孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  イスラム教徒のためのランニング用ヒジャブ販売に「中傷の波」と「前例のない脅迫」

2019-02-28 22:27:20 | 欧州情勢

(仏デカトロン社のランニング用ヒジャブ モロッコでは好評でしたが・・・【2月28日 BBC】)


(米ナイキ社のランニング用ヒジャブ広告動画より)

【「世界中の女性がスポーツをできるようにする」ためのものだったが・・・】
ときおり取り上げる、イスラム教徒女性のスカーフ(ヒジャブ)の問題。

****仏デカトロン、ランニング用ヒジャブの販売取りやめ 「中傷の波」受け****
フランスのスポーツ用品大手デカトロンは、同国でのランニング用ヒジャブ(ムスリムの女性が頭髪を覆う布)の販売を取りやめると発表した。

販売を発表した後に「中傷の波」と「前例のない脅迫」を受けたためとしている。

ランニング用ヒジャブをめぐっては、一部の政治家がフランスの世俗主義的価値観に反すると指摘し、デカトロン製品をボイコットするよう促すなどしていた。

このヒジャブはすでにモロッコで販売されており、デカトロンも当初はフランスでの販売を擁護していた。

フランスでは、ムスリム女性の公共の場での服装についてたびたび論争が巻き起こっている。

デカトロンの広報担当を務めるクサヴィエ・リヴォワ氏はRTLラジオで、「我々はこの製品をフランスで発売しないことを決めた」と発表した。

リヴォワ氏はAFP通信の取材で、「世界中の女性がスポーツをできるようにする」のがそもそもの決定だったと話している。

簡素で軽い素材のランニング用ヒジャブは頭髪だけを隠し、顔は隠さないもので、今年3月から49カ国で発売される予定だった。

アメリカの大手ナイキは2017年に、フランスでスポーツ用ヒジャブを販売している。

物理的な脅迫も
デカトロンによると、同社には「ランニング用ヒジャブ」についての苦情のメールや電話が500件寄せられたほか、店舗スタッフが侮辱されたり、物理的に脅迫されたりしたという。

アグネス・ブジン社会問題・保健相はRTLに対し、こうした製品はフランスで禁止されてはいないものの、「私が共有していない女性像だ。フランスのメーカーがスカーフを販売するのは感心しない」と述べた。

また、エマニュエル・マクロン大統領率いる「共和国前進」のオロー・ベルジェ報道官もツイッターでこの問題に触れ、ボイコットを促した。
「私は女性として、また市民として、我々の価値から外れるブランドはもう信頼しない」

ベルジェ氏のツイートに対してデカトロンは、「我々の目標は簡単なもの。何であれ(ランニングにそぐわないヒジャブを被って走る女性に)適したスポーツ製品を届けること」と返信した。

デカトロンはその後、「暴力的な」反応が「消費者のニーズに応えたいという我々の思いを越えてしまった」ため、平和を取り戻したいと話している。

フランスとムスリムの衣服
フランスは厳しい世俗主義の法律の下、児童や公務員などに求められる中立性を表していないとして、スカーフといった目に見える宗教的象徴に疑問を投げかけている。

ムスリム女性のスカーフは公共の場での着用は禁止されていないが、2004年以降、公立の学校や一部の公共機関で禁じられている。

2016年、複数のフランスの地方自治体が、イスラム教徒の女性が全身を覆う水着「ブルキニ」を禁止して問題となった。この禁止措置は後に、行政裁判の最高裁にあたる国務院が「信教と個人の自由という基本的自由を、深刻かつ違法に侵害する」と判断し、凍結を命じた。

フランスは2010年に欧州で初めて、イスラム女性の顔をすべて隠す「ブルカ」と、顔を部分的に隠す「ニカブ」の公共の場での着用禁止を決定し、2011年春から禁止措置を実施した。

権利保護団体はフランスのイスラム嫌いを糾弾し、一連の禁止措置がムスリムの女性を傷つけたと述べている。【2月28日 BBC】
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【世俗主義を重視と言いつつも、根底にはイスラム嫌いが】
フランスが、フランス革命以来の世俗主義を重視していることは承知していますし、宗教的権威が女性に一定の服装を強いることには私も反対です。

ただ、長年そうした服装に慣れ親しんでいるイスラム教徒女性の一部からすれば、そうした服装が認められないことが、逆に自由の侵害というように感じられるのでしょう。

双方の言い分があるなかで、顔をすべて隠す「ブルカ」と、顔を部分的に隠す(眼だけを出す)「ニカブ」については、微妙な宗教や服装の自由の問題は別にして、市民社会の基本的な前提にそぐわないように思えて、これを一定に制限することには私も賛成です。

市民社会は、自立した自由な個人同士が責任ある関係・つながりを形成することで成立するもので、「ブルカ」や「ニカブ」といった個人の正体を隠してしまうような服装は、そうした関係・つながりを拒否しているような感じがします。

その趣旨で、イスラム教徒の服装だけでなく、最近日本女性が繁用するマスクにもいい印象は持っていません。
保健衛生的な用途以外に、マスクで顔を隠してしまえば“気楽”なのでしょう。

しかし、そうした匿名性に隠れる行為は「ブルカ」や「ニカブ」同様に、個人間の責任ある関係構築にはそぐわないように思われます。

一方、スカーフ(ヒジャブ)に関しては、宗教的に強制されている云々を別にすれば、上記のような匿名性に隠れるような弊害はありません。

実際、イスラム教国を旅行すると、女性たちもスカーフをファッションとして楽しんでいるのでは・・・とも思えます。デザイン・色彩も多様ですし、かぶり方もいろいろです。

そういうことを考えると、本人らが着用したいというなら「それはそれで・・・」といった感じもします。

今回の「ランニング用ヒジャブ」は、宗教的価値観あるいは社会習慣と女性がスポーツを楽しむ機会を増やすという観点の折り合いをつける現実的妥協であり、これを批判して販売中止に追い込むというのは、イスラム教徒女性の活動機会に対する配慮を著しく欠いた判断に思えます。

2016年に問題となった「ブルキニ」とときもそうですが、「世俗主義の価値観にそぐわない」云々の以前に、イスラム嫌いと言うべき偏狭なゼノフォビア(外国人嫌悪症)の臭いがします。

【スカーフなどをめぐる話題】
スポーツとヒジャブの関係は、ときおり問題になります。

****スカーフ脱がずイスラム教徒の選手が失格 アジアパラ大会 柔道****
インドネシアのジャカルタで開かれているアジアパラ大会の柔道の種目でイスラム教徒の女性の選手が人前で髪を隠すスカーフを着用したまま試合に出場しようとして失格になりました。

この判定に対し信仰を尊重すべきだとして規則の見直しを求める声があがっています。

失格とされたのはジャカルタで開かれているアジアパラ大会で視覚障害者の柔道女子のインドネシア代表でイスラム教徒のミフタフル・ジャンナー選手(21)です。

ミフタフル選手は8日に行われた初めての試合に、イスラム教徒の女性が髪を人前で隠すのに用いるスカーフ「ヒジャブ」を着用したまま出場しようとしました。

ところが審判は安全上の理由から頭を布などで包むことは禁止されているとしてスカーフを脱ぐよう指示し、これをミフタフル選手が拒否したところ、失格の判定を下したということです。

これを受けてミフタフル選手は記者会見を開き「信仰と競技のルールとの両方が尊重される必要がある」と述べて規則の変更を訴えました。

イスラム教徒の女性選手のスカーフ着用は、サッカーやバスケットボールなどでは認められていますが、柔道では国際柔道連盟の規則で原則、認められていません。

今回の判定についてイスラム教徒の間では信仰を尊重すべきだとして規則の見直しを求める声があがっていて、2020年の東京パラリンピックに向けた国際柔道連盟の対応が注目されます。【2018年10月11日 NHK】
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国際柔道連盟はどいう検討をしているのでしょうか?

アメリカでは、議会でのスカーフが問題となっています。

****「議場でヒジャブの着用許可を」 米初のムスリム女性議員らが規則改正案****
イスラム教徒の女性として初の米連邦議員に選出されたイルハン・オマル氏は、スカーフや帽子など頭部を覆うものの着用を下院の議場で禁じた米議会の規定に関して、イスラム教徒の「ヒジャブ」など宗教的な衣装については適用除外とする変更案を民主党幹部らと作成した。

国内のイスラム教徒人権団体は19日、この取り組みへの支持を表明した。

米下院では181年前から、議場で頭部を覆ってはならないという規定がある。オマル氏らは今回、ヒジャブのほか、ユダヤ教徒の伝統的な帽子「キッパ」、シーク教徒のターバンなど、宗教の戒律で定められている衣装については例外的に着用を認めるように改正を求めている。

オマル氏は17日、ツイッターに「スカーフをかぶるのはあくまで自分がすることだし、ほかの誰かにされるものではありません。これは私の選択、合衆国憲法修正第1条で保護されている選択なのです」と投稿。「私が解除に取り組もうとしている禁止事項はこれだけではありません」とも書き込んだ。

変更案は、ナンシー・ペロシ下院院内総務を含む民主党幹部による包括的な規則改正案に含まれている。

全米最大のイスラム人権団体である米イスラム関係評議会の幹部は「時代錯誤の政策を更新し、下院を憲法と信教の自由の保護に従わせる取り組みを支持する」と述べた。

元ソマリア難民のオマル氏は、今月行われた米中間選挙でミネソタ州から下院議員に当選。ミシガン州の下院選で当選した女性とともに、全米初のイスラム教徒女性の下院議員になる。【2018年11月20日 AFP】AFPBB News
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こちらも、その後の話は知りません。

イスラム系移民・難民への反発が強まる欧州では、規制強化の流れがあります。

デンマークでは公共の場で顔を完全に覆うベールの着用を禁止する法案が昨年中道右派政権から提出され、社会民主党と極右のデンマーク国民党が賛成して可決しています。

****顔隠すかぶり物、公共の場で禁止に デンマークが新法****
デンマーク国会は3日までに、顔を隠すかぶり物の着用を公共の場で禁止する法案を可決した。ロイター通信によると、今年8月1日から発効する。

違反した場合、初犯は1000デンマーク・クローネ(約1万7150円)、4回繰り返した際は1万クローネの罰金を科す。目を除いて顔を隠す「ニカブ」や頭からすっぽりかぶって顔全体を覆い隠す「ブルカ」などイスラム教徒の女性が使う伝統衣装を狙い撃ちにしているとの批判が出ている。

類似の法案はフランス、ベルギーやスイスで既に導入済みで、他の欧州諸国でも検討されている。カナダ・ケベック州の議会も昨年10月、公務員もしくは政府関連の職種を求める市民が顔を隠す衣装を用いることを禁じる法案を通過させていた。

国際人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル」の欧州担当責任者は、全ての女性は自らが好むもしくは固有性や信念を体現する衣装を自由に選ぶ権利を持つべきと指摘。公共の安全を理由に顔全体を隠す衣装に対する一部の規制は適法であるかもしれないが、全面的な禁止は不必要であり、表現や信仰の自由の権利に背反していると主張した。【2018年6月3日 CNN】
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イエメン  停戦合意にも関わらず進まない国際支援物資搬送 フーシ派のニッチな兵器

2019-02-27 23:28:56 | 中東情勢

(わずか10キロにやせ細ったイエメンの12歳の少女【2月23日 TOCANA】)

【「もし私たちがずっとここにいて飢えていても誰も私たちのことに気づかないでしょう。私たちには未来がないのです」】
北朝鮮・アメリカの交渉、イギリスのEU離脱、あるいは日本と韓国の関係悪化・・・といった“派手な”“関心を引きやすい”多くの問題にかき消されてしまいがちですが、世界最悪の人道危機とも言われる(残念なことに、同様の“最悪の人道危機”は他の地域でも多々ありますが)イエメンの状況は、昨年末の停戦合意以降もほとんど改善していません。

****イエメン:紛争の影響を受け続ける120万人の子どもたち~停戦合意以降も続く子どもの犠牲*****
イエメン人道危機に関する支援会合に先立ち、ユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・カッペラエレはイエメンの子どもたちの状況について、以下の通り声明を発表しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエメンでは、紛争に関連した激しい暴力が起きているホデイダ、タイズ、ハッジャ、およびサアダを含む31の紛争地域に今でも120万人近くの子どもが暮らしています。

2018年12月13日のストックホルムにおける停戦合意以降、イエメンの子どもたちの状況はほとんど変わっていません。

その後も毎日、8人の子どもが死傷しています。犠牲になった子どものほとんどは、外で友人と遊んでいるとき、あるいは通学途中に被害に遭いました。
 
紛争はイエメン全土に深く浸透し、影響を受けていない子どもはひとりもいません。過去4年間にわたる大規模な暴力ならびに極度の貧困、そして、何十年にもわたる紛争、ネグレクトや搾取がイエメン社会に重い負担をかけ、あらゆる社会、特に子どもたちにとって基礎となるべき社会構造が断絶されています。(後略)【2月26日 日本ユニセフ協会】
********************

こうした状況を物語るのが冒頭の少女の写真です。

****イエメン内戦で“体重10kg”まで痩せた少女の姿に全世界衝撃! 完全に「骨と皮」で医者も治療拒否・・・ 飢餓千万人の絶望的状況****

泥沼化するイエメン内戦――。その最大の犠牲者は住居を奪われた市民であり、その子どもたちだ。今、イエメン国民の1000万人が深刻な食糧難に直面している。

■体重わずか10キロの12歳少女
一向に解決の兆しが見えない内戦が続くイエメンで、市民の悲惨な窮状を物語る写真に、世界中の人々の胸が締めつけられている。

空爆で家を失った一家の12歳の娘が、姉の懸命な働きかけでようやく病院に運ばれたのだが、医師に診てもらうのが遅すぎたこの少女の体重は、わずか10キロであった。
 
イエメン・ハッジャの病院に先日運び込まれた12歳の少女、ファティマ・コバちゃんの姿をとらえた写真に、世界中の人々がショックを受け言葉を失っている。その姿はまさに“骨と皮”だ。日本であれば小学6年生にあたるファティマちゃんの体重はなんと10キログラム。ヨチヨチ歩きの幼児の平均体重と同程度である。
 
2011年の“アラブの春”の余波で始まった内戦は、反政府武装組織「フーシ」が2014年に首都サヌアを制圧したことで戦闘の長期化が避けられなくなり、2015年にサウジアラビアとUAEがサヌアなどに対する空爆を開始。以来、おびただしい数の一般市民の犠牲者を出しながら今なお続いている。

ファティマちゃんの家族は内戦前からサウジアラビアとの国境に近い町で暮らしていたが、2015年3月から始まったサウジアラビア主導の空爆で家を失い避難生活を余儀なくされ、現在は木の下で一家10人が生活を共にしているという。

父親は内戦で仕事を失い、現在収入はまったくない。食糧の入手もきわめて困難で、また極度のインフレが起きているために手持ちの現金では食糧は高すぎて買えなくなっているという。
 
また道路交通網が分断されているためか、援助物資はなかなか一般の人々のもとへは届きにくくなっているようだ。

こうして現在、イエメンで人口の半数に近い1000万人が深刻な食糧不足に直面しているといわれている。そして家を追われたファティマちゃんの家族もまた避難生活の中でたちまち食糧難に陥った。
 
日に日に痩せ衰えていく家族だったが、特に衰弱が酷いのが、このファティマちゃんだった。

「このままでは妹が死んでしまう」と危機感を募らせた姉は一大決心して妹を病院に連れて行ったのだが、2つの病院で続けて診察を断られたという。見かねた親戚の者が姉にこの病院を教えて交通費を恵んでくれたということだ。

「私たちは食べ物を買うお金を持っていません。私たちが食べているのは近所の人々や親戚の人たちがくれるものだけです。もし私たちがずっとここにいて飢えていても誰も私たちのことに気づかないでしょう。私たちには未来がないのです」と姉は話している。

■イエメンで約1000万人が飢饉に直面
見るも痛ましい姿で病院に運ばれたファティマちゃんだったが、診察した医師は別段驚くこともなかった。今や病院に連れて来られる患者の多くが栄養失調の症状なのである。当月だけでも、40人の栄養失調の妊婦の診察をしたという。そして来月には43人の栄養失調の子どもの治療にあたらなければならないという。(中略)

そしてこの内戦は国内のいくつかの地域の人々を地元から追い出し、食料、燃料、そして援助のためのアクセスルートを遮断し続けていて、事態は悪化の一途をたどる様相を呈している。
 
イエメンに食料品はあるのだが、深刻なインフレによって人々は食料品を買うことができないでいる。そして本来安定した収入があるはずの公務員までもが給与の支払いが停止されていて、多くの公務員世帯が“収入ゼロ”になっているのだ。

「大飢饉の瀬戸際の災厄に直面しています。イエメン社会と家族は疲れ果てています。唯一の解決策は内戦を止めることだけです」(マキア・アル・アスラミ医師)

ますます混迷を深めるイエメンの情勢に何らかの光明が差し込むことを願うばかりだ。【2月23日 TOCANA】
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【支援を必要とする者に届かない支援物資 貯蔵庫で大量の食糧が腐敗の恐れ】
願うだけでは光明は差さないので、行動が必要です。
もちろん国際社会も、日本も、(関心は薄いながらも)何もしていない訳でもありません。

****辻外務大臣政務官の「イエメン人道危機に関するハイレベル・プレッジング会合」出席(結果)****
1 2月26日(現地時間同日),スイスのジュネーブにおいて,イエメンにおける深刻な人道状況への対応のため,「イエメン人道危機に関するハイレベル・プレッジング会合」が開催され,我が国からは辻清人外務大臣政務官が代表として出席しました。

2 辻政務官は,この会合におけるステートメントの中で,イエメンでの深刻な人道状況に対処すべく,本年中に同国に対して少なくとも総額約5,820万ドルの支援を実施する旨表明しました。

3 また,辻政務官は,マイーン・アブドルマリク・サイード・イエメン首相との会談を行い,サイード首相から,今回会合で表明された日本による寛大な支援に深く感謝する旨の発言がありました。

4 辻政務官は,アントニオ・グテーレス国連事務総長,サイフディン・アブドゥッラー・マレーシア外務大臣び国連関係者等と立ち話を行いました。【2月27日 外務省HP】
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会談・協議などではなく“立ち話”というのが、いかにも外交的ですが、それはともかく、問題はこうした(十分とも言い難い)国際援助が“内戦の混乱が援助のためのアクセスルートを遮断し続けている”状況で、困窮者の手に届かないことです。

****イエメン、支援食糧が腐敗の恐れ 貯蔵庫に近づけず****
国連は11日、イエメン内戦の最前線にある貯蔵庫に保管されている支援食糧が腐敗する恐れがあり、数百万人のイエメン市民が生命維持に必要な食料を入手できない状況が続いていると警鐘を鳴らした。
 
西部の港湾都市ホデイダに位置する紅海製粉所の貯蔵庫には、数百万人が1か月食べていけるだけの穀物が保管されているとみられている。しかし支援団体は、数か月にわたってこの貯蔵庫へ立ち入れずにいる。
 
国連世界食糧計画の代表とイエメン国連担当特使は共同声明を出し、「WFPは370万人に1か月分の食料を提供できるだけの穀物を同製粉所に保管しているが、5か月間立ち入りができず、腐敗する恐れがある」と警告し、「貯蔵庫へのアクセス確保は、イエメン内戦の当事者が負うべき共通の責務だ」と強調した。
 
ホデイダと同市内にある食料庫は、2014年からイスラム教シーア派系の反政府武装組織フーシ派に掌握されている。フーシ派は同時期から、イエメン領土の広範囲を支配下に置いた。
 
翌年には、フーシ派と戦う暫定政権側を支持するサウジアラビアとその連合軍が軍事介入に踏み切ったことで、国連が「世界最悪の人道危機」と呼ぶ事態に陥った。1000万人以上が、餓死寸前に追い込まれている。 【2月12日 AFP】
******************

約1000万人が飢饉に直面する状況で、大量の食糧が腐敗する恐れ・・・・なんとも理不尽な状況です。

食料、燃料その他の輸入の8割以上が通過し、国際支援物資輸送の中核ともなる港湾都市ホデイダでの停戦・戦闘部隊の市外への移動に関する合意は、こうした状況の打開が期待されていたはずですが・・・。

(なお、上記記事では“ホデイダと同市内にある食料庫は・・・・反政府武装組織フーシ派に掌握されている。”とありますが、他の記事では暫定政府側の管理下にあるとされています。)

また、以下のような情報も。
“前停戦監視団長(国連特使と意見の差で辞任した)はオランダ紙に対して、ホデイダのサイロに対するhothy側の砲撃で、貯蔵されている穀物の20%が焼失したと語った”【2月16日 「中東の窓」】

1月8日ブログ“イエメン内戦 双方の非道さが招いた「世界最悪の人道危機」 何とか停戦継続を”で取り上げたように、フーシ派が支援物資を横流しているという“餓死者の目の前から食料を奪う様な行為”も現地メディアでは報じられています。

【停戦合意にもかかわらず激化する戦闘 支援物資の搬送には高いハードルも】
こうしたなか、ようやく国連WFP(世界食糧計画)の評価班が貯蔵庫に入れたとのことです。

****国連、イエメンの食糧貯蔵庫に立ち入り 昨年9月以降初****
国連は26日、イエメン内戦の最前線にある支援食糧の貯蔵庫に、昨年9月以降初めて立ち入ることができたと発表した。この貯蔵庫には、数百万人を1か月養える食糧が貯蔵されているという。
 
世界食糧計画の報道官はAFPに対し、WFPの評価班が同国西部の港湾都市ホデイダに近い同貯蔵庫に入ったと明かした。
 
同報道官は、「昨年9月以降初めて、きょうWFPのチームが紅海製粉所に入ることができた。ここには370万人以上を1か月養えるだけの穀物5万1000トンが貯蔵されている」と説明。

「きょうの評価活動の細かい結果はまだ入っていないが、この施設をなるべく早く再び使えるようにしたいと考えている」と期待を示した。
 
ホデイダの港は、イスラム教シーア派系の反政府武装組織フーシ派が掌握している同国西部にある。今月17日にスウェーデンで結ばれた協定に基づき、イエメン紛争の両当事者が戦闘員らを港の外へ移動させることに合意。

この協定で、サウジアラビアの支持を受ける暫定政権が掌握する紅海製粉所の穀物貯蔵庫への自由な立ち入りが規定されたことから、今回評価班の立ち入りが可能となった。
 
世界保健機関によると、イエメンでは紛争開始以来約1万人が死亡。その大半が民間人で、負傷者は6万人以上に上っているという。 【2月26日 AFP】AFPBB News
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しかし、運び出しまでにはハードルがありそうです。
戦闘状況は、最近むしろ悪化しているとの情報もあります。

****イエメン情勢(ホデイダ等)****
イエメンではホデイダでの停戦、兵力引き離しどころか、ホデイダ方面も含めて、むしろ戦闘が激化している模様です

・ホデイダでは,政府軍によれば、hothy軍が市の住宅地や政府軍向けに銃砲撃を加え、その停戦違反は増大している。
・特にホデイダの南で、hothy軍がalhis に対する大規模攻撃をかけてきたが、政府軍が撃退した由。
この戦闘でhothy軍は数十名の死傷者を出した由。
hothy軍は大規模な兵力と物資を前線向けに増派している由

・(他方北端のサアダ県でも戦闘が激化していることは報告済みですが)政府軍によると、hothy軍は25日夕、ドローンによる援護を受けつつ、suq albaquaの政府軍に対して、大規模攻勢をかけてきたが、撃退され、死者13、負傷者30名の損失を被った。

他方政府軍は同日al baqim でアラブ連合空軍の援護を受けつつ、大きく前進した

(何しろ上記報道はいずれもサウディ系のal arabiya net のものですから、大本営的な報道だろうと思いますが、少なくとも北部イエメン、海岸のホデイダで、激しい戦闘が続いていることは間違いなさそうです。

hothy軍が戦闘の援護にドローンを使い始めたというのは新しい話ですが、それにしてもこれだけ長期間の内戦で基本的にアラブ連合軍に封鎖されているhothy軍の武器、弾薬の供給がどうなっているのか、極めて不思議です。

地元生産、政府軍からの捕獲の他、政府軍やアラブ連合軍からの横流しなどもあるのでしょうね。)【2月27日 「中東の窓」】
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兵力引き離しどころか、むしろ戦闘が激化している状況では、支援物資の搬出は当分見込めないかも。
こうした状況を政府軍・フーシ派双方はどのように認識しているのでしょうか?

【徘徊型自爆ドローンを使うフーシ派】
武器、弾薬の供給は、イエメン内戦に限らず、世界各地紛争において「一体どこから?」と常々疑問に思っており、その供給ルートを絶つことができれば紛争もおのずと沈静化するのに・・・と考える問題です。

イエメン・フーシ派に関して言えば、(サウジやアメリカなど政府軍支持国からは)イランからの支援が指摘されています。(イランは否定)

フーシ派が使っているドローンも“イランの武器システムとあやしいほど似ている”とも。

****反政府組織がドローン攻撃、和平に影響か イエメン内戦****
内戦が続く中東イエメンで(1月)10日、ハディ暫定政権側の軍事パレードを反政府武装組織フーシのドローン(無人機)が攻撃し、兵士ら数人が死亡した。

ロイター通信などが伝えた。内戦を巡っては先月、約2年ぶりに開かれた和平協議で部分停戦の合意が成立したが、事件が今後の協議に影響するのは避けられない。(後略)【1月10日 朝日】
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標的の近くを長時間飛び回り、チャンスを見計らって特攻・自爆する超小型のドローンを「徘徊型兵器」と呼ぶそうですが、この方面の技術で最先端を行くのがイスラエルだそうです。

それは想定内の話ですが、こうした「徘徊型兵器」を繁用しているのがイエメンのフーシ派だそうです。

*****「徘徊型」自爆ドローンがもたらすもっと危険な暗殺戦争****
(中略)国以外でこの兵器を使いこなしているのは、間違いなくイエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシー派だ。(中略)

4年にわたる戦闘の間、フーシー派は、戦闘力でも技術でも資金力でもかなわない敵と戦うために、予想も対抗も困難なゲリラ的戦法をとってきた。

イランとの密接な関係も、彼らの戦術と戦略を特徴づけており、彼らが何度か使用した徘徊型のQasef-1戦闘用ドローンはイランの武器システムとあやしいほど似ている。

自律攻撃もありうる
フーシー派は独自に開発した無人兵器で、敵の軍事拠点や空港、レーダー装置を攻撃してきた。そのすべてが自爆タイプというわけではない。弾頭を運ぶものもあれば、単に速くて正確な誘導ミサイルとして使用されているだけという場合もある。

被害を増やすために、人口密集地域の上空で爆発させる兵器が使われたこともある。たとえば今年1月、イエメンで行われた軍事パレードに自爆ドローン攻撃が仕掛けられ、上級司令官を含む兵士数人が殺害された。

フーシー派が頻繁に使用するのは比較的初歩的な技術だが、こうした武器の威力と適性が実証されたことは確かだ。(後略)【2月25日 Newsweek】
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アメリカ・ロシア、あるいはアメリカ・北朝鮮は核兵器問題で紛糾していますが、実際に起きる局地戦・ゲリラ戦では、“技術の進歩”によって、上記のようなニッチで安価な兵器が活躍することにもなります。

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ロシア  支持率低下のプーチン政権 早急な国民生活の改善を約束するも、“統計不正”を疑う声も

2019-02-26 22:23:10 | ロシア

(24日、モスクワで「プーチンのいないロシアを」などと叫びながら行進する参加者ら【2月25日 共同】)

【支持率低下に苦慮するプーチン大統領】
クリミア併合で高支持率を誇ったプーチン大統領ですが、さすがにその賞味期限も切れてきたようで、特に年金改革以降の支持率急落が注目されています。

そうした支持率低下の背景には欧米の制裁が続くロシア経済の不調があります。

****プーチン氏人気低下 経済失政に不満、日露交渉に影響も****
ロシアでプーチン大統領の人気低下が鮮明になっている。政権支持率は低下傾向が続き、24日にはモスクワなどで反政府デモも開催された。

背景には経済的な“失政”や強権的な政治手法への不満の強まりがあるとされる。プーチン氏の政権基盤の弱体化が、日露平和条約交渉に影響する可能性も指摘されている。
 
24日、4年前に殺害されたネムツォフ元第1副首相の追悼集会がモスクワで開かれた。集会は野党などが組織。参加者らは「プーチンのいないロシアを」などと訴え、反政府色を帯びたものになった。当局は集会参加者を約6千人と発表したが、野党側は約1万1千人が参加したとした。
 
ネムツォフ氏殺害事件では、露南部チェチェン共和国の治安部隊元幹部ら5人が有罪判決を受けた。しかし野党側は政権周辺に実行を命じた人物がいる可能性があり、捜査は不十分だと政権批判を続けている。
 
露独立系世論調査機関「レバダ・センター」によると、プーチン氏の支持率は、2014年のウクライナ南部クリミア半島の一方的併合を受けて90%近くに達し、その後も80%前後で推移してきた。

しかし、露政府が昨年、財政難を理由に年金支給年齢引き上げを発表すると60%台に急落。年金改革に反対する大規模な反政府デモが起き、同時期に行われた知事選では複数の与党候補が敗北した。
 
さらに、経済制裁や増税に伴う物価値上がり▽国民所得の5年連続減少▽貧困層の拡大▽インターネット上の言論規制の強化−などへの不満も強まっている。
 
支持率の低下傾向が続く中、プーチン氏は20日の年次教書演説で、失業者や貧困層への財政支援の拡大など大規模な内政改革を約束した。

しかし露メディアからは財政難の中での改革の実現可能性について疑問の声が上がり、支持率回復にどれほど寄与するかは不透明だ。

演説を中継したテレビの視聴率も例年の約8%から今年は5・9%に下落し、国民のプーチン氏への信頼度が低下している現状を裏付けた。
 
露国内では、プーチン氏は支持率低迷を打開するため、より強硬な対外政策に出る可能性があるとの見方もある。日露平和条約締結に関わる北方領土交渉についても、世論調査で国民の約8割が島引き渡しに反対している以上、プーチン氏の“譲歩”は期待しにくいとみられている。【2月25日 産経】
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政治指導者としては、時間を要する内政面での成果より、外交面での成果が“手っ取り早い”ということがあって、現在トランプ大統領は北朝鮮からなんとか“成果”を引き出そうとハノイでディールの最中です。

プーチン大統領にとって最近の外交面での成果というと、シリアでの影響力拡大でしょうか。

****ロシア国防省“シリア戦利品”展示列車運行****
ロシア国防省は23日、内戦が続くシリアで過激派組織「イスラム国」などから奪い取った武器などを展示する列車の運行を始めた。軍事介入の正当性をアピールする狙いとみられる。

シリアの反体制派の武装勢力が使用していた車両には、荷台に手製の武器がとりつけられている。

列車にはロシアがシリアの内戦で、「イスラム国」などから奪った武器や車両が展示されていて、23日から約2か月かけてロシア全土を回る予定。列車の運行はプーチン大統領の指示によるもので、ロシア国防省の担当者は、「シリアでテロと戦った成果を紹介したい」と強調した。

ロシアは2015年にシリアのアサド政権の要請を受け、内戦に軍事介入したが、膨大な戦費などへの国民の批判が高まっている。列車の運行は、国民に対し、軍事介入の正当性をアピールする狙いとみられる。【2月24日 日テレNEWS24】
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これは“成果”の誇示というよりは、内政をほったらかししてシリアに深入りしているとの国民不満を懐柔するもののようです。このようなこともしないといけないということは、プーチン政権も相当に苦しいのかも・・・とも思わせます。

【支持率低下の背景には「われわれは待てない」(プーチン大統領)という経済状況】
やはり、政権支持の動向の本丸は内政、特に経済です。

****プーチン大統領、早急な生活改善を約束 年次教書演説****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は20日、年次教書演説を行い、早急な国民生活の改善を約束した。
 
これまでにないほど支持率が下落する中、プーチン大統領は両院議員の前で演説し、「われわれは待てない。この状況を今改善しなければならない」「今年中に(ロシア国民は)良い方向へ変化していると感じるようになる」と述べた。
 
プーチン大統領はまた、生活水準を向上させるとする一連の政策を発表するとともに、新生児をめぐる新たな恩典と大家族に対する減税といった、低下する出生率への取り組みの強化にも言及。「家族の価値を高めるため、あらゆることをしてきたし今後も行っていく」「家族の収入はもちろん増加する」と話した。
 
プーチン大統領はさらに、ロシアは人口統計において「厳しい局面」にあるとし、「根本方針は、より多くの子ども、より少ない税金」だと述べた。 【2月20日 AFP】AFPBB News
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ロシアも日本同様(あるいは、日本以上に)に人口減少に悩んでいますが、ロシアの合計特殊出生率は1999年に1.16まで低下し、その後は回復傾向を示し、2016年には1.75となっています。

プーチン大統領が少子化対策を前面に出しているのも、そうした“成果”(人口減少の流れが止まった訳ではありませんが)があってのことでしょう。

この出生率の回復は、日本にとっても参考になる興味深い問題ですが、今日はパスします。
問題は国民の所得です。プーチン大統領も「われわれは待てない」と言っているように、ここ数年実質所得がマイナスを続けるという深刻な状況にあります。

****面目つぶれたプーチン政権 ロシアが苦しむダブル減****
ロシア国家統計局が1月、2018年のロシア人の実質所得が17年より0・2%減り、5年連続の減少となった-と発表したことが同国に衝撃を与えている。

所得の5年連続減少はソ連崩壊後の混乱が続いた1990年代にも起きていなかった上、プーチン露大統領らの増加予測も外れたためだ。プーチン政権の政治基盤が揺らぐ恐れがあり、日本との平和条約交渉に影響する可能性も否定できない。

■外れた増加予想
露経済紙ベドモスチが国家統計局のデータを分析したところでは、2008年まで増加を続けたロシア人の所得は、ウクライナ南部クリミア半島の併合などで国際的制裁を受けた14年に前年比で0・5%減少。

その後も減少が続いた。背景には、制裁や通貨ルーブルの下落、主要輸出品である石油の国際的な値下がりなどがある。
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実は、露経済発展省は昨年6月、石油価格の回復傾向などを背景に「18年は所得が3・4~3・9%伸びる」との見通しを公表。プーチン氏も12月、「18年の所得は0・5%増となるだろう」としていた。
 
しかし、蓋を開けてみれば0・2%減となり、プーチン氏の面目はつぶれた格好だ。国際社会からはロシアの統計の信頼性を疑う声もあり、実態はさらに悪化している可能性もある。
 
統計によると露国内の平均月収は約3万2千ルーブル(約5万4千円)だが、首都モスクワなど大都市とその他の地域に極端な収入格差があることも大きな問題だ。(後略)【2月12日 産経】
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【プーチン大統領の目標設定を“忖度”した“統計不正”の疑惑も】
そうした中で、2月4日にロシア連邦統計局が発表した2018年の実質GDP(国内総生産)成長率の速報値はやけに高い数値となっています。

上記記事にある実質所得と“生産”に着目した実質GDPの関係については、「実質国内総所得(GDI)=実質GDP+交易利得・損失」という関係があります。
 
国内の実質的な所得を考える場合は、輸出入価格の変動による所得も加味される必要があります。

交易条件が有利(輸出価格>輸入価格)となれば実質所得は増え、不利(輸出価格<輸入価格)になれば実質所得は減るという関係にあります。
(このあたりの話は、経済学落ちこぼれ学生でもあった私は、よくわからないことが多々あります)

****欧州で最も腐敗している国、ロシアがなぜか高成長****
2月4日、ロシア連邦統計局は2018年の実質GDP(国内総生産)成長率の速報値を発表した。今回発表された数字は+2.3%と2013年の+2.5%以来の高い伸びを示した。
 
ブルームバーグのコンセンサス(事前予想平均値)では+1.9%、強気の予想を提示する傾向にあるロシア経済発展省は+2%であったが、今回発表値は誰の予想をも大きく上回るものであった。
 
現地の多くのエコノミストたちはこの数値に疑問を投げかけている。
 
ウラジーミル・プーチン大統領の経済ブレーンの一人でもあるクドリン会計検査院長官、長く経済省でチーフエコノミストを務めたクレパーチVEB副会長らも「せいぜい1.5%」とコメントしている。(後略)【2月8日 大坪 祐介氏 JB Press】
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5年連続のマイナスとなった実質所得との関連性は脇に置くとしても、GDPの数値だけで見ても、予想を上回る高率です。

そのため、“なかには昨年12月の連邦統計局長官の交代が影響しているのではないかとのうがった見方もある。連邦統計局は経済発展省の傘下にあるため、プーチン大統領が昨年5月の施政方針演説で述べた3.5%成長に少しでも近づける忖度が働いているのではないかとの勘繰りである。”【同上】という、“統計不正”と言うか“統計忖度”と言うか、日本でも騒がれているような話がロシアでも起きているのでは・・・という話です。

****ロシアでも浮上した統計忖度疑惑 「プーチノミクス」の虚と実****
(中略)
世界平均を上回るという目標
今日のロシアで、あらゆる政策の出発点となっているのが、プーチン大統領が四期目の任期をスタートさせた当日の2018年5月7日に発令した大統領令「2024年までのロシア連邦発展の国家目標と戦略的課題」です(ロシアで頻繁に耳にする「5月大統領令」というのはこれのこと)。

この中でプーチン大統領は経済に関しては、「世界平均を上回るテンポで経済を成長させる」という課題を設定しています。



それでは、世界平均の経済成長率と、ロシアの成長率は、実際にはどうなっているでしょうか? それをまとめたのが上の図です。

世界経済の成長率は、国際通貨基金(IMF)はやや高目に、世界銀行はやや低目に出す傾向がありますので、それぞれを上限・下限として、ピンク色の帯で示してみました。

一方、ロシアの成長率は紺色の折れ線で示してあり、2016〜2017年はすでに確定した実績、2018年以降は2018年10月にロシア政府が発表した公式的な経済見通しによる予測値です。

まず目を引くのが、現状でロシアの成長率が世界平均を大きく下回っていることです。2000年代には、ロシアはいわゆるBRICsの一画として、世界の成長をリードする存在になると期待されていました。

しかし、2008年のリーマンショック後の時代に、ロシアではすっかり低成長が定着してしまい、2014年以降はウクライナ問題に端を発する地政学危機の重しも加わっています。

今日のロシアの潜在成長率は、せいぜい1%台にすぎないのではないかという見方が、ロシア内外の専門家の間で強まっています。

ところが、2018年10月の政府経済見通しは、不自然な二段構えになっています。2019〜2020年については現実的で慎重な見通しが示される一方、2021〜2024年については「5月大統領令」の諸課題が達成され構造改革が進むことで、経済が上向くという想定になっているのです。

現在直面している経済停滞は一時的で、2021年以降は「本来の」軌道である年率3%台に戻るというわけです。

上図に見るとおり、IMFおよび世銀は、世界経済の成長率は今後、概ね3%前後で推移するという見通しを示しています。ということは、ロシアも少なくとも年率3%台の成長に移行しなければ、プーチンが号令をかけた「世界平均を上回る成長」が達成できないことになってしまいます。

上図を見ると、まるでその実現がありきであるかのように、現在の苦境さえ乗り切ればロシア経済は自ずと本来の成長を取り戻すはずだと根拠もなく信じられているようであり、希望的観測との印象が否めません。

2.3%成長の驚き
こうした中、ロシア連邦国家統計局は2月4日、2018年のGDP速報値を発表しました。その数字が、2.3%の成長という、大方の予想をかなり上回るものだったため、関係者に驚きが広がりました。

何しろ、2018年1〜9月のGDPは前年同期比1.5%増とされていたのに、それがいきなり通年では2.3%増になってしまったわけですから、「10〜12月にどれだけ急成長したんだ?」という話です。

上図に見るように、2018年10月時点の政府見通しでは、2018年のGDPは1.8%増という予測でした。実は、建設統計の見直しなどを受け、2019年1月末にロシア政府は2018年の成長見通しを1.8%から2.0%に上方修正していたのですが、2月4日に発表された2.3%はそれすらも超えてきたので、大いに物議を醸すことになったわけです。

現地の専門家はGDPサプライズについて様々にコメントしていますが、詳細の分からない現時点では、そうした議論はあまり意味がないかもしれません。そもそも、2.3%という数字はあくまでも第一報の速報値ですので、これから小さからぬ修正が加えられる可能性もあります。

いずれにしても、プーチン大統領は、現在のロシア経済の実力からすると過大と思われる「世界平均を上回る成長」という号令をかけました。

これまでロシアでは、公式統計が政権当局の思惑に沿って改変されるといったスキャンダルは、ほとんど聞かれませんでした。しかし、今後は、良好な経済指標が発表されるたびに、「かさ上げではないか」、「統計局の忖度か?」という疑念が生じそうです。(後略)【2月26日 GLOBE+】
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日本なら“忖度”でしょうが、ロシアなら不正統計の“指示”だってあり得ます。まあ、そのあたりは下種の勘繰りかもしれませんが。

【国内ネット空間を海外から遮断できる体制へ】
冒頭【2月25日 産経】にある“インターネット上の言論規制の強化”への国民の不満については、以下のようにも。

****ロシアのネット空間、世界と隔離?国会提出の法案が物議****
ロシアの国会で国内のインターネットを外国のネットワークと完全に切り離せるようにする法案の審議が始まり、物議を醸している。提案した与党議員らは、国外からのサイバー攻撃に備えるのが目的としているが、ユーザーは「国家がネットを完全に管理するのが狙いだ」と反発している。

同法案は昨年12月、米国のサイバー戦略への対抗策として議会に提出された。
 
米国は、2016年の米大統領選にロシアがサイバー攻撃で介入したと認定し、否定するロシアと対立が続く。法案を提出した与党、統一ロシアの議員らは、米国のサイバー戦略が「攻撃的な性格を持つ」と主張。海外との通信を政府が遮断できる仕組みを設け、ロシア国内の情報通信網を守るよう求めている。
 
だが、12日の下院の審議では、米国の脅威よりも、政府のネット規制が強まる可能性に野党の質問が集中。「中国のネット検閲システム『グレート・ファイアウォール』を模しているのではないか」といった批判が相次いだ。
 
与党や政府は「同法は規制が目的ではない」などと反論し、激しい議論が繰り返された。法の成立には上下両院での審議を経てプーチン大統領が署名することが必要だが、先行きを不安視する声が相次いでいる。
 
欧州安保協力機構(OSCE)は14日、同法が「人々が世界のインターネットにアクセスしたり、情報のやりとりを制限したりするために使われる可能性がある」とする声明を発表し、議会に法案の修正を求めた。【2月17日 朝日】
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世界各国は国内分断が進んでいますが、国際関係にあっても“壁”とか“○○第一”とか、ロシアのネット分断とか、分断が進行しています。

このロシアのネット規制の話に立ち入ると長くなるので、別機会があればそのときに。
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インドネシア・パプア州  襲撃事件、国軍の掃討作戦で混乱も ミャンマー“ロヒンギャ”のミニ版

2019-02-25 22:21:31 | 東南アジア

(インドネシア東部パプア州ワメナで、仮設の避難所で授業を受ける子どもたち(2019年2月12日撮影)【2月24日 AFP】)

【蛇で尋問 背景に少数民族への差別・優越意識、独立運動の存在、軍・警察の強権体質】
ニューギニア島は日本の国土の約2倍、世界の島の中ではグリーンランドに次ぐ面積第2位という大きな島です。

西半分は独立国家のパプアニューギニアで、東半分はインドネシア領のパプア州・西パプア州となっています。

2週間ほど前、そのインドネシアのパプア州で警察による蛇を使った尋問(“拷問”と呼ぶべきでしょう)が話題になりました。

****蛇で尋問 動画拡散 警察が謝罪 インドネシア・パプア州****
インドネシア東部パプア州の警察署で、警察官が巨大な蛇を使ってパプア人男性を「尋問」する様子を撮影した動画がネット上に拡散。

人権団体などからの抗議を受け、警察署長が「ふさわしくない方法だった」と謝罪した。ロイター通信が伝えた。
 
映像では後ろ手に縛られ、首に蛇を巻き付けられた男性に対し、捜査員が蛇の顔を押しつけながら、携帯電話の盗難について質問。「何回盗んだ」との質問に「2回だけ」と答える様子などが記録されている。
 
同州ジャヤウィジャヤ警察のスワダヤ署長は謝罪文を発表し、「蛇は毒のない種類で人に慣れていた」と釈明した。
 
パプア地方ではインドネシアからの分離独立を求める小規模な武力闘争や非暴力の住民運動が続き、治安部隊による人権侵害が繰り返し報告されている。パプア問題に詳しい弁護士は「パプアでの蛇を使った『拷問』は初めてではない」としている。【2月11日 毎日】
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蛇嫌いの私としては、ニュースを読んだだけで気分が悪くなりますが、「蛇は毒のない種類で人に慣れていた」云々は「そんな問題じゃないだろう!」といったところです。

この種の蛮行がまかり通る背景には、上記記事も指摘しているように、パプア地方で続くインドネシアからの分離独立運動の存在があります。

更に言えば、インドネシア多数派のパプア地方住民ら少数民族への蔑視があるとの指摘も。

****インドネシア警察、ヘビ押し付けて容疑者取り調べ 背景に少数民族への差別・優越意識****
<警察の尋問が行き過ぎた背景には、インドネシアが抱える少数民族への差別があったのか?>
インドネシアの東端、ニューギニア島の西に位置するパプア州の山間部にあるジャヤウィジャヤ県で、地元警察が窃盗の容疑で逮捕したパプア人男性の尋問に生きたヘビを使って脅している様子が2月8日にインターネット上の「ツイッター」にアップされ炎上。2月10日に地元警察の責任者が謝罪し、州警察のトップも事実関係の調査に乗り出す事態となっている。

インドネシアでは国家警察や国軍という治安組織による一般市民への人権侵害事件は後を絶たず、少数民族、宗教的少数派のキリスト教徒、さらにLGBTなどの性的少数者に対する行き過ぎた暴力がたびたび明らかになっている。

こうした背景には世界最大のイスラム人口を擁する国という宗教的理由や少数者への「非寛容性」が顕在化している現状、そして多数派の心中に潜在する差別感、優越感があるといわれている。

ヘビの頭を容疑者の顔や口に近づけ尋問
インドネシア各紙などの報道によると、インターネット上に動画が流出、拡散したのはパプア州中心部の山間部にあるジャヤウィジャヤ県警察の取り調べの様子。

窃盗容疑で逮捕された男性(名前、年齢不詳)が床に座らされ、両手を後ろ手に縛られた状態で首や身体に全長約2メートルのヘビが巻きつけられている。

動画をみると恐怖のために叫んでヘビから逃れようとする容疑者の男性に対して、警察官とみられる私服男性がヘビの頭部を近づけている。

容疑者の怖がる様子に対して周囲からは笑い声とともに、「(ヘビに)キスしろ」「口を開けろ」などの声が飛び、私服の警察官がインドネシア語で「携帯電話を盗んだのは何回だ」と問い詰め、男性が「2回だけだ」と「自供する」様子が収められている。

この虐待された男性は肌の色や頭髪などからパプア人とみられ、私服の男は男性のズボンの裾からヘビを中に潜り込ませようとしている様子も撮影され、すでに8万回近く再生されている。

これは警察官による容疑者の尋問の様子で、パプア州ではこうしたヘビを使った尋問がこれまでも行われていると人権活動家などが指摘していることも地元マスコミは伝えている。

謝罪したものの警察の調査は動画流出の"犯人探し"か

ジャワウィジャヤ県警察のトニー・アナンダ・スワダヤ署長はロイター通信に対し「容疑者の自供を得るための行為だったが適正な方法ではなかった」と謝罪の意を表明する一方、「使用されたヘビは毒のない種類のヘビで、人にも慣れているヘビだった」と弁解、男性に危害を加えるつもりでのヘビ使用ではないことを強調した。

さらに同県警察の上部組織に当たるパプア州警察のアハマッド・ムストファ・カマル報道官は「現在警察の監察部署による内部調査が行われている。もし違法行為が見つかれば相応の措置を取る」と話している。

インドネシア人記者は警察が表向き謝罪して警察官の人権侵害を立件しようとしていることに関し「問題は誰がこうした違法な尋問をしたかではなく、誰がこうした動画を外部に流出させたかであり、その"犯人探し"に躍起となっているのが実状」と警察組織内部の実態を打ち明ける。

パプア州の抱える特殊事情
パプア州は隣接の西パプア州とともに1998年に崩壊するスハルト長期独裁政権時代は、西端のアチェ、南東の東ティモールと並んでインドネシアからの武装独立運動が盛んで国軍は3地域を「軍事作戦地域(DOM)」に指定して内外のマスコミの現地入りを制限していた。

その一方で現地に精鋭部隊を派遣して武力鎮圧を続けた結果、「略奪、暴行、拷問、虐殺」などの人権侵害事件が多発、その大半が国際社会の指弾を受けながらも依然未解決あるいは迷宮入りとなっている。

アチェは2004年12月のスマトラ沖地震と津波を経てイスラム法(シャリア)が適用される特別な州としてインドネシアにとどまることを選択、東ティモールは2002年5月に住民投票を経てインドネシアからの独立を果たしている。

結果として旧DOMでパプアだけが細々ではあるものの依然として独立組織「自由パプア運動(OPM)」による独立武装闘争が継続しているという実情がある。

2018年12月2日にはジャヤウィジャヤ県に近いンドゥガ県でインフラ整備の道路建設現場で働くスラウェシ島などからの建設作業員が正体不明の武装集団に襲撃されて19人が殺害される事件も起きている。

増援部隊を派遣した国軍による武装集団の鎮圧作戦が展開中だが、国軍は「武装した犯罪集団」による犯行としているが、実際にはOPMの分派による犯行とみられており、依然として同州山間部の治安が不安定な状態であることが浮き彫りとなった。

根深いパプア人へ差別、偏見、優越感
こうした歴史的背景も今回のような治安組織によるパプア人への人権侵害の根底にあるとの見方は強い。

そうした差別意識、偏見、優越感は治安組織に限らず、中央政府などジャワ人主体のインドネシア全体に言えることでもある。

8月17日の独立記念日に最近はジョコ・ウィドド大統領以下閣僚、国軍・警察の首脳が各民族の伝統衣装で着飾って参列することが好例化している。その際にほぼ裸体に近く、野獣の牙や角、鳥の羽などでパプア人の格好をして喝采を浴びる人が必ずいる。

実際のパプアでは裸体に男性は「コテカ」と呼ばれるペニスケースだけという伝統的装束は相当な山間部に行くか、観光客向けでしか実際はないのだが、そうした衣装を身に付けることをパプア人は「未開民族みたいに馬鹿にされている」と感じていることを大半のインドネシア人は気づかない、あるいは気づかない振りをしているとの指摘がある。

今回のヘビを使った尋問のケーズは、たまたま動画が流出して大きな話題になっているが、こうした背景を考える時、インドネシアが掲げ、ジョコ・ウィドド大統領も主張する「多様性の中の統一」や「寛容性」という国是が所詮、少数派には無縁のものであるとの印象をどうしても拭えなくなる。【2月12日 大塚智彦氏 Newsweek】
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警察が、形ばかりの謝罪(あまり謝罪にもなっていませんが)の一方で、動画流出の“犯人探し”に躍起となっているであろうことは容易に想像できます。

パプア地方が受けている差別・貧困、「自由パプア運動(OPM)」による独立運動などについては、約1年前の2018年1月26日ブログ“インドネシア領ニューギニア  開発の遅れ、差別的処遇が生む貧困と独立運動”でも取り上げたことがあります。

インドネシア国軍の独立運動に対する人権無視・苛烈な弾圧は東ティモールでも明らかにされたところで、パプア地方における軍・警察の苛酷さもまた、容易に想像されるところです。

【建設作業員襲撃事件で拡大する混乱 軍は関与否定】
そうした状況で、上記記事にもある昨年12月の建設作業員襲撃事件が起きています。
犠牲となった作業員らは、国営建設会社イスタカ・カルヤの下、パプア州ンドゥガ県でインフラ設備を増強するために橋や道路の建設に当たっていたとされています。

****「殺すか、殺されるか」と犯行組織が主張 インドネシア大量虐殺****
インドネシア東部パプア州のジャングルで多数の建設作業員が殺害された事件で、犯行に及んだとする反政府武装組織は7日、殺害したのは作業員の姿を装ったインドネシア軍兵士であり、正当な軍事標的だと主張した。
 
この事件では少なくとも16人が殺害されており、現在も遺体の捜索が行われている。
 
パプア独立派の反政府武装組織、西パプア民族解放軍は、先週国営建設会社に雇われ働いていた約20人を殺害したと犯行声明を出している。
 
同組織で広報を担当する人物は「彼ら(作業員)は変装したインドネシア軍兵士であり、われわれの敵だ」「これは戦争だ。殺すか、殺されるかだ」と語った。また「われわれも(隣国)パプアニューギニアのように独立を希望する」と訴えた。
 
目撃者や軍の発表によると、作業員らの多くは後ろ手に縛られ、処刑されるかのように射殺された。逃げようとした作業員らは喉をかき切られ、ほぼ斬首された状態で発見された遺体もあったという。また事件の調査に携わっていたインドネシア軍兵士1人も殺害された。
 
当局によると、武装勢力40〜50人がジャングルへ逃げ込んでおり、軍が行方を追っている。
 
パプアニューギニアとの国境沿いにある同州で暮らすパプア人の多くはインドネシアを、土地を占領している植民者だとみなしており、貧困にあえぐ同州のインフラ強化はインドネシア政府が支配を強めるための手段だと受け止めている。
 
またインドネシアの治安部隊に対しては以前から、軍事力を乱用し、パプアの先住民であるメラネシア人の活動家や平和的な抗議行動の参加者らを超法規的に殺害している疑惑が持たれている。【2018年12月10日 AFP】
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貧困に取り残されたパプア地方住民の生活向上を可能とするインフラ強化を“インドネシア政府が支配を強めるための手段”とみなすことはどうでしょうか?

独立ありきの前提で言えば、インドネシア政府の行うことはすべて悪ということにもなるのでしょう。

なお、インドネシア政府の支配強化という線での話で言えば、20世紀初頭まではインドネシア政府にとってパプアは「使い道のない島」でしたが、現在は「インドネシア政府は資源が豊富なパプア地方を確固として掌握し続けるため、兵士や警察官を多数配置している。」【2016年12月1日 AFP】とのことです。

独立を目指す武装組織の主張の妥当性への疑問はありますが、体質的に人権などへの配慮に欠くインドネシア国軍の報復が峻烈だろうということもまた想像できます。

実際、現地では混乱が拡大しているようです。

****子ども数百人が戦闘逃れ避難か、インドネシア・パプア州****
情勢不安が続くインドネシア東部パプア州で、児童・生徒数百人が戦闘を逃れて避難したと、地元の非政府組織が明らかにした。

同地では、独立派ゲリラによって民間人の建設作業員が殺害された事件を受け、軍事的な報復措置が取られたとの報告があるものの、今のところ確認されていない。
 
パプア州では昨年12月、人里離れた森林地帯にあるキャンプで、政府の関連事業に携わる作業員16人が独立派ゲリラに殺害された。これを受け、装備が貧弱かつ組織化されていないゲリラと、強力なインドネシア軍との、散発的ながらも数十年にわたって続く衝突が一気にエスカレートした。
 
NGOや地元の教育当局者によると、この事件後に衝突が相次いだことを受け、同州ンドゥガ県当局は400人を超える児童・生徒を、隣接するジャヤウィジャヤ県の中心地ワメナに避難させたという。
 
NGO「ンドゥガのための人道ボランティア」の関係者はAFPに対して、「一部の子どもたちはトラウマ(精神的外傷)を負っている」と述べ、「軍服姿の兵士らが学校にやって来た際、(恐怖で)逃げ出した子どももいた」と明かした。
 
兵士らが放火や嫌がらせをしたり、家畜ばかりか民間人を殺したりしているとの訴えもある中、地元住民や活動家らによると、他にも多くの住民が隣接県に避難したか、森林地帯に逃げ込んだとみられるという。
 
地元の軍司令官は、子どもたちが避難した事実を認める一方、理由は軍の存在ではなく、域内の教員不足だと説明している。
 
NGO関係者によると、授業はテントの中で行われており、子どもたちは親族の家に滞在。児童・生徒と一緒に教員約80人も避難したという。
 
パプア州の教会指導者や活動家らと連絡を取り合っているという、弁護士のベロニカ・コマン氏は、ンドゥガの軍事作戦で避難を余儀なくされた人々は少なくとも1000人に上ると指摘。「インドネシア政府は軍事作戦を命令したものの、国内避難民への支援は全く行っていない」と語った。 【2月24日 AFP】
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【軍の報復による混乱、社会全体で強まる不寛容、制御できない指導者・・・・ミャンマー・ロヒンギャに共通する面も】
襲撃事件を契機に“装備が貧弱かつ組織化されていないゲリラと、強力なインドネシア軍との、散発的ながらも数十年にわたって続く衝突が一気にエスカレート”・・・・ミャンマーのロヒンギャ武装組織に対する国軍の民族浄化的弾圧を想起させます。

“兵士らが放火や嫌がらせをしたり、家畜ばかりか民間人を殺したりしている”とも言われる状況や、混乱・残虐行為への軍の責任を認めないあたりもそっくりです。

もちろん、ロヒンギャの方は70万人を超える難民ということで、弾圧の規模ははるかに大きいものになっていますが。パプアはロヒンギャ弾圧の“ミニ版”のようにも。

インドネシアにしても、ミャンマーにしても、民族的・宗教的少数派(パプア州住民の4分の3がキリスト教徒)への不寛容が根底にあって、国軍の強権的体質が弾圧を引き起こしているように見えます。

インドネシア全体についてのイスラム重視・宗教的不寛容の高まりについては、1月27日ブログ“インドネシア  世界最大の華人社会 大統領選挙に絡んで高まるイスラム重視の宗教的不寛容 ”でも取り上げました。

インドネシアのジョコ大統領もミャンマーのスー・チー氏も国民的人気は高い、比較的民主化には理解のある指導者ですが、多様性・寛容さを重視するとしていたジョコ大統領も大統領選挙に向けて、不寛容の流れに逆らえない・・・といったあたりは、ミャンマー国軍の弾圧を制御できない“かつての民主化運動の旗手”スー・チー氏にダブるところがあります。

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アメリカ主導のファーウェイ包囲網、イギリスは不参加か 将来的最大市場インドも

2019-02-24 23:43:05 | 国際情勢

(世界最大級のICT見本市CeBITに出展したファーウェイ(2017年3月)【2月22日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】)

【ファーウェイ創業者「米国は決してわれわれをつぶすことはできない」】
アメリカ・トランプ政権が、台頭する中国に対抗して今後とも世界覇権を維持すべく、今後の安全保障に大きく影響する次世代通信規格5Gから中国通信機器大手ファーウェイを締め出そうと(創業者の娘をイラン制裁違反で逮捕するなど)“狙い撃ち”していることは周知のところです。
(参考 2月13日ブログ“ファーウェイ・5G通信網をめぐる米中の争い つまるところ情報泥棒同士の争い”)

ファーウェイは、これもしばしば報道されているように、実質的に国家・党の支配下にある有力企業が多い中国にあっては、比較的そうした国家権力とは距離を置いて技術力で今の地位を築いた異色の企業でもあります。(その過程で、アメリカの知的財産権の侵害があったかどうかは別にして)

国家の後ろ盾が弱い民間企業ファーウェイが、世界最強国家アメリカの狙い撃ちにあえば、その存続はたちどころに危うくなる・・・・と、素人的には考えるのですが、創業者である任氏は強気の姿勢です。

****ファーウェイ創業者「世界はわが社を手放せない」、米国の動きに反発****
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者である任正非最高経営責任者(74)が英BBCのインタビューに応じ、自社について「われわれはさらに進んでおり、世界はわが社を手放すことはできない」と語った。

また、「米国は決してわれわれをつぶすことはできない」とも述べ、米国を中心とするファーウェイ排除の動きに強く反発した。
 
任氏は、昨年12月に娘で同社最高財務責任者の孟晩舟氏が対イラン制裁に違反した容疑で逮捕されたことについて、「政治的動機」によるものだと非難。逮捕には反対の姿勢を示したものの、「ここまで来たからには法廷に解決を委ねる」と述べるにとどめた。
 
さらに情報スパイに対する懸念の高まりや、米国を中心とするファーウェイ排除の動きといった圧力については気にも留めない様子を見せ、「西で光が消えても、東は輝き続けるだろう」「米国は世界の代表ではない」と反論。
 
また、「われわれの製品を一時的に使用しないよう各国を説得したとしても、わが社はいつでも事業を縮小することができる」と強調した。 【2月19日 AFP】
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実際ファーウェイの技術は世界最先端をいくもので(だからこそ、アメリカが排除に躍起になっているのでしょう)、2月13日ブログでも触れたように、“華為製品がすでに普及した状況では、排除が難しいとの見方も根強い。米メディアは、華為製品を使えなければ、5G整備が「少なくとも2年」遅れるとする独通信大手の内部文書の内容を報じた。”【2月10日 産経】ということで、アメリカからファーウェイ排除を迫られている欧州にはためらいが見られます。

ファーウェイ製品には「バックドア」が設定されており、情報が盗まれる云々については、当然、ファーウェイも中国当局も否定しています。

****米のファーウェイ排除に反論=「バックドア求めず」―中国****
中国の外交を統括する楊潔※(※竹カンムリに褫のツクリ)共産党政治局員は16日、ドイツで開かれた「ミュンヘン安全保障会議」で質問に答え、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の製品を排除する動きに対し、「企業に『バックドア(裏口)』を仕組んだり情報を集めたりするよう求める法律は中国にはない」と強調した。中国国営新華社通信が17日伝えた。【2月17日 時事】 
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実際のところはわかりませんが、情報を盗む云々ということであれば、中国だけでなく、アメリカ自身が最大の情報監視国であることは2月13日ブログでも取り上げたところです。

アメリカ世論も、ファーウェイ排除は安全上の配慮というより、米中の覇権争いという政治的なものという見方をしているようです。

****ファーウェイに圧力、米国人の6割超が選んだのは「安全性」ではなく…****
観察者網は21日、米テレビ局が実施した米国政府による中国通信大手ファーウェイ(華為技術)への圧力に関する世論調査で興味深い結果が出たと伝えた。

記事によると、米CNNはこのほど「あなたは米国がファーウェイに圧力をかける背後にある原因は何だと思いますか」という世論調査を実施し、その結果を19日にツイッター上で発表した。

それによると、「政治的な原因」が61%と最も多く、「安全上の考慮」は24%、「商業的な要因」は13%にとどまった。(後略)【2月22日 レコードチャイナ】
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なお、同記事によれば、“同番組のコメンテーターは、かつて米国政府がWindowsシステムにバックドアを取り付けたという事例を挙げて「米国のデバイスにもリスクはある」と指摘したという”とのこと。

また、商業的な要因の得票率が低いのは、ファーウェイに代わり得る米国企業が存在しないためとも。

【イギリスはファーウェイ容認か? 崩れる「ファイブ・アイズ」】
このような状況で、アメリカ主導のファーウェイ包囲網の一角とみられていたイギリスが、ファーウェイ容認の姿勢を打ち出して注目されています。

****5G華為リスク、英「制御できる」 米との連携影響も****
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が英国の次世代通信規格「5G」通信網に参入することに関し、華為の製品を使うことによるリスクは制御できると英情報当局が結論づけたと、複数の英メディアが17日に報じた。
 
米国は、情報漏れなどのリスクから、5Gに華為製品を使わないように同盟国に求めているとされる。米国と諜報(ちょうほう)機関の情報を提供しあう「ファイブ・アイズ」のメンバーでもある英国が利用を認めれば、連携に影響を及ぼす可能性もある。
 
英政府通信本部傘下の国立サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、5G通信網のリスク管理のあり方などを見直す作業を進めている。

英紙フィナンシャル・タイムズは関係者の話として、NCSCは、華為製品のリスクを抑える方法があると結論づけたと報じている。

米国やオーストラリアは5Gから華為製品を事実上締め出す方針を打ち出しているが、英国ではリスク軽減措置などを取れば、5Gでの華為製品の利用を認める可能性がある。【2月19日 朝日】
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「ファイブ・アイズ」については、以下のようにも。

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ファイブ・アイズとは、「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド」の5ヵ国が加盟する諜報協定の通称で、各加盟国の諜報機関が傍受した盗聴内容や盗聴設備などを共有するために第二次世界大戦中に締結された。

ドイツの通信暗号エニグマを解読するのが初期の目的だった。第二次世界大戦は終結したのだから、今さらファイブ・アイズもないだろうとは思うが、それとなく緩い関係で今でも「同盟国」として幻のようなネットワークを構成している。 【2月22日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
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この「ファイブ・アイズ」グループのコンピューターネットワークが「エシュロン」と呼ばれている世界最大の情報監視組織である。

情報の盗み取りは自分たちがこれまでさんざんやってきたことですから、蛇の道は蛇で“華為製品のリスクを抑える方法がある”ということでしょうか。

****英国はファーウェイ排除に不参加か EU離脱と中国の揺さぶり影響?****
ファーウェイのリスクは緩和可能
[ロンドン発]中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5G参入を巡り、アングロサクソンのスパイ同盟「ファイブアイズ」構成国である米国やオーストラリア、ニュージーランドが次々と排除の方針を打ち出す中、英国は隊列に加わらない可能性が出てきました。(中略)

GCHQ(英政府通信本部)のロバート・ハンニンガン前長官はフィナンシャル・タイムズ紙に12日付で「ファーウェイの5G設備を全面的に排除するか否かという議論はサイバーセキュリティーの技術と5G設計の複雑さへの理解を欠いている」と指摘し、次のように断言しました。

「中国のテクノロジー会社に対し拡大するヒステリーが分かりにくくしている点は、NCSCはこれまでファーウェイを通じて中国が国家として実行したサイバー攻撃に関係する証拠を何一つ見つけていないことだ。国家関与のサイバー攻撃は中国企業を経ずに行われている」 (中略)

英国が米国のファーウェイ締め出しと一線を画したことでドイツなど欧州の主要国が英国に追従する可能性があります。

対中警戒を強める米国
今回の報道が本当なら米国のドナルド・トランプ大統領を激怒させるでしょう。
シギント(電子情報の収集)を担当する米安全保障局(NSA)はファーウェイ設備のリスクを証明するためファイブアイズ構成国や同盟国、友好国と情報を共有してきました。

これを受け、ファイブアイズに加盟するカナダ政府は昨年12月、ファーウェイの孟晩舟最高財務責任者(CFO)兼副会長を逮捕しました。米国政府は、イランとの違法な金融取引に関わったとしてファーウェイと孟氏を起訴し、身柄の引き渡しを正式に求めています。

マイク・ペンス米副大統領はポーランドで「通信セクターを中国から守れ」と呼びかけ、ミュンヘン安全保障会議でも「中国の法律は中国企業に対し、ネットワークや設備を通るいかなるデータにアクセスできる装置を提供するよう求めている」「我々は重要な通信インフラを守らなければならない」と訴えました。

ペンス米副大統領は昨年10月、ワシントンの保守系シンクタンク、ハドソン研究所で「トランプ政権の対中政策」と題して演説し、中国は陸・海・空・宇宙で米国の軍事的な優位を崩す能力を身につけることを最優先にしていると警鐘を鳴らしました。

この演説は、米ソ冷戦の始まりを告げた故ウィンストン・チャーチル英首相の「鉄のカーテン」演説を思い起こさせ、「米中冷戦」時代の到来を告げたととらえられました。

AIIB参加で米国を激怒させた英国
親中派ジョージ・オズボーン前財務相は「英中黄金時代」を掲げ、欧州では真っ先にアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明し、日米を激怒させたことがあります。2015年秋には中国の習近平国家主席が英国を公式訪問、大歓迎を受けました。(中略)

欧州は対中ソフトアプローチ
欧州連合(EU)から離脱する英国にとって中国は頼みの綱の一つです。日立製作所が英国における原発新設計画を凍結してから、新規原発を手掛ける仏電力公社EDFと中国広核集団(CGN)の存在感が増しています。(中略)

EUから離脱する上、中国にまでそっぽを向かれると、英国は立つ瀬がありません。(

スマート工場で協力する独中
米国からの圧力を受け、ドイツでもファーウェイへの懸念は強まっています。しかし「米国第一!」のトランプ大統領とは一線を画し、あくまで中国との公正な通商関係を築くことに主眼を置いています。

習主席の掲げる「中国製造2025」はドイツの第4次産業革命「インダストリー4.0」に倣った産業政策です。中国をはじめ新興国でインダストリー4.0を無人・自動化工場のスタンダードにするため、アンゲラ・メルケル独首相は中国と合同閣議を開き、積極的に対中協力を進めてきました。

しかし16年の中国美的集団による産業用ロボット世界大手、クーカ買収をきっかけに安全保障や技術流出への懸念が強まり、ドイツ政府もEU域外の企業による買収規制を強化しました。

独シンクタンク、MERICSによると、中国製造2025は非関税障壁や補助金を駆使して国内から外資系企業の駆逐を図っています。世界市場で中国系企業の競争力を向上させる狙いもあります。

その影響をまともに受けるのは韓国、そしてドイツ、アイルランド、ハンガリー、チェコ。次のグループが日本、スロバキア、スロベニア、オーストリア、ルーマニア、デンマークだそうです。 【2月18日 木村正人氏 YAHOO!ニュース】
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各国が“生き残り”をかけてしのぎを削っており、そうそうアメリカの思惑どおりにも動かなないということのようです。

なお、中国内部事情に詳しい遠藤誉氏は、今回イギリスの対応の背景には、イギリスに対する強い影響力を持つ華人大富豪・李嘉誠氏のファーウェイ応援があると指摘しています。
(2月22日 YAHOO!ニュース 「Huaweiめぐり英中接近か――背後には華人富豪・李嘉誠」)

【インドでも・・・】
アメリカのファーウェイ包囲網は、将来的世界最大市場インドでも崩れる可能性があるようです。

****ファーウェイ包囲網、米国の思わぬ誤算 ****
ネット経済が爆発的に伸びるインドではファーウェイの安さと技術力が必要とされている

中国の華為技術(ファーウェイ)を締め出すための包囲網を世界的に広げる米国が、意外な障害にぶつかっている。世界最大の民主主義国インドだ。
 
米国はインドに対し、通信網のアップグレードにファーウェイの機器を使えばサイバーセキュリティーに重大な脅威を及ぼすと警告している。

しかし複数の政府当局者や業界幹部によると、今のところインドの政策担当者や通信会社はほとんど耳を傾けていない。ファーウェイが提供する割安な価格や高い技術力はそうしたリスクを上回るとの主張が多いからだ。
 
インド携帯電話事業者協会のラジャン・マシューズ事務局長は「ここでは、米国の措置はどちらかというと外交政策の問題だと受け止められている」と述べた。
 
こうした懐疑的な見方は広範にわたっているため、ファーウェイによる次世代通信規格「5G」制覇を阻止しようとする米国の戦いで、インドが想定外の戦場と化しつつある。

アナリストらによると、米国は態度を決めていない国に対する中国の影響力を排除しようとしているが、その成否はインドが選ぶ方向で決まる可能性がある。

インドの5G展開はまだ初期段階だが、同国は急成長が見込まれる重要な市場だからだ。(後略)【2月22日 WSJ】
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インド政府高官は「ファーウェイは現在、5Gで最先端にいるため無視できない」とし、「全ての技術にはセキュリティーの懸念やぜい弱性があるのだから、ファーウェイのみを名指しするのは正しくない」と述べています。

【日本市場でもファーウェイのスマホが急拡大】
なお、ファーウェイは日本のスマホ市場でもシェアを急拡大しているようです。

****保守的な日本でファーウェイ製スマホがシェア急拡大、韓国サムスンを抜くのは時間の問題=中国メディア**** 
中国メディア・環球網は14日、日本におけるファーウェイのスマートフォンのシェアが、間もなくサムスンを抜きそうであるとする記事を掲載した。

記事は、ファーウェイのスマートフォンの販売台数が日増しに増えていると紹介。同社は昨年よりNTTドコモ、ソフトバンクとの提携による商品を発売しており、これまで主な販売チャネルだったSIMフリー機種以上に日本の消費者から認められるようになったとした。

そして、日本の調査・コンサル企業による昨年の日本国内のスマートフォン販売台数で、ファーウェイが198万1000台で5位に入ったことを伝えた。

1位は7年連続でアップルとなったものの、昨年に比べて1%減の1543万8000台に留まったほか、2位はシャープで同6.9%増の413万3000台、3位は前年比30.6%減と苦戦を強いられたソニー、4位が同8.1%増のサムスンだった。ファーウェイは昨年よりも販売台数が2.3倍になっている。

記事はまた、市場シェアで見るとファーウェイのシェアは6.4%だったのに対し、サムスンは6.7%となっており「これは、ファーウェイが日本市場でサムスンを超えるまで、ほんのあと一歩のところまで来ていることを意味する」と伝えた。

さらに、短期間でこれだけ日本市場で大きく販売台数を増やしたことについて「相対的に保守的かつ排外的とされる日本市場においてはとても得難いことだ」との見方を紹介した。(後略)【2月17日 Searchina】
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個人的な話ですが、私はつい先日、遅ればせながらようやくガラケーをスマホに切り替えましたが、機種はファーウェイの最新機種「Mate 20 Pro」です。

大幅に割り引きになると店で勧められたことと、カメラ機能が優れていることが理由ですが、情報が盗まれる云々については、別にファーウェイだろうが何だろうが、ネット接続したスマホを使用していれば“ダダ洩れ”状態でしょうから、今更・・・といったところです。

現代社会においてスマホ等の機器を使用する以上は、一定に覚悟のうえのことです。

位置情報取得を許可していますので、どこかの店で買い物などしていると、スマホに「○○でのお買い物はいかがでしたか?」とメッセージが入ります。

最初は監視されているようで気持ち悪い感じもありましたが、すぐに慣れてしまいました。

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地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策

2019-02-23 22:43:48 | 環境

(去年8月から毎週金曜日に学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を1人で始めたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん16歳【2月22日 NHK】
ボードに書かれているのは、google翻訳にかけると「気候のための学校ストライキ」といった内容のようです)

【「政治家たちはこの数十年間を何もせずにむだにしてきた」】
長い時間をかけて変化する地球温暖化の話は、正直なところ私のような老い先短い者にとっては、あまり切実な影響は感じない“他人事”でもあります。

その意味では、今後数十年地球上で暮らす子供たち・若い人にとっての方がより切実な問題でもあり、大人たちのいい加減な対応に抗議の声をあげるというのも、もっともなことです。

****“未来のための金曜日”16歳少女がEUの会議で温暖化対策訴え****
スウェーデンの16歳の少女が、毎週金曜日に学校を休んで地球温暖化対策を呼びかける活動を始めたのをきっかけに世界各地に活動の輪が広がっています。

その少女が、21日、EU=ヨーロッパ連合の会議で演説し、「温暖化の問題を解決するまで活動をやめない」と決意を語りました。

スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん16歳は、去年8月から毎週金曜日に学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を1人で始めました。

この活動は、「未来のための金曜日」と呼ばれ、世界各地に広がっていて、トゥーンベリさんは、21日、ベルギーのブリュッセルで開かれたEUの会議で演説しました。

この中でトゥーンベリさんは、「私たちは、今、起きている気候変動に注目すべきだ。そうしないと、これまでに築き上げてきたものが台なしになってしまう」と述べ、温暖化対策の必要性を訴えました。

さらに、「『大切な勉強の時間をむだにしている』と言われるかもしれないが、政治家たちはこの数十年間を何もせずにむだにしてきた。私たちは、温暖化の問題を解決するまで活動をやめない」と決意を語りました。

これに対し、EUのユンケル委員長は、「若い人たちが行動を起こし、政治家に課題を投げかけたことを歓迎する」と述べ、対策に取り組む考えを示しました。【2月22日 NHK】
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チコちゃんなら「ボーっと生きてんじゃねーよ!」といったところでしょうか。
上記記事にもあるように、グレタ・トゥーンベリさん16歳の訴えは、欧州各地に波及しています。

****英で児童・生徒数千人が気候変動デモ 学校は授業欠席容認****
英国各地で15日、数千人の児童や生徒が気候変動への対策を求めるデモを行い、ロンドン中心部の議会議事堂前にある広場「パーラメントスクエア」での集会には数百人が参加した。子どもたちの多くが、学校側は授業を休んで抗議に参加することに理解を示したと述べている。

抗議にはあらゆる年齢層の児童・生徒が参加し、「地球を救え」と声を上げた。広場では発煙筒がたかれて参加者から喝采が起こる場面が見られたほか、議事堂から目と鼻の先にある像によじ登って対策を訴え、問題への認識向上を呼び掛ける生徒らもいた。

今回のデモは「気候のための青少年ストライキ」と銘打って実施されたもので、ベルギー、フランス、ドイツ、スウェーデンでも行われた欧州規模のボイコット活動の一環。

ブリュッセルなどベルギーの各都市では、若者らが約6週にわたり毎週木曜日に抗議行動を実施。14日にブリュッセルで行われた抗議には約1万1000人が集まった。また、各地の抗議主催者によれば、15日には仏パリ、独ポツダム、ミュンヘンなど欧州の諸都市で街頭デモが行われた。

一連の運動は、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが昨年、ストックホルムの議会前で一人で続けた抗議行動から広まった。 【2月16日 AFP】
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****ベルギーで高校生1万人がデモ 温暖化で行動要求****
ベルギーで21日、地球温暖化対策での政治家ら大人の行動は怠慢だとして抗議する高校生らのデモが、首都ブリュッセルなど各地で行われた。

教室を飛び出した1万人超の若者が「私たちは気候変動で正義を求める」「今すぐ行動を」などと訴えた。(後略)【2月22日 共同】
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****温暖化阻止訴える少女 パリのデモ参加「子どもたちは抗議を」*****
毎週金曜日に学校を休んで地球温暖化対策を呼びかける活動を始めたスウェーデンの少女が、フランスで行われたデモに参加し、来月15日に世界各地で予定されている抗議活動に参加するよう呼びかけました。

北欧スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)は、去年8月、学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を始めました。

その様子をSNSで発信すると世界中の若者の共感を呼び、ツイッターのフォロワーが20万人を超え、同じような活動がヨーロッパなど世界中に広がっています。

こうした中、トゥーンベリさんは22日、フランスの首都パリで行われたデモに参加し、およそ1000人の若者たちとともに「連帯して温暖化対策を進めよう」などと訴えました。

来月15日には、フランスやアメリカ、日本など世界各地でデモが行われる予定で、トゥーンベリさんは、このデモをこれまで温暖化対策に取り組んでこなかった政治家など、大人たちへの抗議活動と位置づけ、「地球温暖化対策を呼びかけるストライキに、たくさんの子どもたちに参加してほしい」と呼びかけました。

学校の昼休みを利用して参加した16歳の少年は、「大勢で集まって声を上げれば、政府だって動かすことができると思う」と話していました。【2月23日 NHK】
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フランスなどでは、以前から高校生ぐらいの若者の政治参加が一般的で、ときには社会を動かすような力を発揮してきました。

18歳で投票権を与えられても「政治のことはよくわからないから・・・」と当事者がしり込みするような日本では、高校生が授業を休んで政治的とも思われるような行動に参加する、それを学校・社会が容認するということは到底想像もできないことです。

日本では、“未熟な”子供は“余計なことは考えず”学校の勉強に専念していればいい・・・といったところでしょう。

そのあたりが、社会における子供や若者の位置づけ、本人たちの自覚の違いでもあり、経済的にも一定水準に達し、同じような民主主義的価値観を共有するとは言いながらも、“社会の懐の深さ”の違いでしょうか。

【プラごみ対策に腰を上げる日本】
環境問題関連では、温暖化のほかに最近よく話題になるのが、深刻な大気汚染とプラスチックごみ問題です。
その後者のプラスチックごみ問題に関する最近の記事をいくつか。

日本を訪れた中国人観光客が、日本の街はきれいだと感嘆し、分別ごみ収集の徹底ぶりに驚く・・・といった類の話はよく聞きますが、プラスチックごみ関しては、最後の処理を中国に持ち込むことで(経済取引ですので、“押し付ける”とはまでは言いませんが)日本の“きれいさ”は成立していました。

その中国が資源ごみ受け入れを禁止したことで、日本はプラスチックごみの持って行き場がなくなり困っているのが実情です。

*****プラごみ輸出、18年3割減 中国が規制、行き場失う****
日本が2018年に輸出したプラスチックごみの量が、17年と比べ3割減ったことが地球環境戦略研究機関(IGES)の分析で21日、分かった。

再生材の原料としての需要が高く、最大の輸出先となっていた中国が、環境汚染を懸念して輸入を厳しく制限したことが影響した。代わりに東南アジア向けが増えたが規制を強める動きがあり、受け入れの大幅拡大は難しい状況だ。
 
行き場を失ったプラスチックごみは日本国内にあふれており、分析した森田宜典・IGES客員研究員は「製品に再生材の使用を義務付けるなど国内対策を一層進めるべきだ」と指摘する。【2月21日 共同】
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上記のような状況、また、世界で広がるプラスチックごみ対策の流れといった現状もあって、日本もプラごみ対策に本腰を入れるようです。

****レジ袋有料化を義務付け プラごみ25%削減決定****
中央環境審議会は22日の小委員会で、ペットボトルなど使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%削減する環境省の「プラスチック資源循環戦略案」を決定した。小売店へのレジ袋有料化の義務付けも盛り込んだ。ただ排出削減の比較対象となる基準年は、産業界の異論などに配慮して明示しなかった。
 
原田義昭環境相への答申を経て、政府の「循環戦略」に格上げする。深刻な海洋汚染を招くプラごみ問題は世界的な関心が高まっており、6月に大阪で開催する20カ国・地域(G20)首脳会合へ向けて、日本政府の姿勢をアピールする。
 
レジ袋は早ければ20年にも有料化する。【2月22日 共同】
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“25%削減”と言いながら、比較対象となる基準年は明示しないというのも、実にいい加減というか奇妙な話です。会社内でこんな起案文書を見たら「お前、馬鹿じゃないか!」という話にもなるのですが・・・。

【「地上の楽園」バリ島の海を覆うプラごみ】
個人的なことを言えば、現在仕事でレジ袋を使用しています。使う側からすればレジ袋は“渡すべきものを間違いなく相手に渡す”ための有効な手段でもあり、この使用が制約されると困った場面も想定されます。

ただ、東南アジアやインドなどを旅行すると、空き地・道路わき・海岸をプラごみが覆いつくしているような光景も珍しくなく、特にゴミ回収がうまく機能していない国では使用制限が急務であることは理解できます。

昨年11月に観光したインドネシア・バリ島の海洋汚染も深刻です。

****(地球異変)プラごみ漂う「地上の楽園」 インドネシア・バリ島****
「地上の楽園」とも言われるインドネシア・バリ島の海が、プラスチックに侵されている。マンタが見られる透明度の高いダイビングスポットに、大量のプラスチックごみが浮かんでいた。

飲料ケースに隠れるように小魚が泳いでいる。漂うポリ袋はクラゲのようだ。雨期に、陸地から大量に流れ込むという。
 
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で示された報告書によると、世界で年800万トン以上のプラスチックごみが海に流れ出ているという。海の生態系への影響が懸念される。

細かく砕けた粒「マイクロプラスチック」は、食物連鎖で人間を含む多くの動物に悪影響を及ぼす恐れがある。海洋プラスチック汚染は地球規模の脅威だ。【2月17日 朝日】
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背景には、ゴミ回収システムが十分に機能していないことがあります。

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プラスチックごみが海にどっと浮かぶのは、毎年、12月中旬~2月。雨期にあたり、大雨で陸地から押し流されてくる。インドネシア政府は「海洋ごみの80%が陸地からの流入」とする。(中略)
 
ペニダ島では、断崖から見下ろすビーチなどがインスタ映えするとして観光客が急増。ホテルやレストランの建設ラッシュに沸き、ダイビング店だけでも1年半の間に5店舗から11店舗に増えた。
 
ごみが増える一方、「ごみ処理の習慣もシステムも不十分」と、島で1年以上前から清掃の市民活動を率いるキリル・ポポブさん(34)は訴える。

地元政府によれば、大半の住民がごみを燃やすか埋めるか、ポイ捨てしている。収集車が走るのはごく一部で、月額3千~1万5千ルピア(23~117円)の回収料を払う家もわずか。最終処分場は、ただ山積みにしているだけだ。
 
インドネシア政府は、海洋ごみを25年までに70%削減する目標を掲げ、プラスチック製品への課税も検討している。ただ、プラスチック業界の反発もあり、ルフット海事調整相は「目標達成は可能だが、そう簡単ではない」と話す。(中略)

米・ジョージア大などの推計によると、プラスチックごみを海に流出させている上位20カ国中、半数以上がアジアの国々だ。中国が年最大353万トンで最も多く、最大129万トンのインドネシアが続く。日本は5・7万トンで30番目だ。
 
日本の約4倍の24万トンが流出しているとみられるインド。人口が過密している都市部ではごみの処理が追いついていない。

人口が2千万人を超えるインド・ニューデリーのごみ処理場では、ポリ袋などを多く含むごみが高さ40メートルほどに積み上がっていた。こうしたごみの山がいくつもある。雨の日にはごみが崩れると近くの川に大量に流れ込み、海へと運ばれていく。(後略)【同上】
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海洋に流失したプラごみは紫外線などで劣化し、細かく砕けた主に5ミリ以下の粒「マイクロプラスチック」となります。「マイクロプラスチック」は有害な化学物質を吸着しやすく、生きものの体内に入ったときの影響が心配されていますが、魚・貝を介して濃縮されて人へも取り込まれます。

上記のインドネシアでは、プラごみ回収の取り組みも行われてはいるようです。

****プラスチックの山が広がる海岸、30トンのごみ回収 インドネシア・スマトラ島****
インドネシア・スマトラ島の南端に位置するランプン州で21日、大量のごみで荒れ果てた海岸の清掃が行われた。インドネシアでは全国的に膨大な量の海洋ごみが問題となっており、ランプン州の海岸では2010年から毎年清掃活動が実施されている。
 
海辺に集まった子ども、軍関係者、地元住民ら約200人が、プラスチックのごみの山の上を苦労して歩きながら、ビーチサンダルなどのごみを拾った。3時間の清掃で拾ったごみの量は30トンにも上った。
 
ランプン州で清掃活動が始まったのは、地元漁師の網に大量のごみがかかるようになったのがきっかけだった。ごみの大部分は州都であるバンダルランプンから流れてきたものだという。
 
約1万7000の島々から成るインドネシアは、2025年までに海洋プラスチックごみを70%削減する目標を掲げている。 【2月22日 AFP】AFPBB News
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【世界で広がるプラ製品禁止の動き】
しかし、“広大な海に漂うマイクロプラスチックの回収は不可能に近い。近年、海洋汚染がクローズアップされ、脱「使い捨てプラスチック」が世界の潮流だ。世界的な企業が相次いで使い捨てプラ製ストローなどの廃止を表明したり、国レベルで使い捨てプラ製品禁止の動きが始まったりしている。”【2月17日 朝日】とも。

昨日も、そうした取り組みのひとつが報じられています。

****南太平洋の島国バヌアツ、プラごみ削減で使い捨ておむつ禁止へ****
南太平洋の島国バヌアツが、使い捨ておむつを禁止すると発表した。環境汚染の大幅な改善を目指す取り組みの一環だという。
 
ラルフ・レゲンバヌ外相は今週、首都ポートビラで開かれた会議で、使い捨ておむつのほかプラスチック製のスプーンやフォーク、マドラー、ポリスチレン製のコップ、複数の食品包装についても使用を禁止する方針を表明した。12月1日の施行を目指している。
 
レゲンバヌ氏は、ポートビラで出る家庭ごみの中で最も量の多い品目は使い捨ておむつだということが研究で分かったと指摘。「この品目を排除するだけで、プラごみを一気に削減できる」とツイッターに投稿した。
 
バヌアツは気候変動で深刻な影響を受ける太平洋諸国の一つで、環境保護の取り組みでは世界をリードする立場を自負している。昨年には世界で初めてプラスチック製レジ袋の全面禁止に踏み切った。
 
米シンクタンク「ワールドウオッチ研究所」は2007年、世界では年間4500億枚の使い捨ておむつが消費されているとの推計を出している。 【2月22日 AFP】AFPBB News
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使い捨ておむつを大量に使用されている方の自宅わきに、“おむつの山”が出来ているという悲惨な光景を目にしたこともありますので、問題であることは確かです。

ただ、禁止して代わりに・・・・どうするのでしょうか?

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ベネズエラ  野党勢力は明日23日に人道支援物資を搬入 政権側は実力阻止の構え 軍の動向は?

2019-02-22 22:57:59 | ラテンアメリカ

(ベネズエラの首都カラカスで演説する、暫定大統領を宣言した野党指導者フアン・グアイド氏(2019年2月16日撮影)【2月17日 AFP】 マドゥロ大統領よりはカリスマ性があるようにも)

【インフレ率1000万%、難民500万人】
南米・ベネズエラで反米・左派のマドゥロ政権とアメリカの後押しも受けて野党勢力を代表する形で暫定大統領就任を宣言した35歳の若手政治家グアイド氏が激しく対立する状況については、簡単にまとめると以下記事のようにも。

****原油価格の下落で経済混乱、周辺各国に難民続々 ベネズエラ****
ベネズエラの野党指導者、グアイド国会議長が、独裁色を強めるマドゥロ大統領の退陣を狙い暫定大統領就任を宣言して、23日で1カ月となる。

米国や近隣国、欧州の主要国などがグアイド氏を承認し、中露などがマドゥロ政権を支援する構図が続くが、グアイド氏を支持する国が増えつつあり国際社会ではグアイド氏に追い風が吹いている。
 
グアイド氏の暫定大統領就任を承認、支持する国は、すぐ承認した米国を皮切りに現在は約60カ国に増えている。一方、内政干渉を禁ずる国連憲章を守るとして14日に会合を開いたマドゥロ政権寄りのグループは、参加した外交官は中露など16カ国にとどまり、国の数ではグアイド氏側を大きく下回る。
 
しかもロシアのリャブコフ外務次官は12日、「状況打開に向け努力する準備がある」と双方の対話を促す認識を示し、当初、グアイド氏側と接触する予定はないとしていた姿勢を微妙に変えた。

13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国外交官が米ワシントンでグアイド氏側とベネズエラの債務問題に関し協議したと伝えた。中国外務省は直後に報道内容を否定したが、水面下で接触している可能性がある。
 
背景にはベネズエラの経済混乱の深刻さがある。世界一の石油埋蔵量を誇るベネズエラの国民生活はかつて安定していた。しかし反米左派の社会主義政策を進めたチャベス前大統領の死去後、2013年にマドゥロ氏が就任すると、原油価格が大幅に下落して経済危機が深まり、物資不足やハイパーインフレなどのため大勢が国外へ逃げた。
 
ベネズエラと国境を接するコロンビア北部ククタでは、送金業者にベネズエラからの難民たちが行列を作る。並んでいたベネズエラの主産業である石油の供給会社に勤めていたヒルマイン・ピニャさん(40)は「食糧があっても、ベネズエラではとても高くて買えない」と険しい表情で嘆いた。(中略)
 
そばには、難民女性の髪を切り、カツラ用に買い取る業者もいる。
 
スーツケースいっぱいに荷物を詰めたマリア・ピニェイロスさん(28)は20日に国境の橋を渡ってきた。(中略)ベネズエラでの生活を「1日1食で切り詰める日もあった。2人を育てるのは限界だった」と振り返り、疲れた表情を見せた。
 
ベネズエラの3大学の共同調査では、食料や医薬品が慢性的に不足するようになったため、市民約6000人の平均体重が17年の1年間だけで11キロ減少した。感染症が広がり、栄養失調患者も増えている。
 
国際通貨基金(IMF)によると、18年のインフレ率は137万%で、19年は1000万%と見積もり、紙幣のボリバルはすぐに紙くずのように価値が下がる。13〜18年で経済規模は4割以上、縮んだとの試算もある。
 
こうした経済危機の結果、15年以降に300万人が国外に逃れたとされる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の昨年11月の調査では、難民らはコロンビアに100万人超、ペルーに50万人超、エクアドルに22万人超が滞在。19年中には500万人に達すると予測され、周辺国は対応に苦慮している。
 
一方で、マドゥロ政権側は経済危機の主因は米国の経済制裁で、仕掛けられた「経済戦争」だと主張している。【2月21日 毎日】
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“原油価格の下落で経済混乱”とありますが、確かに原油価格下落が大きく影響してるものの、基本的には石油収入のバラマキに終始し、経済原則を無視した無理な価格・市場統制などで生産活動を停滞させてきた、マドゥロ政権の経済失政が混乱の原因でしょう。

【国際情勢は反政権派支援の流れ 日本政府も】
マドゥロ政権を支持しているロシア・中国も、不利な形勢を受けて、微妙に立ち位置を変えつつあるようです。
いつもにように“慎重”な対応の日本外交ですが、ようやく旗色を明らかにしています。

****日本政府、反政権派の暫定大統領を支持 ベネズエラ****
河野太郎外相は19日の記者会見で、南米ベネズエラの暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長について「我が国としてグアイド暫定大統領を明確に支持する」と表明した。

日本政府はマドゥロ政権について「昨年5月の大統領選の正統性に対する国際社会の疑念に答えていない」としつつも、どちらを支持するか明らかにしていなかった。(後略)【2月19日 朝日】
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【人道支援物資で政権を揺さぶるアメリカ 反政権派は23日を支援物資搬入の日に】
アメリカ・トランプ政権は、アメリカの裏庭にあってキューバと並んで目障りな反米マドゥロ政権を潰す絶好のチャンスと見て、軍事介入も敢えて否定しないような積極的関与の姿勢を見せていますが、まずはグアイド氏の要請を受ける形で食糧・薬品・日用品に困窮しているベネズエラに対する人道支援物資の搬入という形でマドゥロ政権を揺さぶっています。

マドゥロ政権にすれば、アメリカからの支援を受け入れることは自らの失政を認めることにもなり、国境の橋を封鎖してでも搬入を阻止する構えです。

****ベネズエラへの援助物資、第2弾がコロンビア到着 米国際開発局****
米国際開発局(USAID)は16日、政情不安が続き人道危機の悪化が懸念されるベネズエラへ向けた援助物資の第2弾が同日、コロンビア、ベネズエラの国境地点に到着したと発表した。

声明によると、米マイアミ州の空港を離陸した米空軍輸送機C17がコロンビアのククタに運んだ。約2万5000人分の衛生製品の一式や子ども約3500人分の栄養食品などが含まれる。

医薬品や補助食など援助物資の第1陣は今月8日に輸送されたが、マドゥロ大統領はベネズエラとコロンビアを結ぶ橋を封鎖し搬入を阻止した。反米左派政権率いる同大統領は「我々は物乞いではない」と国際援助を拒絶している。

CNN記者によると、第1陣の物資はベネズエラ内への輸送を待ち、倉庫内に保管されている。第2陣の物資も同様の措置となる。(後略)【2月17日 CNN】
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グアイド氏は人道支援をも拒否するマドゥロ政権の国民の生命・生活を無視した対応を鮮明にすることで、反政府運動を加速・拡大し、今後のカギを握る軍部の支援をも取り付けようとしています。

グアイド氏側は明日はん定め、政権との対立が先鋭化しています。

****米からの支援物資搬入にボランティアを動員、ベネズエラ野党指導者****
政情不安が続くベネズエラで、暫定大統領就任を宣言した野党指導者フアン・グアイド国会議長は16日、米国による人道支援物資搬入を手伝うために数十万人規模のボランティアを来週動員すると発表した。
 
ベネズエラへの人道支援をめぐっては、米国から食料など大量の支援物資がコロンビア側の国境に到着しているが、ニコラス・マドゥロ大統領はこれを米国の侵略と呼び、国境警備強化を言明。ベネズエラへの支援物資搬入が積み上げられたままとなっており、国内における政治対立の新たな火種となっている。
 
ベネズエラ暫定大統領として50か国超から承認されているグアイド氏が首都カラカスで行った集会には、白いTシャツに国旗のカラーをあしらった帽子をかぶる支持者らが多数集結。グアイド氏は演説で、国内の各国境ポイントにおける搬入物資を手伝うボランティアにこれまでに約60万人が申し込んだと明かした。
 
さらに、支援物資搬入のボランティア活動は国境だけでなく、国内全域の各都市で23日に行われると述べた。
 
グアイド氏によると、支援物資はコロンビアに届いているだけでなく、さらに多くの物資がブラジルやベネズエラ北方沖のオランダ領キュラソーから搬入されるという。
 
すでに米国からの物資数トンがコロンビア側の国境沿いの都市、ククタに到着している。(後略) 【2月17日 AFP】
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【政権側は軍を配置して実力阻止の構え】
マドゥロ政権側は、物資が集積しているククタに通じる橋を封鎖しただけでなく、ブラジルやコロンビアとの国境を閉鎖し、海上輸送も阻止する構えです。

****ベネズエラ海上も封鎖 支援物資搬入を阻止****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権は19日、カリブ海のオランダ自治領キュラソーなどとの海域を封鎖したと明らかにした。暫定大統領就任を宣言した野党指導者、グアイド国会議長が準備を進める人道援助物資搬入を防ぐのが狙い。(後略)【2月20日 毎日】
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****ベネズエラ政権、ブラジル国境閉鎖を発表 人道支援物資搬入阻止狙う****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ大統領は21日、ブラジルとの国境を閉鎖すると発表した。またコロンビアとの国境の全面的な閉鎖を検討していると明かした。

暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国会議長が人道支援物資の搬入を予告している23日を前に、搬入阻止の動きを強めている。
 
グアイド氏は援助物資を、コロンビア北部ククタ▽ブラジル北部パカライマ▽カリブ海のオランダ自治領キュラソー――の3カ所から陸路や海路で一斉搬入する準備を進めている。

マドゥロ政権側は既にククタ・ルートとキュラソー・ルートを封鎖しており、今回残り一つも閉鎖することで、3方面からの搬入を阻止する形になる。地元メディアによると、パカライマと接するベネズエラの町に軍が派遣された。
 
ブラジルは19日に、グアイド氏の呼びかけに応じ、米国と協力して国境に支援物資を移送すると発表したばかり。マドゥロ氏は21日の国営放送で「米帝国がその操り人形と共にやっていることは挑発だ」と非難し、ブラジルとの国境を「完全に閉鎖する」と述べた。

また「このような決定をしたくないが、コロンビアとの国境の全面閉鎖を検討している」と述べた。軍司令官に囲まれて放送に現れ、軍を掌握していると強調した。(後略)【2月22日 毎日】
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【23日に向けて高まる緊張】
一方のグアイド氏は23日の搬入日に備え、物資が滞留するククタに通じる国境の町に野党議員らと到着しています。
また、両勢力の間の緊張が高まる中で、グアイド氏の呼びかけに応じ、在外高官らが政権から離反する動きが続いています。

****ベネズエラ政権、コロンビア国境の封鎖も検討 野党側、23日に支援物資搬入予告****
(中略)一方、21日にククタで記者会見した野党国会議員のガビ・アレヤーノ氏はククタや周辺の四つの橋から23日に同時に支援物資の搬入を始めると明かし、「援助は国境近くの州だけでなく、ベネズエラ全土に届く」と自信をみせた。

地元メディアによると、グアイド氏や野党議員約80人は21日、支援物資受け取りのため、ククタとの国境の町に到着した。
 
また、ベネズエラ軍情報機関トップを長く務めた退役将軍の与党国会議員カルバハル氏が21日、グアイド氏支持を表明した。野党側は21日、米国駐在の外交官11人がグアイド氏を承認したと発表。国連駐在武官の大佐も20日、ネットに投稿したビデオでグアイド氏支持を打ち出した。グアイド氏側による切り崩しが進んでいる。
 
ククタでは22日、グアイド氏を支援する英大富豪リチャード・ブランソン氏が企画し、人道支援資金を募るコンサートが開かれる。一方、ククタと国境を挟んだベネズエラ側では22、23両日、政権側による外国の介入排除を訴えるコンサートが予定されている。【2月22日 毎日】
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人道支援物資搬入については、“バスを連ねてボランティアを国境に送り込み、到着する支援物資を受け取る計画だが、マドゥロ大統領の命令で軍が国境沿いに設置したフェンスをどのように突破するのかについてグアイド氏は明かしていない。”【2月18日 AFP】とも。

国境・海上を封鎖する政権側、明日23日搬入を決行しようとする反政権側・・・まさに決戦前夜の様相を呈していますが、軍部の動向が今後のカギを握っています。

これまでのところマドゥロ政権側は、野党側の動きを実力行使で潰す姿勢を見せており、一歩も引かない構えです。

****治安部隊、5日間で41人殺害=ベネズエラ政権を非難―国際人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは20日、政情不安が続く南米ベネズエラで反政府デモが活発化した1月21日から25日までの5日間で、治安部隊が市民少なくとも41人を殺害したとの報告書を公表した。この間、900人以上が不当に身柄を拘束され、拷問などを受けたという。
 
アムネスティのゲバラロサス米州担当責任者は「マドゥロ(大統領)の配下にある治安当局は、変革を求める人々をコントロールする手段として恐怖と罰を用いている」と独裁的なマドゥロ大統領を強く非難した。
 
報告書は特に警察特殊部隊FAESの行動を問題視。同部隊による「処刑」が主に貧困地域で6件あり、いずれも若者が犠牲になったと指摘した。

同国西部のカロラでは1月24日、前日にデモを主導した29歳の青年の家にFAES隊員20人以上が押し入り、青年を拷問。居合わせた家族を連れ出した後に射殺し、銃撃戦があったかのように偽装工作した。【2月21日 時事】 
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【注目される軍の動向 今後の流れを大きく左右】
こうした状況で、物資搬入を決行しようとする野党勢力を、国境に配置された軍が実力で阻止するという展開になると、大量の流血も危惧されます。

また、そのような混乱状態になった場合、アメリカ・ブラジル・コロンビアなど関係国・周辺国の動向も注目されます。

*****トランプ氏、マドゥロ支持に警告 ベネズエラ軍に、「全てを失う」****
トランプ米大統領は18日、ベネズエラ軍に対し、反米左翼マドゥロ大統領を支持するなら「あなたたちは全てを失うだろう」と警告、暫定大統領就任を宣言した野党出身のグアイド国会議長を支持するよう求めた。

「米国は平和的な権力移行を模索しているが、全ての選択肢がテーブルにある」と述べ、軍事介入を辞さない構えを改めて示した。(後略)【2月19日 共同】
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一方で、もし軍が実力で阻止することを控えるという展開になれば、強権支配を続けてきたマドゥロ大統領の命運も尽きたということにもなり、海外亡命なども現実の問題になってきます。

軍部高官は政権と利害を共通する関係にありますが、一般兵士の動向は?

“反政権派の集会に参加を訴えるビラの文句は「軍に呼びかける。人道支援物資の搬入を勝ち取ろう」だった。物資搬入をてこに、政権を支え続ける軍を切り崩す狙いがうかがわれる。兵士やその家族も食料不足に直面しているとされる。”【2月13日 朝日】

明日が支援物資搬入の日とされる23日です。

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国内外で進む、旧来の概念・枠組みにとらわれないジェンダーフリーの流れ

2019-02-21 23:05:07 | 世相

(丸井の「ジェンダーフリーハウス」には性別を問わないカジュアルウェア40種類以上が並ぶ【2月19日 朝日】とのことです。)

【ジェンダーフリーの売り場も
最近はLGBTといった性的マイノリティーに対する社会の認知も一定に進みつつあるようです。

****LGBT差別禁止を明文化へ 茨城県、都道府県で2例目***
 茨城県は、LGBTなど性的少数者に対しての差別禁止を条例で明文化する。2月開会の県議会で成立した場合、都道府県でLGBTへの差別禁止を明文化するのは東京都に次いで2例目。また、条例とは別に、同性カップルに対して書類を発行するなどの対応も検討している。(後略)【2月1日 朝日】
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****LGBT「パートナー宣誓制度」創設へ 堺市、4月から****
 大阪府堺市は30日、LGBTなど性的少数者のカップルをパートナーと公的に認める制度を4月から始める、と発表した。同様の制度は大阪市や札幌市、兵庫県宝塚市など11自治体で導入されている。(後略)【2月1日 朝日】
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また、大手広告代理店の電通が去年10月、全国の20歳から59歳の男女6万人を対象にLGBTに関する調査を行ったところ、「11人に1人、8.9%がLGBT層である」という結果が出たそうです。

また、上記調査では、東京都が4月から行うLGBTへの差別を禁止する条例に8割以上が賛成で、欧米で広がる同性婚についても、日本での合法化に78.4%が賛成とのこと。

6万人の大規模調査で8.9%というのは、かなりの数値のようにも思えます。

上記のように、LGBTに対する認知は進んでいるようにも見えますが、正面きって「あなたはLGBTを差別しますか?しませんか?」と聞かれたときの反応と、普段実生活における反応はまた違うものがあるのでは・・・という点にも留意する必要があるかも。

こうした風潮を受けて小売業でも、旧来のジェンダーの概念を取り払った形で販路の拡大を目指す企業も出ているようです。

****性別選ばない、安心お買い物 丸井、期間限定の売り場****
男性用、女性用といった性別にとらわれない衣料品などを扱う売り場を丸井グループが都内にお目見えさせた。

体は男性だが心の性は女性、女性向けの店には行きにくい――そんな悩みを持つ、体と心の性が一致しない「トランスジェンダー」の人も安心して買い物ができる空間を目指す。

 ■幅広いサイズや色/人目気にせず化粧
有楽町マルイ(東京都千代田区)にできた新しい売り場は「GENDER FREE HOUSE(ジェンダーフリーハウス)」で、3月3日までの期間限定。約260平方メートルの売り場に男女問わないサイズや色、デザインのカジュアル服が40種類以上並ぶ。パートナーらと利用できる大型の試着室もある。
 
靴では、パンプスは19・5~27センチと大きめのサイズ、ビジネスシューズは22・5~30センチと小さめのサイズもそろえる。スーツはパターンオーダーで作れる。服と靴はこの売り場で選び、丸井のネット通販サイトから購入する。
 
化粧品は、資生堂が化粧水や美容液などのスキンケア商品、口紅などのメイクアップ商品を販売。パーティションで区切られた一角で人目を気にせず、専門スタッフに化粧してもらえる。担当者は「会話しながら希望のメイクを一緒に見つけていきます」という。
 
丸井は2010年からプライベートブランドで通常より幅広いサイズの靴を販売。多くの人の体形をカバーする狙いだったが、トランスジェンダーの人々にも支持されるようになった。
 
今回は一歩進めた取り組みで「売り場や商品を男性、女性と区分けすることで私たちがお客さまを選んでしまっている。時代とともに変化するニーズや社会課題に対応する売り場を作っていきたい」(担当者)という。

売り場のオープン前の催しに参加したトランスジェンダーのナオさんは「女性服売り場や化粧品売り場で買い物するのはハードルが高い。安心して商品を選べるこうした取り組みが増えて欲しい」と話した。
 
衣料品の売れ方にも変化が出ている。コムサを展開するファイブフォックスの「パープル&イエロー」は、ほぼすべての商品が男女どちらも着られるサイズ。大きめサイズをゆったり着るのが女性に流行した影響が大きく、「問題意識の発信はしていない」というが、「ジェンダーにとらわれたくないお客様に選んでもらえていると思う」という。
 
ワールドの「ベースステーション」も大半の商品が男女兼用で「トランスジェンダーの人にも違和感なく着てもらえる」という。【2月19日 朝日】
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今はネット購入を使用すれば、ジェンダーに限定されずに異なる性別向けの商品を購入することは容易になっていますので、単に商品入手という点で見れば、ジェンダーにとらわれない売り場の意味はそう大きくはないかも。

ただ、ジェンダーにとらわれない商品購入が認知された雰囲気がその売り場にあれば、そういう場所での買い物というのはLGBTの人にとっては、単なる商品入手以上の意味合いのある場所にもなるでしょう。

【ドイツ “性分化疾患”を「第三の性」と認定】
目を世界に転じると、LGBT認知の流れは明確になっているようです。(もちろん、抵抗・反動もありますが)

****男性でも女性でもない、ドイツで「第三の性」が可決****
ドイツ連邦議会は昨年12月14日、男性でも女性でもない第三の性とされる「インターセックス(性分化疾患)」を認める改正案を可決した。対象者は、出生届に「多様」を意味する「ディバース」が書き込まれ、欧州で初めて公式認定されることになる。
 
性分化疾患とは、遺伝子的にも解剖学的にも、性が男性でも女性でもない状態のこと。例えば、外見が女性でも、子宮や卵巣がなく、精巣を持ち、多くが女性として一般認識されていく。
 
ドイツ政府は13年、この性別問題の取り組みを開始し、対象となる新生児の出生届で、性別欄の無記入を許可。左右連立のメルケル政権は、17年に改正案に着手した。今回の改正案通過で、当事者は出生届、パスポート、運転免許証など、行政文書に「ディバース」と記載することが可能になる。
 
しかし、対象者が性分化疾患かどうかを判断するには、医師の診断が必要とされ、これを不服とする声もある。「レズビアン・ゲイ連盟」(LSVD)のヘニー・エンゲルス代表は、法改正に対し「政府が社会・心理的観点からでなく、身体的特徴のみで性を判断している」と批判した。
 
その一方で、極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)のベアトリクス・フォン・シュトルヒ副党首は、「年齢や体の大きさのように、性別は人間が生まれた時から決まった事実」と述べ、第三の性そのものを否定した。
 
国連の調べによると、性分化疾患者は、世界に0・05〜1・7%の割合で存在し、赤毛人口とほぼ同数だという。
 
ベルギー出身のトップモデル、ハンネ・ギャビー・オディール氏(30歳)は17年、ファッション誌『ボーグ』に対し、自身が性分化疾患者であることを告白した。
 
10歳で精巣を除去し、18歳で女性器手術を受けたオディール氏は「生理の会話や子供を持つこともできないが、かといって男性でもない。でも、インターセックスの自分を誇りに思う」と語っている。
 
世界では、オーストラリアやニュージランドをはじめ、アメリカ(州による)、カナダ、ネパール、パキスタンなどでも、行政文書における第三の性を認めている。今後、さらに認定は進むだろう。
 
しかし難題は、言語学における「ディバース」対象者の扱いのようだ。英語の「He」や「She」のように、男性と女性を明確に使い分ける言語は、性分化疾患者をどう名付けるのか。「Ze」と呼ぶ動きもあるようだが、言葉よりも人間の脳が混乱し、むしろ社会に差別が広がってしまうのではないだろうか。【2月5日 WEDGE】
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先日、体の右半分が真紅(雄の特徴)で、左半分が灰褐色(雌の特徴)という、雌雄キメラのショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥)がアメリカ・ペンシルベニア州見つかったことが話題になりましたが、それにも近い性分化“疾患”という身体的・生物学的問題と、生き方としてのジェンダーフリーとは若干異なるような気もしますが、旧来の枠に押し込まないという点では前進でしょうか。(日本語訳の問題かもしれませんが、“疾患”という表現には抵抗感もありますが)

【警察トップや首相に同性愛者も】
****「多様な職場づくり」に努力 同性愛のロンドン警視庁女性総監****
ロンドン警視庁で初の女性警視総監であるクレシダ・ディック氏は10日、自身が同性愛者だと公にしていることに関連し「さまざまな人種や宗教、性的指向の人々」にとって働きやすい、多様な人たちからなる職場づくりに努力する考えを示した。BBCラジオの番組で語った。
 
ロンドン警視庁で対テロ部門のトップを務めたほか、2012年のロンドン五輪の治安対策にも携わり、17年に約190年の歴史で初の女性警視総監となった。

自身が他人と「ちょっと違う」同性愛者であることで、若者たちにも「自分は人とは違うけどやってみよう」という気持ちにさせていると思うと述べた。【2月11日 共同】
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同性愛者だと公にしている女性が警察組織トップに上り詰めるというのは、日本ではまだ考えられないことですが、世界では警察トップどころか、国家のトップに同性愛者がなることも時折見聞きするようになっています。

2017年5月、トランプ大統領が初参加したNATO首脳会議で撮影された首脳配偶者(いわゆる“ファーストレディー”)の記念集合写真について、米ホワイトハウスが公式フェイスブックで、10名の首脳配偶者のなかで同性婚のルクセンブルク首相のパートナー男性だけ名前を掲載しなかった・・・ということで話題にもなりました。

(なお、“ロサンゼルス・タイムズに対し、ルクセンブルクの20歳の女子学生は「首相のフェイスブックにはしょっちゅう2人の写真がアップされるけど、記事にも見出しにもならない。みんな良い意味で無関心……いまの社会のあらわれなんでしょうね」と話しています。”【2017年05月31日 withnews】とも)

****同性愛公表のセルビア首相、パートナーが男児出産****
セルビア首相府は20日、アナ・ブルナビッチ首相のパートナーの女性が男児を出産したと発表した。ブルナビッチ首相は同性愛者であることを公表しているが、セルビアでは同性婚や同性同士のパートナーシップは法的に認められていない。
 
首相府によると、在任中に同性パートナーが出産した首相は世界で初。母子ともに健康で、地元メディアによると男児は「イゴール」と命名された。
 
ブルナビッチ氏は2017年に首相に指名され、同性愛者であることを公表している数少ない首脳の一人。

しかしセルビアでは同性愛嫌悪の考えが根強く、同氏はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)をめぐる問題には積極的に発言していない。【2月21日AFP】
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セルビアのような保守的な国で、首相が同性愛者であることを公表できるというのは不思議な話でもあります。

【アジアでは、台湾で同性婚容認の取り組みも】
アジアでは、同性婚に関してはタイ・台湾が先駆的な取り組みを行っています。
ただ、台湾では根強い反対世論があります。

****台湾、同性婚容認の法案 アジアで2例目、根強い反対*****
台湾の行政院(内閣に相当)は21日、同性同士の婚姻を認める特別法案を立法院(国会)に送付した。5月下旬の施行を目指す。

アジアではタイの内閣が昨年12月、同性婚を認めるパートナーシップ法案を議会に送付しており、法案提出は2例目となる。成立時期によっては台湾がアジア初となる可能性がある。
 
台湾の憲法裁判所に相当する司法院大法官会議は2017年5月24日、同性婚を認めない現行の民法は違憲だとの憲法解釈を発表し、2年以内の立法措置を求めた。だが、昨年11月、民法改正による同性婚容認に反対する住民投票が成立し、蔡英文政権は3カ月以内の対応を迫られていた。
 
特別法案では、原則18歳以上の同性2人に「婚姻関係」の戸籍登録を認め、財産についても民法の夫婦間の規定を準用する。ただ、どちらかの実子を除き養子縁組は認めない。

 蘇貞昌(そ・ていしょう)行政院長は法案を決めた行政院会議(閣議)で「この一歩は歴史に記録される」と評価したが、法案の名称から「同性婚」を除くなど、根強い反対派への配慮も伺わせた。
 
台湾では2003年以降、毎年秋に台北でアジア最大の性的少数者(LGBT)パレードが開かれるなどしており、蔡総統も同性婚容認を表明してきた。

ただ、17年の憲法解釈以降、賛成と反対の両派がデモを行うなど対立が深まり、昨年11月の住民投票では民法改正による同性婚容認案が否決された。【2月21日 産経】
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こうして見ると、日本社会・政治はかなり保守的なのかも・・・と思えます。
伝統的な男女の役割分担・家族観といったものに固執しているところに、日本の出生率が上向かない原因のひとつがあるようにも。某副総理は反対でしょうが。

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フランス、そして欧州全土で「毒のように広がる」反ユダヤ主義 コービン英労働党党首は反ユダヤ?

2019-02-20 23:22:57 | 欧州情勢

(反ユダヤ主義者に荒らされたフランス東部のユダヤ人墓地【2月20日 add7】)

【反ユダヤ主義がフランス全土に「毒のように広がっている」(フィリップ仏首相)】
日本では「反ユダヤ主義」に関しては、一部の“陰謀論”が大好きな人々を除いては、あまり身近に感じることはありませんが、欧米では今も昔もヘイト・差別の対象というと、やはり“ユダヤ”ということになるようです。

****ユダヤ人墓地にナチスの「かぎ十字」、80基に被害 仏東部****
フランス東部にあるユダヤ人墓地で、墓約80基が荒らされているのが見つかった。地元当局が19日、明らかにした。同日には、反ユダヤ主義的行為が増えていることに抗議し、国内各地でデモが予定されていた。
 
アルザス地方の治安当局によると、同日朝に墓が荒らされているのが見つかったのは、ドイツとの国境付近に位置するクアツェンハイム村の墓地だという。
 
現場の写真には、ナチス・ドイツを象徴する「かぎ十字」が青いスプレーで書かれた墓石が写っている。また1970年代のネオナチとの関わりがあるとされる分離派組織の名称で、「アルザスの黒い狼」を意味する語が書かれている墓も見つかったという。
 
同日には首都パリをはじめとする複数の都市で、反ユダヤ主義的行為の急増を非難する抗議行動が行われることになっていた。 【2月19日 AFP】AFPBB News
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この事件は単発ではなく、欧州最大のユダヤ人コミュニティがあるフランスではこれまでも「反ユダヤ主義」的な事件が続いています。

昨年末から続いている「黄色いベスト」運動にも、「反ユダヤ主義」的な主張をする人々が混じっているようです。

****仏イエローベスト運動も侵食し始めた反ユダヤ主義*****
(中略)
イエローベスト運動も関係か
フランスではここ2週間というものほぼ毎日、反ユダヤ主義的な攻撃が行われている。

2月15日、パリのシナゴーグでエアガンを発射した十代の少年2人が逮捕された。今月初めには、郵便ポストに描かれたホロコーストの生還者で厚生相を務めた故シモーヌ・ベイユ元厚生相の肖像が、カギ十字の落書きでよごされた。パリのベーグルショップではドイツ語のユダヤ人を意味する蔑称の落書きが見つかった。

フランスのメディアの中には、マクロン政権の燃料税引き上げを発端に広がった「イエローベスト」運動を非難する声もある。

運動の参加者のなかには、反ユダヤ的なシンボルやイメージを掲げる小グループや個人がいるからだ。運動全体が反ユダヤ主義ではないことを指摘する専門家もいるが、中心的な存在がいないため、一部の反ユダヤ集団や個人が混じっていても排除はできない。

「イエローベストは反ユダヤ主義の運動ではない」と、フランス国際関係戦略研究所(IRIS)の上級研究員ジャン・イブ・カミュはフランス通信社に語った。「だがリーダーのいない水平方向の運動だ。そして極端な主張をする参加者が、メディアで目立ち、著名な主力メンバーの声をかき消してしまっている」

イエローベストの抗議運動はもともと、社会サービスの削減や富裕層への減税および経済の自由化といったマクロン政権の政策に抗議する動きで、数カ月間にわたってフランス全土に影響を与えている。

ガーディアン紙によれば、パリ在住のユダヤ教のラビ(宗教指導者)ドルフィーネ・オルビジェウールは、イエローベストの代表らに対し、参加者のなかの反ユダヤ主義を非難するよう依頼したという。(後略)【2月20日 Newsweek】
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こうしたヘイト行為に過去の亡霊の復活を危惧する人々・政治家(オランド前大統領やサルコジ元大統領といった懐かしい名前も)は、「反ユダヤ主義」抗議デモを行い、警鐘を鳴らしています。

****仏各地で「反ユダヤ主義」抗議デモ ユダヤ人への憎悪犯罪増加で****
フランス全土で19日、反ユダヤ主義的な行為に抗議する約70のデモが一斉に行なわれ、数千人が参加した。
デモ参加者は「ça suffit(もう十分だ)」をスローガンに掲げ、首都パリのレピュブリック広場を含む複数の都市で行進した。

フランソワ・オランド前仏大統領やニコラ・サルコジ元大統領を含む、政界の大物も複数参加した。

デモの数時間前には、東部アルザス・クアツェンハイムにあるユダヤ人墓地で、約100の墓石にナチス・ドイツを象徴するかぎ十字が落書きされているのが見つかった。

社会党のオリヴィエ・フォール第1書記は先週ツイッターで、19日にパリでの抗議デモへ参加するよう最初に呼びかけた。

抗議デモはその後、50以上の政治団体や連合、組合からの承認を受けて計画された。

これまでのところ公式発表はないが、パリと同様の抗議デモはマルセイユやボルドー、ナントを含む60都市で報告されている。(中略)

なぜ抗議するのか
ここ数カ月、フランスでは立て続けに反ユダヤ主義的な攻撃が続き、注目を集めている。

この1週間の間には、ホロコーストの生還者で、国務大臣を務めた故シモーヌ・ヴェイユ氏の肖像画が傷つけられたほか、パリのパン屋ではドイツ語で「ユダヤ人」を意味する単語が落書きされているのが見つかった。また、反ユダヤ主義グループに拷問され死亡したユダヤ人の若者を追悼して植えられた木が切り倒された。

エマニュエル・マクロン仏大統領は19日、かぎ十字の落書きが見つかったユダヤ人墓地を訪れ、「このような真似をした人間は誰だろうと、フランス共和国にふさわしくなく、罰せられる」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はビデオ声明で「衝撃的な」攻撃を非難し、反ユダヤ主義を「我々だけでなく全ての人々を危険にさらす伝染病」だと述べた。

フランス国内には約55万人規模の、ヨーロッパ最大のユダヤ人コミュニティがある。

先週発表された統計によると、フランス国内で起きる反ユダヤ主義的行為の数は、2017年の311件に比べ、2018年には74%増の541件に増えている。

エドゥアール・フィリップ仏首相は19日、仏誌レキスプレスに対し、仏政府はソーシャルメディア上のヘイトスピーチ(憎悪表現)に取り組むために法改正を検討していると語った。

同誌のインタビューでフィリップ氏は、反ユダヤ主義は「フランス社会に深く根づいている」と述べた。【2月20日 BBC】
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【欧州全土でも同傾向 背景には、欧州在住のイスラム教徒の間での反イスラエル感情の高まり、右派ポピュリスム政党の台頭で極端な見解の持ち主が声を上げやすくなったこと】
懸念が深まるのは、こうした「反ユダヤ主義」的行為の増加はフランスだけでなく、他の欧州各国でも見られるということです。

****他国での反ユダヤ主義的行為****
ユダヤ人団体もまた、ヨーロッパ全土での極右の台頭が反ユダヤ主義や他のマイノリティー(人種的少数派)への憎悪を助長していると警告している。

先週発表されたドイツの犯罪統計によると、反ユダヤ主義的な犯罪は過去1年間で10%増加している。これには、身体的攻撃の60%増も含まれる。

こうした攻撃は、極右やイスラム主義者のせいだとされている。

しかし、先月発表された欧州委員会による28カ国で行なわれた調査では、ユダヤ人コミュニティに属する人と、属さない人の認識の間にずれが生じていることが明らかになった。

この欧州委員会調査によると、ユダヤ人の89%が反ユダヤ主義は過去5年間で「著しく増加した」と答えた。一方で、同じ意見の非ユダヤ人はわずか36%にとどまっている。【同上】
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****大虐殺の記憶が薄れ、欧州で反ユダヤ主義再燃****

反ユダヤ主義に基づく嫌がらせや襲撃がヨーロッパで増加している。

英ガーディアン紙によると、この種の襲撃は18年にフランスで74%、ドイツでは60%増えた(写真はナチス式の敬礼をするイタリアの極右勢力)。
 
フランス政府によると、18年に発生した反ユダヤ主義関連の事件は541件。ドイツでは1646件の事件が起き、そのうち62件が人身攻撃で、治療が必要な負傷者は43人に上った。
 
18年12月に発表された欧州基本権庁の世論調査でも、同様の結果が出ている。12力国1万6000人のユダヤ人を対象にした調査では、約30%が反ユダヤ絡みの嫌がらせを受けた経験があると答え、90%がヨーロッパの反ユダヤ主義は深刻化していると考えていた。

さらに3分の1以上が、反ユダヤ主義への懸念から国外移住を検討していると答えた。
 
だがユダヤ人以外では、反ユダヤ主義への警戒心は薄れている。1月に欧州委員会がまとめた世論調査では、EU加盟全28力国の回答者のうち、反ユダヤ主義の高まりを感じているのは36%だけだった。
 
英独仏など7力国7000人を対象としたCNNの調査では、相当数の非ユダヤ人が今も反ユダヤの偏見にとらわれていることが分かった。

例えば回答者の20%以上が、金融や政治分野でユダヤ人の影響力は強過ぎると感じていた。一方、第二次大戦中に約600万人のユダヤ人が殺されたホロコーストについては、ほとんどまたは全く知らないという答えが34%あった。
 
ガーディアンによれば、偏見を助長している要因は複数あるようだ。例えば中東情勢の悪化に伴い、特にヨー・ロッパ在住のイスラム教徒の間で反イスラエル・反米感情が高まっていること。右派ポピュリスム政党の台頭で極端な見解の持ち主が声を上げやすくなった而もある。【2月26日 Newsweek日本語版】
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【イギリス政界での「反ユダヤ主義」批判は、左派的なパレスチナ支持・反イスラエルへの批判】
“ブレグジット”で迷走するイギリス政界の動きでも「反ユダヤ主義」の言葉が見られますが、ちょっと意味合いが違うみたいです。

****英野党・労働党から8人目の離脱、党首の反ユダヤ主義に反発****
英国のジョアン・ライアン議員(ロンドン北部エンフィールドノース選出)が最大野党・労働党を離党した。

同党では、英国の欧州連合(EU)離脱に対するコービン党首の対応への不満や反ユダヤ主義を巡る対立を理由に、議員7人が18日に離党。ライアン議員は8人目となった。

ライアン議員は19日夜、党内における反ユダヤ主義への懸念から離党するとツイッターに投稿。コービン氏が2015年に党首に就任して以来、「反ユダヤ的人種差別主義」に「感染」していると非難した。先に離党した7議員が立ち上げた「独立グループ」に参加し、議員を続ける。

7議員の1人、クリス・レスリー議員は記者会見で、労働党は入党時の姿とは異なり「極左的な組織政治に乗っ取られている」としていた。

コービン党首はパレスチナの自治権を支持する一方、イスラエル政府に批判的で、党内での反ユダヤ主義対策を怠ったとして批判されたことがある。同党首はこの疑いを否定している。【2月20日 ロイター】
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ここで使われている「反ユダヤ主義」とは、ヘイト的なユダヤ人差別と言うよりは、左派的なパレスチナ支持・反イスラエルの政治姿勢を指すもののように思われます。

コービン党首は周知のように左派ですから、反イスラエル的姿勢はあるでしょうし、労働党内にもそうした勢力が少なくありません。

そのような左派「反イスラエル」的言動をコービン党首が是正していないという、党内右派からの不満のようです。

****反ユダヤ主義問題とコービン労働党党首****
(中略)ある新人労働党下院議員が、議員となる前の2014年にイスラエルはアメリカに場所を移すべきだという意見に賛成していたことがわかり、大きな議論となった。

この女性議員は、党員資格停止され、取り調べられることとなった。反ユダヤ人の動きが大学生労働党支部や党関係者にあると批判されており、一部の者は労働党を既に除名されている。

このような中で、労働党内の反コービン派や保守党の関係者、またメディアらが、地方議員らも含め、労働党関係者のソーシャルメディアなどでの発言を徹底的に調べているようだ。

上記の女性下院議員の問題をきかれた、前ロンドン市長で元労働党下院議員のケン・リビングストンが、これまで労働党内で反ユダヤ主義者は知らないとし、この女性下院議員がやりすぎたと批判しながらも、この女性は反ユダヤ主義者(Anti-Semitist)ではないと主張した。

そしてヒトラーが当初シオニズム(Zionism:ユダヤ人国家の建設運動)を支持したが、後に頭がおかしくなり、600万人のユダヤ人を殺害したと発言したのである。

この発言の中で、特にヒトラーがシオニズムを支持したという点が大きな問題となり、反コービン・反リビングストンの労働党下院議員が、リビングストンに面と向かい、ナチス擁護者などと攻撃した。

メディアが殺到し、大きな騒動となり、コービンはリビングストンを党員資格停止とし、リビングストンも取り調べられることとなった。(後略)【2016年5月3日 菊川智文氏 「British Politics Today」】
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“コービンは、イスラエル政権がパレスチナ人を迫害していると考えている。そしてイスラエル政権を批判し、パレスチナ人の権利を守ろうとしていることである。これは、労働党を含めた多くの左派の人たちの見方だ。これは、反ユダヤ主義ではない。”【同上】

その政治姿勢が妥当かどうかは別にして、ヘイト・差別的な「反ユダヤ主義」とは別物でしょう。

しかし、保守党や労働党の反コービン派(右派)からは、「反ユダヤ主義」として批判されています。

更に、下記のような事情もあって、騒ぎが大きくなるようです。

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イギリスのメディアへのユダヤ系関係者の影響力が非常に大きい点がある。

リビングストンは、反ユダヤ主義を否定するが、一般の人たちにとっては、イスラエル政府の行動への批判と反ユダヤ主義を切り離すことは容易ではない。

(中略)イスラエル政府の政策や行動への批判は、一般のイギリス在住のユダヤ人にも少なからず影響があるだろう。

そのため、ユダヤ系の人たちは強く反応する傾向がある。そしてメディアのコービン労働党への批判は、極めて強いものがある。【同上】
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コメント (1)
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シリア  IS制圧で表面化する、欧州出身戦闘員および妻子の扱いという厄介な問題

2019-02-19 22:53:12 | 中東情勢

(シリア北東部ハサカ県のアルホル避難民キャンプで、AFPのインタビューに応じたフランス人女性とその子ども(2019年2月17日撮影)【2月19日 AFP】)

【「イスラム国は今にも崩壊しようとしている」】
シリアで最後の抵抗を続けるイスラム過激派ISに対しては、アメリカが支援するクルド人勢力主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が攻撃を行っています。

これまでも“最終段階”とか“攻略間近”とか言ってきましたが、いよいよ“完全制圧”が目前に迫っています。
ただ、IS側も住民を“人間の盾”として使う、激しい抵抗を示しています。

****イスラム国の制圧「目前」 トランプ氏、撤収を再表明****
トランプ米大統領は16日、ツイッターで、シリアの「イスラム国」(IS)支配地域の完全制圧が目前に迫ったと強調した上で、完全制圧後にシリア駐留米軍を撤収させる方針を改めて表明した。

IS掃討作戦に参加する有志連合では拙速な撤収による混乱や治安悪化を懸念する声が出ている。(中略)
 
トランプ氏はツイッターで「イスラム国は今にも崩壊しようとしている。100パーセントの勝利後、われわれは撤収する」とした。【2月17日 共同】
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(本旨とは関係ない話ですが、こうした発表が“ツイッター”で行われるというスタイルがいつから当たり前のことになったのでしょうか?政治指導者がSNSで直接国民に発信し、それに国民が反応するという現代社会にあっては、メディアとか議員といったものの役割もかつてのものとは違ってきます。さらには“民主主義”の在り様も変わってくるでしょう。)

****IS、シリアで住民2000人を人間の盾に 支配地は0.5平方キロ弱に****
シリア東部でクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」が米軍の支援を受けて進めているイスラム過激派組織「イスラム国」残党勢力の掃討作戦で、SDFの報道官は17日、IS側が最後の支配区域である村周辺の道路を全面封鎖し、民間人最大2000人が逃げられないようにしていると明らかにした。米主導の有志連合の報道官はIS側が女性や子どもを「人間の盾」に使っていると指摘した。(中略)

ISは2014年にシリアとイラクにまたがる領域にカリフ制国家の樹立を宣言したが、これまでにそのほぼ全てを喪失。イラクとの国境に近いバグズ村一帯の0.5平方キロ足らずの区域が最後の拠点となっている。 【12月18日 AFP】AFPBB News
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【命からがら脱出した住民を待ち受ける飢えと絶望】
もちろん、ISの面的支配が終わったとしても、IS戦闘員によるゲリラ的テロ活動はなくなりませんし、他の地域に流入する戦闘員の問題もあります。また、米軍が撤収すれば、やがてIS勢力の復活と言う事態も懸念されています。

そうした問題のほかに、現在戦闘で“人間の盾”として使われている住民の生命・安全の問題、命からがら逃げだし難民となった住民保護の問題もあります。

****IS最後のとりでから必死の脱出、住民を待ち受ける飢えと絶望 シリア****
「水をくれ!」。乾ききったシリアの平原に叫び声が響く。野外で夜を明かし、喉がからからになった避難民たちがトラックに駆け寄ると、荷台に積まれた数十本の水はわずか数秒のうちになくなってしまった。
 
砂漠の低木地帯で寝泊まりしている女性や子どもたちは、少なくとも300人に上る。大半はイラク人で、イスラム過激派組織「イスラム国」が最後の抵抗を続けているシリア東部の村バグズから脱出して来た。
 
幸運な何人かだけはテントを手に入れたが、ほとんどの人は米軍主導の有志連合が支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」が配給した安っぽい毛布の上で寝ている。SDFはわずかながらの水やいくらかの食料も配給している。人道支援団体はここにはいない。
 
イラクの首都バグダッド出身のファティマさんは、4人の子どもを連れてバグズを脱出した。子どもたちは全員まだ15歳に満たない。「外で寝るのは二晩目だ。バグズは爆撃が激しく、たとえ外であっても、ここで寝る方が安全だ」とAFPに語った。
 
住むところを失った家族たちは、SDFによる手続き後に、車で6時間ほど北へ走ったところにあるアルホル避難民キャンプまで、トラックで移送されるのを待っている。
 
辺り一帯のひび割れた地面には、空のボトルや汚れたおむつが散乱している。
 
頭にスカーフを巻いた10代の少女が、SDFのトラックから米とピーマンが入ったプラスチック製の容器を素早くつかみ取った同じ年頃の少年に近づいて行った。「分けてもらえる?」と、少女は恐る恐る尋ねた。少年は手で食べ物をかき込みながら、向こうへ行けというように手を振る。少女の痩せこけた顔は、静かにすすり泣きながらゆがんだ。

■最後のとりでからの脱出
SDFは、IS最後の支配地域となったバグズを包囲しており、ここ数週間、バグズは食料も水も医薬品も不足し、危険な状況となっている。脱出できた人の話によると、ISは残っている住民を人間の盾として使い、食料をため込み、住民が逃げ出さないよう見張っている。

「狙撃手が撃とうが、爆撃されようが、私たちはとにかく迷うことなく歩いた」。まだ歩き始めたばかりの子ども2人を連れて逃げてきた女性、フダーさんは言う。「子どもと服を抱えて、3時間も4時間も、とにかく歩き続けた。すごく喉が渇いていたが、水を持って来ることはできなかった」。毛布も持ってきたが重すぎて、バグズを出たところで道端に置いてきてしまったと言う。
 
野外で寝泊まりする家族たちの横を1時間ごとに、荷台に新たな避難民を乗せてきたトラックが通り過ぎる。そのたびに、泣き叫ぶ子どもたちの口に砂ぼこりが入る。
 
ルガヤ・イブラヒムさんは、決して置いてくることができない大事なものをバグズから運んで来た。2日前、迫撃砲の攻撃に遭い、右足を骨折した上に爆弾の金属片が足のあちこちに残った8歳の息子マーン君だ。
 
姉妹と一緒に子どもたちを連れてバグズを脱出したとき、一家は木でその場しのぎの担架を作り、マーン君を乗せた。「肩に担いでは下ろし、下ろしては担いで、運んだ」とイブラヒムさんはAFPに語った。この一家もイラク出身で、さらに北の避難民キャンプへ移送されようとしていた。
 
だが、一家が乗り込もうとしていたトラックの運転手は、木製の担架を置いていくように言った。「そんな物を置く隙間はないよ。担架から下ろして、よじ登ってくれ」と怒鳴った。 【2月18日 AFP】
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戦闘は、特にその最終段階は、いつも悲惨です。

【対応が厄介な欧州出身のIS戦闘員およびその妻子 引き受けに消極的な欧州出身国】
IS支配が最終段階になって、改めて問題が表面化しているのが、欧州などからISに参加してい戦闘員およびその妻子の処遇の問題です。

トランプ大統領は、出身国が引き取るように要請していますが、欧州各国は引き取りに消極的な姿勢を見せています。

****トランプ大統領「IS戦闘員 欧州各国が引き取って裁判を」****
アメリカのトランプ大統領は、シリアで拘束された過激派組織IS=イスラミックステートの戦闘員について、ヨーロッパの各国が引き取り、裁判にかけるよう求めました。

トランプ大統領は、過激派組織IS=イスラミックステートについて16日夜、ツイッターに「イギリス、フランス、ドイツ、それにほかのヨーロッパの同盟国に、シリアで拘束した800人以上のISの戦闘員を引き取り、裁判にかけるよう求めている」と書き込みました。

そのうえで、「われわれは多くを費やしてきた。各国ができることをすべき時が来た。われわれはISに完全に勝利したあと撤退する」とツイートし、ヨーロッパ各国に負担を求めるとともに、改めて、シリアからアメリカ軍を撤退させる方針を強調しました。

アメリカ軍のシリアからの撤退をめぐっては、ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で、ドイツのメルケル首相が「性急な撤退だ」と懸念を示すなど、ISが再び勢力を拡大することを防ぐため慎重な対応が必要だとする声がヨーロッパ諸国から上がっており、アメリカとヨーロッパの間の溝があらわになっています。【2月17日 NHK】
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トランプ大領の主張は当然の話ではありますが、欧州側にはおいそれと引き受けられない現実的理由があります。
裁判にかけるといっても証拠は海のかなたで判然としない、漫然と長期拘留すれば人権問題になる、釈放すれば自国の治安を脅かしかねない・・・。

****ポストIS?のシリア情勢等****
(中略)ポストISに関するアラビア語メディアの報道次の通り

トランプは何度か欧州諸国に対して、数100名とされる欧州出身のIS戦闘員を引き取るように促したが、これに対して欧州諸国は消極的な立場を示している。

独外相は、彼らを引き取る条件は、彼らの身分を確保し、裁判にかけられることが保証されていることであるが、そのための情報も少なく、刑事責任に関する調査が必要であるが、現状ではそれは難しく、そうであれば彼らの引き取りは極めて困難と言うことだとTVで発言した。(中略)

確かに外国における、テロリストの取り扱い問題は難しい問題で、アフガニスタンで捕虜となったアルカイダ要員の取り調べ、その後の長期間にわたるガンタナモ基地での抑留に、欧州諸国等では人権問題という批判をしていたが、今や本質的に同じ問題に直面しているということか?

要するに社会に放てば、再びテロに携わる可能性が非常に強いと思われる危険分子を、裁判にかけると言っても、外国での出来事で、証拠の収集等が困難である場合に、彼らをどう扱うかの問題。

証拠が十分ないとして無罪釈放するのは、常識的にも反社会的と考えられる場合に、どうするかという問題(後略)【2月18日 「中東の窓」】
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【米軍撤退、トルコのクルド人勢力攻撃で事態悪化も】
この問題、今後事態が更に悪化しかねない状況が懸念されています。
ISが完全制圧されたとしてトランプ大統領が米軍を撤収すれば、クルド人勢力をテロ組織として敵視するトルコがクルド人勢力への攻撃を始めることも。

現在、捕虜となったIS戦闘員などはクルド人勢力が拘束していますが、トルコとの戦闘が始まれば、それどころではなくなり、IS戦闘員が再び野に放たれるという事態も想定されています。

****欧州出身IS戦闘員の取り扱い(今後の時限爆弾?)****
(中略)どうやらこの問題は今後関係者、特にシリア民主軍等のクルド勢力にとって極めて深刻な問題となる可能性が出てきた模様です。

al arabiya net は、クルドの対外関係幹部がロイターにたいして、現在シリア民主軍が交流しているIS戦闘員は800名、妻たちが700名、児童が1500名いるが、毎日さらに10名の戦闘員が拘束されている(要するに捕虜または投降した者)として、シリア民主軍としては彼らを釈放するつもりはない(中略)が、もしトルコ軍が北部シリアに進攻して来たら、彼らが逃走する可能性が十分あると指摘した由。

また、これら戦闘員を収容すべき十分な収容所(または監獄)の施設は現地には存在しないとも指摘した由。

そのうえで、これらIS戦闘員は、いわば時限爆弾であり、国際社会が、現実的に、その問題の解決に乗り出すべきであると強調した由。

他方、同ネット及びal sharq al awsat net は、欧州諸国はいずれも、このような危険な人物を引き取る用意はないとして、引き取りを拒否の意向を表明している由。

これまでドイツ、仏等は引き取り拒否の姿勢を示していたが、デンマークも同じで、また英も国民の声明を危険にさらすわけにはいかないとして、消極的な姿勢を示したいる由
デンマーク外相か誰かが言ったように、この問題は現地で解決してほしいと言うのが本心なのでしょう。(中略)

しかし、特に現在でもトルコが進攻の構えを捨てていないことからすれば、上記クルド勢力の警告は十分現実味のある話です。

更に、仮にトルコの侵攻などと言うことが生じなくとも、今後これらの、特に戦闘員をどうするかは、現実の深刻な問題になると思います。

まさかいくら過激なテログループのメンバーと言っても寒空で、テントもなしにほおっておくわけにもいかず、彼らの家族も含めての食糧、医療の手当てなど、いったい誰がするのか?

(国連が押し付けられたら、いったいどの機関がするのでしょうかね?家族程度なら、UNHCRがやる可能性はあっても戦闘員まではどうでしょうか? そうなるとやはり本職の国際赤十字と言うことになるのでしょうか?)

いずれにしてもいつまでもクルド人任せにはしておけないでしょうね。【2月19日 「中東の窓」】
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【扱いが微妙な“妻子”】
戦闘員は“犯罪者”としての扱いになりますが、その妻子となると、その扱いは更に微妙になってきます。

****IS拠点から救出されたフランス人女性たち、帰国を望むも訴追を恐れる****
シリアでイスラム過激派組織「イスラム国」の壊滅に向けた作戦が大詰めを迎える中、ISの拘束下から救出されたフランス人女性2人がシリア国内の避難民キャンプでAFPの取材に応じた。2人は、母国で公正な目で見てもらえるのなら帰国してもいいと語った。
 
シリア北東部のクルド人実効支配地域にあるアルホル避難民キャンプでインタビューに答えてくれた2人は、目以外の全身を黒い衣装で覆い、1人は子ども3人を連れていた。取材はクルド人兵士の立ち合いの下で行われた。
 
この避難民キャンプには、過去数か月間に米軍が支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」に救出され、収容された外国人女性がおよそ500人収容されている。女性たちは周辺の村々でISに拘束されていた。(中略)

■「ISに脅されていた」
フランス政府は、ISに属していた可能性のある女性や、その子どもたちの送還に二の足を踏んでいる。
 
フランスでは2015年以降、ISが犯行を主張する攻撃が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている。このため、こうした女性たちの帰還は慎重さを要する問題であり、ISが弱体化してからも行動を共にしていた男女については、さらに懐疑的な目が向けられる。
 
もう1人の30代だという女性は、夫と3人の子どもたちと共に今月初めにIS最後の拠点から脱出したと明かした。かすかにフランス南部のなまりがある女性は、IS戦闘員たちと意見は合わなかったが何も言えなかったと語った。リヨン出身の女性も、IS戦闘員に脅され、喉を切り裂くとかレイプするなどと言われたと証言した。
 
米軍の支援を受けたSDFがIS最後の拠点に進軍し、爆撃や食糧不足に見舞われる日々が数週間続いた頃、女性は密航業者に50ドル(約5500円)を支払って、息子らと共にIS拠点から脱出した。
 
女性たちは2人とも、帰国する用意はできていると語った。だが、リヨン出身の女性は、信仰するイスラム教の慣習を続けられることと、子どもたちと密接な関係を維持できることを、帰国の条件に挙げた。

女性は数年前に爆撃で2歳と6歳の子どもを失っている。だが、報復は考えていないと断言した。「私の子どもたちは殺された。だからといって誰かを殺すということはありません」

■「IS国家」の実態に失望
女性たちは2人とも、IS支配下では穏便に暮らし、夫たちも戦闘員ではなく一般的な仕事に従事していたと述べているが、2人の証言が事実であるとの確証はまだ得られていない。
 
ISは2014年にシリアとイラクの広域を制圧し、「カリフ制国家」の樹立を宣言した。だが、2人はそこでの生活の実態に次第に失望していったという。
 
「IS戦闘員は、罪のない大勢の人たちを訳もなく証拠もないまま処刑していました」と、リヨン出身の女性は語る。処刑の対象はイスラム教徒も例外ではなく、女性の夫も殺害されたという。
 
しかし、その一方で2人は、2015年に仏パリで起きたイスラム過激派による風刺週刊紙シャルリー・エブドの本社襲撃やバタクラン劇場襲撃事件に関して、ISを非難する考えはないと述べた。「あの襲撃は、フランス軍がシリアで行った空爆への報復なんです」と、リヨン出身の女性は襲撃犯を擁護した。

■「子どもたちがすべて」
2人は、もしも自分たちがフランスに帰国して逮捕されたら、幼い息子たちは自分たちから引き離されて養護施設に入れられるか、里親の元へ送られるだろうと恐れている。
 
女性は「息子たちも離れ離れにされて、私たちが望んでいた教育と反する価値観の中で育つことになるでしょう」と危惧し、「フランスには、例えば同性愛など、私たちの宗教に反することがたくさんあるから」と付け加えた。
 
自分たちが訴追され裁判にかけられた場合、2人は短期刑で済むことを期待している。リヨン出身の女性は「ISという組織が犯したあらゆる罪ではなく、個々の事例として公正に裁かれることを望みます」と述べた。
 
30代の女性も、子どもたちと面会できるよう、交通の便の良い刑務所での短期の禁錮刑が望ましいと語った。「子どもたちは私のすべてなんです」。女性の夫は、すでに身柄を拘束されている。 【2月19日 AFP】
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女性の言い分は、自分たちに都合のいいような言い様にも聞こえますが、ではどうするのか?
“個々の事例として公正に裁く”とは言っても、どうやって立証するのか?

子供の権利も絡んでくると、更に厄介な問題です。

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