孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ネパール  日本で急増する「インネパ」の表と裏 ネパールでの日本語学習ブーム

2024-04-21 22:20:26 | 日本の外国人労働者

(インネパ【2022年7月6日 YAHOO!ニュース】)

【ネパール人 日本における外国人労働者数で第4位 「飲食サービス業」に特化が特徴】
****日本の外国人労働者は過去最多の200万人、ベトナム人が50万人超え****
厚生労働省の発表(1月26日)によると、日本における外国人労働者数(2023年10月末時点)は204万8,675人となり、過去最高を更新した。前年より22万5,950人(12.4%)増加し、伸び率も前年の5.5%から6.9ポイント上昇した。外国人を雇用する事業所数は31万8,775所(前年比6.7%増)で、同様に過去最高を更新した。

外国人労働者数を国籍別にみると、ベトナムが最も多く51万8,364人(前年比12.1%増)で、全体の4分の1を占めた。次いで、中国39万7,918人(3.1%増)、フィリピン22万6,846人(10.1%増)となった。ベトナムは2020年に中国を上回って以来、首位が続いている。技能実習生が20万9,305人と、圧倒的に多いのが特徴だ。

前年からの増加率が大きかったのは、インドネシア(12万1,507人)で56.0%増加した。次いで、ミャンマー(7万1,188人)が49.9%増加し、ネパール(14万5,587人)が23.2%増加した。インドネシアは技能実習生を中心に、建設業での伸びが顕著だった。

在留資格別にみると、前年からの増加率が大きかったのは、「専門的・技術的分野の在留資格」(59万5,904人)で24.2%増。次いで「技能実習」(41万2,501人)が20.2%増加した。一方、「特定活動」(7万1,676人)は2.3%減少した。(後略)【1月31日 JETRO】
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上記の数字を若干補足すると、国籍別でベトナム、中国、フィリピンに次ぐのが増加率3位のネパール14万5,587人。 在留資格別では、「資格外活動のうち留学」が27万人強。「資格外活動のうち留学」の34.7%が「宿泊業・飲食サービス業」となっています。【厚生労働省資料より】

全体的に増加している印象が大きいのがネパール人。

****急増ネパール人、留学生は2位に浮上 人手不足救うか?****
日本に在留するネパール人が急増している。2023年6月末時点で約15万6000人。留学生に限ると4万5000人を超え、国籍別でベトナム人を上回り中国人に次ぐ2位に浮上した。日本で就職する人も増え、介護やホテルなどの現場で人手不足を和らげる役割を担う。(後略)【1月11日 日経】
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増加率では、上記のようにインドネシア・ミャンマーの方が大きいのですが、ネパールの特徴は「宿泊業・飲食サービス業」が29.7%と際立って高いことです。他の国の場合、同割合はベトナムは10.4%、中国が14.0%。

建設業や製造業と異なり、人目につきやすい飲食業で増加していることで、ネパール人「急増」のイメージが強まっていると思われます。

【「インネパ」・・・コック招聘の手数料稼ぎビジネス化している面も 開店と呼び寄せの連鎖が拡大】
ネパール人の従事する飲食業・・・「インネパ」と称される「ネパール人経営のインドカレー店」「インド・ネパール料理店」です。

****ネパール人経営のインド料理店「インネパ店」、なぜ激増? 背景にある2つの歪曲(わいきょく)****
店舗数は有名チェーン店よりも多い
今や都市部では、1駅に2~3軒あることも普通。そう、「インネパ店」の話である。

インネパ店とは、「インド・ネパール料理店」の略で、ネパール人が手がけるインド料理店を指す。最近ではよく知られることだが、巷にある外国人経営のカジュアルなインド料理店は、実は多くがネパール人経営だったりする。

インネパ店には、共通する“テンプレート”のようなものがある。まずは、ナンとインドカレー、タンドリーチキンなどをメニューの中心に据えていること。中でも多くの店がウリにするのが、こってりまろやかなバターチキンカレーに、おかわり自由なナン。そして、チーズたっぷりのチーズナンだ。ちなみにこうした料理は北インド料理がルーツで、ネパール料理ではない

またインド料理店をうたいながら、よく見るとメニューにネパール餃子のモモがあったり、店の内外にネパール国旗やヒマラヤ山脈の写真を掲げていたりするのも、多くのインネパ店に共通する。

そんなインネパ店が近年、激増している。’22年現在、全国に少なくとも2000軒のインネパ店があり、軒数はここ15年ほどで5倍前後になっていると見られる。

街によくあるチェーン店の国内店舗数を見てみると、たとえば松屋は977店、ドトールは1069店、CoCo壱番屋は1238店(すべて’22年1月時点/日本ソフト販売による集計)だ。インネパ店の多くが個人経営で2000軒の一大チェーンというわけではないものの、今やそうした有名チェーンの店舗数をはるかに上回っていることがわかる。(後略)【2022年7月6日田嶋章博氏 YAHOO!ニュース】
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この「インネパ」拡大の背景にあると上記記事も指摘しているのが、仲介手数料をとるコックの呼び寄せ自体がビジネス化し、開店と呼び寄せの連鎖がどんどん広がっていく・・・という現象。

****「カレー屋は貧困を固定化する装置です」借金まみれで日本にやってくるネパール人労働者が搾取から抜け出せないワケ****
(中略)
家や土地を売り、足りなければ借金してまでカネを作るネパール人たち
コックが独立開業してオーナーになり、母国から新しくコックを呼び、そのコックも独立し……という暖簾分け的なシステムのもとに「インネパ」が広がっていった経緯を見てきたが、ここまで爆発的に増殖した理由はほかにもある。そのひとつが「コックのブローカー化」だ。

「外国人が会社をつくるには500万円の出資が必要じゃないですか。ネパール人にはすごく大きなお金です。家族や親戚や銀行から借りる人もいますが、中には誰かに出させる人もいるんです」
こう語るのは、自らも都内でカレー屋を営むネパール人Rさん。この500万円を何人かのネパール人に分割して支払ってもらうのだという。

「たとえば、新しい店で3人のコックを雇うとします。この人たちはネパールでスカウトしてつれてくるんです。日本で働ける、稼げると言って」 そしてビザ代や渡航費、手数料などの名目で代金を請求する。仮に1人アタマ150万円を出してもらえば計450万円で、オーナー本人の出費は50万円で済む。日本行きのチャンスと考えた人たちは、借金をしたり家や土地を売ったりしてこのお金をつくってくる……そのあたりまではまだ、健全だったかもしれない。

やがて、カレー屋ではなく人を呼ぶほうが本業になってしまう経営者も現れた。多店舗展開し、そこで働くコックをたくさん集めてきて、もはや会社設立の500万円とは関係なく、1人100万円、200万円といった代金を徴収する。(中略)

それでも海外で稼げると思った人たちは、どうにかお金を算段して志願する。彼らを呼べば呼ぶほど儲かるわけだから、誰だっていいとばかりに調理経験のない人もコックに仕立て上げた。

本来、調理の分野で「技能」の在留資格を取得するには10年以上の実務経験が必要となる。しかし一部のカレー屋オーナーは日本の入管に提出する在職証明などの書類を偽造し、新しくやってくるコックのビザを取得していたのだ。カレーとナンのつくり方なんか自分が教えればそれでOKという経営者たちが、次から次へと母国から人を呼んだ。

「日本に来て初めてナンを食べたよ」というネパール人
だから現場にはスパイスのこともよく知らなければ玉ねぎの皮も剝けないコックがあふれてしまった。「インネパ」の中にはぜんぜんおいしくない店もちらほらあるのはそのあたりに理由がある。(中略)「これはもうビザ屋であって、カレー屋ではありません」(

工場で違法就労するネパール人
また、ネパールから呼んだ人間を自分の店で働かせるならまだしも、工場に「派遣」するケースもあったと聞く。コックの分野で「技能」の在留資格を取っているなら、工場で働くのは完全に違法である。

ちなみに経営者は、自分のツテでコック志願者を集めたり、ネパール側のブローカーと協力するなどしているそうだが、親戚筋であってもお金を要求することがあるようだ。そのあたりの額は人間関係にも縁戚関係にもよるという。

「でもふしぎなものでね。近い親族だから、あの人には世話になったからって、お金を取らずに日本に呼んでるいい人もいるんだけど、私が見る限りそういう人たちはみんな成功してない。元手の軍資金がないから。借金なしで日本に来たほうも、ハングリー精神がないからなのか、あまりがんばらない。だからうまくいかない」
なにが正しいのかわからなくなってくる話なのだ。

さらに、コックたちへの搾取も目立つようになった。約束したよりもはるかに安い給料で働かせるのだ。月に8万円、9万円程度しか払わないこともあるという。経営者の子供の送り迎えとか、家事までやらされているコックもいるそうだ。
「抗議をしても、じゃあ誰がコックのビザを取ってあげたの、と。やめてもいいけど、日本のことも日本語もよくわからない、料理もロクにできないのに、借金も背負っていて行くところあるの、と」

ネパール人がネパール人を搾取する構図
こうして同国人の食い物にされているコックもいるのだとRさんは訴える。同じような境遇のコックが安いアパートで同居しているし、勤め先はレストランだから食べるものだけはあって月10万円以下の給料でもなんとか生きてはいけるが、きわめて苦しい。故郷での借金の利息もある。

それでも平均月収1万7809ネパールルピー(約1万7100円、国際労働財団による。2019年)の祖国にいるよりは、と耐え忍ぶ。

そんなコックたちも、いくらか日本の生活に慣れてくると故郷から家族を呼ぶ。妻や子供たちは「家族滞在」の在留資格を取得して日本で暮らすことになる。そしてこの「家族滞在」の場合、週に28時間までの就労が許可される。月にするとだいたい100時間、時給1000円なら10万円を稼ぐことができる。コックの夫の給料と合わせればどうにかやっていけるし、切り詰めれば故郷に送金もできる……こんな家庭が、実は日本にかなり存在する。(中略)

また社会保険に加入していない店、コックが非常に多いことも問題となっている。厚生年金や国民年金は、老後もこの国に住んでいるかどうかわからないからと加入しない。

さすがに国民健康保険は支払っている人が多いが、個々で手続きをしている。いわば個人事業主のような扱いなのだ。中には国民健康保険の存在すら知らず、あるいは知っていても加入しない人もいて、万が一のケガや病気のときに困るというのはよくある話だ。

ネパール人の貧困を固定する装置になったカレー屋
それでも耐え忍んで働き続け、数年たったある日、こんなことを通告されるコックもいるのだという。「ビザが更新できなくなったからクビ。とつぜん言われて、あとは自分で店を探せって」

代わりに経営者は違う人間をネパールからコックとして呼ぶ。もちろんお金を取って、だ。こうして定期的に人材を回転させることで、一定のお金が供給される仕組みをつくり上げたのだ。だがコックにしてはたまったもんじゃない。

「カレー屋はネパールの貧困を固定化する装置になっているんですよ」

それでも、なのだ。
こんなリスクや理不尽を負ってでも、ネパールを出たい。どんな形でもなんの仕事でもいいから、外国で稼ぎたい。そんな人たちがたくさんいる。一般的に貧しいとされる国に生まれ育ち、なおかつグローバル化とデジタル社会によって他国の生活を知ってしまった立場でないとわからない「お金」への強い渇望感が、彼らを突き動かしている。

「海外に出ないと豊かになれない」ネパール人の切実な思い
(中略)とにかく海外に出ないと、豊かになれない。ネパール人たちのそんな切実な思いが、日本のカレー屋大繁殖につながっていった。

だからブローカーの存在も一概に否定はできない。豊かさへのきっかけを与えてくれる存在でもあるからだ。はじめはコックとして搾取されながらもだんだんと要領を覚え日本になじみ、独立して成功する人も確かにいるのだ。【4月21日 文春オンライン】
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「インネパ」は決してネガティブな面だけではありません。
前出田嶋氏は・・・

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一方でインネパ店の存在は、ポジティブな面も決して少なくない。

「ネパール人による日本での就労が、経済的にも文化的にも、本国に寄与している部分は小さくないでしょう。来日してビジネスで成功するネパール人も多くいます」(著書『日本のインド・ネパール料理店』で、日本全国のインネパ店を巡ってその成り立ちをつづったインド食器販売店「アジアハンター」代表 小林氏)

「日本には、コックに敬意を払うすばらしい文化が根づいています。だから私は、ネパール人が日本でコックになること自体は、反対ではありません。ネパール人が来日後に困らないよう、ビザの審査時にせめて最低限の日本語能力と健康状態、そして受け入れ先の雇用環境をチェックしてもらいたいんです」(在日ネパール人コックの実情をつづった『厨房で見る夢』の著書があるネパール人臨床心理士ビゼイ氏)【前出“ネパール人経営のインド料理店「インネパ店」、なぜ激増? 背景にある2つの歪曲(わいきょく)”】
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【ネパールでは日本語学習ブーム】
かくして、ネパールでは・・・

****日本語学校が急増! ネパールの若者の間で「日本語」が流行る微妙な事情****
現在、ネパールでは日本語学習が大流行しています。街中では「STUDY IN JAPAN 」という看板があちこちに掲げられ、「はじめまして」と挨拶する若者によく出会うようになりました。この背景にあるのは「40万人の外国人留学生受け入れ」を掲げた日本の政策。海外に働き先を求めるネパールの若者にとって、この方針は渡りに船といえるのです。

なぜ日本へ?
ネパール人の海外出稼ぎ者の数は累計で約600万人。人口の5分の1が外国で出稼ぎをしていることになります。最大の出稼ぎ先といわれるインドは、ネパールとの国境の往来が自由であることから、この統計には含まれていません。大勢の人たちはアルバイトや卒業後の就業を目的に学生として海外に渡ります。

実際は600万人を優に超えると思われる、働く世代の国外流出が止まらない大きな原因は、ネパール国内で経済成長を後押しする産業が育っていないからです。

国内に若者向けの成長産業が少ないとはいえ、多くの人が出稼ぎ先として選んできた中東やマレーシアは、安全面や職場環境面で不安が払しょくできません。そこで、安定した出稼ぎ先や留学先を求めるネパール人が選んだ国の一つが日本。東日本大震災やコロナ禍の影響で日本への留学生が激減していたため、日本政府が呼び込みに力を入れたことが奏功したといえます。

就学中もアルバイトができ、ビザ手続きが比較的簡単といった日本の特徴は、ネパール人のニーズにぴたりと一致。将来は家族を呼び寄せられる可能性があることや、留学初期費用が150〜200万円程度と欧米に比べて安いことも大きな魅力です。取得に時間はかかりますが、30万円程度で済む特定技能ビザも社会人に人気があります。

日本語をちゃんと勉強しないと…
多くの若者が日本への留学や就職を目指すようになり、留学を仲介する日本語学校は大人気。数年前までは日本語学校が1校もなかった田舎でも、今では数百メートル以内に5〜6校がひしめきあっています。

筆者がそのうちの1校を訪問したところ、特定技能ビザにも挑戦可能な学校ということもあり、経営者でもある先生が1人で5クラス、計100人ほどの生徒に教えていました。現地の日本語学校の先生たちはほとんどが日本からの帰国者です。

日本語学校に行かずに日本語を学ぶことも可能ですが、学校には日本の学校や派遣会社とのコネクションがあります。学習目的だけでなく、日本に行く橋渡しをしてもらうために、多くの人は日本語学校に通うことを選びます。

ある日本語学校の事務員によると、生徒の望みはとにかく手っ取り早く日本に行くことで、学校の評判を上げたい先生も多くの生徒を送り出したいと思っているそうです。そのため、日本語を学び始めて数週間でも日本語学校の面接試験に参加させ、なかにはこっそり答えを教えている先生もいるとか。

結果的に、日本のことをよく知らず日本語の勉強も不十分なままで来日してしまう若者が増加。日本の文化や習慣、人間関係に戸惑ったり、思うように稼げず多額の借金をしたり、精神的に追い詰められたり、悪質な仲介業者や学校に搾取されたりという人たちが増えていくことになります。

ネパールの若者たちが日本に熱い思いを抱いてくれるのは、とてもうれしいことです。それが失望で終わらず、「憧れの国日本」が本当に住みよい場所となるために、政府だけでなく迎える私たちも真剣に考えねばならない時代が来ているようです。【2023年12月19日 GetNavi web】
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日本の外国人労働者 周辺アジア諸国から労働者がいくらでもやってくる・・・そんな時代は終わりつつある

2024-02-04 22:32:01 | 日本の外国人労働者

(厚生労働省の(1月)26日の発表によると、2023年10月末時点の外国人労働者数は前年比12.4%増の204万8675人と、データをさかのぼれる08年以降で最多となった。過去10年では約3倍に増えている。外国人を雇用する事業所数も6.7%増の31万8775所と最多を更新した。 国際協力機構(JICA)が22年に発表した調査では、政府が掲げる国内総生産(GDP)目標(年平均成長率1.24%)を達成するには、外国人労働者が30年に現状の2倍の約420万人、40年に674万人が必要になるとみられている。【1月26日 Bloomgerg】)

【「経済大国日本には発展途上国の若い労働者がいくらでもやってくる――そんな時代は終わりつつある」】
少子化・人口減少もあって、日本の多くの産業で人出不足が大きな問題となっています。

近年よく言われるように、日本経済の低迷の結果、世界、特にアジアにおける日本の経済的位置は相対的に低下しており、今後日本の人材不足を外国人労働者に頼ろうとしても、優秀な人材は日本に来ない・・・ということにもなりつつあります。

****外国人労働者も日本を離れ韓国へ…“人口減少の逆襲”を受ける日本の現状を韓国メディアが報道****
2023年11月10日、韓国メディア・韓国経済は「日本では『人口減少の逆襲』である人材難が本格化しており、2040年には1100万人もの人手不足に陥る見通しだ」と伝えた。

総務省の労働力調査によると、23年7月現在、日本の就業者人口は6772万人となっている。これまで日本が人口減少にもかかわらず就業者数を増やすことができたのは女性と高齢者を労働市場に引き入れた結果だが、最近はその構造が限界に達し、人手不足が急激に深刻化していると、記事は説明している。

育児を並行する女性労働者は多くがパートタイマーで、高齢者もフルタイムの労働は回避する。団塊の世代が全員75歳以上になる25年には、高齢の労働者はさらに減ることになる。

その一方で、25〜44歳の労働者は13年以降、290万人減っている。(中略)今後、この年代は更に減っていく。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳人口)は20年の7509万人から40年には6213万人まで減少する見通しだ。30年まで年平均43万人ずつ、30年以降の10年間は86万人ずつ減少するとしている。

第一生命経済研究所の主任エコノミスト、星野卓也氏は「労働者数の減少で実質GDP(国内総生産)は30年代に0%、40年代にはマイナスに落ち込む」と分析している。

日本の人口は70年に8700万人まで減少する見通しだが、これは外国人人口が毎年16万人ずつ増えたと仮定したもので、日本人だけの場合、48年には人口1億人を割り込むことになるという。70年には日本の人口の9人に1人が外国人になる。外国人労働者なくして、日本社会と経済は立ち行かなくなる。

しかし、外国人労働者の市場さえ人手不足になっていると、記事は指摘している。円安で外国人労働者が日本を去っている。

日本の外国人労働者で最も多くを占めているのはベトナムだが、昨年、ベトナム経済は8%の成長を遂げている。22年のベトナム労働者の平均月収は660万ドン(約4万円)で、1年間で12%上昇している。日本経済研究センターは、32年にはベトナムの給与水準が日本の50%を超えるとの見方を示している。生活費などを考慮すると、ベトナム人が稼ぐために日本に行く理由はなくなる。

そのうえ最近は世界が安価な労働者を確保しようと争っている。
米マンパワーグループが今年、41カ国の雇用主を対象に実施した調査では、「人材難を体感している」との回答が77%で過去最高を記録した。日本企業は78%、中国は81%。日本以上に人材を求め、日本以上の賃金を払うライバル国ということになる。

日本政府傘下の機関が昨年末にインドネシアで宿泊分野の特別技能者採用に向けたテストを実施したが、2000人の枠への応募者は200人に満たなかった。東南アジアの労働者は同じ条件ならより給与のいい韓国や中国を選ぶという。(後略)【2023年11月12日 レコードチャイナ】
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****「日本はタイやベトナムより豊かだ」という幻想スシローも大戸屋も日本で食べるより高い****
すべての産業分野で人手不足が深刻化している。その数は政府推計で34万人。どう補うのか。(中略)
経済大国日本には発展途上国の若い労働者がいくらでもやってくる――そんな時代は終わりつつある。

「東南アジアには産業がなく、生活水準は低い」「日本に出稼ぎに行きたい人はまだたくさんいる」 
これらは本特集で東洋経済取材班が地方の中小企業経営者から聞き取った言葉だ。

現実はどうか。日本にとってあらゆる側面で重要なパートナーであり、今年で友好協力50周年を迎えるASEAN(東南アジア諸国連合)に目を向けてみたい。

10カ国で構成されるASEANの人口は約6.7億人で、豊富な労働力や天然資源を有している国が多いことから1980年代後半以降、自動車産業を中心に多くの日系企業が進出してきた。

(中略)堅調な経済成長を続けるASEANのGDP(国内総生産)は、2030年には日本を追い抜く見込みだ。所得の向上とともに分厚い中間層が形成されることで、旺盛な購買意欲を有する巨大消費市場になっている。

日本を超える旅行消費額
その勢いはマクロ経済のさまざまな指標から読み解くことができるが、ここでは消費市場としての発展について見てみよう。

家電製品を買いそろえたり、自動車を購入して休暇には外食やレジャー活動を楽しんだり、健康や教育への投資を増やしたりすることができるようになるといわれる上位中間層(年間世帯可処分所得が1万5000〜3万5000ドル)の人口は、(ASEAN)主要6カ国において2005年の7210万人から2019年には1億8610万人へと2.58倍に増加した。(中略)

2019年度の調査によると、ベトナムからの観光客の1日当たりの消費額は2.2万円で、ベトナムを訪れる日本人観光客の1日当たりの消費額1.6万円を超えている。タイからの訪日観光客の1日当たり消費額2.2万円も、タイを訪れる日本人観光客の2.0万円を上回る。(中略)

ビッグマックは中国、タイ、ベトナムより安い
タイ国内に193店舗展開しているやよい軒の「味噌かつ煮定食」は916円、同48店舗の大戸屋の「鶏と野菜の黒酢あん定食」は1298円、同51店舗のCoCo壱番屋の「フライドチキンカレー」は855円、同18店舗のスシローの「天然インド鮪6貫盛り」は1465円となっており、いずれも日本と同等価格もしくは割高となっている。

このほかにも東南アジア諸国では日本のチェーン店と同じような価格帯で現地コーヒーチェーンやさまざまなフードチェーンが事業展開しているが、各国の絶対的購買力平価を示すわかりやすい指標としてイギリスの『エコノミスト』誌によるビッグマック指数(BMI)がある。

米ドル換算で、スイスのビッグマックは6.71ドル、アメリカは5.15ドル、中国は3.56ドル、タイと韓国は3.5ドル、ベトナムは2.95ドルとなっており、次にようやく登場する日本は2.83ドルとなっている(いずれも2022年)。日本のビッグマック価格は中国、タイ、ベトナムを下回っているのだ。

急速に経済力を増す東南アジアでは、企業の事業拡大スピードに人材の供給が追いついていない現実もあり、有能な人材をめぐって熾烈な競争が展開されている。(中略)

その点、日本はどうか。
高学歴労働者や起業家、意欲のある留学生にとってどのくらい魅力があるかを国際比較する「人材誘致に関するOECD指標」で、日本は25位に甘んじている。(中略)その理由はいくつか考えられる。

筆者も協力したリクルートワークス研究所の調査によれば、中国、インド、タイにおける管理職への昇進年齢は日本のそれと比べて課長で約8歳、部長で約11歳も若い。

経済産業省の「未来人材ビジョン」(2022年5月)で公表された給与の比較を見てみても、日本企業の部長の平均年収(1700万円)は米国やシンガポール(3000万円)の半分近くで、タイ企業(約2000万円)よりも低い。
最低賃金も同様だ。米ニューヨーク州のフードデリバリーの最低時給は2716円、豪州の最低時給は2228円であり、東京都の1113円の倍となっている。

「アジアの中の日本」
日本経済が30年にわたって停滞している間に、アジア諸国はさまざまな問題を抱えながらも成長してきた。一昔前まで「アジアと日本」といわれたものだが、今では「アジアの中の日本」といわれるほど相対的地位は低下した。

日本はいつまで「出稼ぎに行きたい国」でいられるだろうか。少なくとも「日本に出稼ぎに行きたい人は東南アジアにはまだたくさんいる」という認識は、そろそろ改める必要がある。【2023年11月27日藤岡資正氏明治大学ビジネススクール教授・チュラロンコン大学日本センター所長 東洋経済オンライン】
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外国人労働者を必要としているのは、日本と同様に少子化が深刻な台湾や韓国でも同じです。日本はこうした国と人材獲得競争で競合することになります。

****台湾の介護も外国人頼み、激化が見込まれる人材獲得競争****
日本にとって台湾は、外国人労働者を獲得するうえでの最大のライバルだ。ベトナムやインドネシアといった労働者の供給国、また人材を求める職種においても共通する。とりわけ今後、日本と台湾ともにニーズが増えると見られる職種の一つが「介護」である。

すでに台湾は、日本にも増して多くの外国人介護士を受け入れている。台湾労働部によれば、その数は2022年6月時点で22万人を超え、外国人労働者の3割以上を占めるほどだ。99%以上は女性で、国籍ではインドネシアが約80%と最も多い。残りが12%のフィリピンと8%のベトナムだ。

この3カ国とは日本も「経済連携協定」(EPA)を結び、2000年代後半から介護士を受け入れ続けている。ただし、就労中のEPA介護士は今年1月1日時点で3257人(公益社団法人「国際厚生事業団」調べ)と多くない。外国人介護士の在留資格で最も多いのが「特定技能」の2万1915人(今年6月末時点。出入国在留管理庁調べ)だ。

そこに実習生、介護福祉士養成校への留学から「介護福祉士」となって働いている人などを加えても外国人介護士は約4万6000人と、台湾の2割程度に過ぎない。

台湾と日本の外国人介護士は、就労環境が大きく異なっている。日本での就労先は介護施設だが、台湾の場合は9割以上が個人宅に住み込んで働き、家事全般も任っている。台湾の外国人介護士たちは、なぜ「台灣」を選び、いかなる待遇のもと仕事をしているのか・・・(後略)【2023年10月21日 WEDGE】
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【ネパール・ミャンマーでは「日本語学習ブーム」も】
上記のような「経済大国日本には発展途上国の若い労働者がいくらでもやってくる――そんな時代は終わりつつある」という認識を基本としつつも、現時点で多くの者が日本で働くことを希望している国もまだ存在しています。

****日本語学校が急増! ネパールの若者の間で「日本語」が流行る微妙な事情****
現在、ネパールでは日本語学習が大流行しています。街中では「STUDY IN JAPAN 」という看板があちこちに掲げられ、「はじめまして」と挨拶する若者によく出会うようになりました。

この背景にあるのは「40万人の外国人留学生受け入れ」を掲げた日本の政策。海外に働き先を求めるネパールの若者にとって、この方針は渡りに船といえるのです。(中略)

国内に若者向けの成長産業が少ないとはいえ、多くの人が出稼ぎ先として選んできた中東やマレーシアは、安全面や職場環境面で不安が払しょくできません。そこで、安定した出稼ぎ先や留学先を求めるネパール人が選んだ国の一つが日本。東日本大震災やコロナ禍の影響で日本への留学生が激減していたため、日本政府が呼び込みに力を入れたことが奏功したといえます。(中略)

ある日本語学校の事務員によると、生徒の望みはとにかく手っ取り早く日本に行くことで、学校の評判を上げたい先生も多くの生徒を送り出したいと思っているそうです。そのため、日本語を学び始めて数週間でも日本語学校の面接試験に参加させ、なかにはこっそり答えを教えている先生もいるとか。

結果的に、日本のことをよく知らず日本語の勉強も不十分なままで来日してしまう若者が増加。日本の文化や習慣、人間関係に戸惑ったり、思うように稼げず多額の借金をしたり、精神的に追い詰められたり、悪質な仲介業者や学校に搾取されたりという人たちが増えていくことになります。

ネパールの若者たちが日本に熱い思いを抱いてくれるのは、とてもうれしいことです。それが失望で終わらず、「憧れの国日本」が本当に住みよい場所となるために、政府だけでなく迎える私たちも真剣に考えねばならない時代が来ているようです。【2023年12月19日 GetNavi web】
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****ミャンマー空前の日本語学習熱 就労へ20万人試験、政変で****
ミャンマーで空前の日本語学習ブームが起きている。2023年同国で実施された日本語能力試験(JLPT)の応募者が急増し、年間で初めて20万人を突破した。政情不安が続き、経済も混乱する自国を離れ、日本での就職を望む若者が受験に殺到しているからだ。

現地に詳しい日本の企業関係者は「都市部では日本語の教材を持ち歩くことがおしゃれになっている」と指摘。ミャンマー各地に日本語学校が林立し、カフェなどで日本語を学ぶ若者の姿も目立つという。

従来同国で年2回の試験の応募者合計が最高だったのは、新型コロナウイルス感染拡大前の19年の約6万8千人。その後コロナ禍で応募者数は落ち込んだが、23年は約20万3千人と急拡大し、19年の約3倍に上った。23年に海外で行われた試験の応募者数では、首位中国の約31万人に次ぐ2位に躍進した。

24年2月1日で国軍クーデターから丸3年のミャンマーは、海外からの援助や投資が減った上に武力紛争の激化もあり、経済が低迷。若者の間で自国よりも安全で就労条件が良い日本を目指す機運が高まっている。【1月30日 共同】
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こうした日本人気がまだあるうちに、将来に向けた対策を本格化させる必要があります。

****インドネシアが今後5年で労働者10万人を日本に派遣―中国メディア****
2023年12月15日、観察者網は、インドネシアが今後5年間で10万人の労働者を日本の派遣する計画を立てていると報じた。

記事は、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの15日付報道として、インドネシア人的資源省のアンワル事務局長が、今後5年間で10万人の労働者を日本に送り込む見通しを示すとともに、インドネシア人の求職者が自分のスキルに合った仕事を日本で見つけられるよう、特別な申請システムを立ち上げることを明らかにしたと伝えた。

その上で、日本はここ数年高齢化による労働力不足を緩和するために外国人労働者を誘致するための多くの政策を打ち出しているとし、日本が経済成長率の予測値を実現するために2040年までに約670万人の外国人労働者を受け入れる必要があるという国際協力機構(JICA)の試算を紹介。

世界第4位の2億7000万人の人口を抱えるインドネシアも「人口ボーナス」から利益を得たい思惑があり、国内の失業率を抑えるために、かねてより中東や香港、韓国に労働者を送り込むことを望んできたとしている。

一方で「日本での雇用機会はそう簡単には得られない」と指摘。日本での就労を希望するインドネシア人労働者は、日本語の熟達と雇用者の要求を満たす職務能力を確保するため、研修機関に3000万〜7000万ルピア(約27万〜64万円)の研修料を前払いする必要があるほか、今年5月までに同省が362機関に海外労務派遣許可を出したのに対し、248機関が不当行為によって許可証を一時取り上げられる処分を受けているなど、派遣システムにも問題があることを紹介した。

さらに、インドネシアの人口の約87%はイスラム教を信仰しており、労働者を受け入れる側の日本が、ハラル食の提供やイスラム施設の充実など十分な生活条件を整えなければならないと指摘する有識者もいると紹介。

ある専門家からは「日本政府が外国人労働者に譲歩する可能性は極めて低いだろう。岸田文雄首相は昨年春から外国人労働者の大規模な受け入れを始めたが、外国人労働者の長期的な受け入れと、社会への融合に関する広範なビジョンを描くことをためらっている」との見解も示されたと伝えている。【2023年12月17日 レコードチャイナ】
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人材移動の環境整備ということでは、悪評が高かったベトナムからの外国人技能実習生派遣に絡んで、実習生の受け入れが成約すれば、1件あたり5〜12万円の成功報酬を得ていたブローカー(送り出し機関はブローカーへの成功報酬を、実習生に負担させていた)が整理されたようです。2022年1月から実習生に負担させるような行為が禁止され、ブローカーの利用が制限されることになったようです。

【現場経営者からは、無気力な自国若者より外国人労働者のほうがいい・・・との声も】
介護などの現場で人材を外国人労働者に頼っているのはイギリスも同じですが、移民に対する厳しい政治環境があるなかで困難を抱えているようです。

****移民が頼りの英介護業界、新規受け入れ削減で人手確保に懸念****
低賃金、人手不足、力仕事──。英国の介護施設が人員確保に手を焼いているのは無理もないだろう。

そして、介護業界の幹部らは人手不足の問題が今後さらに深刻化する可能性があると口をそろえる。移民労働者が英国内の医療・介護関連職に就くビザ(査証)で入国する場合は家族も帯同することができる制度について、スナク英首相が停止する計画を発表したためだ。

移民労働者への依存度が非常に高い介護業界で懸念される影響に対処すべく、英政府は1月、より多くの国民を介護職に誘引する政策を提示した。(中略)【2月4日 ロイター】
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“より多くの国民を介護職に誘引する”というのが難しいのは日本も経験しているところですが、現場ではヤル気のない自国若者より外国人の方がマシ・・・という辛辣な声も。

****韓国で“外国人アルバイト”が増えている意外な理由は若者たちへの不満!?****
韓国では現在、外国人労働者の立ち位置に変化が現れている。若年層の無気力化にともない、「むしろ外国人のほうがいい」という経営者が増えているというのだ。(中略)

また、同社が昨年末に行なったアンケート調査によると、回答者の52.3%が外国人アルバイトを「肯定的」と答えている。

その理由としては、「勤務態度」「求人難のときに簡単に採用できる」「外国人客の対応が可能になる」などの意見が多く上がった。

一方、若年層のアルバイトを引き合いに出し、「すぐに辞めてしまう最近の若者より、はるかに頼りになる」「責任感が強い人が多い」などの意見も出た。(後略)【2月4日 サーチコリア】
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実際のところ、個人的にもコンビニなどで接する外国人労働者を見ていると、上記のような声には同感です。

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台湾  日本同様に外国人頼みの介護現場 激化する人材獲得競争 日本では実習生制度の見直しが進む

2023-10-25 22:35:05 | 日本の外国人労働者

(出入国在留管理庁によりますと、技能実習生は去年6月末時点でおよそ33万人で、5割以上がベトナム人です。(中略) 技能実習生は人材難が深刻な地方や中小企業でニーズが高い一方、違法な低賃金で長時間労働を強制されたり、実習先で暴力を受けたりするケースがあとを絶ちません。【4月10日 NHK“「技能実習制度を廃止 新制度へ移行を」政府の有識者会議”】)

【最近急増する日本で働くネパール人留学生】
明確な基本方針がないまま、人出不足解消のため“なし崩し的”に「移民大国」となりつつある日本では生活のあちこちで外国人をみかけることが多くなっていますが、ベトナム人やフィリピン人に加えて最近増加しているのがネパール人留学生のようです。

****四国の山中にヒマラヤ民謡?ネパール人労働者激増、12万人来日の背景は 川下りやホテル、空港、食肉処理まで…新たな裏方に【移民社会にっぽん】****
四国・徳島の吉野川上流。日本有数のラフティング(川下り)の名所でアジアののどかな民謡が響いていた。ゴムボートを操縦してヒマラヤの民謡を披露するガイドの男性はネパール人だ。よく見れば、インド亜大陸の風貌をした船頭が川のあちこちにいて日本人客とボートをこいでいる。

コンビニやファストフード店など日本各地で近年、ネパール人の労働者らを目にする機会が増えていないだろうか。少子高齢化と人手不足で、日本が移民や外国人労働に依存する社会に近づいている。中でも目立ってきたネパール人の背景を追ってみた。(中略)

厚生労働省によると、ネパール人労働者は2012年の約9千人から2022年の約12万人と13倍に急増している。ネパールの1人当たり国民総所得(GNI)は1230ドル(約18万円、2021年)で、日本の30分の1とまだまだ貧しい。(中略)

▽中間層の夢は日本留学
(中略)インドは伝統的な身分制度カーストの影響を受け就労先に制限がある人が多いが、ネパールは比較的緩やかだ。英領インドの強い影響力の中、貧しい山間地のため、雇い兵部隊の「グルカ兵」や、インド各地の飲食店などに出稼ぎに行くことが一般的になったとされる。

人口約3千万人のネパールは、中国とインドに挟まれた内陸国のため港がなく、輸出産業は不向きなのが実情だ。2015年の大地震では周辺国も含め約9千人が死亡し、復興のため海外出稼ぎの重要性は増した。

約300人が通う日本語学校の校長は「ネパールでは英語教育を受けた富裕層は欧米に留学し、貧困層は中東へ出稼ぎに行く」と指摘した。

貧しい人々の行き先はアラブ首長国連邦(UAE)やカタールの建築現場だ。2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会を機にネパール人ら外国人労働者の中東での厳しい労働環境が広く報じられた通り、重労働で亡くなる人もいるが、それでも母国より待遇はいい。

日本を目指すのは「150万円程度の準備金を用意できる中間層が中心」(校長)。日本側の規定で留学生には週28時間のアルバイトが認められているため、これくらいの資金があれば「学費や生活費を賄える」と考えているのだという。

▽インド料理店を次々開店
一方、日本側にも事情がある。東アジアの経済成長を背景に日本語学校に通う中国人・韓国人留学生が減少し、専門学校も少子化で留学生の受け入れが進んでいる。少子高齢化でサービス業界を中心に人手不足が続く。

ネパール人が働く東京都内のラーメン店の店長は「日本人バイトが集まらず、真面目でよく働くネパール人を雇っている」と話した。ネパールと日本、双方の思惑が一致した結果、ネパールで日本留学ブームが起きた。カトマンズには「日本での就労保証」などの看板を掲げる業者があちこちにあったほか、留学生を募集する日本人リクルーターの姿も見かけた。

ネパールの若者らはバイトをしながら日本語学校で学び、その後専門学校や大学に進学し、卒業後は日本語力を生かして日本企業への就職という夢を抱いた。

これに先立ち、日本ではインド料理店で働くネパール人が独立して料金の安いインド・ネパール料理店を次々と開店していた。新店を開けば、従業員として親族や知人らを招くことができ、仲介料の利益も生まれる。東京や名古屋など大都市ではネパール食材店も増加し、仲介業者など就労のネットワークが拡大した。(中略)

2022年の外国人労働者数でネパール人はベトナム、中国、フィリピン、ブラジルに続く5位となっており、存在感は高まるばかりだ。

▽料理上手の少数民族
ネパールは英語教育が盛んで、出稼ぎのために語学を磨く人が多い。(中略)新型コロナウイルス禍から回復基調にあるホテルや旅館でもネパール人スタッフを見かけるようになった。(中略)

珍しいところでは、料理上手の少数民族としてネパールで知られている「タカリ」も来日している。(中略)協会によると、日本には約500人のタカリが住み、うち100人ほどが東京で食肉処理業に従事している。あるタカリの男性は「最近は牛がどんどん大きくなっており、処理には特殊な技術が必要」と胸を張った。男性が働く食肉処理関連会社の従業員は9割が外国人だという。

コンビニや弁当製造工場、ファストフード店や居酒屋、ホテルの清掃などでもネパール人アルバイトが増えた。人材紹介をする日本人男性は「少子高齢化で深夜勤務を伴う職場は人手不足が続いている。時給が高いのでネパール人留学生に人気だ」と指摘した。

7月の週末に東京・中野で開かれたネパールフェスティバル。ネパール人にとって故郷の雰囲気が味わえる貴重な機会だが「留学生の参加は少ない。土日は(日本人の代わりに)彼らは働いている」との声が聞かれた。

▽就労規制の緩和求める声
在日ネパール人を巡っては、難民認定制度を利用した就労拡大が問題視され、国別の難民申請者でネパール人が最多となったこともある。法務省によると、2018年の国別で1位、約1700人が難民申請していた。

ただ最近は減少しており、2022年は10位で130人にとどまった。在ネパールの日本大使館は、難民申請に関し「必ずしも日本で働けることを意味しない」と注意喚起している。

多くのネパール人留学生が飲食店などでバイトしているが、就労拡大には壁もある。バイト先で評価され、上司が正社員としての採用を望んだとしても、専攻分野と異なる職場への就職では在留資格が取得しにくい。

例えば、専門学校で自動車技術を学んでいた留学生が焼き鳥店でアルバイトし、日本人経営者が学生の腕を見込んで卒業後の就職を求めても、専攻と就職先の関連性が低いと判断されれば在留資格が得られないという仕組みだ。

各国留学生に奨学金を支給してきた国際人材交流支援機構(東京)の小見山幸治理事長は「日本語が理解できるネパール人留学生をもっと活用できれば、日本の人手不足の解消になるはずだ」として規制緩和を訴えている。【10月7日 47リポーターズ】
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ネパールフェスティバルに土日は仕事で忙しいネパール人留学生が参加できない・・・というのはやや皮肉な感も。

【外国人頼みの台湾の介護現場 激化する外国人人材獲得競争】
製造業、農業、コンビニ・ホテル・飲食業のようなサービス業などとともに外国人の存在が高まっているのが介護施設。

介護現場の人材不足が深刻な中、外国人人材の雇用状況が活発化しています。独立行政法人・医療福祉機構(WAM)が貸付先法人の特養ホームを対象に行なった調査では、「雇用している」という施設が5割を超え、2020年調査から17ポイント上昇。人材確保が大きな問題になっています。【4月12日 ケアマネタイムスより】

介護が外国人頼みになってきているのは台湾も同じ。ただし、日本では介護施設が介護の中心なのに対し、台湾では個人宅への住み込みがメインという介護の形態に差があります。

台湾は日本にとっては、外国人人材獲得競争のライバルでもあります。

****台湾の介護も外国人頼み、激化が見込まれる人材獲得競争****
日本にとって台湾は、外国人労働者を獲得するうえでの最大のライバルだ。ベトナムやインドネシアといった労働者の供給国、また人材を求める職種においても共通する。とりわけ今後、日本と台湾ともにニーズが増えると見られる職種の一つが「介護」である。

すでに台湾は、日本にも増して多くの外国人介護士を受け入れている。台湾労働部によれば、その数は2022年6月時点で22万人を超え、外国人労働者の3割以上を占めるほどだ。99%以上は女性で、国籍ではインドネシアが約80%と最も多い。残りが12%のフィリピンと8%のベトナムだ。

この3カ国とは日本も「経済連携協定」(EPA)を結び、2000年代後半から介護士を受け入れ続けている。ただし、就労中のEPA介護士は今年1月1日時点で3257人(公益社団法人「国際厚生事業団」調べ)と多くない。

外国人介護士の在留資格で最も多いのが「特定技能」の2万1915人(今年6月末時点。出入国在留管理庁調べ)だ。そこに実習生、介護福祉士養成校への留学から「介護福祉士」となって働いている人などを加えても外国人介護士は約4万6000人と、台湾の2割程度に過ぎない。

台湾と日本の外国人介護士は、就労環境が大きく異なっている。日本での就労先は介護施設だが、台湾の場合は9割以上が個人宅に住み込んで働き、家事全般も任っている。台湾の外国人介護士たちは、なぜ「台灣」を選び、いかなる待遇のもと仕事をしているのか、

フィリピン南部の都市、ジェネラルサントス出身のエラさん(33歳)は、台北市内の高齢者の自宅で住み込み介護士をしている。台湾で働いて10年目になるベテランだ。

フィリピン人介護士のエラさんと陳さん 「フィリピンにいたときは、マニラのモールで働いていました。でも、給料は安くて……。だから海外へ出稼ぎに行こうと考えたのです」

フィリピンは国民の約1割が海外で働く出稼ぎ大国だ。フィリピン人は英語が得意なので、働き手を求める国々で人気が高い。女性の場合、介護士や看護師、メイドとして就労するケースが多い。

第一希望はカナダ
エラさんは当初、カナダでの就労を目指した。賃金が高く、永住の道も開けているからだ。しかし、「カナダ」は狭き門で、エラさんも選考に漏れてしまった。

カナダを諦めた後、「日本」へ行くことも考えた。その頃、日本はまだ介護分野で実習生を受け入れておらず、フィリピン人が介護士として働こうとすれば「EPA」しかなかった。ただし、EPAへの応募には「4年制大学の卒業生、もしくは看護師の有資格者」という条件があった。エラさんにはどちらの資格もない。「日本」という選択肢も消え、残ったのが「台湾」だった。

「カナダや日本と比べ、台湾に行くのは簡単でした。事前の準備としては、介護と語学の研修を2カ月ほど受けるだけだったんです」

台湾政府は外国人介護士の就労条件として、入国前に100時間の技能訓練を課している。一方、中国語に関する要件は設けておらず、エラさんもごく短期間勉強しただけで台湾にやってきた。

逆に語学力を重視しているのが日本である。EPAの場合、日本への入国前だけで半年間の語学研修を受けなければならない。2017年から受け入れ始めた実習生も、日本語能力試験「N4」レベルの語学力が就労条件になっている。「N4」は簡単な会話が成立する程度だが、日本語に馴染みのない外国人であれば数カ月の勉強が必要となる。

エラさんが言う。「わざわざ何カ月も日本語を勉強するのは大変です。しかも勉強したら、必ず日本に行けるわけでもない。だから日本で介護士をしようというフィリピン人は多くないのです」(中略)

現地の介護事情に詳しいコンサルタントの髙山善文氏が続ける。「日本と比べると、台湾の施設は質の点でかなりバラツキがあります。日本のような介護保険もないので、施設に入居すると費用も高い。外国人介護士を雇った方が安く済むんです。また、親を施設に入れることに抵抗感がある人も少なくない」

台湾にとって外国人の住み込み介護士は、金銭面でもありがたい存在だ。外国人労働者の中でも、住み込み介護士だけは最低賃金未満で雇うことが認められる。

現在、台湾の最低賃金は月収ベースで2万6400元(約12万3000円)だ。それが住み込み介護士の場合、政府が別途、最低保証額を月2万元(約9万3000円)に設定している。家賃が必要なく、食費なども雇い主の負担だからなのだという。

雇い主は賃金に加え、月2000元の「就業安定費」(雇用税)などを支払う必要はある。それでも施設に入るより費用は安い。

エラさんの月収は、手取りで2万4000元(約11万1000円)程度だ。週1日認められる休日を返上して働いた残業代を含めた金額である。エラさんのように、休日を取らずに働く住み込み介護士は多い。 彼女は2014年に台湾で働き始めて以降、一度もフィリピンに帰国していない。【10月21日 WEDGE】
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【ベトナム人を中心に台湾でも多い外国人労働者の失踪 理由は日本の実習生と同様に渡航前の借金】
ただ、日本同様に台湾でも外国人労働者の失踪が多いとか。特にベトナム人。その理由はこれも日本同様、渡航前の大きな借金。

****台湾で「年間4万人以上」の外国人労働者が失踪する理由****
近年、台湾では賃金上昇が著しい。蔡英文政権が発足した2016年当時は2万8台湾元だった月給ベースの最低賃金は現在2万6400元と、7年間で3割以上もアップした。来年からはさらに4・05%引き上げられ、2万7470元となる。

賃金上昇と合わせて進んだのが円安だ。16年当時、1元は3・4円ほどだった。それが現在は4・7円に迫る勢いだ。台湾の月収ベースの最低賃金を日本円に直すと、7年前の約6万9000円が来年には約12万8000円へとほぼ倍増する。このまま台湾の賃金上昇と円安が続けば、日本と台湾の賃金は遠からず逆転する。

台湾で就労する外国人労働者の賃金に関しては、最低賃金の伸びを上回る勢いで増えている。台湾労働部によれば、外国人労働者全体の6割以上が働く製造業の平均賃金は、22年6月までの2年間で4000元以上増加し、残業代を含めて3万2302元(約15万円)となっている。この金額は、日本で同様の仕事をしている実習生と変わらない。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、台湾は外国人労働者の新規入国を一時止めました。その結果、人手不足が深刻化し、外国人労働者の争奪戦が起きた。そんなこともあって賃金が急激に上がったのです」
そう解説してくれたのは、台北市内で人材派派遣会社を経営する呉家祥さん(60歳)さんだ。呉さんの会社では、インドネシアやフィリピン出身の外国人介護士を台湾人家庭に斡旋している。(中略)

呉さんの会社では「数百人」の介護士を斡旋している。かなりの規模だが、「儲かってはいませんよ」と苦笑する。台湾と日本の制度の違いが影響してのことだ。

日本の実習生の場合、就労先への仲介は「監理団体」が担い、民間の人材派遣会社は参入できない。一方、台湾では政府の認可を受けた派遣会社が仲介する。そしてもう一つ、日本との大きな違いが、仲介手数料の上限が法律で定めてあることだ。

その額は、外国人が就労した初年度は月1800元(約8400円)、2年目が月1700元(約7800円)、3年目以降が月1500元(約7000円)と次第に下がっていく。日本の監理団体が月3万〜5万円の「監理費」を徴収するのと比べるとずいぶん安い。だからといって、日本と台湾で仕事内容に大きな違いがあるわけでもない。

外国人労働者の借金
台湾の外国人労働者の賃金は上がり続け、仲介手数料も安い。一見、日本よりも恵まれているようだが、台灣にも日本と共通する問題がある。それは、ベトナム人労働者が入国時に背負う借金だ。  

日本にやってくるベトナム人実習生は、母国の送り出し業者に支払う手数料を借金で工面する。金額は100万円前後に達し、他国出身の実習生と比べて最も多い。来日後に働いて返済していくことになるが、実習生の賃金は高くない。だから手っ取り早く稼ごうと職場から逃げ、不法就労に走る実習生が現れる。

昨年1年間で失踪した実習生は9006人に上ったが、そのうち3分の2以上の6016人はベトナム人だった。  

台湾の状況も日本と似ている。現地で製造業の工場に外国人労働者を斡旋している業者幹部が言う。 「台湾の外国人労働者も、母国の送り出しブローカーへの手数料を借金して支払います。ベトナム人以外だと1000~2000ドル(約15万~30万円)程度ですが、ベトナム人に限っては5000ドル(約75万円)とずば抜けて高い」  

台湾では昨年1年間で4万人以上の外国人労働者が職場から失踪した。うち83%がベトナム人だ。ベトナム人は外国人労働者全体の35%なので、割合で見ても高い。日本の実習生と同様、やはり「借金」が影響していると見られる。  

現在、日本では技能実習制度の見直しが有識者会議で議論されている。同制度を廃止し、新たな制度をつくる案も出ているようだが、看板のすげ替えで終わっては意味がない。重要なポイントの一つが、ベトナム人を始めとする人材が、借金を背負わず来日できる仕組みをつくることである。借金問題に対し、実効性ある見直しがなされるのかどうか注目に値する。  

台湾を始め日本と人材の獲得を争う国々では、今後も賃金は上がり続けていく可能性が高い。為替相場の動向次第では、出稼ぎ先としての日本の魅力はいっそう低下する。そのとき人材を確保したいのなら、日本も賃金を上げていくしかない。  

それは日本人のためでもある。しかし産業界としては、低賃金で雇用できる外国人労働者が欲しい。日本が外国人の出稼ぎ先としての競争力を失う中、労働者の数を確保しようと、受け入れ条件の緩和を求める声が強まることも想定される。

その声に押され、政府が受け入れのハードルを下げれば、人材の質が悪化するだけでなく、肝心の賃金上昇が抑えられてしまう。  

そうなると日本人の働き手がさらに集まらず、外国人頼みがいっそう進む。台湾の住み込み介護のように「外国人しかやらない仕事」が日本でも生まれかねない。そして賃金が上がらない、という悪循環に陥ってしまうのだ。  

台湾は覚悟を決め、介護を外国人に任せた。結果、今のところは「低価格の住み込み介護サービス」を享受できている。しかし、台湾人が介護の仕事に戻ってくることは将来もないだろう。そんな仕事を日本でもつくるべきなのだろうか。【10月22日 WEDGE】
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【検討が進む技能実習制度廃止と新制度】
4月10日、政府の有識者会議は、外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習制度を廃止すべきだとした上で、人材確保などを目的に中長期的な滞在を円滑にし、働く企業の変更も一定程度認めるよう緩和する新たな制度への移行を求めるたたき台を示しました。【4月10日 NHK】

****未熟練労働者、3年で特定技能 技能実習廃止へ最終案 有識者会議****
外国人技能実習制度の見直しを検討する政府の有識者会議(座長=田中明彦・国際協力機構理事長)は18日、同制度の廃止と、「人材確保」に主眼を置く新制度の創設を求める最終報告のたたき台をまとめた。 

未熟練労働者として受け入れた外国人を3年間で一定の知識・技能が必要な「特定技能1号」の水準に育成する方針を掲げた。外国人の中長期的な就労を促し、人手不足の解消につなげる。  

新制度は、未熟練労働者として受け入れる対象を、建設や農業など特定技能と同じ分野に限定。外国人が業務の中で習得すべき主な技能を定め、試験などで評価する仕組みを導入する。技能や日本語能力の試験に合格すれば、最長5年滞在できる「1号」への移行を可能とした。不合格でも再受験のため最長1年の在留継続を認める。【10月18日 時事】
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上記のような改正の方向で、現在の技能実習生制度の抱える問題が解決するのか、働く外国人と雇用する企業にとって改善となるのか・・・今後注視していきたいと思います。
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ベトナム人技能実習生の「死体遺棄事件」 最高裁で逆転無罪 問われる日本の受け入れ態勢

2023-03-24 22:33:19 | 日本の外国人労働者

(【3月24日 NHK】 リンさんが遺体に添えた手紙)

【「実習生が孤立して追い込まれないよう政府には実習生を積極的にサポートしていく視点を持ってほしい」】
昨日ブログで取り上げた難民認定をめぐる同性愛ウガンダ人女性と同様に、日本の外国人に対する見識が問われる双子を死産したベトナム人技能実習生の「死体遺棄」事件。

ベトナム人技能実習生レー・ティ・トゥイ・リンさん(23)は2020年11月15日、熊本県の自宅で双子を死産しました。

技能実習生として農園で働いていたリンさんは「妊娠がわかれば帰国させられる」と考えて周りに相談せず、病院も受診していませんでした。

遺体をタオルに包み、赤ちゃんの名前や「天国で安らかに眠って」などと書いたおわびの手紙を添え、部屋にあった段ボール箱に入れました。

翌日に病院で死産を明かし、3日後に逮捕。一、二審では「死体遺棄」で有罪。

死体遺棄罪が成立するには土の中に埋めるなどの違法行為を行う「作為」と葬祭義務に反して遺体を放置する「不作為」があります。

作為は土の中に埋めるなどの違法行為を行うこと。不作為は、家族らが弔うための埋葬を行わず、葬祭義務に反して遺体を放置することです。

二審の福岡高裁判決(懲役3カ月執行猶予2年)は不作為を否定しましたが、遺体を段ボールに隠したことが作為の死体遺棄にあたると判断しました。

しかし、箱に入れたとはいえ場所は自宅の室内で、彼女は遺体のそばから離れなかった。遺体をタオルでくるみ、手紙を入れた・・・・などを考えると、敢えてこれが「死体遺棄」として罰するべきものなのか疑問です。

まして、相談する者もいない、妊娠が明らかになれば仕事ができなくなり帰国させられる・・・そういった技能実習生の境遇を考えると、むしろ問題とすべきは彼女を「孤立出産」に追い込んだ日本社会の現状のように思われます。

注目されていた最高裁判断は逆転「無罪」でした。

****ベトナム人元技能実習生に逆転無罪判決 死産児遺棄の罪 最高裁****
3年前、熊本県芦北町で死産した双子の赤ちゃんを自宅に遺棄したとして、死体遺棄の罪に問われたベトナム人の元技能実習生の裁判で、最高裁判所は執行猶予のついた有罪とした1審と2審の判決を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。

無罪を言い渡されたのは、ベトナム人のレー・ティ・トゥイ・リンさん(24)です。(中略)

死産したあとの行動が死体遺棄罪の「遺棄」に当たるかが争点で、24日の判決で、最高裁判所第2小法廷の草野耕一裁判長は「習俗上の埋葬とは認められない形で死体などを放棄したり隠したりする行為が『遺棄』に当たる」という考え方を示しました。

そのうえで、リンさんの行為について「自宅で出産し、死亡後まもない遺体をタオルに包んで箱に入れ、棚に置いている。他者が遺体を発見するのが難しい状況を作り出したが、場所や遺体の包み方、置いていた方法などに照らすと、習俗上の埋葬と相いれない行為とは言えず、『遺棄』には当たらない」と判断し、1審と2審の有罪判決を取り消して逆転で無罪を言い渡しました。 裁判官4人全員一致の結論でした。

今回の事件は、技能実習生だったリンさんが帰国や退職を迫られることをおそれて妊娠を打ち明けられず、孤立出産に追い込まれた背景があり、無罪を求める署名は9万5000筆余りに上っていました。(中略)

無罪判決について最高検察庁の吉田誠治公判部長は「検察官の主張が認められなかったことは誠に遺憾であるが、最高裁判所の判断であるので、真摯に受け止めたい」とするコメントを出しました。

リンさん「心からうれしい 実習生が安心して出産できる社会に」
 判決のあと弁護団が会見し、リンさんもオンラインで参加しました。

リンさんは「無罪判決を聞いて、心からうれしいです。これまでの2年4か月は本当に長かったです。犯罪者として大きく報道され、ニュースやSNS上でいろいろ嫌なことが書き込まれ、それらを見るたびに何度も心が苦しめられ、心が折れかけました。そのたびに、多くの人に励まされ、きょうまで頑張ることができました」と振り返りました。

そして「きょうの無罪判決で、妊娠して悩んでいる実習生が相談でき、安心して出産できる社会に日本が変わってほしい」と訴えました。(中略)

また、石黒大貴弁護士は(中略)「実習生が孤立して追い込まれないよう政府には実習生を積極的にサポートしていく視点を持ってほしい」と話しました。

技能実習制度が抱える矛盾 改めて浮き彫りに
リンさんの裁判は、技能実習制度が抱える矛盾を改めて浮き彫りにしました。

外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、発展途上国の人材育成という国際協力を目的に1993年に創設されました。去年6月時点で日本にいる実習生はおよそ33万人、このうちおよそ4割が女性です。

実習生には日本人の労働者と同じく労働関係の法律が適用され、妊娠や出産を理由に解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されているほか、産休などをとることもできます。

一方で、厚生労働省によりますと、妊娠や出産を理由に技能実習を続けられなくなった人は2017年12月から2020年11月までの3年間で637人に上っています。

リンさんの裁判でも、1審判決は「妊娠が解雇の理由にはならないとはいえ実際には仕事ができずに収入がなくなるため、家賃や生活費が出せなくなり帰国に追い込まれてしまう。そのような状況を十分にサポートする制度もなく、実習生にとっては厳しい環境だった」と言及しました。

妊娠・出産をめぐるトラブルも各地で起きていて、出入国在留管理庁が去年、ベトナムやフィリピンなど7か国の女性の実習生を対象に初めて実態調査を行ったところ、回答した650人のうち、母国の送り出し機関や受け入れを担う日本の監理団体、それに実習先の企業などから「妊娠したら仕事を辞めてもらう」など不適正な発言を受けた経験があると答えた人は、およそ4人に1人に当たる26%でした。

また、実習生の受け入れを担う監理団体や実習先の企業などから妊娠や出産を理由とした解雇などの不利益な扱いが禁止されていることを説明を受けて知っていると回答した人は59%でした。

国は監理団体や企業に対し、妊娠や出産に関する支援策を実習生に説明することなどを通知していますが、監理団体からは「実習生を受け入れるような企業は慢性的な人手不足で、たたでさえ余裕がなく、実習生の妊娠出産のことまで考えられない」という声もあります。

人材育成が目的のはずの制度が、実際は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっているとの指摘もあり、去年7月には当時の古川法務大臣が「国際貢献という目的と人手不足を補う労働力としての実態がかい離しているとの指摘はもっともだ。技能実習生にとっては、わかりにくく、人権侵害が生じやすい制度となっている」という認識を示しています。

制度の見直しに向けて、政府は有識者会議を設置し、制度の存廃や再編も含めて議論を進めていて、秋ごろをめどに最終報告書を提出する予定です。

専門家「技能実習生は弱い立場」
技能実習制度の問題に詳しい東京大学の高谷幸 准教授は技能実習生の妊娠・出産をめぐる現状について「外国人労働者を受け入れる制度ではなく国際貢献の制度となっているため、技能実習生は職場で問題が起きたとしても、自分でほかの仕事を探してやめることは原則、認められておらず、雇用主や監理団体との関係ではどうしても弱い立場にある。母国で借金をして実習に来ている人も多いので、なんとか我慢しなければと思ってしまうのだろう」と指摘します。

そのうえで「働いているから日本への滞在が認められるし、住居も雇用主が準備する形で、妊娠・出産を含め働くこと以外の生活は想定されていない。

『技能実習生らしく暮らしてください』ということだが、日本社会全体として、働くことと子育てを切り離してはいないか。外国人だけの問題という捉え方ではなく、子どもを産み育てることをみんなで支える社会になっているか考えることも必要だ」と話しています。(後略)【3月24日 NHK】
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「実習生を受け入れるような企業は慢性的な人手不足で、たたでさえ余裕がなく、実習生の妊娠出産のことまで考えられない」という実態はわかります。

わかりますが、さりとて実習生の人権がないがしろにされていいということにもなりません。

常に指摘されるように、日本政府は移民を認めない、しかし働き手は欲しい・・・ということで、実習生らをヒトとしての労働者ではなく、単なる「労働力」として扱う傾向があります。

しかし「労働力」として来日した実習生はあくまでもヒトであり、妊娠もすれば、出産もします。
一部で話題になるような奴隷労働のような労働環境が許されるものでもありません。

改めて、外国人労働者受入れの基本的枠組に関する見直しが必要とされていますが、そのことは今に始まったことではなく以前から指摘されているところで、“制度の見直しに向けて、政府は有識者会議を設置し、制度の存廃や再編も含めて議論を進めていて、秋ごろをめどに最終報告書を提出する予定”というのも今更の感もありますし、どうせ大した「見直し」も実現しないのだろうという期待薄の感も。

なお、日本で働く外国人労働者はコロナ禍で停滞しましたが、今年は回復傾向にあり、過去最多を記録しています。

****外国人労働者 182万人余で過去最多 ベトナム人が全体の約1/4に****
日本で働く外国人労働者は去年10月時点で182万人余りとなり、これまでで最も多くなりました。
厚生労働省によりますと、日本で働く外国人労働者は去年10月時点で182万2725人で、前の年の同じ時期に比べて9万5504人、率にして5.5%増え、これまでで最も多くなりました。

外国人労働者は調査を始めた2007年以降増加傾向が続いていて、新型コロナウイルスの感染拡大でおととしにかけての年間の増加率は0.2%にまで落ち込みましたが、今回は回復しました。

国籍別では、ベトナム人が46万2384人と最も多く全体のおよそ4分の1を占め、次いで中国人が38万5848人、フィリピン人が20万6050人などとなっています。

一方、技能実習生は34万3254人と前の年を2.4%下回って、2年連続の減少となり、新型コロナの水際対策が影響しているとみられます。

厚生労働省は「技能実習生は減ったものの、全体の増加率はコロナ前の水準に戻りつつある。言語や習慣の違いがあっても外国人労働者が働きやすい環境の整備に向けて、企業への訪問指導などを徹底していきたい」と話しています。【2月12日 NHK】
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【外国人労働者、過去最高を記録 しかし、このままでは「選んでもらえない」ことにも】
一方で、円安もあって外国人労働者の「日本離れ」が進んでおり、東南アジア諸国の経済成長・国内雇用機会の増加、少子化に悩む国との人材獲得競争で、日本も労働環境を整えないと今後「選んでもらえない」ことにも・・・という話も、ここ1,2年よく目にする話題です。

****記録的円安で進む外国人労働者の日本離れ、賃金目減りで薄れる魅力****
記録的な円安進行で、外国人労働者にとって日本の魅力が薄れている。少子高齢化が進み、工場や農家、介護施設の運営により多くの人手を必要としている日本にとって憂慮すべき兆候だ。

歴史的に移民の割合を低く抑えてきた日本政府はここ数年、人口減少を補うため外国人労働者の受け入れを徐々に拡大してきた。外国人労働者数は2019年に約170万人と、わずか10年余りで3倍に増えた。日本の農業や製造業、IT(情報技術)などへの労働力でベトナムは主な供給源の国となってきた。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)以後、外国人労働者数は横ばいで、入国制限が緩和されたものの増加に転じるかどうか不透明な情勢。円相場は先月、対ドルで約30年ぶり安値を更新しただけでなく、ベトナム・ドンを含む複数のアジア通貨に対しても下落している。

ベトナム人のソフトウエアエンジニア、チャン・チョン・ダイさん(29)は、「かつて日本で勉強や仕事をしていた友人らは日本へ行く価値がないと考えている。給料が以前得られた額よりも4分の1少なくなったからだ」と語った。来年訪日する計画を取りやめるつもりはないチャンさんだが、当初想定したほど貯蓄はできないと予想している。

ITサービスを提供するFPTジャパンの採用・人事担当責任者、ファム・ドゥック・マイン氏は、日本で就職志望のベトナム人は今年下期に約40%減少する見込みだと語った。為替レートの影響が一因だと言う。

ハノイに拠点を置く技能実習生送り出し機関ラコリの採用担当者、グエン・ヴァン・モンさん(27)によると、同機関は年間約300人のベトナム人労働者を食品加工や建設などの日系企業40社に送り出しているが、円安が人々の考え方に「深刻な影響」を及ぼしており、志望者は30%減少している。

こうした志望者減少は、歴史的円安でエネルギー・食料価格の高騰に追い打ちをかけた日本銀行による異次元金融緩和の副作用の一つだ。

外国人労働者の日本離れは、低成長で賃金の停滞にあえぐ日本経済をさらに悪化させる可能性がある。今後10年以内に1人当たりの国内総生産(GDP)で日本は韓国や台湾に追い抜かれる見込みだ。

移民政策などを専門とする国士舘大学の鈴木江理子教授は、他のアジア諸国における出生率の低下は、外国人労働者の獲得で日本も競争にさらされることを意味すると説明。「以前は日本が入れてくれたら喜んで来るよという感じだった。ここ数年の議論は選ばれる国になるのに努力しなければいけない」ということだと述べた。

日本の外国人労働者「横ばい」
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の生産年齢人口は20年の7400万人から40年には6000万人を下回る見通しだ。

ベトナムやミャンマーから人材を採用しているウイルテックの大島英之事業開発部部長は、「どんどん海外人材の需要が日本国内で増えてきている」と語った。労働力人口が減少する中で高齢化も進み、人手不足の状態は変わらないため、「なかなか日本で採用できないということで、外国人人材に頼らざるを得ない」と述べた。

帝国データバンクが9月に実施した調査によると、調査対象の約2万6000社のうち正社員の人手不足を感じている企業の割合は5割強と、新型コロナ感染拡大後としては最大となった。観光産業が活気を取り戻す中、ホテルや旅館では人手不足企業の割合が6割を超えている。

とはいえ、日本には母国で働き先がかなり限られている人々を引き付ける魅力がまだある、との見方を示すのはNPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表理事。同NPO法人は低賃金や危険な労働環境など搾取的な慣行に直面しているベトナム人労働者を支援している。

吉水氏は彼らが来なくなるとよく言われるが、私は聞いたことがないと指摘。ベトナムの地方出身の高卒労働者にとっては、たとえ円安であったとしても、地元で農業するよりも日本に行って技能実習で働いた方がお金になると説明した。【2022年11月11日 Bloomberg】
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“ベトナムの地方出身の高卒労働者にとっては、たとえ円安であったとしても、地元で農業するよりも日本に行って技能実習で働いた方がお金になる”という状況があるうちに、日本も受け入れ態勢の整備を進めないと、本当に「選んでもらえない」ことにもなります。
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