「盗まれた世代」
アボリジニーの社会的地位を安定させる上で重要な画期が1992年の連邦最高裁が出した判決で、それは先住オーストラリア人の伝統的所有権を認知するものであった。この判決で初めてアボリジニーには先住民として土地に対する古代から継承する法的権利画認められ、翌1993年に「先住権原法(Native Title Act)」が成立、一部であるがアボリジニー・コミュニティに自らの土地の公式な所有者となることができた。こうしてアボリジニーは「先住民」としての諸権利が認められるようになった。
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ーストラリア上院は19日の本会議で、先住民の地位確立のための憲法改正発議案を可決した。既に下院を通過しており、10〜12月に国民投票が行われる見通し。
赤道のすぐ北に位置する南太平洋のミクロネシア連邦。きのう、新大統領として連邦議会議長だったウェズリー・シミナ氏(61)が選出されました。
実は、ミクロネシアをはじめとする島しょ国に安全保障協定を提案するなど、外交攻勢を強めるのが中国。こうした中で、パニュエロ前大統領は中国批判の急先鋒でしたが、退任が決まった直後、次期政権や州知事らに宛てた書簡をJNNは入手しました。
ミクロネシア パニュエロ前大統領「中国の大使はミクロネシアをアメリカ、日本、オーストラリアなどとの伝統的な連携から抜けさせる任務を与えられている」
書簡では中国への強い危機感を示し、「ミクロネシアの政府高官らは中国に賄賂で買収され、中国の利益のために行動している」とも非難しました。
そして…(中略)「2月に台湾の外交部長と会談し、中国の代わりに台湾と外交関係を樹立した場合、どのような支援が可能か聞いた」 中国と断交し、台湾との外交関係樹立を模索していたことも明かしていました。
一方、シミナ新大統領は就任前には議長として「ひとつの中国」政策を堅持する決議に携わっていて、今後の外交姿勢が注目されます。(後略)【5月12日 TBS NEWS DIG】
22日、パプアニューギニアを訪れたアメリカのブリンケン国務長官はマラペ首相と会談し、2国間の防衛協力協定に署名しました。中国が軍事的・経済的に太平洋島しょ国への影響力を増す中、アメリカとしてくさびを打つ狙いがあります。
パプアニューギニアには、バイデン大統領が現職のアメリカ大統領として初めて訪問し、防衛協定に署名する予定でしたが、債務上限問題に対応するため訪問を見送り、ブリンケン長官が代わりを務めました。
訪問の見送りに伴い、バイデン政権は今年の秋にワシントンで太平洋島しょ国の首脳を集めた会議を開くことを急きょ発表するなど、影響力維持への対応に追われています。【5月22日 TBS NEWS DIG】
バイデン米大統領は13日、インド太平洋における米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の首脳会合を西部サンディエゴで主催した。
中国とオーストラリアは、華為技術(ファーウェイ)による5世代(5G)移動通信網への参入制限、中国の情報機関によるオーストラリアでの工作疑惑、さらにはオーストラリア政府が新型コロナウイルスの発生源を巡り中国での国際調査を求めたことなどを巡って関係が悪化。中国は2020年から200億豪ドル(約140億米ドル)規模の貿易障壁を導入した。
しかし昨年11月以降、両国の首脳、外相、貿易相が相次いで会談するなど外交面で足並みをそろえた努力を進めたことで緊張緩和の兆候が表れ始めている。
オーストラリア産業界の首脳らはこうした政治的シグナルに注目している。資源大手フォーテスキュー・メタルズ創業者のアンドルー・フォレスト氏、同業BHPのマイク・ヘンリー最高経営責任者(CEO)、ワイン企業トレジャリー・ワイン・エステートのティム・フォードCEOはいずれも3月に訪中する予定だ。
豪林産品連合会(AFPA)のビクター・ビオランテ会長は、国内の農業関係者が最近、中国の税務当局と木材の輸入について「前向きな」協議を始めたと明かした。「(3カ月後か6カ月後の)近い将来、貿易が再開されるかもしれないと楽観視している」という。オーストラリア産木材の対中取引は以前、年6億豪ドルに上っていた。
貿易業者は既に緩和されている貿易障壁がさらに緩むと見込んでいる。先週にはオーストラリア産石炭を積んだ貨物船少なくとも15隻が中国に向かって航行、中国の綿花バイヤーも非公式な貿易規制の解除を当て込んでオーストラリア産綿花の輸入を進めている。
ただ、安全保障や人権などの問題を巡るめぐる対立から、貿易関係修復の道のりは紆余曲折が予想される。オーストラリアは3月、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく原子力潜水艦の調達計画についてさらなる詳細を発表する予定で、中国政府はこうした動きに反対している。(中略)
貿易が再開されたとしても、オーストラリアの生産者の多くは中国に過度に依存した状態に戻るのは避ける構え。アルバニージー首相は来月、貿易相や資源相、大規模な企業代表団を引き連れてインドを訪問する。
カトル・オーストラリアのデービッド・フートCEO氏は、中国と切り離された生産業者は2年余りかけて新しい顧客を掘り起こしており、こうした顧客を手放すつもりはないと説明。こうした企業は「中国を再度取り込みたがるだろうが、新規顧客を失うことと引き替えにはしたくないだろう」と話した。【2月28日 ロイター】
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旧宗主国として長年影響力を持ってきたが、伝統的な海上生活をする人々の集落を訪ねると…
2022年のパプアニューギニアの予算書では、中国からの援助額は約200億円と見込まれている。額としてはオーストラリアの半分だが、現地の人たちにとっては中国の方が発展に貢献していると映っている。
橋の建設に携わった若者 「(中国のおかげで)道もできたし、街灯もできたし、橋もできた。うれしいよ」
住民 「中国は良すぎるね。村の人にとっては、大きな店は高すぎて物を買えないけど、中国人のお店に行けばとても安く買える。だから中国人の店に行くのさ」
「とても深刻に受け止めています。私たちは第二次世界大戦や世界中で起きている紛争のような経験を繰り返したくないのです。どの国の軍事施設もこの地域に入れたくはありません。それが平和と秩序を守る方法です。中国とアメリカの間でおきている地政学的な議論の中で、私たちは板挟みになっています。私たちは安全保障の分野で中国と何かをしようとはしていません」【同上】
ロイターが確認した太平洋地域指導者21人に宛てた書簡の中で、ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領は、中国と西側の間で新たな「冷戦」を引き起こす恐れがあるため、「事前に決められた共同声明」を拒否すべきと主張するとしている。
パニュエロ氏は、台湾を巡る米中の緊張が高まる中、太平洋島しょ国が地政学的な対立に巻き込まれる危険性を強調。「中国がわれわれの通信インフラ、海洋領土と資源、安全保障の面で支配することによる具体的な影響は、主権への影響とは別に、中国がオーストラリア、日本、米国、ニュージーランドと対立する可能性を高めることだ」とした。【5月25日 ロイター】
王氏は26日から10日間の日程で、中国が外交関係を持つ太平洋島しょ国8カ国を歴訪する。この日は最初の訪問国のソロモン諸島に到着した。
外務省ウェブサイトに掲載された声明によると、王氏は、ソロモン諸島は中国と外交関係を樹立することで「誠実で信頼できるパートナー」を得たとの考えを示した。ソロモン諸島は2019年に台湾と断交し中国と国交を結んでいる。
ロイターが確認した文書によると、中国は王外相主催の会議を来週フィジーで開催する際、警察活動、安全保障、データ通信の協力を盛り込んだ太平洋島しょ国地域全体の包括合意を求める見通しだ。【5月26日 ロイター】
ロイターは、中国が太平洋島しょ国10カ国との間で警察活動、安全保障、貿易、海洋、データ通信分野の合意を求めるとする共同声明草案を報じた。
アルバニージー氏は「これに対応する必要がある」と言明。スカイに対し、「前政権のように(島しょ国支援を)後退させるのではなく、強化する必要がある」と述べ、労働党による新政権が海洋安全保障などで島しょ国支援強化を公約したことに触れた。
ウォン豪外相は26日にフィジーを訪問し、同国首相と会談する。23日の就任以来初の太平洋島しょ国訪問となる。
一方、中国の王毅外相は、太平洋島しょ国8カ国歴訪の最初の訪問地であるソロモン諸島に到着。来週にはフィジーで太平洋地域外相会議を主催し、5年間の行動計画について合意を求める方針だ。
フィジーのバイニマラマ首相は26日のツイッター投稿で、27日にウォン氏、30日に王氏と会談すると明らかにし、「どの交渉のテーブルでも、最も重要なのはわが国民と地球、そして国際法の尊重だ」とした。【5月26日 ロイター】
オーストラリアも加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局で演説し、豪州はこれまで気候変動や海面上昇と闘う太平洋島しょ国を軽視してきたと指摘。
また、中国を念頭に「オーストラリアはひも付きで持続不可能な財政負担を強いることのないパートナーになる」と語った。
PIFのヘンリー・プナ事務局長は、豪新政権の特に気候変動に関するコミットメントを歓迎。太平洋地域への豪外交政策に期待を示した。【5月26日 ロイター】
****豪NZ首脳、1年3カ月ぶり直接会談 中国人権問題で足並み****
オーストラリアのモリソン首相(写真中央左男性)とニュージーランド(NZ)のアーダーン首相(中央右女性)は31日、対面で首脳会談を行った。香港と新疆ウイグル自治区の状況に懸念を表明し、中国の人権問題で足並みをそろえた。(中略)
ニュージーランドのマフタ外相は先月、安全保障上の機密情報を共有する5カ国「ファイブアイズ」の役割拡大について「違和感」を表明した。ファイブアイズの中国に対する批判的な姿勢をニュージーランドは共有していないとの見方が出ている。【5月31日 ロイター】
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【豪中対立エスカレート WTO提訴合戦も】
オーストラリアと中国の関係が極めて悪化していることは、これまでも取り上げてきました。
(2020年11月30日ブログ“オーストラリア 対中国 「どん底」を抜けて更に悪化 フェイク画像問題に怒るモリソン首相”など)
対立が激しさを増した直接のきっかけは、2020年4月に、コロナウイルスの爆発的感染が中国から世界へ広がった経緯について「独立した調査が必要だ」とモリソン豪首相が述べたことへの中国の反発でしたが、そんな“きっかけ”から離れて、両国の対立と言うか、中国のオーストラリア叩きは執拗に続いています。
その背景には、中国とアメリカの厳しい対立、オーストリアが「クアッド構想」と称されるアメリカ主導の中国包囲網の一翼を担っていることがあります。
ただ、同じクアッドメンバーである日本に対しては、どちらかと言えば、関係改善を進めることでアメリカとの関係にくさびを打ち込むような戦略なのに対し、オーストラリアに対しては徹底的に叩くという差異があります。
やはり日中間には政治的・経済的にも多岐にわたる深い関係がありますので、そうそう簡単にはバッシングする訳にもいかないが、オーストラリアならそこまでの関係はなく、安心して叩けるといったこともあるのでしょうか。
(もちろん、強気なモリソン首相の発言が中国の神経を逆撫でしていることもあるのでしょうが)
なお、オーストラリアがクアッドに参加して(最大の貿易相手国でもある)中国を警戒しているのは、単に同盟国アメリカに追随して・・・という話でもなく、南シナ海での自由な航行はオーストラリアにとって死活的に重要という、オーストラリアの歴史的・地政学的事情もあってのことのようです。
****インドのコロナ感染拡大があぶり出した、「クアッド構想」に漂う暗雲****
(中略)
■オーストラリア
現在、中国と深刻な対立の中にあるオーストラリアは、中国による南シナ海の軍事的勢力拡大に極めて神経をとがらせている。中国が建設した3カ所の南沙諸島人工島(ファイアリー・クロス礁、ミスチーフ礁、スビ礁)の航空拠点から発進するミサイル爆撃機は、オーストラリア北西部を攻撃することが可能である。
それだけではない。南シナ海から太平洋やインド洋に中国潜水艦や海上戦闘艦が進出することにより、オーストラリアは海上封鎖されてしまう可能性すら生じてしまう。
かつて第2次世界大戦中には、強力な日本海軍によってイギリスとのインド洋補給航路帯とアメリカとの太平洋補給航路帯を寸断されそうになったオーストラリアは、恐怖のどん底に陥った記憶がある。
そのため、クアッドによって、アメリカとの軍事同盟を更に強化して太平洋方面における海上航路帯の安全を確保するのに加えて、インド洋や西太平洋における中国海軍の動きを牽制できるのではないかという期待が強い。(後略)【5月20日 GLOBE+】
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中国はオーストラリア産の大麦や綿、ワイン、ロブスターなどの輸入を制限していますが、最近の話題としては以下のようにも。
****豪州産ブドウの対中輸出に遅延、原因把握へ中国と協議=貿易相****
オーストラリアのテハン貿易相は、中国本土向けに輸出された食用ブドウの約20%が国境で足止めになっているとし、原因を調べていると明らかにした。(後略)【5月20日 ロイター】
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****大豊作の豪州産の綿花が行き場失う…豪中対立エスカレートで中国から「ボイコット」され―豪メディア****
2021年5月28日、中国紙・環球時報は、対中関係の悪化によってオーストラリア産綿花が中国に輸出できない状況となり、現地農家から憂慮の声が出ていると報じた。
記事は豪放送協会(ABC)の27日付の報道を引用。3月の降水量が多かったことでオーストラリア産綿花は史上最高レベルの大豊作になるとみられる中、綿花栽培農家は最大の輸出先である中国市場が失われることを憂慮していると説明した。
そして、多いときには年間8億豪ドル、同国の綿花総生産量の70%を輸出し、同国にとって最大の綿花輸出相手国である中国との関係が悪化したことにより、今年収穫した綿花が中国にほぼ輸出できない状況になっていると指摘。業界関係者の話として「すでに中国の紡績工場が、オーストラリア産綿花のボイコットを迫られている」と紹介した。(後略)【5月31日 レコードチャイナ】
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オーストラリアもWTO提訴で応戦しています。大麦に続いてワイン。
****ワインの輸出が激減、オーストラリアが中国をWTO提訴へ=「中豪関係がさらに悪化」―独メディア****
中国がオーストラリア産ワインに不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課していることについて、オーストラリア政府は19日、世界貿易機関(WTO)に提訴することを明らかにした。独メディアのドイチェ・ヴェレ中国語版は「すでに緊張していた中豪関係がさらに悪化することになる」と報じている。
オーストラリア政府は同日の声明で、この決定は「オーストラリアの醸造業の利益を守るため」と強調した。6カ月前には、オーストラリアは中国の大麦製品に対する「懲罰的関税」をめぐりWTOに抗議していた。ただ、同声明では「紛争解決のために中国側と直接協議することについて、常にオープンな姿勢を持っている」とも言及した。
仏AFP通信は、「オーストラリアと最大の貿易相手国である中国との間の紛争が再びエスカレートしたもの」と指摘。オーストラリアのモリソン首相は「経済的脅迫をしようとする国には対応する」と繰り返し警告してきたと伝えた。
中国は昨年11月、ダンピングを理由にオーストラリア産ワインに最高で218%の関税を課すことを決定。最大の海外市場である中国のこの措置により、オーストラリアのワイン産業は大きな打撃を受けた。当局のデータによると、昨年12月から今年3月までのオーストラリアの対中ワイン輸出量は前年同期比で96%減少したという。
オーストラリアのテハン貿易相は、WTOの訴訟手続きは困難を伴い、2〜4年かかることが予想されるとし、「あらゆる可能なメカニズムを利用して、中国政府と貿易紛争およびその他の意見の相違を解決するよう努める」と表明した。【6月21日 レコードチャイナ】
一方、中国も。数年前のオーストラリアの対応を突然WTO提訴。“報復”と思われます。
****中国、オーストラリアをWTO提訴 鉄道車輪など3品目の関税巡り****
中国商務省は24日、鉄道車輪など3品目に対するオーストラリアの反ダンピング(不当廉売)・反補助金措置を巡り、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。
豪政府は今週、中国が豪産ワインに関税を課すと決定したことを巡り、WTOに提訴すると表明。中国側の今回の措置は報復と見られる。豪州はまた、中国が豪産大麦輸入に関税を課す決定を下したことを巡ってもWTOに提訴している。
中国商務省の高峰報道官は提訴について、豪州が鉄道車輪、ウィンドタワー、ステンレス鋼シンクの輸入に対して課している関税は不当だと説明した。(中略)
テハン豪貿易相は、2国間のチャンネルなどを通じた何らかの通知もなかったとして、中国による提訴は驚きだと指摘。3品目への関税は2014年、15年、19年に課したものだとした上で、記者団に対し「なぜ今頃になってこうした行動を取ったのか」と疑問を示した。【6月25日 Newsweek】
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【オーストラリア世論 対中国感情悪化】
当然ながら、こうした険悪な両国関係は国民感情に影響しますし、その結果、世論が更に厳しい対決姿勢を政治に求める、それに対して報復が・・・というスパイラルにもなります。
****豪意識調査、6割が「中国は安全保障上の脅威」 45%が「北京冬季五輪不参加」求める****
オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所は24日までに、豪州国民を対象に行った中国などについての意識調査の結果を発表した。
中国を「安全保障上の脅威」と見る人は63%で、前年調査から22ポイント増。豪中対立が深まる中、国内での警戒感の高まりが浮き彫りとなった。
豪州は昨年4月、新型コロナウイルスの発生源をめぐって第三者調査を要求したことを発端に中国との関係が悪化。中国は豪州産大麦やワインに高関税を課す報復措置を取っている。
調査では中国を「安全保障上の脅威」とした割合が増加する一方、「中国は経済的なパートナー」と回答した人は34%にとどまった。18年調査では82%、前年調査では55%が「経済的なパートナー」と答えており、対中感情が急速に冷え込んでいることがうかがえる。同研究所は「中国への信頼は過去最低水準に落ち込んでいる」と分析している。
習近平国家主席について「国際情勢で正しい行動を取ると信じているか」と聞いた質問では、約8割が「まったく信じていない」「やや信じていない」と回答。
来年2月の北京冬季五輪については「参加すべきだ」が51%、「(新居ウイグル自治区などでの)中国の人権問題を考えると、参加するべきでない」が45%と意見が分かれた。
調査は同研究所が毎年行っており、今年は3月に成人約2200人を対象に実施した。【6月24日 産経】
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ただ、注意する必要があるのは、関係が悪化すると、メディアは(読者が期待するような)相手の悪い面しか見ようとしなくなりがちだということ。そうした報道の結果、世論はさらに硬直的なものになっていくというスパイラルが。
****在中オーストラリア人「私は中国の真実を話したいが、誰も相手にしない」―中国メディア****
2021年6月22日、中国メディアの海外網によると、中国在住のオーストラリア人フリーライターが「中国の実情を話したいのに、欧米メディアは聞いてくれない」とする文章を発表した。
記事によると、広東省在住のオーストラリア人、ジェリー・グレイ氏が20日にウェブ上で文章を発表し、「自分は多くの外国人専門家や記者よりも中国に関する多くの知識とリアルな経験を持っているにもかかわらず、真実を話そうとすると決まって西側メディアに無視される」と訴えた。
グレイ氏は文章の中で昨年1月30日、英紙ガーディアンにメールを送り、中国での新型コロナ対策の体験談を紹介したところ、先方から「文章を使わせてもらう時は連絡する」と返事があったものの、「それから1年半が過ぎ、何度も連絡してみたが先方から情報は得られていない」と明かしたという。
また、昨年7月には米ニューヨークのニュースメディアから「最近の新疆ウイグル自治区訪問について話がしたい」との連絡があったため受け入れ、現地の写真などを提供しながら記者と話をしたものの「記者は、中国に批判的な内容以外は明らかに何の興味も持っていなかった」とし、先日も広東省広州市のワクチン接種やPCR検査の状況を称賛する文章を発表したところ、豪ABCラジオから出演の依頼があり、興味を示すと同時に「私の考えとABCラジオの考えは一致しない。そちらの視点にはミスリード性があるばかりか、完全な捏造とさえ言えるものもある」と主張したところ、同局がさらなる意思疎通を拒否したと述べたという。
記事によると、グレイ氏は「私は中国問題の専門家ではないが、欧米メディアの大多数の記者や、多くの専門家よりも中国についての専門的知識を持っているし、彼らの中には中国に来たことさえない人もいる。一部の欧米メディアは中国での生活に対する公正な報道をしたがらず、偏見を持った上で世界に対して『自分たちが望む中国像』を見せているにすぎない。その内容は、決して事実ではない」と主張している。【6月25日 レコードチャイナ】
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上記記事の中国在住のオーストラリア人フリーライターの話がどれだけ客観的なものかは知りませんが、一般論で言えば、豪中関係に限らず、日本を含めたすべての国の関係について、自戒・留意すべき点ではあるでしょう。
一方、中国メディアには「戦争」に言及した剣呑なものも。
****オーストラリアには中国と戦争することの恐ろしさを理解している人はほとんどいない―中国メディア****
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は8日、「オーストラリアには中国と戦争することの恐ろしさを理解している人はほとんどいない」とする記事を掲載した。
記事は、オーストラリアのニュースサイト、インディペンデント・オーストラリアにこのほど掲載された、「米国との同盟はオーストラリアを中国との戦争へと導いている」と題した論評を要約して次のように伝えている。
第2次世界大戦での中国人の死者数は少なめの見積もりでも1500万人と驚くべきほどの多さで、中国は戦争の本当の代償を理解している国だ。
オーストラリアの死傷者と戦争の経験は、それに比べると取るに足りないものに思われる。中国と戦争した場合の結果について実際に考えているオーストラリア人はほとんどいない。
オーストラリアは敗者側になる可能性が高い。米シンクタンクのランド研究所など複数の団体によるシミュレーションは、中国がアヘン戦争中に課せられた屈辱的な条項と同じくらいのものをオーストラリアは受け入れざるを得なくなるという結果を導き出している。(後略)【6月10日 レコードチャイナ】
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なお、アメリカは“ブリンケン米国務長官は(5月)13日、中国から経済的圧迫を受けているオーストラリアを米国は決して孤立させないと断言した。”【5月14日 ロイター】と、オーストラリアを支える姿勢です。
モリソン豪首相は「(豪中の)関係は存続している。貿易だけを見ても、過去最大の数量になっている。これは一つの証しだ。さまざまなことを言ったりやったりしても、この関係には依然として大きな価値がある」【5月19日 ロイター】と、過熱を戒めるような発言も。
豪中貿易の最重要品目である鉄鉱石が中国側の制限品目から外されている限りは、多少の問題はあっても・・・といったところでしょう。
【米中・豪中の対立の板挟みとなるニュージーランド】
オーストラリアと中国の対立は米中対立という大きな枠組みのなかでの事象でもありますが、豪中の対立は更に隣国ニュージーランドをも巻き込む形にも。
****ニュージーランドが中国と敵対する準備、「反中」と「親中」のジレンマ―米華字メディア****
米華字メディア・多維新聞は5月31日、「ニュージーランドが中国と敵対する準備、反中と親中のジレンマ」と題する記事を掲載。ニュージーランドが米豪と中国との間で板挟みになっていると指摘した。
記事は、オーストラリアのモリソン首相が30日にニュージーランドを訪問し、翌31日にアーダーン首相と首脳会談を行ったことを説明。モリソン首相の訪問を前にした29日には、ニュージーランドが「ルールに則った貿易システムを守るために努力しており、オーストラリアを支持する」との姿勢を示していたことを伝えた。
その上で、「アーダーン首相はニュージーランドが米国と中国のどちらかを選ぶということはないと繰り返し公言してきた。しかし、親密な隣国であるオーストラリアと中国との関係悪化が鮮明になると、ニュージーランドはその影響を考慮せざるを得なくなった」とし、「ニュージーランドが『チャイナマネー』のためにオーストラリアを見捨てたと批判する世論の声は少なくなく、アーダーン政権も一定の圧力に直面している」と評した。
また、「(ニュージーランドは)ファイブ・アイズの一員として、米英とは全く異なる姿勢で中国と交流した時に直面する状況のひどさは推して知るべしだ。親密な関係にある隣国同士(豪州とニュージーランド)が、米国との関係では歩調を合わせながら、中国との関係では足並みが乱れるとするなら、それは必然的に波紋を広げることになる」とした。
さらに、「中国の視点から見れば、中豪関係の悪化の原因はオーストラリアが米国の“反中”に味方したということになる。米豪の視点から見れば、ニュージーランドが米豪に続かないのであれば親中ということになる」とし、「オーストラリアとニュージーランドの境遇は、米中の中間スペースには限りがあり、反中にせよ、親中にせよ、困難に直面するということを表している」と論じた。
ニュージーランドのマフタ外相は5月24日、英紙ガーディアンとのインタビューで「私たちはオーストラリアと中国の間で起こっていることを無視することはできない。彼らが嵐に接近したり、嵐の中に入ったりするのであれば、私たちはその嵐が私たちに近づいてくるのは時間の問題かもしれないと考えなければならない」と発言。「私が輸出業者に送ったシグナルは、新型コロナウイルス流行を背景に、多様性を考える必要があるということ。私たちが属する地域でどのように関係を拡大させていくか。そして、中国との間に重大な事件が発生した場合の衝撃の緩和策。彼らは果たしてこの衝撃に耐えられるかということだ」と述べた。
記事は、このマフタ氏の発言から「ニュージーランドは米豪からの圧力を懸念しているだけでなく、もしニュージーランドが米豪からの要請に応じなければならない場合、中国による経済面での措置にどのように対処すべきかを考えている」と指摘し、「ニュージーランドが(米中間で)転々とするスペースは限られている。ベストな策は、米豪からの圧力を跳ね返す力を持ちながら、中国に過度に依存しないことだ」とした。
そして、「オーストラリアは中国の当局者に繰り返し連絡し、『事後』に互いの相違点の埋め合わせを図っているが、ニュージーランドは今、『転ばぬ先のつえ』として(中国と関係悪化した時の)衝撃に耐えられるかどうかを考えている。この問題の背後には、ニュージーランドの中国に対する恐れと懸念があり、中国に対する信頼度が極めて低いことを反映している。それと同時に、米豪がニュージーランドをやすやすと見逃すことはなく、今後さらに激しい争いが繰り広げられることを示している」と論じた。【6月2日 レコードチャイナ】
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いわゆる「小国」にとっては、「大国」の争いに中立的な対応を維持するというのは、ときに高度なバランス感覚・政治テクニックを必要とします。
(オーストラリアのモリソン首相は投稿について「恥を知るべきだ」と述べた【11月30日 BBC】)
【フェイク画像にモリソン首相「恥を知るべきだ」 中国「豪州政府とツイッター社の間の問題だ」】
悪化する中国とオーストラリアの関係については、これまでも取り上げてきたところです。
5月23日ブログ“中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ”
6月26日ブログ“オーストラリア 相次ぐ問題で豪中関係は悪化の一途 親中派議員の家宅捜索も”
9月20日ブログ“オーストラリア・中国の関係は政治的には「どん底」 関係改善はすぐには期待できず”
9月20日ブログでは「どん底」という表現を使用しましたが、これは間違っていました。まだまだ落ちる余地があったようです。
****豪「恥ずべき振る舞い」と中国非難=兵士中傷画像投稿で****
オーストラリアのモリソン首相は30日記者会見し、中国外務省が子供の喉元にナイフを突き付けている豪州兵の画像をツイッター上に投稿したことについて、画像は偽物とした上で「恥ずべき振る舞いだ」と非難し、中国側に謝罪と即時削除を要求した。これに対し中国は一歩も譲らず、両国の緊張関係が一段と高まった。
豪州は最近、アフガニスタンに派兵された特殊部隊の隊員らが民間人や捕虜39人を違法に殺害したとする調査報告書を公表した。これを受け、中国外務省の趙立堅副報道局長は豪州兵の画像と共に「こうした行為を強く批判し、責任を取らせるよう求める」と投稿した。
モリソン氏は「(画像は)全く遺憾であり、どんな理由であれ正当化できない」と指摘。「国防軍に対するひどい中傷だ」と訴えた。同時に、両国間の関係改善に向けて閣僚や首脳間の対話の再開を呼び掛けた。
これに対し、中国外務省の華春瑩報道局長は30日の記者会見で、「豪州政府は深刻に反省し、アフガン人民に正式に謝罪すべきだ。彼らの軍人がアフガンの罪のない民衆を惨殺したことを恥ずべきではないのか」と反論、モリソン氏の謝罪要求に反発した。
問題の画像については「インターネット上に流れているもので、誰の作品かはっきりしない」と出所不明のまま利用したことを認めながらも、削除要求は「豪州政府とツイッター社の間の問題だ」とかわした。【11月30日 時事】
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話を整理すると、アフガニスタンに派兵された特殊部隊隊員の民間人・捕虜殺害自体はオーストラリア政府自身が認め、その対応にあたっている案件です。
****豪政府、軍兵士がアフガンで民間人ら39人殺害と報告 特別捜査官事務所を設置****
アフガニスタンに派遣されたオーストラリア軍兵士が現地の民間人らを違法に殺害していた問題で、モリソン政権は豪軍から独立した特別捜査官事務所を設置し、兵士を起訴するかどうか判断する。
豪軍兵士の残虐行為は豪公共放送ABCが2017年に「疑惑」として報じたことで広く知られるようになり、実態解明が懸案となっていた。豪軍の戦闘部隊がアフガンから撤収して7年近く経過し、ようやく事態が動き出した。
制服組トップのキャンベル司令官が19日、調査報告書を発表し、残虐行為があったことを公に認めた。モリソン首相は報告書が公表される前の12日に特別捜査官事務所を設置すると発表し、厳格な姿勢で臨むことを表明した。
政府としては、報告書などの証拠に基づいて中立機関が判断することで、豪軍に対する国内外の信頼回復につなげたい考えだ。特別捜査官は刑法に詳しい弁護士か元裁判官が指名される予定で、判断の期限は未定。政府は監視委員会も設け、豪軍の綱紀粛正に向けた取り組みを確認する体制を整えた。
モリソン氏は残虐行為に関する報告を受けた後、地元メディアのインタビューで「真摯(しんし)に受け止め、法の支配の下で対処する。これはアフガン政府にも約束してきたことだ」と強調した。アフガン政府に哀悼の意を伝えたという。
報告書は500ページ以上にのぼり、個別事案については固有名詞などの詳細を黒塗りにして公開された。
報告書によると、豪軍兵士に殺害されたアフガンの民間人や非戦闘員は39人にのぼった。目撃者からの聞き取りや膨大な量の文書や画像から、主に陸軍特殊空挺(くうてい)連隊の兵士ら25人が関与していたことが判明した。
「下級兵は捕虜の殺害を推奨されていた」とされ、組織的な行為もあったとみられる。兵士が非武装のアフガン人を殺害後、戦闘員だったと見せかけるため、武器などが写り込んだ偽装写真を撮っていたケースもあった。
01年9月の米同時多発テロ後、豪州は同盟国の米国に協力して同10月にアフガンに派兵。国際治安支援部隊にも参加し、13年末に戦闘部隊を引き揚げた。
世論は当初、派兵に理解を示したが、混乱が泥沼化して40人近い戦死者が出たことや、長期化による財政負担の増加などから反対意見が強まった。報告書によると撤収直前の12〜13年に残虐行為が多発したという。
この件を巡っては、疑惑として報じたABCが、19年に連邦警察の捜査対象になった。警察は報道の基になった機密情報の入手経路を問題視し、記者の取材資料などを押収したが、結局は起訴を見送った。豪メディアは「報道の自由を脅かす」と激しく反発していた。【11月24日 毎日】
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「下級兵は捕虜の殺害を推奨されていた」というのは、“「初の殺害」を経験させる目的で捕虜を射殺させた例や非武装の民間人を殺害した例などが確認された。”【11月19日 読売】という、一人前の兵士になる「通過儀礼」として捕虜を殺害させるといった、相当におぞましいものだったようです。
こうした「戦場の狂気」はしばしば明らかにされる・・・と言うか、戦争というのは、不可避的にこうした非人間的狂気を伴うものだと言うべきで、これはこれで真摯にオーストラリア政府・軍が向き合うべき問題です。
オーストラリアのモリソン首相が怒っているのは、中国・趙立堅副報道局長が流した画像が「真実」ではない、故意にオーストラリアに汚名をきせようとする偽物だという点です。
****オーストラリア、「不快な」フェイク写真めぐり中国に謝罪要求****
オーストラリアの兵士がアフガニスタンの子どもを殺しているように見えるフェイクの写真を、中国の政府高官が30日、ツイッターに投稿した。オーストラリアは同日、謝罪を求めた。
同国のスコット・モリソン首相はテレビ演説で、「不快な」写真をソーシャルメディアで共有したことについて、中国政府は「恥を知るべきだ」と述べた。(中略)
中国外交部の趙立堅報道官は30日、オーストラリア兵が血の付いた刃物を子どもに突きつけている合成写真をツイートした。この子どもはさらに、子羊を抱えている。
同国の公共放送オーストラリア放送協会(ABC)はこの画像について、オーストラリアのエリート兵がアフガニスタンで10代の子ども2人をナイフで殺害したという、立証されていないうわさに関連したものだと報じている。
ADF(オーストラリア国防軍)の調査の結果、このうわさを裏付ける証拠は見つかっていない。
しかし報告書では、違法な殺人が行われた「信用できる証拠」や特殊部隊に存在する「戦士文化」について指摘。下位の兵士らが「最初の殺し」として、非武装の民間人の殺害を強いられた例などが挙げられている。
趙報道官はツイートの中で、「オーストラリア兵によるアフガニスタンでの市民や捕虜殺害の事実にショックを受けている。こうした行為を強く非難し、責任を取るよう求めていく」と語っている。
オーストラリアは、この投稿は「偽情報」だとして、ツイッターに削除要請を出している。
モリソン首相は、ツイートは「本当に不快で、非常に攻撃的で、全く憤慨している」と語った。
「中国政府はこの投稿に関して恥を知るべきだ。国際社会における中国の権威を低めるものだ」
「これは偽の画像であり、オーストラリア軍に対するひどい中傷だ」
首相は両国間の緊張関係についても言及し、「だが、こういうやり方ではだめだ」と指摘。他国がオーストラリアと中国の関係を注視していると警告した。
緊張関係はどうなる
中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国。モリソン首相の発言は、同国政府が行った中国批判としては最も語調の強いものとなった。
両国の関係は、オーストラリアが新型コロナウイルスの起源について中国に調査を要求したことから悪化。さらに、中国がオーストラリアの内政に干渉しているという疑惑も持たれている。
こうした批判に対し中国は、貿易停止やオーストラリア製品への追加関税など、経済的な打撃を加えることで対抗している。
在豪中国大使館は今月初め、オーストラリアが中国との関係を悪化させようとしているとされる政策14項目を、地元メディア向けに発表。これには中国の投資計画の阻止や、華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)の禁止、「新疆や香港、台湾の諸問題をめぐる、絶え間ない理不尽な介入」などが含まれていた。
オーストラリアはこれに対し、政策的な立場は変えないとした上で、中国の貿易政策は「経済的な威圧行為だ」と指摘している。【11月30日 BBC】
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このモリソン首相の「フェイク画像」批判への中国の回答が、冒頭【時事】にある、オーストラリアは自分の行為を反省すべき、画像はネットに流れているものを使っただけだとの華春瑩報道局長の対応です。
ちなみに、趙立堅副報道局長は、これまでも過激な発言などで「戦狼外交官」の先駆けとして知られる人物です。
もちろんモリソン首相の怒りはわかりますが、「それなら、さんざんフェイク情報を垂れ流しているトランプ大統領はどうなのよ?」って感も。
【断崖式に落ち込む中豪関係】
経済的には深い関係にある中豪関係が急速に悪化したきっかけは、新型コロナに関して、モリソン首相が4月、新型コロナの武漢発生を前提に、独立した国際調査を呼び掛けたことが中国側の怒りを買ったこととされています。
そのことが引き金となった背景には、それ以前の、中国側が政治献金などでオーストラリア政治に干渉しようとしていたことへのオーストラリア側の警戒感、オーストラリアが他国に先駆けてファーウェイを5G通信網構築から排除したことへの中国側の反感などがありました。
****中国とオーストラリアの関係はなぜ断崖式に下落したのか―米メディア****
米ボイス・オブ・アメリカの中国語版サイトは26日、「中国とオーストラリアの関係はなぜ断崖式に下落したのか」とする記事を掲載した。
記事はまず、「中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発生したことを受け、オーストラリアが独立した国際調査を呼び掛けたことが、北京の怒りを買った」とし、「ここから今年の中豪関係の断崖式下落が始まった」とした。
そして中国がオーストラリアの肉製品や大麦について輸入停止や関税上乗せの措置をとったこと、また最近では、モリソン豪首相が、同国の人権外交やメディアの独立、投資政策などに対し中国が示した不満について、受け入れない考えを明らかにしたことなどを取り上げた。
さらに、「豪中間の不信感は長年にわたって高まっている。北京が『戦狼外交』を頻繁に使用し、経済的および外交的手段を使ってキャンベラを威嚇し内政干渉するにつれて、両国関係は谷底へと向かっている」とした。
記事は、「両国関係の転換点となったのは2017年だ」とし、「オーストラリアの安全情報機関は、中国がますます大胆にキャンベラの政策決定に影響を及ぼそうとしていると警告した。中国人ビジネスマンによる政治献金も明るみに出た。オーストラリアは同年末、外国の干渉を抑制することを目的とした法律を成立させた。それに対し、北京は外交訪問の停止で応えた」とした。
さらに、2018年にはオーストラリアが「国家安全保障を理由に、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を5G通信網構築から排除した最初の国となった」とした。
記事はまた、「オーストラリア人の中国に対する見方も大幅に悪化している」とし、米世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査で、中国に対して否定的な見方をしている人の割合が、2017年の32%から2019年は57%に、そして2020年は81%へと増加していることも取り上げた。
そして、「中国とオーストラリアの関係がどこまで悪化するか」については、「経済的な結び付きが強いことから、緊迫した政治関係のバランスを取りながら不安定な形で前進する」との分析がある一方で、「両国間の争いはイデオロギーの違いにも関連している。大国として台頭しようとする中国はますます気勢激しく人に迫るようになり、他国に対して中国のルールに従って行動することを迫るようになるだろう」との見方もあると伝えている。【11月30日 レコードチャイナ】
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国民感情レベルの関係悪化を示す一例としては、以下のような「場外乱闘」的な騒動も。
****武則天がゴキブリ食べる…豪ABC、中国人「醜化」番組放送し炎上―中国メディア****
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)の23日付報道によると、オーストラリアの公共放送ABCの子ども向けチャンネルがこのほど、中国人を醜く描いた内容の番組を放送したとして、中国系市民などから批判を浴びているという。
記事によると、問題の番組は、英BBCの子ども向けチャンネルCBBCが2015年に放送した「Horrible Histories」シーズン6の第2話。中国史上唯一の女帝である「武則天」に扮した白人女性が、ゴキブリやタケネズミを食べるシーンが含まれている。
番組放送後、SNS上では中国系市民などから「吐き気がする番組だ」「人種差別甚だしい」などの声が上がっている。中国系市民のコミュニティーはABC側に、謝罪と説明を求めているという。【11月23日 レコードチャイナ】
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中国側は優位な経済的立場を利用して、オーストラリア側からすれば「いじめ」「いやがらせ」ともとれるような圧力をかけ続けています。オーストラリア産大麦・木材や牛肉の一部について輸入を停止しているほか、最近では・・・。
****中国、輸入石炭が環境基準満たさずと指摘 豪石炭足止め報道で****
中国は25日、輸入石炭が環境基準を満たさなかったことを明らかにした。多くのオーストラリア産石炭が中国の港で足止めされているとの報道について回答した。
外務省の趙立堅報道官が定例会見で「中国の税関はここ数年、輸入石炭の安全性と品質についてリスク監視評価を行っており、多くの輸入が環境基準を満たさなかった」と述べた。
中国は10月以降、非公式にオーストラリア産石炭の輸入を禁じている。両国関係の悪化が背景。中国は代わりにモンゴルとロシアからの輸入を増やしている。【11月25日 ロイター】
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****中国、豪ワインに反ダンピング措置 保証金徴収へ****
中国商務省は27日、オーストラリア産ワインの輸入に反ダンピング措置を適用し、28日から107.1〜212.1%の保証金を徴収すると発表した。豪中の緊張がいっそう高まりそうだ。
商務省は、「国内ワイン産業への実質的な損害」を受けての暫定措置だと説明している。
中国はオーストラリアの最大の貿易相手国だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)をめぐって豪政府が調査を求めたことから経済的報復をちらつかせ、既に豪州産の木材と牛肉の一部について輸入を停止している。(後略)【11月27日 AFP】
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ロブスターでも・・・“中国、豪産ロブスターに新たな通関検査 豪は出荷停止”【11月3日 ロイター】
更には、オーストラリアへの不満をまとめたリスト配布も。
****「圧力には屈しない」 豪首相、中国の抗議リストを一蹴****
中国がオーストラリアに対する苦情をまとめたリストを豪メディアに配布したことをめぐり、スコット・モリソン豪首相は19日、中国の圧力には屈しないと強調した。
ある中国政府当局者が18日、14の抗議項目が列挙された文書を豪メディアに配布。主要3メディアに対し「中国を敵だとするならば、中国は(オーストラリアの)敵となる」と言ったと報じられている。
抗議項目には、オーストラリアの厳格な外国による干渉を防止する法律や、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の第5世代移動通信システムからの排除、「国家安全保障を理由に」中国の投資計画を阻止する決定などが含まれる。
モリソン氏は、この「非公式文書」は駐豪中国大使館が配布したものであり、これによりオーストラリアが「国益に沿って法律や規則」を制定することをやめるつもりはないと主張。チャンネルナインに対し「外資規制や5G通信網の構築、内政干渉を防ぐ制度の運用方法などを、われわれ自身が決定するということについて譲歩はしない」と述べた。
さらに抗議項目には、豪政府が中国の内政に「絶え間ない理不尽な干渉」を行ってきたという主張も含まれている。一方で中国は、豪政府が新型コロナウイルスの発生源について独立機関による調査を求めたことについて、オーストラリアが米国の反中国キャンペーンに加担し、偽情報を拡散したと非難している。
モリソン氏は17日、菅義偉首相と会談し、防衛協力強化を大枠で合意した。これは、アジア・太平洋地域で海洋進出を強める中国を念頭に置いているとみられている。 【11月19日 AFP】
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【米中対立に揺れる立場への苦悩も】
オーストラリアが新型コロナや中国包囲網でアメリカに加担している・・・との中国の批判に対しては、モリソン首相は「豪は米の言いなりではない」と反論しつつ、米中対立のあおりを受ける立場への苦悩も。
****「豪は米の言いなりではない」 モリソン首相、いたずらな対中関係悪化を非難****
(中略)モリソン氏は、英ロンドンで行われた英シンクタンク「ポリシー・エクスチェンジ」の討論会にオンライン出席。中国からの圧力の高まりを非難する一方、オーストラリアが米国の「言いなり」だというイメージは間違っており、豪中関係を「いたずらに悪化させるものだ」と非難した。
さらに、オーストラリアは干渉を受けることなく自国の利益を追求する権利を保持しつつ、米中両国との「互恵的な」関係を求めていると訴えた。(中略)
モリソン氏によると、いずれ欧州諸国を含む世界の国々が中国の強制外交にさらされる見込みで、オーストラリアはその苦難の一端を前もって味わっているにすぎないという。
一方でモリソン氏は、米大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン氏の次期政権を念頭に、オーストラリアのような国々は、覇権を争う米中のどちら側に付くかを迫られるべきではないと主張。「世界トップクラスの大国には、パートナー国や同盟国それぞれの国益に配慮できるだけの度量の大きさが求められる」と訴えた。 【11月24日 AFP】
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(【8月6日 日経】 関係悪化にもかかわらず、オーストラリアから中国への輸出額は増加している。6月の輸出額は過去最高を記録)
【「どん底」の豪中関係】
保守政権のオーストラリアと中国の政治的関係が険悪となっていることは、
5月23日ブログ“中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ”
6月26日ブログ“オーストラリア 相次ぐ問題で豪中関係は悪化の一途 親中派議員の家宅捜索も”
でも取り上げましたが、その後も悪化は止まることなく「どん底」(豪公共放送ABC)状態ともなっています。
そのあたりの報道は連日のように目にしますが、今日も・・・
*****豪州、中国の政界工作疑惑で捜査 外交官が地方議員顧問と共謀か****
オーストラリアで中国外交官による政界への工作疑惑が浮上し、現地捜査当局が実態解明に乗り出した。豪州ではこれまでも中国の工作疑惑が浮上。
豪州が新型コロナウイルスの国際的な調査を求めたことで「どん底」(豪公共放送ABC)と呼ばれるほど悪化する豪中関係だが、さらなる冷え込みは避けられない状況だ。
9月以降の豪州メディアの報道によると、豪捜査当局は在シドニー中国総領事館の外交官が、東部ニューサウスウェールズ州議会上院の野党・労働党に所属しているモーセルメイン議員の政策顧問と共謀し、国内政治に干渉しようとした疑いがあるとみている。政策顧問は中国系豪州人だという。
モーセルメイン氏は親中派議員として知られており、新型コロナ対応めぐって、中国の習近平国家主席の指導力を称賛する発言も行っている。
捜査当局は6月、モーセルメイン氏の関係先を家宅捜索。ABCによると、政策顧問宅から押収したパソコンや携帯電話には、中国の外交官とやり取りしたメッセージが残されていたという。また、政策顧問とつながりがあった可能性がある国営新華社通信など駐豪中国メディア記者の自宅も捜索したもようだ。
疑惑をめぐって中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は今月16日の記者会見で、捜査を進める豪州に対して、「中国大使館・領事館の正常な職務履行を政治化したり汚名を着せたりすることを止め、中豪関係に新たな厄介事と障害を作り出さないよう求める」と反発した。
豪州では昨年11月にも、中国の情報機関が総選挙(昨年5月実施)に中国系豪州人の30代の男性を立候補させようとしていた疑惑が判明。男性は豪保安情報機構(ASIO)に対応を相談したが、その後にホテルで死亡しているのが見つかった。
モリソン政権は相次ぐ中国による工作疑惑に警戒感を強めており、昨年12月には内政干渉を発見し、捜査するための新組織を設立する方針を発表していた。【9月20日 産経】
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オーストラリアと中国の間には、オーストラリアがアメリカ・トランプ政権に協調する形で中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除に乗り出したほか、オーストラリア国内における中国の諜報活動や地位乱用にオーストラリア世論が不満を訴えるなどの問題がありましたが、新型コロナウイルスのパンデミックの発生源と対応についてオーストラリアが中国の影響力が強いWHOから独立した調査を要求したことで、中国側が“キレた”ような感じで、一気に関係悪化が進行しています。それに並行して、オーストラリア国内の対中国批判も高まることに。
****中国、豪州への「圧力」次々 旅行にブレーキ・牛肉輸入停止・大麦関税 コロナ対応の調査要求に反発?****
中国がオーストラリアとの人や物の行き来にブレーキをかけている。豪州では「新型コロナウイルスなどを巡る豪州の厳しい対中姿勢を封じ込めようとしている」との見方が広がる。最大のビジネス相手からの「圧力」に悩みは深いが、中国依存から脱却すべきだとの声も高まっている。
中国政府は5日、自国民に豪州へ旅行しないよう促す注意喚起をした。新型コロナウイルスの影響で「中国人らへの差別や暴力行為がエスカレートしている」との理由からだ。(中略)
アジア系に対する差別問題は2月以降、豪州でも表面化した。だが、豪州が感染抑止に成功したことが顕著になった5月以降は沈静化。
豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相は6日、中国政府の主張には「根拠がない」と反発した。中国人は、年間の観光客(約140万人)と留学生(約20万人)の数がともに国別で最多で、豪州の観光・教育産業を支える存在だ。
中国は5月、貿易を巡って次々と豪州に厳しい手を打っていた。「検疫に違反する状況があった」として12日、豪州の食肉大手4社からの輸入を停止。19日には豪州産大麦に反ダンピング(不当廉売)関税と反補助金関税を発動した。
大麦のダンピング調査が始まったのは2018年10月。豪政府が、次世代通信網5Gの事業に中国の華為技術(ファーウェイ)が参入するのを禁止した2カ月後だ。牛肉の措置は、豪政府が4月に中国の新型コロナ対応について国際的な調査を要求した直後だった。
バーミンガム氏は牛肉に関し、「技術的なミス」と反論。大麦については、ダンピングの根拠として豪政府による灌漑(かんがい)施設整備の支援策を挙げたことに「完全にばかげている」と応じた。大麦の大半は灌漑施設なしに生産されている。
パース米国アジアセンターのジェフリー・ウィルソン研究部長は「政治的な動機がある貿易上の制裁だ」とみる。
■豪に依存脱却論も
豪州にとって中国は貿易額の4分の1を占める最大の「顧客」で、農産物や鉱物の主要輸出先だ。大麦は輸出の7割が中国向けだった。
全国農業者連盟は「両国による早期の問題解決を望む」と難しい立場をのぞかせるが、ウィルソン氏は「豪州は代わりの輸出先を拡大すべきだ。選択肢はたくさんある」と指摘する。
対中関係をめぐって豪州では近年、政治献金を通じた豪政界への親中政策の働きかけや、周辺の島国へのインフラ支援攻勢を通じた影響力の強化についても危惧する声が出ていた。
中国外務省の華春瑩報道局長は8日の会見で、「健全で安定した中豪関係は両国の利益にかなう。豪州側が中国と歩み寄り、互いを尊重し、平等・ウィンウィンの原則で協力するよう希望している」と述べた。
ニューサウスウェールズ大のティム・ハーコート研究員は、中国が経済力を背景に豪州の主張を封じ込めようとしていると批判する。「通商政策を使って外交ゲームを続ければ、結局は自国の利益を害するだろう」【6月9日 朝日】
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****オーストラリア人の中国に対する信頼感が急減、世論調査で明らかに―仏メディア****
仏RFIの中国語版サイトは24日、「外交と貿易摩擦の影響によりオーストラリア人の中国に対する信頼感が急減したことが、世論調査結果で明らかになった」とする記事を掲載し、次のように伝えている。
豪シドニーのシンクタンク、ローウィ研究所が24日公表した年次世論調査によると、外交と貿易摩擦の影響により、中国政府が国際舞台で責任ある行動を取っていると信頼しているオーストラリア人の割合は、2年前の52%から23%へと半分以上も減った。
2つの貿易相手国間の対立が高まる中、この日公表された調査結果は、オーストラリア人の中国に対する信頼感が過去最低にまで落ち込んだことを示している。
仏AFP通信によると、ローウィー研究所幹部のマイケル・フュリラブ氏は、「わが国最大の貿易相手国、中国に対する信頼は急激に下がった。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席への信頼はさらにもっと落ちている」と述べた。
AFP通信は、「中国は、習主席のもとでより積極的になり、北京はその高まる経済的力を政治的、外交的、軍事的な力に変換しようとしている」と伝えている。
だが、中国の「筋肉」誇示は、インドとの国境での小規模衝突からオーストラリアとの外交上の溝まで、近隣諸国との一連の対立を悪化させている。
特に、オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源について国際的な調査を求めたことを受け、オーストラリアと中国との間の外交関係は悪化している。(中略)
調査によると、回答者の94%が政府は貿易多様化で中国への経済依存度の低下に努めるべきと答え、82%が人権侵害に関与した中国当局者への制裁を支持した。
公式統計によると、中国はオーストラリアの貿易総額の4分の1を占めており、オーストラリアの鉱物は中国の重工業と燃料動力の開発を支えている。(中略)
ロイター通信によると、トランプ米大統領はオーストラリア人の間であまり人気がないが、この調査では、米国との安全保障同盟を支持するとの回答が前回から6ポイント上昇して78%となったことも分かった。また対米関係は対中関係よりも重要との回答は55%、対中関係が重要としたのは40%だったことも分かった。【6月25日 レコードチャイナ】
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上記記事以降の主だった動きについて、記事見出し・要点を並べてみると・・・
“親中派議員に家宅捜索=モリソン首相「内政干渉を阻止」―オーストラリア”【6月26日 時事】
(冒頭【産経】記事にある中国外交官による政界への工作疑惑のスタートとなった捜査)
“豪州、10年間で国防費40%増へ 中国けん制か”【7月2日 CNN】
(モリソン同国首相は首都キャンベラの国防大学で演説し、豪州は第2次世界大戦以降、最も厳しい国際情勢に直面しているとの危機感を表明。中国の脅威増大には直接触れなかったが、中国が主権論争に絡むインドとのヒマラヤ地域での国境線係争、南シナ海や東シナ海情勢に言及。「誤算に加え紛争勃発(ぼっぱつ)のリスクも増えている」とし、インド太平洋地域を「我々の時代において主要な国際的競争の中心」と位置付けた。)
“豪、中国への渡航に注意喚起 「恣意的な拘束」のリスク”【7月7日 ロイター】
(豪当局の「スマートトラベラー」のサイトでは「中国当局は外国人を、国家の安全を脅かしたとして拘束したことがある」と警告。7日には外務貿易省が新たに「豪国民には、恣意的な拘束に遭うリスクもある」との警告を追加した。)
“オーストラリアが「中国旅行で捕まるリスク」指摘、中国大使館「滑稽」―米華字メディア”【7月10日 レコードチャイナ】
((上記の豪対応に関し)中国大使館の報道官は「滑稽で、完全な虚偽情報だ」と一蹴。全ての在中外国人について「法規を守りさえすれば心配する必要は皆無」とした上で、「当然のことながら、薬物の取引やスパイなどの違法活動を行った者は他の国と同様、法に基づく処分を受ける」と表明した。)
“中豪関係の「暗い影」を懸念、公正な投資環境望む=中国の駐豪公使”【8月26日 ロイター】
(同公使は「冷たい心と暗い考え方が、われわれのパートナシップに影を落とすことがあってはならない」と発言。中国がオーストラリアからの輸入を一部制限していることについては「経済による強制」ではないと説明。オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源に関する国際的な調査を呼び掛けたことについては「中国だけを標的にしている」との認識を示した。)
“中国当局、国営チャンネルの豪州人キャスターを拘束”【9月1日 朝日】
((拘束された)チャン氏は中国からの移民。豪州国籍を取得後、中国に戻り、最近では、CGTNのビジネスニュース番組のキャスターを務めていた。)
“豪州が「国益反する」外国との協定破棄へ法整備 「一帯一路」や孔子学院に影響も”【9月2日 産経】
(オーストラリア政府は、国内の地方自治体などが外国政府と締結した協定について、政府が「国益に反している」と判断した場合、破棄できる法律の導入を計画している。外国の影響力拡大を防ぐ狙いがあり、国内への浸透を図る中国を念頭に置いていることは間違いない。
モリソン首相は法案は「中国を標的にしていない」と強調しつつ、他国との協定に関しては「1つの声で話し、1つの計画に沿って行動することが重要だ」と、政府に一元化していく方針を明確に示した。)
“豪国防相、国内のサイバー攻撃が増加と指摘”【9月4日 ロイター】
(豪政府は6月、サイバー対策を強化する方針を表明。モリソン首相はその際、同国の政府や政治団体、重要なサービスの提供者、基幹インフラの運営者に対し、「国家を基盤とする」高度なサイバー攻撃が何カ月にもわたって企てられてきたと語った。関係筋によると、政府は中国が攻撃元だと考えている。中国は疑惑を否定している。)
“中国、豪記者2人を「追放」 出国禁止措置後に尋問 外交悪化で「嫌がらせ」か”【9月8日 毎日】
(2人の帰国により、中国に駐在する豪メディアの豪州人記者は一人もいなくなった。
中国外務省の趙立堅副報道局長は8日の定例記者会見で、2人が「関連機関」の調査を受けたことを認めたうえで「通常の法執行の一環だ」と述べた。)
“豪当局による家宅捜索、中国人記者の権利を侵害=中国外務省”【9月9日 ロイター】
(中国外務省の趙立堅報道官は9日、オーストラリア当局が6月に中国国営メディアの記者の自宅を捜索したとの報道について「露骨な非理性的行為」で、記者の権利を侵害していると非難した。)
まさに「どん底」と言うか、「両者、足を止めてリング中央で打ち合い」といった感があります。
【米の対中戦略に協力し、日米との連携を強める豪への中国の苛立ち 豪政府の姿勢には国内世論支持があり、関係改善はすぐには期待薄】
豪中関係は経済的には“中国はオーストラリアの貿易総額の4分の1を占めており、オーストラリアの鉱物は中国の重工業と燃料動力の開発を支えている。”というきわめて緊密な関係にありますが、中国側の経済的圧力に対しても“オーストラリアのスコット・モリソン首相は(6月)11日、中国人観光客や留学生らが豪にもたらす巨額の利益を中国側が抑え込もうとする動きを見せていることを受けて、経済的な「威圧」の試みにひるむことはないと明言した。”【6月11日 AFP】ということで、当分、この「どん底」状態が続きそうです。
****中国と豪州、過去最悪の関係 経済から安保までなぜ一変****
中国とオーストラリアの外交関係に緊張が走っている。長らく貿易強化を柱に良好な関係が続いたが、対中攻勢を強める米国と足並みをそろえる豪州に中国が反発。対立は経済分野から人権や報道の自由、安全保障にも広がり、両国関係は「過去最悪」との見方も出ている。(中略)
豪州では最近の両国関係について、天安門事件を非難し2万7千人の中国人学生を受け入れた「1989年以来で最悪の危機」(オーストラリアン紙)との見方も出ている。
中国、5G巡る米国追従に反発
米国との対立が強まる中国は近年、その対応に集中するため周辺国との関係改善に動いてきた。尖閣諸島を巡ってぶつかる日本や、国境地帯で衝突が続くインドなどとも決定的な対立を避けようとするなか、豪州には攻勢を強めている。
その理由について、中国外交当局者は二つの要因を挙げる。
一つは、豪州が米国の対中戦略に最も協力的であることだ。
トランプ政権が諜報(ちょうほう)機関の情報を提供しあう「ファイブ・アイズ」(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)の他の国々に中国の華為技術(ファーウェイ)機器を使わないよう求めると、豪州は2018年8月に次世代通信規格5Gの整備で、他国に先駆けて華為排除に動いた。外交当局者は「米国にどこまで付き合うかは、英国やカナダに迷いも見られる。だが豪州にはそれがない」と話す。
もう一つは豪州が、日米のインド太平洋戦略に呼応するように、安全保障面での連携を強めている点だ。
中国は18年に豪州主導の多国間軍事演習「カカドゥ」に初参加するなど防衛交流を進めてきたが、そうした動きは止まりつつある。逆に豪州は7月、南シナ海と西太平洋で日米との合同演習に参加し、中国への対抗姿勢を強めた。
豪州、安保情報の流出に強い懸念
豪州は最大のビジネス相手として中国との関係を重視し、13年からギラード、アボット両政権ではほぼ毎年、首脳の相互訪問を続けてきた。
中国に対して明確な強い姿勢に転じたのは、ターンブル前政権下の18年だ。華為の5Gへの参入禁止に先立ち、同年6月には、外国政府の意を受けて政策決定のプロセスに影響を与える行為を厳罰化した。
当時、サイバー攻撃や基幹インフラへの中国企業の参入、政治献金を通じた政治家への働きかけなどを通じ、安全保障に関わる情報などが中国に渡っているという懸念が急速に広がっていた。
近隣の太平洋の島国に中国がインフラ支援攻勢をかけ、影響力を広げていることへの危機感も強い。18年には、中国の援助で建設されたバヌアツの港を中国が海軍の拠点として使う可能性が報じられ、物議を醸した。豪政府はパプアニューギニアやフィジーで軍の基地施設の整備を支援するなど対抗している。
経済界は中国による輸入制限などにあえぐが、モリソン首相は「豪州は国益を考えて行動する。誰からも威嚇されない」と、安易な妥協はしないとの姿勢だ。
豪国防省の国防情報機構出身の安全保障専門家、ポール・モンク氏は「中国の『いじめっ子ぶり』に国民はいらだっており、(政府の対中姿勢には)世論の支持がある。両国関係がすぐに改善するとは思えないが、ヒステリックにならずに対話のチャンネルを保つことが大切だ」と語る。【9月18日 朝日】
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ただ、オーストラリアは経済的にはむしろ中国依存が強まっています。
****豪、6月対中輸出が過去最高 中国は外交姿勢転換求める****
オーストラリアから中国への輸出額が増加している。6月の輸出額は中国向けが約146億豪ドル(約1兆1000億円)で過去最高だった。
6割を占めるとみられる鉄鉱石の価格上昇が影響している可能性もあるが、外交や安全保障で中国と距離をとりながら、貿易ではなお対中依存が高い。(後略)【8月6日 日経】
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