商人の家に生まれたが、破産のため一家離散。スコットランド人将校と結婚してマクラウド夫人となり一男一女を生む(息子は幼くして死亡)が離婚。インド舞踊の踊り手という触れ込みでスターとなる。多くの将校たちとつきあうことを利用して情報を得たと言われ、ドイツのスパイとして1917年、フランスで銃殺刑に処された。
 彼女については謎が多く、実際のところたいした働きではなかったはずとは古くから指摘されているだろう。
 そしてこの本では、フランスの諜報機関からスパイの話をもちかけられていて、その後彼らの見込み通り、ドイツからの話もあったが、彼女は敢えて無意味な情報しか渡していない(かつてベルリンで高価な毛皮を押収されたのでそのぶんを取り返してもいいと思ったと本人の弁)、しかしフランスの士気低下していた時期、スケープゴートとして彼女は死に追いやられたーーというところである。
 かなりの虚言癖があり浪費家で無思慮な点があったことは事実のようである。でも舞踏家として(もともとあやしいものとはいえ)いろいろがんばっていたのだということも印象に残った。

 ところで、私が「マタ・ハリ」を知ったのは、別冊マーガレット掲載の『暁の眼の娘』by市川ジュン だった。その影響で、当時小学5年生だった私にとって文庫本とはまだムズカシイものという認識だったのだが、角川文庫『世紀の女スパイ マタ・ハリ』byカート・シンガー なんて本を読んだ。
 しかし上記のワーヘナー本では、過去に書かれた本をいろいろと俎上に載せており、カート・シンガーもまた多くの虚構があるという。
 私はシンガー本について詳しいことまで覚えていないのだが、『暁の眼の娘』では、マタ・ハリは離婚のあとインドネシアの富豪と結婚、いや結婚とまではいかなかったかもしれないが、その間に一女を産み、それがこのマンガの主人公の「バンダ」(「インドネシア語の「平和」)、サラ・バンサワンと名乗ってフランスで母の復讐を謀る物語であった。
 しかしワーヘナーによるとこの「バンダ」は創作だという。マクラウドとの間の娘の「ノン」はかなり若死にしている(写真ではまったく美貌ではない)。「バンダ」は、日本のスパイになり、「インドネシアの愛国者となって韓国で中国共産党員に射殺」されたとシンガーは書いているそうだ、私が読んだ子供向け本では、アメリカのスパイになって日本軍に処刑されたと書いてあった記憶があるのだが。
 ほかの点からしても、市川ジュンさんはシンガー本を典拠にしたと思えるのだけど、でも『世紀の~』は70年に出ている。『暁の眼の娘』は75年。「構想7年」と書いてあったのが計算合わない。ほかにも類似本があったのだろうか。


 「歴史」話題と言うほどでもないがもう一つ。

 新聞広告で知って『のらくろ』アニメのDVDを購入して以来、「映像と音の友社」から宣伝が来るようになった。
 「歴史を創った偉人たち」DVD10枚組
その内容が
マリー・アントワネットの生涯(1983)
女王エリザベス(1939)
ヘンリー八世の私生活(1933)
メアリー・オブ・スコットランド(1936)
ヘンリィ五世(1944)
キング・オブ・キングス(1927)
ジュリアス・シーザー(1970)
クレオパトラ(1934)
暴君ネロ(1932)
ジャンヌ・ダーク(1948)

・・・・・・「偉人」でくくるには無理すぎるメンバーが多いぞ。 

 同じ冊子に、映画『ベルばら』も載っている。
「なんとベルサイユ宮殿で撮影」--それだけが話題。「オールフランスロケで実写化した超大作」--2時間程度で超大作と言うのだろうか。「フランス政府から特別に特別にベルサイユ宮殿での撮影を許可され」--その甲斐があったとは言えない。「豪華さと重厚感にあふれたこの上ない世界観をもたらしている」--重厚ではない、軽い! 「原作の名場面を見事に再現している点も見どころ」---どこがだ!
コメント (2)
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コロッセオの誤解 来年(?)の新刊情報

2018-04-15 07:03:23 | ローマ
 「NHKクラシック」
教育テレビ、いやEテレまたはNHK総合またはNHK・BSプレミアムで放送する「名曲アルバム」。ずいぶん長いこと見ているし、録画もしているので、当然ながら、去年も見たというものはたくさんある。どうせ保存するディスクは違うのだし、同じものがあってもかまわんけど。
 レスピーギ『交響詩 ローマの祭り』 これは少なくとも私は初めて見る。 
 以下、画面のナレーション。

 永遠の都ローマ。
 イタリア近代の作曲家レスピーギはローマの歴史を音楽で表現した。
 『ローマの噴水』『ローマの松』に続く三部作最後が『ローマの祭り』。
 その第1曲『チルチェンセス』は古代の円形競技場の残酷な祭典がテーマ。
 音楽が表現するのは血を求めて歓声を上げる群衆 
 そして猛獣のうなり声と殉教者たちの祈りである。
 紀元80年に建てられたコロッセオは5万人以上の観衆を収容する大競技場
 ここで、猛獣と人間の戦いが見世物にされた。
 皇帝ネロはローマを襲った 大火をキリスト教徒の仕業にした。
 そして処刑のために彼らを競技場に引きずり出し猛獣たちの餌食にしたという。
 皇帝を拝礼しないキリスト教徒はその後も弾圧を受け続けた。
 しかし313年ついにローマ帝国がキリスト教を公認
 ローマにはカトリックの総本山聖ピエトロ寺院が建てられ
帝国の崩壊後も信仰を集めて栄えた。
 遠い昔の殉教者たちに思いをはせつつ今日も多くの人々がローマを訪れる。

 引用終わり。この説明の間ほとんどコロッセオが画面に映っている。
(コロッセオ前の白い箱(?)にウェスパシアヌスの顔が描かれているのはなんだろうか。ラテン語で「神君ウェスパシアヌス」と添えてある)

 「紀元80年」とは書かれていても、ローマの大火とキリスト教徒虐殺が64年だったことなんてこれを見た人の大半は知らないだろうから、コロッセオで行われたかのような印象を持ってしまうに違いない。ありがちな間違いではあるが。


 これに比べれば罪のないことだけど、
 
何年も前、カエサルに関しての番組だったか、カエサルが兵士の糧食に気を配ったという文脈で、専門家が「カエサルはとても洗練された人でした」と語っていた。これだと、カエサルがグルメだったみたいに誤解されるよ、とひっかかった。


追加。これの前の記事に添えられた、常連サラさんのコメントから、ローマ寄りの情報なのでこちらに移します。

鬼が大笑いしそうな、早くて来年、遅くなったら再来年の話です。
John Williamsの「Augustus」邦訳が出るみたいです(作品社のツィッターへリンク↓)。

https://twitter.com/sakuhinsha/status/984590548911575040

わたしの記憶では、John Williamsの「Augustus」は、書簡とか日記形式で、リウィアは悪女よりの描き方だった気がします。夫(アウグストゥス)側の言い分では、当初の愛は冷め、政治的なパートナーとして暮らしてるとか。あと、ユリアについての描写にページを割いていたかと。

英語なので理解に粗があると思います。

とりあえず、アウさん本が出ることを喜びます。
「新しい邦訳情報」

引用終わり。
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許されざる者 貧乏お嬢さま

2018-04-06 05:41:42 | 
『許されざる者』 レイフ・GW・ペーション
 創元推理文庫のわりあい新刊。スウェーデン製。
 引退した国際犯罪捜査部の凄腕長官ヨハンソンは脳梗塞で倒れた。やや不自由な身になった彼に担当医が打ちあけ話をする。牧師だった死んだ父は、25年前の幼女殺害事件の犯人を懺悔できかされて苦しんでいたという。しかし事件はもう時効になっている。それでもヨハンソンは捜査を始める。
 安楽椅子探偵の一種であり、キャラの立った物語でもある。
 解説によると、作者のそれまでの作品の重要キャラがぞろぞろと出ている「白鳥の歌」的位置付けらしい。(故人ではない、作家活動の一区切りという意味で) それらが訳されたら読みたいと大いに思える読み応えであった。

『貧乏お嬢さま、ハリウッドへ』リース・ボウエン
 「英国王妃の事件ファイル」という小文字タイトル(私の造語。小さい文字で添えられているシリーズ名)はついているけど、今回はその王妃(ジョージ5世妃メアリ)は登場しない。
 ジョージィの母クレアはドイツ人の恋人と結婚することを決意し、そのために現・夫との離婚のためアメリカのリノへ行くことにする。そのお供としてジョージィも船に乗り込むが、怪しい事件に遭遇するし、母(元女優)は映画監督に勧誘されて乗り気になり、リノ行きのまえにハリウッドへ、そこでまた例によって殺人が起きる。
 ジョージィのタフさもだけど、悪友ベリンダのちゃっかりぶりにも感心する。

 いま、地元図書館では恒例の蔵書点検のための休館中。たっぷり借りてある。次が待っていて「早く読め」状態(#)のは上記『貧乏お嬢さま~』(「英国王妃の事件ファイル」の名よりも「貧乏お嬢さま」と呼ぶ読者のほうが多いんじゃないか?)はもう読んだので返せる。
 E.T.A.ホフマン『牡猫ムルの人生観』は他市から借りたので延長不可という理由で優先順位が上。
 集英社文庫の「ポケットマスターピース」はおいおい読破するつもりだけど、いまは「フローベール」を借りてある。カルタゴが舞台の『サランボー』が抄訳で載っているので楽しみだ。

#アニメ『のらくろ』で、伝書鳩がえらそうに「早く読め」とそっくりかえっているさまがおかしかった場面があるのでそれを念頭においている。通じる相手がいないので使うのが適切かどうか。
コメント (3)
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エーリンナが単行本化 劉備徳子

2018-04-01 06:34:18 | マンガ
『劉備徳子は静かに暮らしたい』仲野えみこ

 ララ連載で「花とゆめコミックス」既刊3巻。まえにも言及したことはある。三国志で転生で学園ラブコメ。『アリーズ』同様、なんでそろって日本人になってるんだなどと言うだけムダ。
 魏、呉、蜀それぞれ曹操、孫権、劉備が女の子で、周囲をムダにイケメン(嫌いな言葉だけど敢えて)が囲んでいるというのもこのテの話のお約束、でも不愉快ではない。3巻では地元のショッピングモールのミスコンに応募するという状況で、操ちゃん(曹操)が特技として披露するのが「詩」、もちろん漢詩であるのが愉快。
 元ネタが元ネタなので、ヒゲは無理としてももうちっとゴツイ系を出してほしいとは思う。周瑜の「~っす」という言葉遣いには違和感あるが、史実でも美形であることは説明してあること、実際絵の上でもいちばん美形に見えることは良し。

 声の配役、いまの私ではヘタリアの出演者たちがメインで浮かぶのだが、それだと真っ先に、曹操=操ちゃんは偉そうな男言葉なので「スイス」。司馬懿は腹の底が知れなくてとろんとした感じが重なるので「ロシア」で。
 孫権=はかりちゃんに「ハンガリー」、周に「オーストリア」で孫策に「プロイセン」。
 徳子に中国、張飛=飛虎(ひこ)に投げやりにイタリアかアメリカ(のーてんき型ということで)。

 ところで、いまは女の子になっている元「兄者」にメロメロのままとまどっているマジメな関(関羽)が私の妄想あふれる心で見ればアグリッパ犬とダブる。すると、それより軽いノチのヒコがマエケナスということになるのだけどね。



「ツイ4」で連載された『うたえ!エーリンナ』が単行本になるので宣伝を貼る。
「うたえ!エーリンナ 単行本」
 サッポーのもとで学ぶ少女たち。いつか終わるとわかっている楽園。吉屋信子の世界を連想するのはやや不吉かもしれないが。
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