孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルクメニスタン  現職大統領、得票率97%で再選 “謎の国”で復活する個人崇拝路線

2012-02-13 20:40:45 | 世相

(トルクメニスタン産の名馬アハル・テケ種のビューティー・コンテストで、愛馬にまたがるベルドイムハメドフ大統領 確かに美しい馬です。国民の娯楽は制約されていますが、大統領のお楽しみは別のようです。なお、漢の武帝が求めた汗血馬は、このアハル・テケ種だった・・・とも言われています。大宛国(フェルガナ)は今のウズベキスタン・タジキスタン・キルギスあたりに相当します。“flickr”より By Kerri-Jo http://www.flickr.com/photos/kerri-jo/5692083814/ )

投票率約96%、得票率97%
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンにトルクメニスタン・・・正直なところ、中央アジアの国々には殆んど馴染みがなく、いつもどの国がどこにあって、誰が指導者で、どんな情勢にあるのか混乱します。
大まかな印象としては、旧ソ連圏の国々で、昨年5月の反政府騒乱でバキエフ前大統領がベラルーシに追われたキルギス以外では、総じて強権的独裁政権が続いているといったイメージです。

中央アジア諸国のなかでも、カスピ海に接し、イラン北部に位置するトルクメニスタンは、あまり情報が伝わってこない国ですが、現職のベルドイムハメドフ大統領が再選されたそうです。

****得票率97%、現職が圧勝 トルクメニスタン大統領選*****
旧ソ連の中央アジア・トルクメニスタンで12日、任期満了に伴う大統領選があった。インタファクス通信によると、現職のベルドイムハメドフ大統領が約97%を得票し、再選を決めた。
任期は5年。選挙には国営企業幹部や地方行政幹部ら計8人が立候補したが、ベルドイムハメドフ氏が圧倒した。投票率は約96%。

大統領は2期目も、豊富な天然ガスの輸出をてこに経済発展をはかる方針とみられる。国の各地に自身の肖像画を掲げさせる個人崇拝や、インターネットの閲覧を規制する情報統制を続けるとの見方も強い。

旧ソ連の崩壊で誕生したトルクメニスタンでは、初代のニヤゾフ大統領が国中に自らの黄金像を建設するなど個人崇拝の体制を確立した。ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。【2月13日 朝日】
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どうやれば、“投票率約96%、得票率97%”という結果が出るのでしょうか?日本的常識では考えられない数字です。2007年2月14日に行われた前回大統領選では89.23%の得票率だったそうですから、更に支持率が上昇しています。この数字を見るだけで、おおよその国の雰囲気が窺われます。

【「中央アジアの北朝鮮」に変化も
トルクメニスタンは、ニヤゾフ前大統領(06年12月死去)の独裁政権下で長く外国との交流を断ち、事実上の鎖国体制を取っていたこともあって、「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれていました。
ニヤゾフ前大統領死後、07年2月に就任したベルドイムハメドフ大統領は、欧米を訪問するなど外交姿勢を転換し、変化の兆しを見せているとも報じられていました。

確かに、ニヤゾフ前大統領の施策が、オペラやサーカスを禁止し、図書館も廃止するなど、すこぶる“異様”であっただけに、変化は見られます。

****オペラ、サーカスの禁止解く トルクメニスタン****
来月就任から1年を迎える中央アジア・トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領が、故ニヤゾフ前大統領の独裁体制下で始まったオペラの禁止など風変わりな政策の見直しを進めている。

99年に終身大統領となったニヤゾフ氏は01年、「わが国固有の芸術でなく、国民にはわからない」などの理由でオペラやサーカスを禁止した。これに対し、大統領は19日、文化関係者との会合で「今は市場経済の創出など発展のための移行期。新しい考え方が必要だ」と強調、「今後数カ月で国民のための新作オペラをつくり、上演する」との方針を示した。サーカスについても、閉鎖中の首都アシガバートの国立サーカスを大改修して復活させる考えを明らかにした。
またニヤゾフ氏が「田舎の人は字が読めないから」と廃止した地方の図書館も、改めて整備する考えを表明。15日には、10年以上も途絶えていた大学院教育についても、修士と博士両課程の学生受け入れを決めた。
豊かな天然ガス資源を持つ同国だが、ニヤゾフ氏は教育や文化へ予算を向けずに荒廃させた。その再建が新政権の重要課題となっている。【08年1月23日 朝日】
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“異国の文化”として禁じられていたサーカスは10年4月に9年ぶりに公演されています。
なお、娯楽施設は現在も少なく、首都アシガバートでも、観客の投票で見たいDVDを選び、大型テレビで鑑賞する「映画館」と呼ばれる施設が1軒しかないという状況です。【10年4月26日 毎日より】

自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出
ネットカフェも出来たようですが、自宅でのネット使用に対する制約など、制限は厳しいようです。

****トルクメニスタン:「中央アジアの北朝鮮」 積極外交、鎖国に変化*****
・・・・インターネットカフェの開設も改革政策の一つ。
公務員用の高層住宅が並ぶ新市街の一角にあるネットカフェでは、4台のコンピューターに若者が向かっていた。その一人で石油関連企業に勤めるハハン・クルバンマメドフさん(25)は「英国とドバイ(アラブ首長国連邦)にいる親類にメールを書いているんだ。自宅のパソコンは通信ができないから」と話した。
同国では自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出する必要がある。

店長のオバド・セルダさん(23)によると市内にはネットカフェが現在5店ある。いずれも通信省傘下の国営会社が運営し、セルダさんも公務員だ。ただ、利用料は1時間3万マナト(約200円)で、平均月収が1万〜1万5000円とされる市民にはまだ割高。セルダさんが「規制がある」と認めるように、反体制派や一部の外国サイトに接続できないのが実態で、1日の利用者は10〜30人にとどまっている。・・・・【08年12月6日 毎日】
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そんなトルクメニスタンで、中国の無償援助により小学1年生全員に中国製PCが無償支給されるという報道もありました。
****トルクメニスタン、小学1年生全員に中国製PCを無償支給****
トルクメニスタン政府は、今年度から小学校の1年生全員に、中国製のノートブックPCを無償で支給することを決めた。教育省の関係者が1日、AFPに明らかにした。
中国政府から同国に対する5000万元(約6億円)相当の無償援助の一環として、トルクメニスタン政府と中国パソコン大手、聯想(レノボ)が6月、ノートブックPCの無償提供で合意した。
配布されるノートPCは、基礎文法やアルファベットなどの教育ソフトを備えた小学1年生向けの特別仕様だという。

海外資源を貪欲に求める中国は近年、融資やエネルギー協定を通じて、資源に恵まれた中央アジアの旧ソ連諸国において政治・経済両面での影響力を拡大している。既に7月から全長8700キロのパイプラインを通じたトルクメニスタン産天然ガスの中国向け供給が始まっている。

トルクメニスタンのインターネット事情は、回線の信頼性が低い上に料金も高い。1世帯あたりの高速インターネットサービスの常時接続料金は、月額でおよそ7000ドル(約54万円)もする。それでも、トルクメニスタンの学校や大学の多くが、デスクトップ・パソコンを備えている。

2007年からグルバングルイ・ベルドイムハメドフ大統領がトップの座にあるトルクメニスタンは、世界でも強権的で不透明な点が多い国家の1つだ。【11年9月2日  AFP】
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【“黄金像”復活 ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画も
上記のような変化はあるものの、冒頭【朝日】記事に“ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。”とあるように、基本的な政権の性格はあまり変わっていないようです。

ニヤゾフ前大統領に対する個人崇拝の象徴であった巨大な“黄金像”は、ベルドイムハメドフ大統領に変わって、「景観向上」を理由に一旦は撤去されましたが、最近郊外に復活しています。また、ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画が市内あちこちに掲げられているそうです。

****アシガバート 近づけぬ黄金像に迫る*****
・・・・「像には近づけません。遠くから見るのもだめ」。トルクメニスタン外務省職員にいきなり断られた。像がそびえる「中立の塔」は現在、移設工事中で見せられないという。
同国では報道規制が厳しく、今回の同行でも、希望する取材先を事前に提出させられ、認められたのはわずか。移動中は常に当局員が随行した。「少しでも国のマイナスイメージになると判断されると、取材はできない」と、ある住民は語った。

像と中立の塔は、同国が1995年12月12日に永世中立国になったのを記念して建設された。高さはその記念日に合わせ、それぞれ12メートル、95メートルという。両手を上げたニヤゾフ氏が常に太陽の方向を向きながら1日で1回転する。(中略)

かつては首都のど真ん中に立っていた。2代目の現大統領ベルドイムハメドフ氏が昨年、約8キロ離れた郊外に移設を決めたという。街のあちこちにあったニヤゾフ氏の他の黄金像も次々と撤去されて少なくなった。威光排除が目的とされる。その代わりに、至る所にベルドイムハメドフ氏の肖像画が掲げられている。【11年12月19日 朝日】
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三つ巴の天然ガス争奪戦
“謎の国”トルクメニスタンが話題になるのは、多くは、その豊富な天然資源を巡ってのことです。
なかでも、天然ガスの確認埋蔵量は7兆9000億立方メートルで世界第4位(1位はロシアの43兆立方メートル)とされており、従来から独占してきたロシア、ロシアに対抗するパイプライン計画“ナブッコ”を進める欧州、新たに参入した中国の三つ巴の資源争奪戦が展開されています。

****トルクメニスタン:中国へ天然ガスの直通パイプライン完成*****
世界有数の天然ガス埋蔵量で知られる中央アジアのトルクメニスタンから中国までの直通パイプラインが完成し、14日、起点となるトルクメン東部サマンテプで開通式典が開かれた。同国からの天然ガス輸出はこれまでロシアにほぼ独占されてきたが、中国向けパイプラインの開通によってロシアと中国、別のパイプライン計画を推進する欧州の間で三つ巴の争奪戦が激しさを増しそうだ。

タス通信によると、完成したパイプラインはトルクメンからウズベキスタン、カザフスタンを経て中国・新疆ウイグル自治区へ至る約2000キロ。同自治区から沿岸部までの既存のパイプラインと合わせた総延長は約7000キロに及ぶ。06年に関係国が計画に調印し、07年に着工。約73億ドルとされる建設費の多くを中国が負担したという。

開通式典には、中国の胡錦濤国家主席ら沿線4カ国の首脳が出席した。トルクメンのベルディムハメドフ大統領は式典に先立つ13日、胡主席との会談で「地域の安定要因となる傑出した世紀の事業が完成した」と述べた。
同大統領によると、中国への天然ガス輸出量は最大で年400億立方メートルを予定しており、従来のロシアへの輸出量(年約500億立方メートル)に匹敵する。対露輸出は今年4月のパイプライン事故以来、価格や輸出量を巡る対立もあり停止中。中国という巨大な競争相手の出現でロシアは交渉上、厳しい立場に立たされそうだ。

欧州連合(EU)主導のロシア迂回(うかい)パイプライン「ナブッコ」計画も、トルクメンを有力供給源の一つとみており、欧州向け輸出ルートの独占を続けたいロシアとの競合が始まっている。

トルクメンは91年のソ連崩壊に伴う独立後、経済的にはロシアに大きく依存する一方、故ニヤゾフ前大統領の独裁政権が「永世中立」を宣言し、事実上の鎖国状態にあった。しかし、07年に就任したベルディムハメドフ大統領は積極外交で欧米やイランとの関係強化に動き、対露依存体質からの脱却を目指している。

一方、ベルディムハメドフ大統領は16〜18日、同国元首として初めて日本を訪問し、鳩山由紀夫首相と会談するほか、天皇陛下とも会見する。大統領はガス田開発や液化天然ガス(LNG)技術の向上などに向け、日本に投資や経済協力の促進を呼びかけるとみられる。【09年12月14日 毎日】
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先述の“小学1年生に中国製PC無償供与”の話も、この中国の天然ガス確保戦略の一環です。

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今も続くフクシマの悪夢 原発対応に揺れる中国、アメリカ、フランス

2012-02-12 22:06:23 | 世相

(1月7日 町の全域が福島第一原子力発電所から半径20キロ圏内の「警戒区域」内にある福島県双葉町。 役場機能と町民の多くが埼玉へ避難しています。国は2年以内に汚染地域の放射線量をおよそ半分に減らす基本方針を打ち出していますが、除染によって安全に暮らしていける場所になるのかはよくわかりません。
“flickr”より By osaprio http://www.flickr.com/photos/osaprio/6773986313/ )

揺らぐ「冷温停止状態」 温度計故障?】
福島第一原子力発電所事故については、野田首相が昨年12月16日、政府の原子力災害対策本部の会合で「冷温停止状態に達し、事故そのものは収束に至った」と宣言しました。

これについては、“「冷温停止」などの言葉が本来とは異なる意味で使われており、これで問題がなくなったといった誤った印象を与えるのではないか”(NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長)などの批判が内外からありましたが、私を含め事故地域外の多くの人にとっては、危機感・恐怖心が日重生活のなかで次第に薄れているのも事実です。

しかし、今日報じられた福島第一原子力発電所2号機の温度上昇のニュースは、フクシマの問題が何ら解決した訳ではないことを改めて思い起こさせます。

****2号機温度、80度超す…「再臨界の恐れない*****
東京電力は12日、上昇傾向を示している福島第一原子力発電所2号機の圧力容器底部の温度が同日午後2時20分に約82度に達し、保安規定で温度管理の上限として定める80度を超えたと発表した。
これを受け、午後3時30分には、原子炉に注入する冷却水を毎時約3トン増やし、計17・4トンに変更する作業を完了した。

ただ、温度が上昇しているのは、圧力容器底部の温度計3個のうち1個だけで、ほかの温度計は35度前後で安定しているという。原子炉の気体の分析でも、核分裂で発生するキセノン135は検出されておらず、東電は再臨界の恐れはないと説明している。

昨年末に政府と東電が宣言した「冷温停止状態」は、原子炉の温度が100度以下であることなどが条件で、東電では、20度程度の測定誤差を考慮して、80度以下に維持すると定めている。【2月12日 読売】
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温度計の故障の可能性も指摘されていますが、内部で何が起きているのか未だによくわかっていないことが問題でしょう。
また、冷却水を大量に増加させて冷却を加速することについても、汚染水の処理が定まっていない現状で、汚染水を増やす事態は避けたいとする東京電力は消極的だとか。汚染水を含めた事後処理も手つかずの状態です。

【「最悪シナリオ」で問われる情報公開の在り方
一方、昨年の事故当時、首都圏を含む避難処置に言及した「最悪シナリオ」が政府に報告されていたことも話題となっています。

****福島事故直後に「最悪シナリオ」 半径170キロ強制移住*****
福島第一原発の事故当初、新たな水素爆発が起きるなど事故が次々に拡大すれば、原発から半径百七十キロ圏は強制移住を迫られる可能性があるとの「最悪シナリオ」を、政府がまとめていたことが分かった。首都圏では、茨城、栃木、群馬各県が含まれる。
菅直人首相(当時)の指示を受け、近藤駿介・原子力委員長が個人的に作成した。昨年三月二十五日に政府は提出を受けたが、公表していなかった。

シナリオでは、1号機で二回目の水素爆発が起きて放射線量が上昇し、作業員が全面撤退せざるを得なくなると仮定。注水作業が止まると2、3号機の炉心の温度が上がって格納容器が壊れ、二週間後には4号機の使用済み核燃料プールの核燃料が溶け、大量の放射性物質が放出されると推定した。
放射性物質で汚染される範囲は、旧ソ連チェルノブイリ原発事故の際に適用された移住基準をあてはめると、原発から半径百七十キロ圏では強制移住、二百五十キロ圏でも避難が必要になる可能性があると試算した。

事故の拡大を防ぐ最終手段にも言及、「スラリー」と呼ばれる砂と水を混ぜた泥で炉心を冷却する方法が有効とした。スラリーの製造装置と配管は、工程表にも取り入れられ、実際に福島第一に配備されている。

政府関係者は「起こる可能性が低いことをあえて仮定して作ったもので、過度な心配をさせる恐れがあり公表を控えた」と説明。近藤委員長は「当時、4号機のプールは耐震性に不安があり、そこにある大量の核燃料が溶けたらどうなるか把握しておきたかった」と話している。【1月12日 東京】
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当然に想定されるべきシナリオであると思いますが、この報告の公表が控えられてきたことの是非が、情報公開の在り方として問われています。
政府側は、過度の、必要でない心配・不安を煽りたくなかったので公表しなかった・・・との立場です。
メディアの取り扱い次第では、首都圏住民にパニックを引き起こすことも考えられます。

そうした心情はよく理解されますが、一方で、都合の悪い情報は伏せる・・・という対応では、今後の政府情報への信頼性を損なうことも事実です。なかなか判断に迷う問題です。

中国:原発建設推進に地方政府が中止要求
魔法のように巨大なエネルギーを生みだす原発は、ひとたび事故を起こすと制御不能な事態をも引き起こします。それが生み出す廃棄物の処理さえままならないのが現在の技術です。
こうした原発の取り扱いについては、フクシマ以後、日本だけでなく各国がそれぞれの事情で迷っています。

先日、原発建設に関する話題が中国とアメリカからありましたが、中央政府が進める原発建設に対し隣接地方政府が建設中止を求めたのが中国で、スリーマイル島原発事故後34年ぶりに建設再開を決めたのがアメリカというのも、面白いところです。

****中国東部の原発建設「即時中止を」、隣県政府が国に求める****
中国東部に建設中の原子力発電所の立地が地震多発地域にあたり住民の安全が懸念されるとして、安徽省望江県政府が中央政府に建設の即時中止を求めたと、国営紙新京報が9日、伝えた。
経済発展に伴い大量のエネルギー確保が急務の中国では、国内25か所で原発の建設計画が進んでいる。こうした状況のなか、地方政府が国に原発計画の中止を要求するのは極めて異例だ。

新京報によると望江県政府は、隣接する江西省彭沢県で進められている原発建設計画について、今週初めに公表された環境アセスメント結果が、建設予定地から半径10キロ圏内の住民の人数を実際より少なく見積もっているなど信頼性に欠けると主張。また、予定地で2006年にマグニチュード(M)5.7、前年9月にはM4.6の地震が起きているなど、地震多発地域である点を指摘している。
望江県政府関係者らは、「原発が放出するガスや有毒液体」によって風下の住民が深刻な被害を受ける恐れがあるとの懸念を口にしているという。

これに対し、彭沢県政府は「全く根拠のない主張だ」と反論しているという。
彭沢県の原発建設計画は2010年に承認され、既に初期工事も始まっているが、新京報は建設計画の評価報告書を公明正大に公表すべきだとの論評を掲載した。

中国では現在、14基の原子炉が稼働中。世界原子力協会によれば、中国当局は2020年までに原発稼働能力を現在の5〜6倍に増強したい考えだ。東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受け、中国も前年4月、国内全原発の総点検を実施している。【2月10日 AFP】
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アメリカ:34年ぶりの建設再開
****米で原発2基新設認可 34年ぶり 規制委員長は反対票****
米原子力規制委員会(NRC)は9日、南部ジョージア州で計画されている新規原発2基の建設・運転の申請について5人の委員による投票を行い、賛成多数で認可した。ただ、ヤツコ委員長は東京電力福島第一原発事故を受けた安全対策が規制に反映されていないとして反対票を投じた。

ボーグル原発に増設される3、4号機(いずれも110万キロワット級)で、2008年にNRCに申請が出されていた。東芝傘下の米ウェスチングハウスが開発した改良型加圧水型炉「AP1000」を採用、16年と17年の運転開始を目標にしている。1979年のスリーマイル島原発事故後、原発の建設が行われていない米国で建設が認可されるのは、78年以来、34年ぶりとなる。

反対票を投じたヤツコ委員長は「福島原発事故は無視できない」とする声明を発表。事故を受けた安全対策の規制強化が検討されている最中なのに「まるでこの事故がなかったかのように認可に賛成することはできなかった」と説明した。
オバマ大統領の指名で09年に委員長に就任したヤツコ氏は、原発に厳しい姿勢で知られる。昨年末には運営手法をめぐって他の委員との対立が表面化、米議会が調査に乗り出す事態になっている。

ウェスチングハウスによると、AP1000は外部電源喪失などの緊急時に運転員が操作しなくても自動的に原子炉の冷却が維持される仕組みを備えている。中国の2カ所で建設が始まっている。米国でも南部サウスカロライナ州のサマー原発で2基の増設計画があり、近くNRCから認可が下りる見通しだ。

米国では104基の原発が稼働中だが、主に経済性の問題で新規申請は長年、控えられてきた。ブッシュ前政権時代に建設のための資金調達をしやすくする原発推進策が導入され、今回の2基を含む計26基の新規申請が出された。
だが、国内での天然ガス価格低下や建設コスト高騰などで、20年までに運転開始できる新規原発は4基にとどまるとみられている。このほか78年以前に認可を受け、長らく工事を中断していた南部テネシー州の原発1基の建設が07年以降、再開している。【2月10日 朝日】
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なお、アメリカの原発建設再開の多くを日本の東芝が受注しているとのことです。

****東芝「原発は今後も不可欠」 新設認可の米で次々受注****
米原子力規制委員会(NRC)が新規の原発建設を認可したことについて、米ウェスチングハウス(WH)を傘下に持つ東芝は10日、「温室効果ガス対策などの観点から、原発は今後も必要不可欠なエネルギーとして、継続的な需要が見込まれる。安全性向上のためさらに努力を続けたい」とコメントを発表した。

東芝によると、NRCには今回認可された2基以外にも、26基の建設を求める申請が出ており、うち12基がWH、2基が東芝の原子炉を採用している。
東芝は09年、15年度までに自社とWHをあわせて39基の原発を受注。年間売上高1兆円を達成する目標を掲げた。しかし、東京電力福島第一原発の事故を受け、達成が数年間遅れるとの見通しを示している。【2月10日 朝日】
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フランス:雇用確保と絡んで大統領選挙争点に
欧州では脱原発の動きがドイツ・スイス・ベルギーなど広まっていますが、原発大国フランスでは、4月の大統領選挙の重要な争点に浮上しています。

****仏大統領選:「国内最古の原発」存廃が争点に*****
フランスのサルコジ大統領は9日、独、スイス両国境に近い仏東部にある国内最古のフッセンハイム原発を訪れ、「この原発の閉鎖は問題外」と原発推進を強く訴えた。大統領選で社会党公認候補のオランド氏がフッセンハイム原発の閉鎖を公約に掲げており、老朽化した原発の存廃が、選挙の争点になってきた。

サルコジ氏は原発労働者を前に「政治家の下心のためにあなたたちの雇用を犠牲にするのは言語道断だ」と繰り返した。大統領選のライバルとなるオランド氏の社会党は昨年11月、「欧州エコロジー・緑の党」と選挙協定を結び、▽25年までに電力の原子力依存率を現在の75%から50%に下げる▽原子炉24基を段階的に閉鎖する−−などの合意書を取り交わした。フッセンハイムは合意書で唯一「速やかな閉鎖」とされ、オランド氏は当選した場合の任期中の閉鎖を明言している。

東京電力福島第1原発より約6年遅れた77年に運転開始したフッセンハイム原発は老朽化が進み、特に福島原発事故後、安全性が不安視されてきた。脱原発を打ち出した独やスイスとも近く、両国でも閉鎖を求める運動が起きている。仏原子力安全機関はすでに、原発を運営するフランス電力に土台部分の改修などの措置を命じている。

今年1月、仏原子力安全機関が公表したストレステストの結果では、仏国内に「すぐに停止すべき原子炉はない」とする一方、安全確保のための追加改修費用が国内全体で約100億ユーロ(約1兆円)と見積もられた。フッセンハイム原発についてはコシウスコモリゼ環境相が閉鎖の可能性を排除できないと発言している。

大統領選では雇用対策が最大の争点となっており、サルコジ氏は「原発推進」と「雇用確保」を絡める形で支持を広げる戦略に出ている。【2月10日 毎日】
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現在の世論調査では、社会党オランド候補が支持率でリードしており、政権交代となれば、フランスの原子力政策も大きく舵を切ることになります。

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ミャンマー  進むテイン・セイン大統領の改革 スー・チーさんとも協調 これからが正念場

2012-01-30 21:59:01 | 世相

(茶店の壁に貼られたスー・チーさんのポスター 彼女のポスターや彼女に関する本が街角のスタンドで売られています。数か月前には想像できなかった光景です。 “flickr”より By J_P_D http://www.flickr.com/photos/j_p_d/6614750181/

スー・チーさんの地方遊説、当局規制なし
ミャンマー民主化運動指導者のスー・チーさんは、自身も4月1日投票の議会補欠選挙に立候補、また、彼女が率いる「国民民主連盟」(NLD)は補選の行われる全国48の選挙区すべてに候補者を擁立していますが、29日には選挙戦に向けた地方遊説を開始しています。当局による規制は一切なかった模様です。

****ミャンマー:スーチーさん地方遊説 議会補選に向け****
ミャンマー民主化勢力「国民民主連盟」(NLD)を率いるアウンサンスーチーさんは29日、南部の都市ダウェーを訪問。4月1日投票の議会補欠選挙へ向けた地方遊説を開始した。地元市民は熱狂的にスーチーさんを出迎え、地方でもスーチーさんの人気が高いことを見せつけた。

NLDはダウェーなど補選が実施される全国48の選挙区すべてに候補者を擁立する。スーチーさんが最初の遊説地としてダウェーを訪れたのは、外国企業主導の巨大経済開発が計画され、その功罪が国民の関心を集めるダウェーで第一声を上げ、全国に存在をアピールする狙いもある。

スーチーさんは数千人の支持者を前に「私たちが選挙に出てもすぐに国が変わるとは思わないが、(民主化へ向けた)活動をさらに広げていくために、選挙に参加すべきだと決断した。国民誰もが平等な1票を持っている。どうか私たちに投票してください」と訴えた。また、議会定数の25%を自動的に軍推薦議員に割り振る現行憲法について「国民の利益にならない部分は改正する必要がある」と述べ、当選後に憲法改正に取り組む姿勢を明確にした。

米欧は対ミャンマー制裁解除の条件として、今回の補選の「自由・公正な実施」を求めている。テインセイン政権は選挙の自由な実施を強調しており、この日も当局による規制は一切なかった。【1月30日 毎日】
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スー・チーさんの国民的人気は衰えていないようです。
ミャンマー政府の恩赦で今月釈放された民主化運動グループ「88年学生世代」のメンバーも、21日、最大都市ヤンゴンで記者会見し、スー・チーさんの4月1日実施の国会補選への立候補を支持し、支援していく方針を示しています。
なお、メンバーからは、スー・チーさんの国会参加について「危険な選択」と指摘する声も上がり、政府主導で進む急速な民主化への不信感もあるようです。【1月22日 毎日より】

大統領:少数民族との完全和平実現に楽観的な見通し
スー・チーさんは選挙区内の貧困層の多い地区の少数民族住民の家に住民登録しての出馬です。
多分に、貧困層や少数民族へのアピールを意識してのことでしょう。

****スー・チーさん、カレン族宅に住民登録=補選出馬で―ミャンマー****
ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが4月の補欠選に出馬するため、選挙区のヤンゴン南部コムー地区郊外に住む少数民族カレン族の姉妹宅に住民登録を移していたことが29日、分かった。スー・チーさんはこの姉妹と面識はないが、補選の前日はこの家に宿泊し、投票に向かう予定だ。

スー・チーさんはヤンゴン中心部に自宅があるが、立候補するには選挙区内に住所を登録する必要がある。国民民主連盟(NLD)関係者によると、今月下旬に党本部で住所移転に関する会議を開催。地図を広げて検討していたところ、スー・チーさんが貧困層が多いコムー地区の外れにあるワティンカ村を指定した。
後日、党関係者が同村を訪れて、村民に相談。姉妹は60歳前後の独身女性2人暮らしで、スー・チーさん受け入れを強く希望したことなどから決定した。スー・チーさんも了承した。【1月30日 時事】 
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1947年の発足以来60年以上、独立などを求めて政府軍と内戦を続けてきたミャンマー東部カイン(カレン)州を拠点とする少数民族カレン族の反政府組織「カレン民族同盟」(KNU)は今月12日、政府との間で初めて停戦合意に署名しています。
また、国境も近い中国雲南省の瑞麗市では、戦闘状態が続くカチン族の武装勢力「カチン独立軍」(KIA)と政府との停戦交渉も行われています。
少数民族との和解は、政治犯釈放と並んで、欧米諸国がミャンマー民主化の真偽を見極める基準としているものですが、テイン・セイン大統領の進める少数民族との対話路線も成果を見せてきています。

****ミャンマー:大統領、6武装組織と和平合意****
ミャンマーのテインセイン大統領は26日、連邦議会(国会)に書簡を送り、「これまでに六つの少数民族武装組織と和平で原則合意した」と明らかにした。大統領は「残る5組織とも交渉を続けている」とし、少数民族との完全和平実現に楽観的な見通しを示した。

米国や欧州連合(EU)は、少数民族との和平実現を対ミャンマー経済制裁解除の条件に挙げている。昨年後半から少数民族勢力との交渉を始めた大統領は、声明で国際社会に和平への積極姿勢を強調する狙いがあるとみられる。
大統領は和平合意した6組織と未合意の5組織の具体名は挙げなかった。

ミャンマーではこれまでに、少数民族武装組織としては最大規模の「ワ州連合軍」や、政府と停戦を結んだことがなかった東部カイン(カレン)州を拠点とする「カレン民族同盟」、北東部シャン州を拠点とする「南部シャン州軍」などが相次いで政府と停戦合意した。一方で北部カチン州を拠点とする「カチン独立機構」(KIO)などとは依然戦闘状態が続いている。

政府の少数民族との交渉団最高幹部は26日、毎日新聞に対し、停戦合意に至っていない「シャン州進歩党」との交渉が28日、「新モン州党」との交渉が31日に開かれると明らかにした。【1月27日 毎日】
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スー・チーさん:「テイン・セインがトップに立ったからこそ改革が進んでいる」】
情報公開も進展しており、国会審議の様子もメディアに公開されています。
****国会第3会合が開会=国外メディアにも議論公開―ミャンマー****
ミャンマーの首都ネピドーで26日、国会の第3回通常会合が開会し、国外メディアにも公開された。同国では民主化に向けた改革が急速に進んでおり、国会でも出席議員から積極的な発言が相次いだ。(中略)

取材に応じた野党新国民民主党のテイン・ニュン議員は「国会での活動で特に制約を受けることはない。野党議員も平等に扱われていると思う」と話した。同議員は国会に5案件を提案し、このうち汚職問題などに関する2案件が議題として採用されたという。【1月26日 時事】
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連日のように民主化に向けた進展が報じられるミャンマー情勢ですが、なかでも政府の柔軟姿勢をリードするテイン・セイン大統領と民主化運動指導者スー・チーさんの“二人三脚”とも“蜜月”とも言えるような関係が目を引きます。

大統領はインタビューで、“スー・チーが選挙で善戦したら閣僚に起用するか”との問いに、“選挙の結果次第だ。当選したら彼女は議員になる。現在の閣僚は全員が議会の承認に基づいて任命されている。彼女が議会の任命や承認を得たら、閣僚として受け入れることになる”と、スー・チーさんの閣僚起用も拒まない発言をしています。

一方、スー・チーさんは、やはりインタビューで、テイン・セイン大統領を評価・信頼する、以下のような応答をしています。

−大統領とインタビューしたとき、あなたの入閣を考えているかと聞いたら、彼はそれは議会次第だと答えた。
 そのとおり。もしわれわれ国民民主連盟(NLD)の候補者が連邦議会の補欠選挙ですべて勝利して48議席確保したとしても、600議席以上ある上下院の中ではわずかにすぎない。あらゆることを一度に実現することはできない。議会の中で徐々にわれわれの活動を広げていく。

−今回の改革はタン・シュエ(前国家平和発展評議会議長)が描いた青写真に沿って実行されているのか。
 違う。新政府が誕生し、テイン・セインがトップに立ったからこそ改革が進んでいる。彼は変化と改革の必要性を理解し、最善を尽くしている。政府内の改革派はほかにもいるが、彼なしに実現できたとは思わない。

−大統領と軍の関係は。
 彼は軍から尊敬されている。大統領は現政権の中でもまれな、汚職に手を染めていない人物の1人。彼だけでなく彼の家族も同様で、これはとても珍しいことだ。【2月1日号 Newsweek日本版】

さすがに閣僚云々については、自ら率いる国民民主連盟(NLD)の幹部らに対し、「政府からの就任要請がないので」と直接の返答を避けながらも、閣僚は在任期間中政党活動ができないとする憲法の規定を念頭に「(閣僚になるために)NLDを去るつもりはない」と述べ、入閣の意思がないことを明らかにしています。【1月28日 時事より】 

マコネル米共和党上院院内総務:「改革は本物だ」】
もちろん、こうしたテイン・セイン政権の柔軟姿勢にもかかわらず、依然ミャンマーの軍部支配体制という基本的枠組みは全く変わっていない・・・との批判もあります。
もっともな指摘ではありますが、これだけの変革が短期間に実現されるとは、民政移管前は誰も予想していなかったのも事実です。
国際社会としては、この改革路線が後戻りすることがないように、支援していくのが現実的対応かと思われます。

アメリカの経済制裁解除は米議会との関係もあって、急速には難しい状況です。
「少数民族との和平進展などを見守る必要がある」と述べ、早急な制裁解除や緩和に慎重姿勢を示していた米共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、ミャンマー訪問での政府幹部との会談後、「改革は本物だ」「初めて(ミャンマーの)将来について本当に楽観的になれた」と述べ、改革が進めば米国の経済制裁を見直すべきだとの考えを示しています。
なお、オバマ政権は今月13日の政治犯釈放を受け、大使交換に着手することを発表しており、両国関係の正常化に前向きな姿勢をみせています。【1月17日 読売より】

EUもテイン・セイン政権の改革を支援して、制裁緩和を検討しています。
****ミャンマー制裁、一部緩和=民主化を評価―EU****
欧州連合(EU)は23日の外相理事会で、ミャンマーが民主化に向けた改革を進めていることを評価し、同国のテイン・セイン大統領や閣僚、国会議員らに対する渡航禁止措置を停止することを決めた。引き続き、一層の制裁緩和を検討するとしている。

外相理は声明で、ミャンマー政府による政治犯の釈放や、少数民族カレン族の反政府武装組織との停戦合意などを評価。民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが立候補する4月の国会補欠選挙が自由・公正に実施されれば、同月末までに制裁の大幅緩和に踏み込む可能性もあるとの方針を示した。【1月23日 時事】
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【「問題は不一致にどう対処するかだ」】
今後については、スー・チーさんも登場する補選後の議会において、軍部に一定議席を割り当てた現行憲法の改正問題など、政府側と野党側の主張が対立する問題での議論がどのように行われるかが注目されるところです。
執拗に現行枠組みの変更を求める野党側、要求に応じない政権側・・・膠着した議論のなかで、体制内の既得権益層の反応、結果を出せない野党側の対応がどうなるか・・・・。

****ミャンマー 進む民主化・開放路線*****
政権・野党 これからが正念場
・・・・内外の予想を上回るテンポで民主化を進める同大統領だが、保守派は軍部にも政権内にもいるとされる。いわば民主化勢力と保守派との間で段階的前進を模索している。軍政でナンバー4だった同大統領は後継候補1位でもなかった。
改革派のキン・ニュン元首相が逮捕・失脚したのは絶頂期の04年だ。大統領職は一歩間違えば倒すか倒されるかである。「反対勢力」が具体的に何を指すかは分からないが、用心深さに改革派大統領のもう一つの顔が見えるようだった。
            
これからのミャンマーの命運を握るのは大統領と野党、とくにスー・チーさんとの関係でもある。
昨年8月、大統領との初会談後にスー・チーさんが「信頼できそう」と評価したとき、それまで「名ばかりの民政」と懐疑的だった欧米は初めて同政権を相手として考え始めた。
経済制裁もスー・チーさんが「イエス」と言わない限り、欧米は解除しないだろうとは大方の予測だ。スー・チーさんの責任もまた重い。
(中略)
これからのミャンマーの命運を握るのは大統領と野党、とくにスー・チーさんとの関係でもある。
・・・・両者にとって大きな試金石が間もなく来る。4月1日の連邦議会補欠選挙だ。スー・チーさんは当選確実だが、NLDが全議席(48議席)を獲得しても、現行憲法下では議会の軍・与党優位は揺るがない。

結局は体制に取り込まれるだけとの批判は、NLD内にもあるらしい。スー・チーさんが政治家として力量を問われるのはまさにそこからだ。一方、テイン・セイン大統領も民主化を求める内外の期待と成果との落差に直面したときに、どう乗り越えるか指導者としてやはり正念場である。
「これまで両者は意見の不一致は置き、一致するものから一緒にやってきた。問題は不一致にどう対処するかだ」(外交筋)
 軍を担保する憲法の改正問題一つとっても隔たりは大きい。しかし早晩、同問題は避けられまい。・・・・【1月30日 産経】
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ドイツ:トラー著書『わが闘争』出版問題  イスラエル:「ホロコースト」の矮小化

2012-01-27 21:29:12 | 世相

(『わが闘争』 “flickr”より By Michael Dawes http://www.flickr.com/photos/tk_five_0/2229836777/

【「タブー特有のオーラが神秘化につながる」】
先の戦争の責任問題について曖昧な形で放置(あるいは、意図的に残存)されることもある日本に対し、同じ枢軸国ドイツでは、ナチス・ヒトラーの責任を厳しく追及(あるいは、全責任を負わせる)する点で、対応が異なっているというイメージがあります。

そのドイツで、ヒトラーの著書『わが闘争』の出版が企画され、話題になっています。
著作権はバイエルン州が有していますが、2015年末で「期限切れ」を迎えるという事情があります。
出版する側の言い分は、隠せば神秘化するだけで、オープンにした方がいい・・・というものです。
学術目的には必要との擁護論もありますが、カネ目当て、極右のネオナチが喜ぶだけ・・・といった批判も強いようです。
なお、ドイツでは基本法(憲法)で「出版の自由」を保障する一方、刑法ではナチス賛美につながる書物の配布を禁じています。

****ヒトラー『わが闘争』をいまさら出版する訳****
世界中で忌み嫌われるナチスの独裁者アドルフ・ヒトラーの著書『わが闘争』。反ユダヤ思想に満ちたこの本の抜粋に解説を付けて、英出版社アルバルクスがドイツで出版するという。週刊誌「新聞の目撃者」の付録として26日から3回にわたり16ページずつ発行。1ページごとに解説を付けて、10万部を印刷する。話題性は抜群だが、その動機は何なのか。

「負の魅惑があるのは承知しているが、それは誰も読んだことがないせいだ。タブー特有のオーラが神秘化につながる」と、アルバルタス社のピーター・マギー代表は独誌に語った。ドイツの人々に原文に触れる機会を与えたいだけだという。

とはいえ世間は納得しない。シャルロッテ・クノブロッホ前ドイツ・ユダヤ人中央評議会議長は、カネ目当てではとの見方を示した。「ドイツで書かれた扇動的プロパガンダの中で最も邪悪な部類」の本で、ここまで注目される価値はないという。
 
一方、ドルトムントエ科大学教授(ジャーナリズム学)で解説の一部を担当したホルスト・ベトカーは出版を擁護する。「できる限り広範な読者の目に触れさせるべきだと思う。ナチスが何を考えていたのか、この思想のどこが魅力的だったのかを知るには、それが一番だから」と、ペトカーは語った。

『わが闘争』はヒトラーが1923年のミュンヘン一揆に関与した罪で投獄中に口述筆記された。45年までにドイツ国内で約1000万邦が出版され、36年からは結婚するすべてのカップルにナチス政府からの結婚祝いとして贈られた。

著作権を保有するバイエルン州当局は出版差し止めを求めて提訴する構えだ。ドイツでは著者の死後70年間(『わが闘争』の場合は2015年まで)著作権が保護される。
マギーがナチス政権当時の党機関紙の抜粋を含む「新聞の目撃者」を09年に創刊した際も、州当局は出版阻止を試みた。しかしミュンヘンの裁判所は、人種的憎悪をあおろうとしているわけではないので違法とはいえない、との判断を下した。

メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)のシュレーダー家庭相も出版に反対している。「ドイツには惨劇の地がいくらでもある」と独地方紙に語った。「ナチスの罪の残忍さを理解するのに、『わが闘争』を売店に並べるまでもない」【2月1日号 Newsweek日本版】
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結局、抜粋部分を黒塗りなどする形で、実質的に公開は断念されることになったと報じられています。

****わが闘争」、黒塗りで出版=反発受け公開断念―ドイツ****
ドイツでナチス総統ヒトラーの著書「わが闘争」の抜粋を雑誌の付録として発行する計画を進めていた英国の出版社は25日、反発が広がったのを受け、抜粋部分を黒塗りなどして隠す措置を施した上で、販売すると発表した。26日に予定通り発行されるが、解説部分だけ読めるようにする。

著作権を保有するバイエルン州は発行計画に対し、差し止めを求めて提訴する構えを見せていた。同社は、黒塗りの措置について「問題が大きくなるのを避けるため」と説明。ただ法的に問題がないと確認されれば、「完全に読める形にして改めて発行する」としている。【1月26日 時事】
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イスラエルに反感を持つ中東地域で、一定の人気
“黒塗り”というのも、戦後日本の教科書みたいで異様です。
『わが闘争』については、公立現代史研究所(ミュンヘン)が10年2月、「重要な歴史資料」との理由で、著作権が切れた後に注釈付きの新刊を出版したい意向を表明し、同様の賛否両論が出たこともあります。

その際、ナチスの被害を受けたユダヤ人の組織「独ユダヤ人中央評議会」の事務局長は「今も危険な本だが、禁書扱いはかえって魅力的に映ってしまう。既にインターネット上では非合法に出回っている。ネオナチの勝手な解釈を許さないためにも、むしろきちんと学術的解説を加え、世に出した方がいい。正しい歴史理解や研究のためには必要な資料だ」と出版に理解を示しています。
しかし、「ネオナチが(勢力拡大に)本を利用する可能性もある」「研究目的であれば今でも図書館で読める」などの批判も強かったのも今回同様です。

****ドイツ:ヒトラーの「わが闘争」再出版 国内で論争に****
・・・・ドイツでは昨年、戦後初めてヒトラーを真正面から取り上げた大規模な特別展「ヒトラーとドイツ人」がベルリンで開催されるなど、タブー視する風潮も徐々に薄れている。
「わが闘争」は本国ドイツ以外では翻訳が入手可能。日本では角川書店が73年から文庫版で翻訳本を刊行。08年にはイースト・プレス社(東京)から漫画版も出版された。
05年にはトルコの若者の間でベストセラーになるなど、ユダヤ人が多いイスラエルに反感を持つ中東地域で、一定の人気を保っている。このため反ユダヤ感情をあおる危険を懸念する声もある。【11年9月27日 毎日】
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ドイツ人の約5人に1人は隠れ反ユダヤ主義者
理屈からすれば、「禁書扱いはかえって魅力的に映ってしまう。既にインターネット上では非合法に出回っている。ネオナチの勝手な解釈を許さないためにも、むしろきちんと学術的解説を加え、世に出した方がいい」という意見の方が筋がとおっているようにも見えますが、現実の社会情勢を見ると、やはり心配されるのも分かります。

****ドイツの若者、5人に1人が「アウシュビッツって何?」 ****
27日の「国際ホロコースト記念日」を前に公表された調査結果で、ドイツの若者の5人に1人は、かつてアウシュビッツがナチス・ドイツの「死のキャンプ」だったことを知らないことが明らかになった。

25日に公表された独シュテルン誌による調査は19、20両日に、1002人を対象に行われた。
その結果、全体の90%はアウシュビッツが強制収容所だったと正しく答えられたが、18〜29歳の若年層では21%が「知らない」と答えた。
なお、回答者の約3人に1人は、アウシュビッツが現在のポーランドにあることを知らなかった。

ドイツ議会が専門家に独立調査を依頼し、今週初めに発表された報告書によると、ドイツ人の約5人に1人は隠れ反ユダヤ主義者だという。【1月26日 AFP】
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問題は、『わが闘争』そのもより、それを一定に受け入れることが懸念される社会的土壌にあるようです。

反ユダヤ主義の土壌、若者における歴史の風化・・・という現実社会において、『わが闘争』出版がどのような影響をもたらすか・・・という心配は考慮すべきでしょう。

昨年末には、極右ネオナチによる外国人・移民の連続殺人が判明し、社会に衝撃を与えています。
****ドイツ:ネオナチが連続殺人の疑い…首相「ドイツの恥だ****
外国人や移民を敵視するドイツの極右ネオナチの男女3人組が00〜07年に、トルコ系移民ら計10人を次々に殺害していた疑いが強まり、ドイツ社会に衝撃が走っている。90年の東西ドイツ統一以来、ネオナチによる移民襲撃は散発的に起きているが、これほど大規模な連続殺人が明るみに出たのは初めて。メルケル首相は「ドイツの恥だ」と強く非難した。

独メディアによると、射殺されたのは軽食スタンド経営などのトルコ系男性8人、ギリシャ系男性1人と、ドイツ人女性警察官1人。現場は北部ハンブルクや南部ミュンヘンなどドイツ全土の7都市にわたり、これまでは「トルコ系マフィアの抗争」との見方が有力とされていた。
だが今月4日、銀行強盗の疑いで警察に追われていた38歳と34歳の男2人が中部アイゼナハで自殺し、この2人と同居していた36歳の女が警察に出頭したことで事件が急展開。3人が住んでいた東部ツウィッカウの民家の家宅捜索で、被害者の遺体を撮影したDVDや、射殺に使用されたとみられる銃が見つかり、一連の事件は3人の犯行だった可能性が一気に高まった。

3人は「国家社会主義地下組織」を名乗るネオナチで、捜査当局は90年代から爆発物所持容疑で行方を追っていた。だが長年身柄を確保できず、その間に捜査対象をマフィアなどに集中していた当局への批判の声も上がっている。【11年11月17日 毎日】
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今のイスラエルでホロコーストの記憶が不気味なほど軽くなっている
歴史の風化・変容を憂うる声は、「ホロコースト」を抱えるユダヤ人社会のイスラエルからも報告されています。

****ホロコーストをネタにする醜悪さ****
時間の経過と知識不足が相まって、ナチスの蛮行が不適切な比喩に使われるように

昨年の夫みそか、イスラエル人がエルサレムでデモを行った。子連れのデモで、子供たちはナチスの強制収容所でユダヤ人が着せられたのと同じような服を着ていた。それはある意味、今のイスラエルでホロコースト(ユダヤ人夫虐殺)の記憶が不気味なほど軽くなっていることの象徴だった。

デモを行ったのは、ユダヤ教正統派の中でも超保守的な一派。
乗り合いバスなどでの男女隔離の慣行を廃止しようとする世俗派の動きに反対する抗議行動だった。
その隊列に何十人かの子供たちがいて、黄色い星を縫い付けたしま模様の服を着せられていた。世俗派の「攻撃」にさらされる自分たちを、あのホロコーストの犠牲者になぞらえたつもりなのだろう。

これには左右両派の政治家はもちろん、国内外のユダヤ人グループからも、ホロコーストを矯小化する醜悪な試みだという怒りの声が上がった。
そのとおりだ。だが、イスラエルの人たちが日頃の政治的な議論で、皮肉めかしてホロコーストに言及するのは今に始まったことではない。

もちろん、イスラエルはホロコーストの記憶を決して忘れないし、EUやヨーロッパ諸国の一部はホロコーストの矯小化を法的に禁じている。
それでもホロコースト追悼記念館ヤド・バシェム(エルサレム)の学術顧問イェフダ・バウアーに言わせると、「イスラエル人はホロコーストを、政治をはじめとするあらゆる場面で乱用している」。

例えば1982年にイスラエルがレバノンに侵攻し、ベイルートでパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長を包囲した際のこと。イスラエルのメナヒム・ベギン首相(当時)は、アラファトをヒトラーに例えることで自国の行為を正当化しようとした。そんな比喩は「ホロコーストの真の意味をゆがめかねない」と、バウアーは危惧している。

同胞をナチス呼ばわり
だが、イスラエル人が同胞のイスラエル人をナチス呼ばわりすることさえ珍しくないのが現実だ。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸に勝手に住み着いたユダヤ人人植者たちは、退去を遣るイスラエル兵をナチス呼ばわりする。
交通違反で摘発されたドライバーが、警官をナチスと呼ぶことも珍しくない。

アメリカのユダヤ系団体である名誉毀損防止連盟(ADL)のエーブラハム・フォックスマン会長は、こうした不適切な例えは世界的に見られることであり、無知と時間の経過が原因だと指摘する。(中略)

そんな傾向がユダヤ人の国イスラエルでも見られるのは、実に嘆かわしいことだ。何しろイスラエルには、ホロコーストを生き延びた人たちが今なお約20万人も暮らしている(もちろん世界最多だ)。
それでもヤド・バシェムの学術顧問であるバウアーは、イスラエル人特有の心情を理解してほしいと言う。「この国はいつも、ホロコーストのトラウマを抱えている。だから対立する相手や敵と見える者を、すぐに自分たちの知る最悪の敵と同一視してしまうのだ」【1月25日号 Newsweek日本版】
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エジプト  非常事態令解除 新憲法で軍の権限、宗教と国家の関係は?

2012-01-25 22:54:56 | 世相

(1月24日 カイロ・タハリール広場 軍政批判に集まった人々 しかし、若者達の激しい抵抗・衝突は一般市民の支持を失いつつあるとも “flickr”より By sherief.  http://www.flickr.com/photos/65183857@N06/6756296047/

【「急速な変革」を目指す民主化勢力と、「暮らしの安定」を望む市民が離反
昨年2月にムバラク政権が崩壊したエジプトでは、暫定統治する軍によってその後も非常事態令が継続していましたが、ムバラク政権崩壊につながった反体制デモが起きてから丸1年に当たる25日に、約30年ぶりに解除されることが発表されました。

****エジプト、反政府デモから1年 非常事態解除へ 市民、民主化勢力と距離****
エジプトは25日、昨年2月にムバラク前政権を崩壊に追い込んだ反政府デモの発生から1年を迎える。
これに先立ち同国を暫定統治する軍最高評議会のタンタウィ議長は24日、約30年続いた非常事態令を25日に解除すると発表した。暴徒の取り締まりなどは例外とする。

ただ、デモの火付け役となった民主化勢力はなおも反軍政を掲げて運動を続けており、疲弊する経済に不満を募らせる民衆から孤立し始めている。

「革命は終わっていない。政治から軍を追い出して古い体制を一掃するまで闘い続けるんだ」
昨年1〜2月の反政府デモで連日、数万人のデモ隊で埋め尽くされた首都カイロ中心部のタハリール広場。テントの中で仲間との議論に明け暮れる大学生のボラ・リヤドさん(20)は、こう力を込めた。
約1年後の今、同じ場所には、デモというよりは、たむろしているという表現がふさわしい若者ら数百人が、暫定統治を担う軍最高評議会に即時の民政移管を求めて座り込みを続ける。

今も続く反軍政キャンペーンには、昨年1〜2月のデモ動員に大きな役割を果たした民主化グループ「4月6日運動」も参加。旧政権高官の裁判迅速化や、軍部から議会への権限移譲などを主張する。
「国民が圧力をかけ続けることが大事なんだ」。創設者の一人、アハマド・マーヘル氏はこう訴えるが、デモ隊は昨年後半以降、治安当局と衝突を繰り返し、ときには暴徒化した。衝突をゲーム感覚で楽しむためにデモに参加する若者も少なくない。

そんな彼らを見る市民の目からは今や、かつてのような称賛の色は消えた。
エジプトでは2月の政変後もインフレ率約10%の物価高騰が続き、失業率は高止まりしたまま。政情不安と治安悪化の影響で、主要な外貨収入源である外国人観光客も激減し、経済はますます疲弊している。
タクシー運転手の男性は「デモ隊が暴れると仕事が減る。はっきり言って迷惑だ」と吐き捨てる。「デモの時は危険で交通もマヒするので、仕事に行けない」とタハリール広場近くに勤務する30代女性は漏らす。

「急速な変革」を目指す民主化勢力と、「暮らしの安定」を望む市民。両者の距離は、混乱が長引くにつれて開いている。非常事態令解除が市民に安心感を与え、強硬な民主化勢力への嫌悪を強めそうだ。このことが軍部の狙いでもある。

人民議会が招集された今月23日、カイロ中心部の同議会周辺では、数百メートル離れたタハリール広場とは対照的に、各党の支持者ら数千人が集まり、議会選の成功を祝った。曲がりなりにも民主的な選挙が実現し、軍主導の民主化プロセスが進む中、民主化グループは、求心力を失いつつある。【1月25日 産経】
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軍による暫定統治を批判して「急速な変革」を目指す民主化勢力が一般市民からの支持を失いつつあることが、非常事態令解除に向けて軍を後押ししたと思われます。

“軍に対する民主化要求デモなどが縮小するなど、国内情勢が安定したと判断したのも要因とみられる。非常事態令はムバラク前大統領が81年、大統領に就任した直後に発令した。令状なしでの市民の拘束が可能で、言論の自由を制限する道具として使われてきた。暫定統治中の軍最高評議会はイスラエル大使館襲撃事件などを受け、非常事態令の適用強化を打ち出し、「民主化の流れに逆行している」という批判にさらされていた。”【1月25日 毎日】

イスラム勢力は軍刺激を避け、民政移管後を照準に
エジプトでは、昨年11月から今年1月まで実施された人民議会選挙を受け、今後、民主国家の基礎となる新憲法制定手続きが本格化し、6月までに大統領選が行われる予定となっています。
人民議会選挙では、穏健派イスラム原理主義団体「ムスリム同胞団」系政党が第1党となり、イスラム系の2大政党で議席の4分の3近くを獲得しており、新憲法制定に向けた動向が注目されています。

****民政移行へ、人民議会を初招集 エジプト****
エジプトで23日、ホスニ・ムバラク政権の崩壊を導いた民衆蜂起後初めて、選挙で選ばれた人民議会(下院、公選議席498)が招集された。
これまでの人民議会はムバラク政権与党が議席をほぼ独占していたが、新たな議会ではイスラム系の2大政党が議席の4分の3近くを獲得、政治の中心舞台に躍り出た。

初議会では、選挙で第1党となった穏健派イスラム原理主義団体「ムスリム同胞団」系の「自由公正党」のカタトニ幹事長を議長に選出し、副議長には厳格なイスラム原理主義を掲げる「ヌール党」とリベラル政党のワフド党から各1人を選んだ。

カタトニ新議長は、「われわれは新しいエジプト、憲法に基づき民主的で現代的なエジプトを建設したい」と述べた。
国民の多くは、新しい人民議会を民政移行の最初の印ととらえている。【1月24日 AFP】
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全議席の47%を占めて第1党となった穏健派イスラム主義の「自由公正党」は、副党首にキリスト教徒を迎えて「市民政党」の体裁を取り、「イスラムの価値観を重視するが、宗教国家は目指さない」とするのに対し、約25%で2位となった急進派イスラム主義の「光の党」は、観光客への酒類提供禁止など、より厳格な形でのイスラム法の導入を求めているとされています。【1月23日 朝日より】

今後の憲法制定を巡っては、特権維持を図りたい軍部と、イスラム主義を盛り込みたいイスラム勢力の間でせめぎ合いが予想されていますが、「自由公正党」は当面は全面に出ることを避けて軍をあまり刺激せず、大統領選後の民政移管に照準を合わせているとも報じられています。ムスリム同胞団は長年、強権政権の弾圧に耐えてきただけに、その選択は非常に現実的です。

ムバラク政権を崩壊させた「アラブの春」は、そうした現実政治とは一線を画した若者を中心とした人々の怒りでしたが、ムバラク政権崩壊後も依然として残存する軍部支配体制という現実に向き合っていくためには、やはり現実的な対応が必要とされる・・・というところでしょうか。

****エジプト、選挙後緊迫 第1党イスラム系、民政化後照準****
・・・・反ムバラク政権デモに加わった青年らによる新党や世俗・左派政党は伸び悩み、福祉活動などを通して草の根組織を作り上げてきたイスラム系政党の強さが浮き彫りとなった。

過半数にやや足りない自由公正党は各派に連携を呼びかける一方、全権を握るエジプト軍最高評議会が昨年11月に任命したガンズーリ首相の退陣は求めない構えだ。
長引くデモや経済の混迷などで内政の混乱が続いており、当面は「だれがやってもうまくいくはずがない」(地元記者)という状況だ。議長ポストは握るが、6月末までの実施が予定される大統領選までは現行の内閣に任せ、新憲法制定と、軍部が大統領選後としている民政移管を待ち、改めて自派中心の内閣を発足させる戦略とみられる。

自由公正党は、光の党に対しては副議長ポストを提示して連携を求める一方、恒常的な統一会派の結成は否定している。
エジプトのシンクタンク、アハラム戦略研究所のハサン・アブターリブ研究員は「自由公正党は現実主義で、欧米との関係も重視している。光の党は政治経験に乏しく急進的で、立場が異なる。各党が課題ごとに是々非々で連携し『議会制民主主義の訓練』を行うことになる」とみる。 【1月23日 朝日】
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軍は、従来の統治構造を維持したいとの思惑
一方、軍部は、民政移管後も従来の統治構造を維持したいとの思惑があり、新憲法制定にその影響力を行使しようとしています。

****人民議会開会 新憲法議論 エジプト民主化、試金石 軍部、影響力保持を画策****
昨年2月のムバラク前政権崩壊後初の民主選挙で選ばれたエジプト人民議会(下院、508議席)が23日、開会した。同議会は6月末までに実施される大統領選と民政移管に向け、新憲法制定に関与するなど重要な役割を担う。制憲プロセスでは暫定統治を行う軍最高評議会との摩擦も予想される中、議会が事実上の翼賛体制だった前政権時代と完全に決別できるかが、同国の民主化を占う鍵となる。
(中略)
議会は、今月29日から選挙が行われる諮問評議会(上院)とともに、憲法起草委員会を選出する。軍部は「新議会の議員100人の委員会に起草にあたらせる」としていた当初の方針を変更。地元メディアによると、現在では委員の大部分を軍が任命し、一部だけが議会から選ばれる方式が検討されている。

軍が新憲法制定に影響力を残そうとするのは、従来の統治構造を維持したいとの思惑があるためだ。
前政権までのエジプトでは、予算から立法まで強大な権限を持つ大統領を軍が歴代輩出し、議会審議なしで予算承認を得るなど多くの恩恵を享受してきた。
軍は軍需工場や民生品用の工場を多数保有、「軍関連産業だけで国内総生産(GDP)の約4割」(アナリスト)といわれ、それらの経営で議会からチェックを受けることもなかった。軍としては、新憲法で大統領権限が弱まり、既得権益にメスが入るのを恐れている、というわけだ。

しかし、強大な権限を持つエジプトの大統領制はこれまで迅速な意思決定を可能にしてきた半面、不正の温床にもなってきた。このため民主化勢力の中には、新憲法では大統領権限を大幅に縮小し、議会や首相の権限を拡大すべきだとする主張も少なくない。

自由公正党のカタトニー氏も産経新聞の取材に、「将来的には議会中心の政治が好ましい」と話している。ただ、現段階では軍部を刺激しないよう、同党を含む多くの政治勢力が、軍の特権的地位に配慮した発言をしているのが実情だ。軍と付かず離れずの関係を保ちつつ、徐々に本格的な内閣樹立を狙うのが同党の戦略との見方もある。【1月24日 産経】
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今後の情勢としては、軍の権限、宗教と国家の関係が注目される新憲法制定に向けて、既得権益維持を狙う軍部と、あまり軍を刺激せず民政移管後を視野に入れたイスラム政党の駆け引きを軸に、そうした“生ぬるい”駆け引きや軍政継続・軍の特権維持を批判し、即時の「民主化」を要求する、若者を中心とする民主化グループの抵抗が絡んで展開する形が予想されます。

軍を批判して、エルバラダイ氏が不出馬を表明
新憲法制定後、6月末までに行われる予定のエジプト大統領選については、国際的には著名なIAEA前事務局長エルバラダイ氏が、民政移管後も軍の統治構造が変わらないことを批判して撤退を表明しています。

****エジプト大統領選、波乱含み****
6月末までに行われる予定のエジプト大統領選は民政移管の最大のゴールだ。しかし、最近、出馬に意欲を示していた国際原子力機関(IAEA)前事務局長エルバラダイ氏が不出馬を表明、波紋を広げている。

今月14日、エルバラダイ氏は、報道向け声明で、エジプトは現在も「旧体制」によって支配されている、との持論を展開。現状のままでは、新大統領に権限が移されても、実質的に軍部が権力を握る従来の統治構造に変化はないだろう、と暫定統治を担う軍最高評議会を強く批判した。

外交官出身で海外暮らしが長い同氏は、エジプト国内に強固な基盤を持っておらず、大統領選での勝利は難しいとみられていた。ただ、その抜群の知名度から、氏の発言は一定の影響力を持つとみられる。エルバラダイ氏が、軍主導の民主化プロセスを拒絶する形で選挙から撤退したことで、他の立候補予定者からは「反軍政デモが活性化するかもしれない」といった指摘が出ている。

一方、大統領選には、軍出身でムバラク前政権で最後の首相となったアハマド・シャフィク氏も意欲を示している。正式な出馬表明はしていないものの、すでに支持組織とともに各地で政治集会を開いている。同氏は軍と関係が深いだけに、財界人らの支持を得る可能性がある。半面、軍の影響力排除を狙う民主化勢力は反発するとみられ、選挙の混乱要因ともなりかねない。【1月25日 産経】
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上記以外の有力視される大統領候補者は、アラブ連盟の事務局長も務めていたアムル・ムーサ元外相とテレビの宗教番組をいくつも持つ著名弁護士のハゼム・サラハ・アブ・イスマイル氏と言われています。
ムーサ元外相は外交面の経験は申し分ない一方で、前政権とのつながりも指摘されています。
イスマイル氏はムスリム同胞団と連携する厳格なイスラム教徒です。【1月4日号 Newsweek日本版より】

「アラブの春」を民主化として具体化させるまでには、まだ多くのハードルがあるようです。
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香港と中国本土  地下鉄内騒動から感情的対立が過熱 「香港の人たちは犬だ」

2012-01-24 20:48:02 | 世相

(写真は香港の街角に置かれた犬の排泄物を捨てる専用箱だそうです。なるほど、中国本土とは違います。
中国旅行者の間では、人間用のトイレの汚さ、日本とのトイレに関する風習の違いがよく話題になりますが、最近では都市部のトイレ事情は随分改善されているようです。ただ、犬用はどうでしょうか?
“flickr”より By byerlytw  http://www.flickr.com/photos/65219161@N00/418208038/ )

退潮する“民主派”、伸長する“親中派”】
台湾総統選挙では、「ひとつの中国」という枠組み、中国との距離の取り方が、改めてクローズアップされましたが、中国側が台湾の将来像に関するひとつのモデルケースと考えているのが、97年にイギリスから主権移譲された香港における「一国二制度」のシステムです。

“香港の政治の特徴は香港主権移譲後に施行された一国二制度にある。これはイギリス時代の行政・官僚主導の政治から、一定の制限の下での民主化および政党政治への移行期にあたり、また社会主義国である中華人民共和国の中で2047年まで資本主義システムを継続して採用されることになっている”【ウィキペディア】

中国の政治体制への拒否感も強かった香港ですが、中国経済への依存のなかで、政治的には、いわゆる“民主派”が退潮し、“親中派”が勢力を伸ばす形になっています。

****香港、薄れる民主化 区議会選で親中派大勝 経済依存高まり意識変化****
 ■長官直接選挙実現に影
6日に投開票が行われた香港区議会(地方議会)選挙は7日、全議席が確定した。中央政府に批判的な民主各派は軒並み惨敗し、親中各派が大勝した。経済の対中依存が高まったことを受け、中国政府と良好な関係を求める香港人の意識の変化が選挙の結果に表れている。民主派勢力の退潮が鮮明となったことで、2017年の香港行政長官の直接選挙が実現できない可能性が高くなったとの指摘もある。

 ◆8年間で半減
 民主派の最大政党、民主党は前回2007年の選挙時の59議席から47議席に減らし、同党にとって2回連続の区議会選挙の敗北となった。前々回(03年)の選挙では95議席を得ており、8年間で議席数をほぼ半減。他の民主各派もすべて議席を減らし、前回6議席を得た急進派の社会民主連線の当選者はゼロだった。

一方、最大の親中勢力である民主建港協進連盟(民建連)は前回から21議席伸ばして136議席となり、民選合計議席(412)の約3分の1を占めた。民建連は03年の選挙時に獲得した議席数は62で、2回の選挙で議席倍増を実現した。

近年、香港で民主派が退潮している原因は複数ある。08年の米国発の金融危機以降、中国政府による一連の支援策と中国人観光客の大量流入で香港は好景気を維持することができたほか、1997年の中国への返還後、中央政府が香港で実施した愛国主義教育により、多くの若者の中国への帰属意識が高まった。

 ◆言論統制影響
また、香港に進出した中国国有企業は中央政府に批判的なメディアに広告を出さないなど間接的な言論統制も奏功し、香港メディアが「民主化や人権問題について取り上げることが少なくなった」(香港紙記者)という。
こうした中、行政長官の直接選挙の早期実現や天安門事件の再評価などを訴える民主各派の候補は、経済発展の継続や福祉の充実などの“実績”を強調する親中各派の候補に埋没し、支持は広がらなかった。

香港の民主派は2017年に実施する香港トップの行政長官選挙で、現在の選挙委員(うち1割は区議会議員)による間接選挙ではなく、有権者全員が参加できる直接選挙の導入を求めている。中央政府は直接選挙に原則的に同意したが、具体的な実施方法などについては何も決まっておらず、香港問題に詳しい中国人研究者は「香港での民主化要求機運が今後も低下し続ければ、中国政府は直接選挙の約束をほごにするだろう」と話している。【11年11月8日 産経】
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【「なぜ香港人は本土人より一段上の人間だと思っているのか?」】
上記記事にあるように、中国経済に依存し、愛国主義教育により若者の中国への帰属意識が高まったとされる香港ですが、住民の意識には微妙なものがあるようです。
また、中国本土側の香港に対する感情も同様です。

最近話題になっているのが、地下鉄内での中国本土からの女性観光客と地元乗客の間で激しい口論に関するものです。

****地下鉄車内で本土女性と地元乗客が口論、子どもの制止も聞かず…―香港****
2012年1月18日、香港の地下鉄車内で中国本土からの女性観光客と地元乗客の間で激しい口論が発生、その様子が動画投稿サイトで公開され、大きな話題を呼んでいる。南方都市報が伝えた。

香港では駅の改札内は飲食禁止となっており、違反者には最大で罰金2000香港ドル(約2万円)が科せられる。口論があったのは15日午後3時(現地時間)ごろで、地下鉄車内で中国本土からの女性観光客が娘にお菓子を食べさせていたため、地元乗客が注意したことがきっかけだった。

本土女性が「私たちは本土から来た」「子どもなんだから…」と反論したため、口論が始まった。地元乗客は「とにかく謝ればいいじゃないか」と諭したが、さらに火を注ぐ結果に。本土女性の同行女性や他の乗客も加勢し、騒ぎは大きくなる一方。女児が「ママ、私たちが悪かったんだよ」と制止したが、すでに収拾がつかない状況となっていた。

結局、乗客が駅職員に通報。職員から本土女性らに「車内では飲食禁止」であることを説明すると、「すみません。言葉がよく分からなくて。すぐに帰ります」と答えた。女性が今後は地下鉄車内で飲食しないと約束したため、罰金は科せられなかった。

口論の様子が動画サイトに投稿されると、ネット上で大きな話題に。中国本土客のマナーの悪さを指摘する声が目立ったが、「本土の人間は全員がこんな風だ」と決めつけるのもよくない、といった声も聞かれた。【1月18日 Record China】
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中国本土のネット上には中国本土人のルール違反を批判する意見が多く寄せられていますが、香港人の中国本土人への差別意識を指摘する声もあるようです。

****香港地下鉄で本土女性と地元乗客が口論、「本土客に対する差別意識の表れ」との声も―中国メディア****
・・・・その様子が動画投稿サイトで公開されると、ネット上で大きな話題に。
その多くは「『郷に入れば郷に従え』ができない中国本土客は十分に反省すべき」といったもの。「現地のルールが守れないんだから、ののしられて当然」「(香港人と本土人の)こうした素養の差は長年の積み重ねによるもの」「ルールが分からなかったのは仕方ないが、指摘されたらすぐに謝るべきだった」といった声が上がった。

一方、これを「中国本土の人間に対する差別意識の表れ」とみるユーザーも。「なぜ香港人は本土人より一段上の人間だと思っているのか?」「しょせんは子どもがしたこと。ここまで執拗(しつよう)に責め立てる必要があったのか」「マナーが守れない人間はどこにでもいる」「単なる文化の差」「中国本土の人間全体を指して批判するのはおかしい」といった擁護意見も出た。

なお、環球時報(電子版)がウェブサイト上で実施した「この問題をどう見るか?」についてのアンケート調査(3択)では、20日午前10時現在、「女性観光客が悪い。確かに一部の本土観光客は素養の向上が必要だ」(670票、15.2%)、「地元乗客が悪い。ささいなことを大げさに騒ぎ過ぎ。本土人に対する差別だ」(1374票、31.2%)、「双方が悪い。どちらも反省すべき」(2359票、53.6%)という結果となっている。【1月20日 Record China】
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自らを中国人と考える香港人はわずか17%
上記記事にある反応は中国本土側のものですが、この騒動には後日談があり、毒舌家の北京大学教授が「香港の人たちは犬だ」と発言し、香港人の集中砲火を浴びているそうです。

****香港人を「犬」呼ばわりの北京大教授、香港で怒り爆発****
口の悪さから、しばしば物議を醸してきた北京大学の孔慶東教授が、今度は「香港の人たちは犬だ」と発言し、香港人の集中砲火を浴びている。(中略)

(地下鉄内の)騒動は、中国本土と香港の文化衝突の一例と評された。また、かつては英国の植民地だった香港の人々が中国本土の人びとに対して抱いている優越感が象徴的に表れたとの指摘も多い。

この騒動について、孔子の子孫を名乗る孔教授が苦言を呈した。孔教授は動画サイト「v1.cn」に前週投稿されたインタビューの中で、「(標準)中国語で話すことを、全ての人に義務付けるべきだ」と力説。地下鉄車内の口論で香港人らが地元の広東語を話していたことに対し、「意図的に中国語を話さないとは、一体どういった種類の人間なのだろうか?それは、ろくでなしだ!」と非難した。

孔教授の毒舌は、まだ終わらない。「私の知る限り、多くの香港人は自分たちを中国人だと思っていない。こういった種類の人びとは、植民地時代に英国からの犬扱いに慣れた人たちだ。つまり、彼らは人間でなく犬だ」とののしった。

■犬呼ばわりに香港人の怒り爆発
孔教授の発言に、香港ネットユーザーの怒りが爆発。ネット上で中国本土批判を展開し、時には悪意のこもった口調で非難している。
「太った犬が吠えてるね。頼むから、他人についてあれこれ言う前に、自分自身の国をもう一度よく見てよ」。あるネットユーザーはこのように述べた後、中国本土の問題点を列挙した。
怒りはネット上だけに収まらない。香港警察当局によると22日夜、中国外務省の香港駐在代表部前に、およそ150人が集まり孔教授の発言に抗議した。

こうした香港住民の怒りについて、香港議会の李卓人議員は、香港と本土間に緊張が高まっていることを示すものだと指摘する。「まさに時限爆弾だ。香港人は中国政府を快く思っていない。民主主義の欠如が不満なのだ。香港人が本土の人たちとの衝突は日常的に見られる」
中国の国営英字紙チャイナ・デーリーは、香港大学が前月発表した調査によると、自らを中国人と考える香港人はわずか17%で、2000年以降最も低い数字だったと伝えている。【1月24日 AFP】
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自らを中国人と考える香港人が17%と最低というのは、冒頭産経記事の“愛国主義教育により若者の中国への帰属意識が高まった”云々とは反するようですが、意識は多面的なものですから、そんなものでしょう。

本土から妊婦が大量に香港へ
中国本土側の香港に対する感情も、その差別意識を非難するものと同時に、香港へのあこがれ的なものも垣間見えます。
香港で出産する中国本土の女性が多数存在します。一人っ子政策に対する抜け道という側面もありますが、香港で出産すれば“比較的自由な香港に住んで香港で教育を受ける権利が得られる”ということも、その理由です。

****中国で人気の辰年出産、香港のママたちには悪夢に****
辰年を吉兆ととらえる中国人は、辰年に赤ちゃんを産むことを夢見る。だが、香港の一部の母親たちにとってはまさに悪夢となっている。
中国本土からは毎年数万人の妊婦が香港を訪れ、出産している。昨年、香港で生まれた赤ちゃん8万131人のうち、中国本土から来た妊婦の赤ちゃんは3万8043人に上った。

香港で赤ちゃんを出産すれば、子どもは英国の元植民地で半自治権を有し、比較的自由な香港に住んで香港で教育を受ける権利が得られるからだ。また中国本土の一人っ子政策に対する抜け道にもなっている。

そのため香港の産科の限られたベッドは満杯になり、出産費用を押し上げている。最近香港では、本土から妊婦たちが大量に押し寄せてくることに抗議するデモ行進も行われた。
この問題は辰年に最高潮に達する見込みだ。12年に1度の辰年はたいていベビーブームの年になる。公式統計によれば、前回の辰年である2000年には、出生者数は前年比で5.6%増加した。

■当局が対策に乗り出すものの…
今年ベビーブームが起きると予測されることから、中国当局は香港に入るための規則を厳しくし、境界管理を強化し、本土の妊婦のためのベッド数に制限を設けた。
これに対し、報道によると、中国本土の妊婦たちは大きめの服を着て妊娠を隠して香港入りしようとしたり、妊娠初期に香港での生活を始めることで妊娠の発覚を防ごうとしているという。

どうしても香港で出産したい一部の女性は、ぎりぎりまで我慢して、香港の救急病棟に無理矢理かけ込むという手段に出ている。病院関係者によれば昨年の緊急病棟での出産は3倍増だった。

香港の産科問題グループの広報を務める医師は、中国本土の女性たちは自分と赤ちゃんの命を危険にさらしていると懸念する。同医師は、公共病院では産科のベッドの予約が今年は15%増加していると述べ、香港での出産人数は10万人に迫るだろうと予測した。【1月24日 AFP】
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中国国内でも、上海人のプライドの高さに対する他の地域の住民の批判・やっかみがありますが、本土と香港となれば、過去の歴史、「一国二制度」の現状もあって、両者の感情に屈折したものがあっても不思議ではないところです。

なお、台湾でも中国本土観光客の増大とともに、そのマナーの悪さが問題となり、台湾側に“「我々とは違う」との意識”を強めているとの指摘もあるように、マナー向上は中国にとって急務です。
中国人のマナー意識の欠如は、拝金主義的な社会問題、自己中心的な外交・軍事問題とも相通じるものがあります。
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ロシア  プーチン首相が掲げる“「警察国家」からの脱却”、“市民との対話”

2012-01-19 22:04:29 | 世相

(昨年12月24日、モスクワでの抗議集会  描かれているプーチン首相が頭にしているのはコンドーム 抗議行動のシンボル「白いリボン」を、プーチン首相が「あれ(白いリボン)を最初に見たときはエイズ予防のために使われる避妊具だと思った」と皮肉ったことからのもです。“flickr”より By Yana Sarna http://www.flickr.com/photos/60647723@N02/6568857961/

焦点はプーチン首相の一発当選
ロシア大統領選挙はが3月4日に行われます。
欧米からは、その強権的体質への批判もあるプーチン首相ですが、ロシア国内的には“社会の安定と強いロシア”が一定に評価されており、大統領復帰がほぼ確定しているということで、話題的にはあまり面白みがありません。

そうしたなかで、昨年の下院選後に起きた与党への大規模な抗議集会が示したプーチン批判が、どの程度投票にあらわれるか、その結果、第1回投票で過半数割れが起きるのか・・・という点が注目される点です。

****プーチン氏、依然優位 大統領選対立候補、ほぼ固まる*****
3月4日投票のロシア大統領選で、4年ぶりの復帰をめざすプーチン首相に挑む他候補の顔ぶれが18日、ほぼ固まった。昨年の下院選後に与党への大規模な抗議集会があり、プーチン氏が第1回投票で当選に必要な過半数の票を得られるかが焦点になっている。

立候補が確定しているのはプーチン氏のほか、共産党のジュガノフ委員長、民族右派「自由民主党」のジリノフスキー党首、中道左派「公正ロシア」のミロノフ前上院議長。
下院に議席がないリベラル政党「ヤブロコ」創設者のヤブリンスキー氏や、実業家で大富豪のプロホロフ氏、イルクーツク州知事のメゼンツェフ氏が立候補を表明。議席のない政党や自薦の候補は立候補に200万人の署名が必要で、3人は受け付け締め切り日のこの日午後、中央選挙管理委員会に署名を提出した。有効と確認されれば立候補が認められる。

ただ、プーチン氏の有力な対立候補は見当たらない。全ロシア世論調査センターの7、8日の調査では、プーチン氏に投票すると答えたのは48%で、抗議集会があった昨年12月時点に比べて3〜6ポイント上昇。これに対し、ジュガノフ氏10%▽ジリノフスキー氏9%▽ミロノフ氏5%▽プロホロフ氏3%▽ヤブリンスキー氏2%となっている。

下院選でプーチン氏の与党「統一ロシア」への批判票を共産党や公正ロシアに投じた都市中流層の票は、ヤブリンスキー氏やプロホロフ氏に流れるのではないかとみられている。今後、ジュガノフ氏ら下院に議席を持つ政党の候補者が支持率を上げる状況になれば、プーチン氏の一発当選は厳しくなりそうだ。

ただ、プーチン氏は昨年12月10日の抗議集会後、国営テレビでの国民との直接対話で下院選の不正疑惑に対し、大統領選では約9万カ所の投票所にウェブカメラを設置してインターネットで流すと約束。「双頭体制」を組み、首相に転じる予定のメドベージェフ大統領も政党登録の緩和や知事公選制復活など選挙改革に着手するなど、支持離れの食い止めに努めている。

第1回投票でどの候補者も過半数の票を得られなければ、3月25日に上位2人の決選投票となる。2位につける可能性が最も高いジュガノフ氏が決選投票で勝つには、野党勢力の結集が不可欠。しかし、「リベラル野党は大規模な市民の抗議集会を政治的に利用しようとしている」などと批判を展開。主義主張が違い、歩み寄りは難しいのが現実だ。

最大の問題は選挙の「透明性」の裏付けとなりそうだ。野党勢力は投票後の街頭デモを呼びかけており、プーチン氏が過半数をぎりぎりで確保するような局面になれば、再び大規模な抗議行動に発展する可能性もある。【1月19日 朝日】
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成長する中流層が「政治的に物言う時が来た」】
“議席のない政党や自薦の候補は立候補に200万人の署名が必要”というのは厳しい条件で、次回以降は緩和する方向が、昨年末のメドベージェフ大統領の年次教書演説で示されてはいます。

プーチン体制批判の声をあげているのは、ロシア社会でも次第に増大しつつある中流階層が中心と見られています。

****プーチン氏いまだ盤石、不満の行き場なし****
「物言う モスクワ!」
集会を伝えた反政権紙ノーバヤ・ガゼータは、1面の見出しを、こう掲げた。
90年代の混乱を「自由の代わりに安定をもたらす」という図式で立て直したプーチン体制に、市民が声をあげたといえる。我々の声を尊重しろ、と。

もともとは野党勢力が呼びかけた集会だが、主役はふつうの市民だった。
下院選で共産党や中道左派「公正ロシア」へと、政権批判の票を投じた層だ。中道の政権与党「統一ロシア」と民族右派、さらに左派系という今のロシアの政治ではすくいとれない「行き場のない有権者層」だとみられている。大規模集会を許可した当局も、民意の動きを感じ取っている。

成熟社会の基盤である中流層は、安定した暮らしのもとで民主的な政治を求める。政治学者のラジホフスキー氏は「中流クラスは2000年代の原油高騰期に生まれた。そしていま、政治的に物言う時が来た」と指摘する。
ロシア国営保険会社の調査では17%とされるが、都市部では3割に達しているとする専門家もいる。欧米では「中流の崩壊」で街頭デモが起き、ロシアでは中流の形成でデモが起きる。来春の大統領選に向け、中流層の取り込みがいっそう活発になるのは確実だ。

ただし、ロシアはユーラシア大陸に広がる多民族国家だ。中流が育つ都市部と、なお「安定」が優先される地方とでは、地殻変動に時間差がある。
集会があった10日と翌11日に全ロシア世論調査センターが実施した調査では、大統領選での投票先はプーチン氏が42%を占めた。2位のジュガノフ共産党委員長の11%を大きく引き離した。プーチン氏の支持基盤は固いものの、行き場のない不満を市民に抱かせたままでの「大統領復帰」になるとの見方が強い。【11年12月22日 朝日】
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【「この記事は対話への招待状だ」】
当然、プーチン首相・政権側も、こうした新たな動きには反応は示しており、冒頭記事にあるような、投票所にウェブカメラを設置して透明性を確保することや、知事公選制復活、政党登録要件の緩和などが打ち出されています。

また、プーチン首相は12日、インターネットにマニフェスト(政権公約)を発表し、「警察国家」からの脱却を提案しています。
****警察国家」脱却を目指す=プーチン氏が政権公約―ロシア大統領選****
3月4日のロシア大統領選に出馬し、返り咲きが確実視されるプーチン首相(前大統領)は12日、インターネットにマニフェスト(政権公約)を発表した。この中で、治安機関の抑圧姿勢を改めるべきだと主張、「警察国家」からの脱却を提案した。

同国では昨年12月の下院選後、政権与党・統一ロシア側による不正疑惑に対する抗議デモが続発し、多くの拘束者を出した。公約は野党勢力や国民の不満に一定の配慮を示した形で、大統領選に向けて批判をかわす狙いがありそうだ。【1月13日 時事】 
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更に、プーチン首相は有力紙への寄稿で、市民に対話を呼び掛けています。
****プーチン氏、市民に対話呼びかけ…有力紙に寄稿****
3月のロシア大統領選に立候補しているプーチン首相は、16日付の有力紙「イズベスチヤ」に「ロシアは集結する――対応すべき課題」と題した長文を寄稿し、安定成長の継続に向けた施策を示すとともに、市民に対話を呼びかけた。

昨年12月以降、プーチン氏の長期支配に反発する大規模抗議運動が広がったことへの事実上の回答で、「革命」や「短期のスローガン」でなく、国民が団結して「持続的な発展」を目指すよう呼びかけたのが特徴だ。
論文は、市民が政策決定に関与することの重要性を指摘した上で、「この記事は対話への招待状だ」とした。

重点施策としては、資源依存経済から脱却し「新しい経済の形成」を目指すことを挙げ、高等教育を受けた若者のため、「2500万のハイテクで高給の職」を創設すると公約した。人口の約10%を占める貧困の問題を2020年までに解決するともうたった。【1月16日 読売】
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プーチン首相はこの寄稿文で、プーチン批判の中心いる中間層について、「中流層はこの先も育たなければならない。我々の社会で多数派にならなければならない」とも述べています。

“「警察国家」からの脱却”も、“市民との対話”は非常に結構な話ですが、問題は実効性です。
ロシアでは政権に批判的なジャーナリストが命を狙われ、その犯人は闇の中です。
また、これまでも、プーチン首相のイメージアップのための、事前に演出された“対話”は行われてきました。
そのあたりが、大統領復帰後どのように変化するのでしょうか?

【「頼むから、政界から去ってくれ」】
“対話”は、自分への批判に聞く耳を持たなければ成立しません。
プーチン首相が開設したウェブサイトに批判が殺到したそうですが、強面のプーチン首相(大統領)がこうした批判にキレることなく、その意図するところを受け止めることができるのか・・・やや疑問です。

****プーチン露首相、ウェブサイト開設したら「やめろ」コメント殺到****
3月のロシア大統領選で大統領復帰をめざすウラジーミル・プーチン首相(59)が12日、インターネットへの歩み寄りをアピールしようとウェブサイトを開設したところ、批判コメントの逆襲という憂き目にあっている。

これまでインターネットを懐疑的な目で見てきたプーチン首相だが、選挙運動の一環として開設されたサイトには、アイスホッケーのヘルメットや柔道着姿のプーチン首相やスキーで雪山を滑り降りる写真のほか、大統領選のマニフェストやプーチン氏の略歴が掲載されている。
さらに、サイトの訪問者がコメントを書き込み、閲覧者がそれを評価できるコーナーもあるが、開設早々からサイトはプーチン首相を批判するコメントであふれた。

「心からのお願い」と題されたコメントは、「頼むから、政界から去ってくれ。権力には麻薬的な魅力があることは分かるが、引退こそが威厳ある行動だ」と、プーチン首相に懇願する。
ほかにも、「現在、あなたが国のためにできる最良の行動は、大統領選への出馬を取り消すことです」、「状況を革命のような事態に発展させたくないなら、首相も大統領選への立候補もやめるべきだ」などのコメントが書き込まれた。
これら3コメントは12日現在、最も支持されたコメントのトップ5に入っている。

一方、トップ5コメントの全てがプーチン批判ではない。「大統領選での当選を願っています!あなたは世界で一番素晴らしい方です!」とプーチン首相を称賛するコメントもトップ5入りしている。

プーチン首相は以前、インターネットの50%は「ポルノ」であふれているなどとネット批判を展開していた。だが、最近になって批判姿勢を緩め、忙しくてパソコンに向かう時間がないだけだなどと弁解している。【1月13日 AFP】
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【「『馬鹿』の中にメドベージェフとプーチンを入れよう」】
一方、プーチン首相よりはネットに触れる機会がありそうなメドベージェフ大統領は、「馬鹿のいないロシア」という、国民による官僚主義告発サイトを開設するそうです。

****告発サイト「馬鹿のいないロシア」 大統領が開設へ****
「馬鹿のいないロシア」――。そんな名前のインターネットサイトをメドベージェフ大統領が開設する方針だ。官僚主義的な公務員や行政機関を国民に告発させるのが目的だが、下院選をめぐる与党の不正疑惑などで高まる政権批判をかわそうとする意図も透ける。

複数の地元メディアが報じたところによると、サイトは間もなく開設されるという。利用者は公務員や行政機関のひどい仕事ぶりを実名を挙げて投稿。サイト運営側が投稿データに基づいて地域ごとに「馬鹿の平均値」を算出し、公表するという。悪質な場合は罰則も検討されている。
ロシアでは公務員の非効率で官僚主義的な仕事ぶりが問題となっている。行政手続きが複雑で時間がかかり、賄賂の授受も珍しくない。ソ連時代からの悪弊とも言われている。

サイト開設の背景には、与党による下院選の不正投票疑惑や、プーチン首相とポストを「交換」することへの批判を「官僚たたき」でかわす狙いもあると見られる。だが、インターネットでは、「『馬鹿』の中にメドベージェフとプーチンを入れよう」など、冷ややかな見方が広がっている。【1月19日 朝日】
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中国  烏坎(ウーカン)村争議リーダーが党支部書記に 中国共産党は変わるのか?

2012-01-18 21:50:49 | 世相

(昨年12月 広東省・烏坎村の住民による抗議行動 “台湾公義網” http://taiwanjustice.com/?p=4130 より)

【「我々は法が認める公正と公開の原則を求めているだけ」】
中国社会の抱える大きな問題のひとつが、地方政府レベルでの腐敗・汚職・人権無視が絶えず、土地収用や環境問題などを巡って住民と対立、暴動になるケースも頻発していることです。
単に、地方の役人や共産党幹部の個人的問題だけでなく、住民の意思が地方政府に反映されない事実上の共産党一党支配の政治システムに起因する問題です。

昨日も、下記の報道がありました。
****中国党支部不正に反発、村長が郷政府庁舎に放火****
香港の人権団体・中国人権民主化運動ニュースセンターは16日、中国河北省承徳県で15日、県内の村の村長が上部機関である郷政府の庁舎に放火したと伝えた。
村長は村トップの中国共産党支部書記の不正を訴えるため、庁舎を訪れていたという。放火で郷長らが重傷を負った。村長は公安当局に拘束された。【1月17日 読売】
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住民の抗議行動に対しては“鎮圧”で臨むのが地方当局側の姿勢ですが、そんななかで昨年注目されたのが広東省・烏坎(ウーカン)村での“事件”でした。
昨年12月22日ブログ「中国  広東省烏坎村の地方当局への「反乱」 党側が自治組織を「合法」と認める」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111222)で取り上げたように、共産党地方幹部の横暴に反発し村民たちが自主選挙で発足させた自治組織を、省党幹部が「合法」と認める譲歩を勝ち取っています。

烏坎村のケースでは、住民運動を暴発させることなく長期間にわたってまとめ上げた指導者の力量が勝因でしたが、その争議リーダーが村の党支部書記に任命されたそうです。

****争議リーダーが党支部書記に 幹部更迭の広東省・烏坎村****
昨年、3カ月にわたる争議の末、村幹部を更迭に追い込んだ広東省・烏坎(ウーカン)村で新しい共産党村支部が発足し、トップの書記に争議で村人をまとめた林祖鑾さん(65)が任命された。非暴力と団結力で政府の譲歩を勝ち取った「烏坎村」モデルは、各地の住民を勇気づけている。

調停のため村に入っている省の作業チームが15日、発表した。指導部は村内の130人余の党員の推薦や村民への聞き取りなどを経て、同村を管轄する東海鎮党委員会から任命された。
林さんは19歳で共産党に入党した「老党員」だが、政府に抗議する住民運動の中心にいた人物が村トップに起用されるのは極めて異例だ。
争議の間、冷静な判断と温厚な人柄で村民をまとめた林さんの就任に、35歳の村民は「多くの人が手をたたいて喜んだ」と話す。

村レベルの党幹部は本来、党員による選挙で選ばれる。省作業チームは、汚職などの疑いで更迭された前党支部書記の下で行われた昨年2月の選挙に不正があったとして無効とし、近く選挙をやり直すと約束。林さんが率いる新しい支部が選挙準備を進める。

争議の間、林さんは「我々は法が認める公正と公開の原則を求めているだけ。党にできないはずはない」と訴え、住民の党への感情的な対立と暴力的な動きを抑え、世論を味方につけながら団結を保った。
最後は省のナンバー3を交渉に引き出し、村幹部の更迭や拘束された村民の釈放、自治組織の身分の保障を勝ち取った姿は、全国の注目を集めた。事件以降、成功体験を聞こうと、省内外の人権活動家や住民代表らが駆けつけ、影響は広がっている。

「烏坎村に学べ」。
香港紙によると、福建省晋江市の渓辺村で今月2日、イスラム教徒の回族住民千人余りが横断幕を手にデモ行進した。村の党書記が土地を勝手に売買し私腹を肥やしてきたことへの抗議だ。火力発電所の建設を巡り住民と警察隊が衝突した広東省スワトー市海門鎮では、住民は「烏坎村の訴えを認めたのになぜ海門ではできない」と抗議。当局が建設計画の中止と村民の釈放を認めやっと事態は収まった。

広東省トップの汪洋・党省委書記は今月初め、烏坎村事件への対応を「すべての村レベルの組織建設の手本とする」と述べた。
ネットの普及で内外世論の監視が厳しくなる中、当局の住民運動への対応が曲がり角にさしかかっていることを示すが、締め付けが弱まれば住民の不満が噴き出すリスクもある。ほかの地方政府が追随するかどうかは不透明だ。

共産党機関紙人民日報は年末、「烏坎村事件は何を教えているか」との評論を掲載。各地の暴動の多くは党組織が住民の訴えをくみ取っていないことが原因だとし、「この問題をいかに解決するかが指導者としての能力の試金石だ」と、矛盾の芽を早く摘むことこそ重要だと地方幹部を戒めた。【1月16日 朝日】
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ポピュリズム路線への転換
住民側の統率のとれた抗議活動と同時に、これを最終的に容認した広東省トップの汪洋・党省委書記の対応も注目されます。
汪洋・党省委書記は党中央政治局常務委員会入りが有力視されている人物ですが、そうした人物の柔軟な対応は、今後の中国共産党の変革を示唆するものでしょうか?

****中国「民衆の味方」はどこまで本物か****
中国南部の広東省に昨年末、民衆の強い味方が現れた。
同省にある小さな漁村、鳥炊では、農地の強制収用を発端とした抗議活動が続いていた。そこへ村民の擁護者として名乗りを挙げたのが、省トップである汪洋広東省党委員会書記だ。汪は警官隊による包囲をやめさせるため、部下を派遣。村民の憤りは正当なものだとも主張した。

中国では、今年秋に新体制がスタートする。汪は、最高意思決定機関の共産党中央政治局常務麦員会入りが有力視されている人物。その汪が民衆に味方するのは、中国で「民衆の力」が強大になった証拠なのか。
香港中文大学の歴史学教授で中国事情に詳しいウィリー・ラムによれば、答えはノー。「中国では抗議活動が日常茶飯事だ。各省のトップには独自の問題解決法があるが、国家レベルでも省レベルでも最も多用される方法は相変わらず『弾圧』だ」

とはいえ汪の対応は中国の次期指導層に広がる新たな動きを示していると、ラムは言う。すなわちポピュリズム路線への転換だ。「汪はこの4年間、新しい考えを持つ改革派というイメージを打ち出してきた。村民の味方をすれば、イメージにプラスになると判断したのだろう」【1月18日号 Newsweek日本版】
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“ポピュリズム路線への転換”なのかどうかはともかく、党中央も馬鹿ではないので、変容する社会に対応していくためには党も一定の変革をしていかなければならない・・・という認識はあると思います。

****中国デモ鎮圧、異例の妥協 党大会控え安定優先****
中国広東省で政策に不満をもつ住民のデモに、当局が要求を受け入れて妥協する異例の展開が相次いでいる。
22日付の中国紙、東方早報などによると、スワトー市で20日、火力発電所の建設に反対する4万人以上のデモを受け、同日夜に当局が計画を中止した。また陸豊市の村では21日、土地収用をめぐって3カ月続いた大規模なデモで、同省の党幹部と住民側の協議が成立して、騒乱は終結した。

中国の住民デモは、警察隊投入など力ずくで押さえ込まれるケースが大半。しかし、来年秋の共産党大会での指導部交代を控え、社会の安定維持が最大の政治課題になる中、当局が穏当な路線を試みた可能性がある。

スワトー市では、既存の発電所が汚水の放出で海洋汚染を起こし、住民が不満を募らせていた中で新たな発電所計画が発表され、大規模なデモが起きた。デモ隊は地元当局庁舎を占拠したほか、幹線道路を封鎖した。当局は警官隊を出動させたものの、計画中止を決めた。デモは22日になっても収まっていない。

同省陸豊市烏坎村では約40年もトップの座にあった共産党支部書記が、農民の土地使用権を勝手に開発業者に売却したり、選挙で選ばれるはずの村幹部の人事権を握ったりするなど横暴を極めた。反対派住民への暴行疑惑もあり、9月に大規模暴動に発展していた。

同紙などによると、いずれも事態打開に向けて早期解決を指示したのは広東省トップの汪洋党委書記。党大会まで社会の安定を維持したい胡錦濤指導部の意向も強く働いたとみられる。
しかし一方で、当局による今回の妥協が前例になれば、各地で住民によるデモが連鎖的に起きる危険性もはらんでいる。【11年12月23日 産経】
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かつての天安門事件のような国家体制を揺るがすような住民の直接行動(党中央の見方ですが)を極度に恐れる党中央ですが、地方レベルでの騒動に対する柔軟姿勢は“ガス抜き”になるとも言えますし、一方で、連鎖的に収拾困難な事態を招く恐れもあります。
安定優先の姿勢が党大会までの一時的な措置なのか、習近平次期体制で更に一般化するのか・・・そのあたりはよくわかりません。

ネット上には民主制度への強い興味
ただ、中国社会も今後大きく変容していくと思われます。
したがって、党の側がこれまでと同じ発想では限界に達することが容易に想像できます。
変容の萌芽は、先日の台湾総統選挙に対する中国国内の関心にも見られます。

****中国市民、台湾選挙「ネット観戦」 民主制度に強い興味****
14日投開票の台湾総統選には、中国の市民がネット上で高い関心を示した。サイトにかじりつき、思いをブログなどに書き込んだ。民主化を経て、直接選挙で指導者を選ぶ台湾の姿は、ネットを通してじわりと中国に影響を与えている。

「新浪」「捜狐」などの大手ポータルサイトは14日、そろって総統選の特集を組み、陣営の動きや開票状況を速報した。「中国版ツイッター」と言われる「微博」最大手の新浪微博には、選挙戦終盤から書き込みがひっきりなしに続いた。情勢をごく慎重に伝えた官製メディアとの違いは歴然だ。

「台湾が素晴らしい『公民』の授業を見せてくれている」「馬英九(マー・インチウ)も蔡英文(ツァイ・インウェン)も全力を尽くす姿に感動。権力を振りかざす大陸の官僚も見習ってほしい」との声が紹介された。「頻繁に選挙をすると社会が疲弊するのでは」といった意見も含め、ネット上には民主制度への強い興味がにじんだ。
中台関係の安定を掲げる馬氏の再選が決まると歓迎する声が出た。だが、興味は、結果よりも選挙の熱気そのものに向かい、統一か独立かといった「原則論」は影が薄かった。

ネット経由で聞いてみると、上海市の金融業の男性(27)は投票日までの数日間、「食事と睡眠以外はパソコンの前にいた」という。台湾メディアの動画サイトで選挙集会に見入り、「中華圏で実践されている民主の姿」を「うらやましい」とつぶやいた。

中国のネットユーザーは約4.9億人に達し、微博の利用者も1年で3倍に増えて2億人近い。1996年に始まった台湾総統の直接選挙の情報が中国に伝わる量も、急拡大している。

市民の政治意識の動向に詳しい中国のコラムニスト、唐明灯氏は「前回選挙で意見を発表したのはメディア関係者などが中心で、今回のような盛り上がりはなかった。意見を交わす微博の発達で人々の目が肥え、民主制度そのものへの理解が高まっているのを感じる」と話す。【1月16日 朝日】
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追記
“烏坎村に学ぶ動き”が、中国第3の都市の足元でも・・・・ということで、当局対応が注目されます。
****広州市庁舎で1千人抗議 中国反汚職デモ、都市部に拡大****
中国・広東省広州市の市庁舎前に17日から18日未明にかけ、同市白雲区望崗村の住民約1千人が集まり、村トップの更迭を求めるデモを行った。昨年末に平和的なデモで村幹部を更迭に追い込んだ同省烏坎(ウーカン)村に学ぶ動きが、中国第3の都市の足元でも起きた形だ。

「汚職を打ち倒せ」「畑を返せ」。のぼりや横断幕を掲げた村民たちが、市庁舎に入る車に向かって叫んだ。世間の関心を集めようと、朱小丹・広東省長が正式就任する17日にあわせて実施した。約200人の警官が警戒にあたった。
望崗村は市中心から約10キロの開発が進む郊外。デモを主導した黎洪鼎さん(32)らによると、村の共産党支部書記が2009年以降、村の畑の土を親族会社に売って116万元(約1400万円)を得たほか、地下鉄建設の補償金の一部を着服するなどして、村に約9億円の損害を与えたという。【1月18日 朝日】
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欧州経済、S&Pの格付け変更で先行き不安 フランス・サルコジ再選に痛手、存在感増すルペン候補

2012-01-16 21:43:37 | 世相

(フランス大統領選挙で、いよいよサルコジ大統領を脅かす存在になりつつある極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首 “flickr”より By Marine Le Pen 2012 http://www.flickr.com/photos/mlp_officiel/6362911551/
ルペン氏については、
11年3月7日ブログ「フランス  極右政党党首マリーヌ・ルペン氏 世論調査でトップに」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110307
11年1月18日ブログ「フランス  極右政党・国民戦線新党首にルペン氏三女 「ソフトな極右戦略」展開」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110118
でも取り上げたところです。)

欧州経済に冷や水を浴びせたS&Pの格付け変更
欧州の経済危機、ユーロ圏の動揺は今更言うまでもないことですが、単一通貨ユーロの運命は今年最初の数カ月で決まる・・・とも言われています。

“既に市場からの資金調達が困難になっているヨーロッパ各国の政府や銀行が、今年は前代未聞の莫大な借金の償還・返済期限を迎えるからだ。イタリアやスペイン、フランスといったユーロ圏の借金大国は、国債を売って1.1兆ユーロもの大金を(しかもその大半を今年前半のうちに)調達しなければならない”【1月18日号 Newsweek日本版】

そんな正念場を迎えて年明けは、12日に行われたスペイン国債入札が発行目標額の2倍に当たる金額を調達し、イタリア短期国債入札も順調で利回りが大幅低下するなど、“悪くない”出だしでした。

しかし、それもつかの間、米系格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が13日、ユーロ圏9カ国の国債の格付けを一斉に引き下げたことで、先行き不安が大きくなっています。

今回格下げの内容は繰り返し報じられているところですので省きますが、フランスが最上位の格付けである「AAA(トリプルA)」を失ったこと、また、フランスとは対照的にドイツなどには最上位の格付けを守り、「格差」ができたことが特徴です。

この独仏の格差については、“「すべての国が格下げされれば、結束して問題に立ち向かうことになるだろう。しかし、これでは話し合いをかえって難しくしてしまう」と英国の専門家は指摘する”【1月15日 朝日】とも報じられています。
ドイツは自国にしわ寄せが今以上に及ぶことを警戒しますし、欧州の中心国としてのプライドが傷ついたフランスは、サルコジ再選戦略をも危うくしそうです。

****ドイツ、負担増警戒 ****
「我々が投資家の信頼を勝ち取るまでには時間がかかるという私の確信を、格下げの決定で改めて確認した」。メルケル独首相は14日、ドイツ北部のキールでの記者会見でこう述べた。
盟友のフランスが格下げとなり、ドイツは財政危機の国々からいっそう頼られることへの警戒を強めている。

域内最大の経済大国ドイツはユーロ危機にあたり、フランスと協調して対応を主導してきた。問題は、格下げが、いまの態勢に水を差さないかどうかだ。「影響は限定的」という声が強い一方、フランスがより厳しい立場になることで、ドイツがこれまで以上の負担を求められるという見方も出ている。

このため、ドイツはこれまでユーロ圏全体で積み上げてきた対策を着実に実行に移し、各国の連携を強めていくことが必要だと強調する。「ユーロ圏に対する市場の不安感は別に新しいものではない。そのために我々はユーロ圏の安定に全力投球で努めてきたのだ」。格下げが明らかになった13日夜、ショイブレ財務相は独メディアにこう話し、財政規律を強めていくことなどの方針を今後も継続していく考えを示した。

ドイツはこれまでも世論の不満をなだめつつ、ギリシャの救済策や、財政危機の国を助けるための欧州金融安定化基金(EFSF)に最大額の負担をしてきており、さらなる負担増に対しては連立与党内からの反対が強い。高成長をほこってきたドイツ経済も、今年は成長が鈍るとの見込みもあり、負担増の受け入れは容易ではない。【1月15日 朝日】
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フランスでは“4月の大統領選を前に、格下げは政権批判の材料になっている。支持率でサルコジ氏に迫る右翼政党・国民戦線のルペン候補は「ユーロ圏から脱退し、旧通貨フランを取り戻すべきだ」と言い切る。内向きの主張にさらに人気が出れば、政権が足を引っ張られ、ユーロ圏のリーダーとしての振る舞いを十分にできなくなるおそれがある”【1月15日 朝日】とも。

ギリシャのデフォルト懸念が再燃
そうした欧州・ユーロ圏の枠組みが揺らぐなかで、再びギリシャのデフォルト懸念が再燃しています。
****不履行の恐れ再燃 ****
ユーロ圏の要だったフランスが格下げされたその日、ユーロの分裂につながりかねない事態が起きていた。支援を受けているギリシャが、債務不履行に陥るおそれがまた強まったのだ。

欧州連合(EU)と主要金融機関は昨年10月、民間投資家が自ら、所有する2千億ユーロ(20兆円)のギリシャ国債について50%の損を受け入れることで大筋合意。その前提でEUと国際通貨基金(IMF)がギリシャに支援をすることにした。
これでギリシャの借金は減り、どうにか返済し続けられるようになるとの皮算用だった。窓口となった国際金融協会(IIF)とギリシャ政府は投資家が結果としてどのくらい損するか詰めてきた。

しかし、その後のギリシャの景気の悪化で、民間投資家が60%損しないとうまくいかないと報道されるようになった。IIFの影響力がないと言われる4割の投資家が合意するかどうかにも不透明感が出てきた。IIFは13日、ギリシャ政府との交渉を中断した。

このまま交渉が止まれば、ギリシャが3月までに迎える159億ユーロの借り換えができなくなり、債務不履行になる可能性がある。
その場合には、危機が波及するとの連想から、イタリアやスペインなど、より規模の大きい国の国債がさらに売られかねない。

とくに、ユーロ圏第3位の経済規模を持ち、2〜4月に1500億ユーロにのぼる債務の借り換えが待つイタリアに注目が集まる。「イタリアがおかしくなれば新たな危機だ。そしてイタリアのリスクは、ギリシャの状況が悪化するかどうか、債務不履行になるかどうかにかかっている」と独ベーレンベルク銀行のエコノミスト、クリスティアン・シュルツ氏は言う。(後略)【1月15日 朝日】
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独仏の協調がうまくいかなくなり、フランスのような支援をする側まで信用が低下すれば、ユーロ圏内で他国のことを考える余裕が薄れ、ギリシャやイタリアなど深刻な問題を抱える国が行き詰ってしまう・・・という事態を招きかねません。それはひいては欧州・ユーロ圏経済の破綻、更には世界経済の危機を意味します。
S&Pの格付け変更について、オーストリア中央銀行のノボトニー総裁は「この数週間、欧州で見られた進展を狂わせることにならないかと懸念している」とメディアに語っています。

サルコジ大統領:「トリプルAを失えば自分は死ぬ(終わりだ)」】
ところで、再選を控えて、フランス・サルコジ大統領の支持率は低迷しており、社会党のオランド前第1書記と1位を争うと言うより、極右政党・国民戦線党首のルペン党首と2位を争うような状況です。最低でも2位は死守しないと決選投票に残れません。

****サルコジ仏大統領:選挙意識?「ジャンヌ・ダルク」で熱弁****
サルコジ仏大統領は6日、英仏百年戦争の英雄ジャンヌ・ダルクの生誕600周年を記念して生誕地の東部ドムレミーなどを訪れ、「ジャンヌ・ダルクはどの政党にも属さない」と演説した。「移民排斥」を訴える極右政党・国民戦線がジャンヌ・ダルクを崇拝していることから、4月の大統領選に向けて右翼支持層の取り込みを狙った動きではないかと取りざたされている。

15世紀に英軍包囲下にあった仏中部オルレアンを解放したジャンヌ・ダルクは国家統合の象徴とされる。サルコジ氏は国民戦線を念頭に「国家統合の象徴を、国家を分断させようとする者たちに使わせてはいけない」と熱弁を振るった。
サルコジ氏は大統領選への正式な立候補表明はしていないが、出馬は確実。仏メディアに「国家元首として、フランスに自由と偉大さをもたらした功労者に敬意を表するのは当然だ」と説明したが、選挙をにらんだ政治的な思惑がちらつく。

これに対して国民戦線党首のルペン候補はAFP通信に「私の方が(選挙目的のサルコジ氏よりも)心は純粋だ」と皮肉った。最新世論調査によると、大統領選候補者の支持率は社会党のオランド前第1書記27.5%、サルコジ氏24%、ルペン氏20%で、3氏がしのぎを削る構図だ。【1月7日 毎日】
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そんなサルコジ大統領にとって、フランスのトリプルAの格付けは自信のよりどころともなっていただけに、今回の格下げは大きな痛手となっています。

****仏国債格下げ:サルコジ氏に痛手…大統領選、野党が攻勢****
米格付け会社によるフランス国債の格下げは、4月に大統領選を控えて支持率低迷にあえぐサルコジ大統領にとって大きな痛手だ。07年の当選以来「強い経済の復活」を訴えてきただけに、政権への信任を揺るがしかねない。格付けでドイツと格差が付いたことも大統領に衝撃を与えている。

バロワン財務相は13日、仏テレビ番組で「経済政策を決めるのは格付け会社ではなく政府だ。格下げによって新たな緊縮策を取ることはない」と述べ、格下げによる影響の大きさを否定した。
これに対し、最大野党・社会党のオブリ第1書記は声明で「(適切な施策を行えば)本来避けられた事態だ」と大統領を批判した。またAFP通信によると、国民戦線のルペン党首も「国家を守る大統領という神話の終わりだ」と切り捨てるなど、選挙を念頭に攻勢を強めている。

大統領は格下げが取りざたされ始めた昨年12月以降、「乗り越えられないものではない」などと発言してきた。
側近が最上位のトリプルAの格付けを「国宝」と語るなど、自信のよりどころにしてきた。仏紙によるとサルコジ氏は昨年、「トリプルAを失えば自分は死ぬ(終わりだ)」と漏らしていたという。【1月14日 毎日】
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経済専門家からもサルコジ財政の失敗が指摘されています。
****仏国債格下げは「失敗した緊縮策への警告」 専門家の目****
■シンクタンク「テラ・ノバ」研究員 トマ・シャリュモー氏
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が仏国債の格付けを下げたことは、フランスの国内政治に大きな影響を与える。どのような財政再建策が妥当なのかが、次期大統領選の主要な争点になるからだ。
格下げで、フランスの政府債務(借金)が深刻な状況にあることが再確認された。サルコジ政権が2年前から始めた緊縮策が不適切だったとの警告だと受け止めるべきだろう。

政府債務は、2007年に発足したサルコジ政権下で約6千億ユーロ(約59兆円)増えた。主因は、富裕層や大企業を優遇するような税制改革の失敗だと思う。経済成長を後押しするための財源が細ってしまった。
格下げに伴い、仏国債の利回りは4%台に上昇するとみられる。財政赤字が今後1年〜1年半に限っても20億〜30億ユーロ増えるとみている。政府系の機関や地方自治体にも影響が及び、厳しい財政運営を迫られるのは必至だ。サルコジ政権は国民の信頼をさらに失うことになりそうだ。【1月16日 朝日】
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ルペン候補:「ユーロ脱退、自国通貨フランの復活」】
更に今回格下げは、「脱ユーロ」を主張する国民戦線のルペン候補を勢いづかせています。
****仏大統領選、右翼政党に勢い 国債格下げで脱ユーロ主張****
13日に発表された米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるフランス国債の格下げが、2大政党が政権を争う4月の仏大統領選を揺さぶり、対立を先鋭化させている。ただし両党ともユーロ圏の再建を目指す立場は同じ。勢いづくのは「脱ユーロ」を主張する右翼政党だ。

「(最高位の格付けの)『AAA』を守るというサルコジ氏の闘いは敗北に終わった。(負けたのは)フランスそのものではない」。政権交代をめざす最大野党・社会党のオランド候補は14日、パリの選挙事務所でこう語った。

これにサルコジ氏再選を後押しするフィヨン首相がかみついた。15日付の仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュのインタビューで「歳出増と増税しかない(社会党の)選挙公約を格付け会社がどう評価するか見ものだ」と皮肉った。サルコジ政権が近く、労働時間の短縮の見直しなど、ドイツ並みの競争力を取り戻す施策を矢継ぎ早に打ち出すことを示唆した。

ただし、財政をしぼりつつ、経済成長も実現するという難題に明確な答えがあるわけではない。そこで存在感を増すのが、右翼政党・国民戦線のルペン候補だ。
13日の格下げ発表直後からテレビに出演し、「ユーロ圏分裂の第1段階だ。オランドもサルコジも(中道政党の)バイルも解決策を持たない。景気を悪化させる財政の締め付けをやるだけだ」と息巻いた。
大統領選に向けた公約では「ユーロ脱退、自国通貨フランの復活」を主張。国境管理や移民制限の強化で財源を生み、低所得者や中間層に再配分するという。

他党は「ポピュリズム策の羅列」と批判するが、13日付ルモンド紙に載った世論調査では「国民戦線の考えに同意」が31%。1年前の22%から跳ね上がった。IFOP社の大統領候補の支持率調査でも首位オランド氏の27%、サルコジ氏の24%に対し、ルペン氏は21.5%を占めた。

国立統計経済研究所(INSEE)は、今年1〜3月期には0.1%のマイナス成長に陥り、失業率が10%に近づくと見込む。景気後退が始まっているとの見方も強い。格下げで経済運営がいっそう難しくなれば、愛国心をあおるような国民戦線の主張になびく土壌が広がりそうだ。【1月16日 朝日】
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いいポピュリストと悪いポピュリスト
ポピュリズムと批判される国民戦線・ルペン党首ですが、ポピュリズム云々について言えば、サルコジ大統領にも同様の評価があります。

***民意の空白を熱狂が埋める〈カオスの深淵****
・・・・サルコジ氏を揺さぶるのは、もう一つの「ポピュリズム」と言われる政治勢力だ。
「フランス人は裏切りにうんざりしている。私は実行します」。昨年12月11日、ドイツ国境に近いロレーヌ地方のメッス市。ユーロ脱退を掲げる右翼政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が、大統領選に向けた活動を始めた。
「庶民の声」と記された標語をバックに移民が治安を乱して富を奪うとの持論を展開、2大政党を批判した。鉄鋼業など産業が活発なこの地域をスタート地に選んだのも、工場の閉鎖や海外移転でサルコジ氏に失望した労働者らの支持を広げるためだ。

差別を内包するFNだが昨春の地方選で第3党となった。国鉄職員でFNのロレーヌ地方議員のティエリ・グルロさん(52)は、「ポピュリストが国民の代弁者ならマリーヌはいいポピュリスト。うそつきのサルコジは悪いポピュリストだ」と断じた。

ポピュリストに投じて失望し、次のポピュリストへ。ポピュリズムは再生産され、拡大する。欧州選挙運動を研究するパリ政治学院のドミニク・レニエ教授は「不満は暴力的な段階に突入する」と警鐘をならす。【1月3日 朝日】
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今の勢いだと、移民排斥・ユーロ脱退を掲げる右翼政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が第1回投票でサルコジ大統領を蹴落として決選投票に進む・・・という事態もあながちありえない話ではなさそうです。
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イギリス  スコットランド独立を問う住民投票を巡る議論

2012-01-11 21:02:39 | 世相

(スコットランドの首都エディンバラのロイド銀行屋上に掲げられたユニオンジャックとスコットランド国旗 “flickr”より By lightroomphotos http://www.flickr.com/photos/lightroomphotos/5641664072/

自治政府首相:住民投票を「2014年秋に行うべきだ」】
“スコットランド王国は、グレートブリテン島の北部、現在のイギリスのスコットランドに存在した王国。
843年にケネス1世により成立したとされ、1707年のイングランド王国との合同で消滅した。
ステュアート朝のジェームズ1世が1603年にイングランド王位を兼ねて以来、イングランドとは同君連合の関係にあったが、アン女王時代の1707年の連合法により、イングランド王国と合同してグレートブリテン王国となった”【ウィキペディア】ということで、スコットランドがイングランドと政治的に一体化したのは、“わずか”300年ほど前にすぎません。

文化的にみると、ゲルマン系のアングロ・サクソン人がイングランドを中心にブリテン島に進出する以前からこの地に住んでいたケルト系の民族の文化がイングランド以外の地域に残存しており、スコットランドもそのひとつです。
“イギリス”と言えば連想するキルトやバグパイプもスコットランドの伝統文化であり、イングランドと一体化した18世紀中盤には、この地域の言語であったゲール語とともに、キルトやバグパイプも禁止された歴史もあります。

イングランドとスコットランドの対抗意識は日本人にはなかなか分かりづらいものがありますが、今も“スコットランド独立論”が存在し、07年のスコットランド議会選挙ではスコットランドのイギリスからの独立を主張するスコットランド国民党(SNP)が労働党を抑えて第一党になり、スコットランド自治政府の首相にもSNP党首が就任しています。

こうした、スコットランド独立論については、07年12月17日ブログ「イギリス  スコットランド独立って本当にあるのか・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071217)でも取り上げたことがありますが、昨年5月の選挙では、労働党を切り崩してSNPが単独過半数を獲得、スコットランド独立を問う住民投票の実施についての論議がイギリスで高まっています。

****14年に独立問う住民投票=自治政府首相が表明―スコットランド****
イングランド、ウェールズ、北アイルランドと共に英国を形成するスコットランドの独立をめぐり、スコットランド自治政府のサモンド首相が10日、住民投票を「2014年秋に行うべきだ」と表明した。英テレビに語った。

スコットランドでは昨年5月の議会選で、サモンド首相率いるスコットランド民族党(SNP)が初めて過半数を獲得した。300年前に失われたスコットランドの独立を取り戻すことは同党の悲願。いずれ住民投票を行うと約束していた。

ただ、AFP通信によれば、世論調査では必ずしも独立支持が半数を超えていない。このため、キャメロン首相はじめ英政府は、住民投票実施は容認する構えだが、独立に「賛成」か「反対」かの二者択一に設問を絞り、できるだけ早く実施するよう促している。
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キャメロン首相:来年にも実施すべき
前半だけ読めば、スコットランド独立を主張するサモンド自治政府首相率いるスコットランド民族党(SNP)が早期に住民投票を実施しようとしている・・・というようにも思えるのですが、後半にあるように、独立を阻止したい連邦政府が早期の投票、それも権限移譲拡大といった曖昧な選択肢を除いた、YesかNoかの選択を迫っているというのが実態です。
キャメロン首相としては、完全独立支持がそんなに多くないのを見越して、「やるんだったら、早いとこ白黒つけようじゃないか・・・」といったところです。

****スコットランド独立の是非の早期決定を=首相****
キャメロン首相は8日、BBCのテレビインタビューの中で、スコットランド独立の是非を問う住民投票を来年にも実施すべきとの見解を示した。スコットランドと英国の将来が不透明なままでは企業投資にも悪影響を与えるとの理由からで、首相スポークスマンも9日、国内経済への損害を避けるためにも国民投票の早期実施を呼びかけている。

スコットランドでは昨年5月の議会選挙で、独立に向けた住民投票の実施を公約に掲げたスコットランド国民党(SNP)が過半数を獲得する躍進を遂げた。SNPは2014年の投票実施を望んでいるものの、先月の世論調査では完全独立に賛成する人は38%と、反対の58%を大きく下回っている。

キャメロン首相はスコットランド自治政府のサモンド首相を、「有権者が心の底では完全独立を望んでいないことを知っているため投票を遅らせようとしている」と批判している。
これに対してスコットランドのスタージョン副首相は、住民投票の進め方や時期について影響力を行使しようとするものと反発。「スコットランドの民主主義に干渉しようとすれば、独立への支持は大きくなるだろう」と話している。

英政府はスコットランド議会に対し、法的拘束力のある投票実施を提案することを検討している。ただスコットランド自治政府への権限移譲拡大は問わず、完全独立か否かの単純な投票とし、18カ月以内の実施を考えているとされる。【1月11日 NNA.EU】
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豊富な自然エネルギーで経済的自立の可能性
住民投票の話はさておき、SNPが議会で過半を制したようにスコットランドで独立論が高まっているのは、単に歴史的・文化的な問題だけではなく、自然エネルギー活用によって独立してもやっていけるという思いがあるようです。

****カオスの深淵〉自然エネルギー武器に独立論****
イギリス  10月19日、ロンドン。
英下院で、キャメロン首相が保守党の同僚議員を懸命になだめていた。「欧州連合(EU)への不満はわかる。だが、国民投票で脱退を問おうという考えは支持できない」
もともと欧州統合への反感が強い保守党では、ユーロ危機を機にEU離脱論が噴き出していた。権限を国家に取り返す好機というわけだ。だが、その「国家」という土台そのものが揺らぎ始めている。

翌20日、スコットランド北部インバネス。
スコットランド自治政府のアレックス・サモンド首席大臣が自信に満ちた声で集会参加者に訴えた。「豊富なエネルギーこそが、『独立国家』スコットランドの未来に活力を与える」
英国からの独立を掲げるスコットランド民族党は、5月のスコットランド議会選で過半数を獲得した。勢いづく党首のサモンド氏は「2015年までに独立の是非を問う住民投票をする」とぶちあげたが、そのための切り札と期待するのが、自然エネルギーだ。

厳しい自然条件のスコットランドでは、風力発電に加え、潮流や波の力を使った発電が盛んだ。風力、潮力の潜在的な発電能力は欧州全体の4分の1に達するとの試算もある。
スコットランドでは1980年代、北海油田開発に伴い独立論が盛んになった。だが、油田枯渇がとりざたされ、99年に自治政府が発足すると、独立の機運は下火になった。近年、自然エネルギーが脚光を浴びるようになり、経済的な自立の可能性も膨らんだことで、スコットランド人は再び自信を深めている。
医療や教育、司法まで身近な権限を持つ自治政府が定着したことで、ロンドンは住民にとってすっかり遠い存在になっていた。9月の世論調査では、3年ぶりに独立支持が反対をわずかながら上回った。

スコットランドやベルギー北部だけでなく、スペインのカタルーニャやバスク、北イタリアも独立志向が強い。共通するのは、グローバル化の波にうまく乗り、経済的な自信を深めている点だ。かつて民族や宗教の違いによる反目で起きた分離独立運動が、今日の欧州では、競争力をつけた地域が、不振にあえぐ地域とたもとを分かつための運動へと変質している。【11年12月6日 朝日】
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経済的に自立できれば、生活に身近な分野は独立政府が行い、外交・安全保障などはEUに任せればいい・・・ということで、従来の“国家”の役割が希薄になってきているとも言えそうです。
それにしても、“一般の人々は、どこまで本気だろうか?”という感はありますが・・・。
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