孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル・ネタニヤフ首相への不満・批判を強めるアメリカ・バイデン大統領

2024-03-11 23:44:42 | パレスチナ

(2023年10月撮影のバイデン・ネタニヤフ両氏【3月9日 ロイター】 もともとリベラルな傾向の民主党米政権と保守強硬派ネタニヤフ首相は折り合いが悪く、オバマ元大統領ともアメリカ史上最悪の関係とも言われていました)

【バイデン再選戦略の足かせになりつつあるガザ情勢・イスラエル支持】
アメリカ大統領選挙は共和党ヘイリー元国連大使の撤退で予定どおりの「バイデン対トランプ」の形になっていますが、トランプ氏については裁判の行方、その選挙戦への影響、裁判費用もあって資金面での困難、ヘイリー氏が一定の批判票を集めたことの本選挙への影響などが議論されています。

一方のバイデン氏については、かねてよりの高齢問題に加え、移民問題への対応、今後の経済動向も今後の課題となってきます。高齢問題については、一定の段階で後進に道を譲る形でバイデン氏が辞退するのでは・・・という「プランB」も(期待を込めて)囁かれていますが・・・・そのあたりはもう少し様子を見て。

その苦戦を強いられているバイデン大統領にとって更なる足かせになってきているのがパレスチナ・ガザで続く惨状、深刻化する飢餓、そしてバイデン政権がイスラエルを支持し続けていることです。

バイデン大統領を支える民主党支持層には、比較的ガザへの同情的な空気、攻撃を続けるイスラエルへの批判が強いとされています。

****米民主党員、過半数がイスラエル軍事支援に否定的=世論調査****
ロイター/イプソスの世論調査によると、民主党員の過半数がイスラエルへの軍事支援を支持しない大統領候補が望ましいと答えた。

バイデン大統領とトランプ前大統領の支持率はともに36%で互角。残りの回答者は「分からない」「別の候補に投票する」「誰にも投票しない」と答えた。

調査は28日までの3日間に実施。イスラエルへの軍事支援に賛成する大統領を支持する可能性が低いと答えた民主党員は全体の56%、支持する可能性が高いと答えた民主党員は40%だった。

バイデン大統領はパレスチナ自治区ガザの軍事衝突でイスラエル側を支持しており、そうした姿勢が大統領選で致命的な弱点になる可能性がある。

27日のミシガン州民主党予備選では、バイデン氏のイスラエル支援に抗議する10万票を超える「支持者なし」票が投じられた。

今回の調査では共和党員の62%がイスラエルへの軍事支援に賛成する大統領候補が好ましいと回答。34%はそうした姿勢を支持しないと答えた。

調査は全米の成人1185人を対象にオンラインで行った。【2月29日 ロイター】
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アラブ系有権者はもちろんですが、バイデン再選戦略を大きく左右する特に若年層がイスラエル支持への不満を強めていると報じられています。

有力な対立候補がいない予備選挙ではバイデン氏が圧勝を続けていますが、少なくないガザ対策をめぐる批判票と思われる票も出ています。

****バイデン氏の再選戦略に課題、ガザ政策巡り再び「抗議票」集まる****
バイデン米大統領は5日に行われたミネソタ州の民主党予備選で大勝が確実になったが、現政権がパレスチナ自治区ガザで攻撃を続けるイスラエルを支援していることに「抗議」を表す票が同州などこの日に集中した予備選・党員集会で投じられ、大統領の再選戦略に課題をもたらした。

エジソン・リサーチによると、ミネソタでは予想票数の約半分が集計された時点で、「支持者なし」票が約20%を占めた。

エジソンによると、同票を主に投じたのはイスラム系米国人をはじめ、学生や郊外に居住する女性、リベラルなユダヤ人活動家などだという。

ミシガン州で先週行われた民主党予備選でも10万票を超える「支持者なし」票が投じられ、全体の13%を占めた。

5日の「スーパーチューズデー」に民主党候補者を選ぶ投票が行われたミネソタ以外のアラバマ、コロラド、アイオワ、マサチューセッツ、ノースカロライナ、テネシーの6州でも「支持者なし」の票が投じられた。そうした抗議票はアイオワの3.9%からノースカロライナの12.2%まで幅がある。【3月6日 ロイター】
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****トランプ氏 圧勝の裏で際立つ“弱点” 勝敗占う「ヘイリー票」と「ガザ情勢」 バイデン大統領と再戦へ【アメリカ大統領選挙】****
(中略)
バイデン氏の苦難 アラブ系住民に突きつけられた「ノー」
一方、「高齢問題」が国民に深刻視されるなどバイデン大統領の状況は4年前よりも不利な状況だ。今月2日ニューヨークタイムズが発表した世論調査では、バイデン氏43%対トランプ氏48%とトランプ氏の優勢が伝えられた。プラスになる材料が乏しいバイデン氏にとっては厳しい戦いになることが予想される。

そして、いま最もバイデン氏を悩ませているのが「ガザ情勢」だ。強硬姿勢のイスラエルのネタニヤフ首相に自制を求めても説得は聞き入れられず、バイデン氏の中東政策についてアラブ系住民からノーを突きつけられている。

2月のミシガン州予備選挙では、バイデン氏が勝つことは規定路線だったが、それよりも注目を集めたのは13%=約10万人が投じた「Uncommitted=支持者なし」票だった。

抗議投票を開始した団体は、スーパーチューズデーの日にはミネソタ州で同じ活動をしていて、同州で記録された「支持者なし」票は18.9%にも上った。

こうしたアラブ系住民を中心とした「反バイデン」層が親イスラエルのトランプ氏に投票することは考えられないが、ミシガン州のような激戦州でバイデン氏が票を失うことになると11月の選挙結果に大きな影響を及ぼす可能性もある。

バイデン氏は私的な会話の中でネタニヤフ首相を「この男」「ろくでなし」などと発言したというアメリカメディアの報道があったように、バイデン氏はガザ情勢をめぐりイスラエルにいら立ちをにじませている。(後略)【3月10日 TBS NEWS DIG】
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【バイデン政権 イスラエル・ネタニヤフ首相への不満・批判を明確化】
こうした状況でバイデン政権はイスラエルへの批判・不満を明らかにしつつあります。

****米副大統領、イスラエルを明確に批判 ガザ「人道的大惨事」****
ハリス米副大統領は3日、パレスチナ自治区ガザの「人道的大惨事」に十分対処していないとしてイスラエルを明確に批判した。

アラバマ州セルマで演説し、即時停戦を呼びかけたほか、6週間の戦闘停止と引き換えに人質を解放する案を受け入れるようイスラム組織ハマスに訴えた。

同時に「ガザの人々は飢えている。状況は非人道的だ」とし、「イスラエル政府は支援物資搬入を大幅に増やすために一層努力しなければならない。言い訳はできない」と断じた。その上で、新たに検問所を開き、物資搬入に「不必要な制限」を設けないことなどを求めた。

再選を目指すバイデン大統領にとって、左派寄りの有権者によるガザ紛争への反発が痛手となる中、ハリス氏のコメントは紛争を巡る政府内のいら立ちを反映している。

ハリス氏はイスラエル戦時内閣メンバーのガンツ前国防相と4日にホワイトハウスで会談する予定で、率直なメッセージを伝えるとみられる。【3月4日 ロイター】
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****ハリス副大統領、イスラエル戦時閣僚に「深い懸念」表明 ネタニヤフ首相に圧力か****
ハリス米副大統領は4日、イスラエル戦時内閣メンバーのガンツ前国防相とホワイトハウスで会談し、パレスチナ自治区ガザの人道状況に「深い懸念」を表明した。

イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエルのネタニヤフ政権について、バイデン米政権は人道面の配慮が希薄だとしていらだちを強めている。ネタニヤフ首相の政敵であるガンツ氏を招き、ネタニヤフ氏に政治的圧力をかける狙いが指摘される。

ホワイトハウスによるとハリス氏は、避難民が集中するガザ南部ラファでイスラエル軍が作戦を行うには「確実で実行可能な人道計画が必要」だと強調。ガザへの人道支援の搬入量を増やして安全に分配できるよう、米国など国際社会との連携に「追加的な措置」を講じるよう促した。

ガンツ氏は4日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らとも現地情勢を協議し、5日にはブリンケン国務長官と会談する。

野党代表のガンツ氏は戦時内閣のメンバーながら、元来はネタニヤフ氏の政治的ライバルだ。バイデン政権がガンツ氏を招いて高官級会談を設定したのは、ラファ攻撃や占領地・ヨルダン川西岸での入植拡大に突き進むネタニヤフ氏への牽制だとの見方が強い。

バイデン政権は、大規模な飢餓さえ危惧されるガザの人道状況を懸念。民主党の支持基盤であるアラブ系などのマイノリティー(少数派)や若年層には、バイデン政権がイスラエルを制止できていないことへの不満が強い。

ガンツ氏は、ハマス壊滅まで戦闘を続けるとする点でネタニヤフ氏と同じ立場だが、パレスチナとの対話にはより柔軟だとされる。イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)はガンツ氏の訪米について、「米国が誰を信頼しているか」を示していると評した。

ハマスの奇襲を許したネタニヤフ氏は国内で厳しく非難されている。ネタニヤフ氏は収賄罪などに問われており、戦闘が終結すれば公判が進んで政治生命の危機に直面する恐れもある。【3月5日 産経】
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政敵ガンツ前国防相の訪米はネタニヤフ首相には無断でおこなわれ、ネタニヤフ首相は激怒し、在米大使館に対してはガンツ氏の訪問の調整を行わないよう指示したとのこと。
そうした形でガンツ氏を招くこと自体がバイデン政権の強いネタニヤフ批判を示しています。

なお、イスラエルへの不満を募らせているのはイギリスも同じです。

****英国もイスラエルに懸念表明「忍耐は限界に近づいている」 ガザ戦闘開始5カ月****
(中略)一方、イスラエルの戦時内閣のメンバーであるガンツ前国防相は6日、英国でスナク首相やキャメロン外相と会談。キャメロン氏はガザへの支援物資の搬入増量に努めるよう求め、イスラエルが計画するガザ最南端ラファへの地上作戦に「深い懸念」を伝えた。

イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)がガンツ氏の事務所の発表として伝えた。ガンツ氏は先立って米国を訪問し、ハリス米副大統領らから同様の懸念を伝えられている。

米英は従来、イスラエル支持を表明してきたが、ガザの戦闘激化に伴い事態の改善を促す態度に転じた。ロイター通信によると、キャメロン氏は5日の英上院での演説で、飢餓や病気が広がりガザで住民が死亡し始めたとして「忍耐は限界に近づいている」と述べてイスラエルに警告した。【3月7日 産経】
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【アメリカの意向を無視するネタニヤフ政権】
しかし、ネタニヤフ政権はガザでの攻撃を続行しており、更に極右閣僚は(アメリカが意図する今後のパレスチナ在り方を危うくする)ヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植を拡大する計画を明らかにしています。

****ヨルダン川西岸で入植者住宅3500戸建設へ イスラエル極右閣僚****
イスラエルのオリット・ストローク国家特命相は6日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で入植者用住宅3500戸の建設計画を推進する方針を明言した。

イスラエルでは極右のベツァレル・スモトリッチ財務相が先月、西岸でパレスチナ人武装集団によって民間人1人が殺害されるなどしたのを受け、報復として入植地を拡大する意向を表明。

スモトリッチ氏の盟友で同じく極右のストローク氏もX(旧ツイッター)に「われわれは入植を続ける」と投稿。「3500戸近くの入植者住宅」の建設を計画していることを明らかにした。

イスラエルの入植活動を監視するNGO「ピース・ナウ」は、エルサレム東郊のマーレアドゥミムとケダール、同市南郊のエフラットで、計3426戸の建設が計画されていると指摘している。 【3月7日 AFP集】
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アメリカを含めた欧米諸国、国連も将来のパレスチナ国家樹立の障害となるイスラエルの入植活動を批判はしていますが、ネタニヤフ政権は聞く耳を持たない様子です。

****イスラエル入植地拡大は「戦争犯罪」 国連****
国連人権高等弁務官事務所のボルカー・ターク高等弁務官は8日、イスラエルが占領下のパレスチナ自治区で入植地を拡大していることについて、「戦争犯罪」に当たると指摘し、パレスチナ国家樹立の可能性を完全になくす恐れがあると警告した。

ターク氏は国連人権理事会への報告書で、イスラエルがガザ地区で無慈悲な攻撃を続ける一方、ヨルダン川西岸で違法な入植者用住宅の建設を大幅に加速していると主張。イスラエルによる入植地の建設・拡大は、自国民を占領地に送り込むのに等しいと指摘した。

さらに、こうした行為は「戦争犯罪」に相当し、「関与した者は個人として刑事責任を問われる可能性がある」と述べた。

報道によれば、イスラエルは「国際法を無視」して、ヨルダン川西岸のマーレアドゥミムとエフラット、ケダールで、入植者用住宅3476戸の建設を計画している。

スペイン外務省も同日、イスラエルがパレスチナ国家と共存する「2国家解決」に向けた努力を台無しにし、「和平への障害になる」としてイスラエルの入植地拡大計画を「強く非難」した。 フランス外務省も計画を「強く非難」し、イスラエル政府に「直ちに撤回」するよう求めた。 【3月9日 AFP】AFPBB News
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【深まるバイデン大統領とネタニヤフ首相の溝】
こうしたなかで、バイデン大統領はガザ攻撃を続けるネタニヤフ首相に対し「イスラエルを救うというより、損害を及ぼしている」と強く批判しています。

****「イスラエルに損害及ぼす」=バイデン米大統領、ネタニヤフ首相を批判****
バイデン米大統領は9日放送のMSNBCテレビのインタビューで、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘で市民ら3万人以上が犠牲になったことに関し、同国のネタニヤフ首相について「イスラエルを救うというより、損害を及ぼしている」と批判した。米大統領がイスラエルの首相に対してここまで厳しく表現するのは異例だ。

バイデン氏は「ネタニヤフ氏はイスラエルを守る権利はあるが、彼の行動の結果によって失われた罪のない人々の命に注意を払わなければならない」と改めて強調した。

イスラエル軍が検討しているパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの本格侵攻については、「レッドライン(越えてはならない一線)だ」と警告。ただ、「イスラエルを守ることは依然として重要だ。見捨てることはしない」とも述べた。

戦闘休止に向けてエジプトで行われた交渉は、現在までに目立った成果は出ていない。バイデン氏は、10日ごろに始まるイスラム教のラマダン(断食月)までの合意実現に関して「可能性は常にある。あきらめない」と語った。【3月10日 時事】 
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これに対しネタニヤフ首相は「(バイデン)大統領が一体何を意味しているのか分からない」と不快感を露わにしています。

****ネタニヤフ首相、バイデン大統領に批判され「一体何を意味しているのか分からない」と不快感****
(中略) 一方、ネタニヤフ氏は、米政治専門紙ポリティコに「(バイデン)大統領が一体何を意味しているのか分からない」と不快感を示し、「私の立場は大多数のイスラエル人に支持されている」と反論した。【3月11日 読売】
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ネタニヤフ首相にとっては“ハマスの奇襲を許したネタニヤフ氏は国内で厳しく非難されている。ネタニヤフ氏は収賄罪などに問われており、戦闘が終結すれば公判が進んで政治生命の危機に直面する恐れもある。”【3月5日 産経】ということで、戦争継続しか選択肢がない現実も。

バイデン大統領もここでネタニヤフ首相に甘い対応をすれば民主党左派から厳しい批判にさらされるという再選戦略がかかっており、お互い政治生命をかけた対立にもなってきています。

バイデン大統領は「イスラエルを救うというより、損害を及ぼしている」発言の前にネタニヤフ首相との「カム・トゥー・ジーザス(Come to Jesus)ミーティング」を呼び掛けていますが、今の状況では両者の会談は不透明です。

****バイデン氏、イスラエル首相に会談の意向伝える ガザ支援巡り****
バイデン米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相に対し、パレスチナ自治区ガザへの人道支援物資の搬入を巡る問題で「カム・トゥー・ジーザス(Come to Jesus)ミーティング」を行うと伝えたことが分かった。民主党関係者がソーシャルメディアに動画を投稿した。 

カム・トゥー・ジーザスとは米国の表現の一つで、無遠慮な会話を意味する。 

動画ではバイデン氏が7日夜に連邦議会議事堂で民主党のマイケル・ベネット上院議員、ブリンケン国務長官、ブティジェッジ運輸長官と会話する様子が映されており、ベネット氏がガザへの人道支援を拡大するようイスラエルに働きかけ続ける必要があると話している。 バイデン氏は動画の中で「私はビビ(ネタニヤフ氏の愛称)に、あなたと私はカム・トゥー・ジーザス・ミーティングを行うだろうと伝えた」と述べた。【3月9日 ロイター】
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