孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン 「終わりなき戦い」に終わりが・・・アメリカにとっては

2020-02-29 23:30:27 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタン中部ワルダク州で、丘の上に座り込む米兵(2019年6月6日撮影)【2月9日 AFP】)

【「米国はアフガンの警察ではない」】

2001年9月11日の同時多発テロ、首謀者のウサマ・ビン=ラーディンをかくまうアフガニスタン・タリバン政権への攻撃で始まった「アメリカ史上最長の戦争」、「終わりなき戦争」にようやく出口が・・・アメリカにとっての出口ですが。

****トランプ政権、米軍を段階的撤収も予断許さず タリバンと和平合意へ****
トランプ米大統領は、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンとの和平合意について、就任前からの公約だったアフガンでの「終わりなき戦争」の終結に向けた第一歩と位置づけ、駐留米軍の段階的な撤収を進めていく方針だ。

ただ今後、タリバンが米兵を殺害する事態が起きれば、トランプ氏が直ちに合意を破棄する事態も想定され、和平実現の行方は全く予断を許さない。
 
米政権は和平合意に基づき、現在約1万2千人規模の駐留米軍について、「第一段階」としてトランプ氏が就任した2017年1月当時と同水準の約8600人規模に縮小する。撤収は数カ月〜半年かけて行われる見通しだ。
 
この数字は、アフガンの治安状況に影響を与えない形で撤収し得る当座の人数として国防総省と駐留米軍が算出したとされる。
 
ただ、ホワイトハウスや国防総省の高官は、撤収を進めていくかはタリバンとアフガン政府との対話の進展具合などの「現地情勢次第だ」と強調する。
 
もともと、米国がアフガンに米軍を駐留させる最大の目的は、アフガンが再び米本土および外国の米権益に対するテロ攻撃の拠点と化すのを食い止めることだ。

タリバンが今後、国際テロ組織アルカーイダやイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)を呼び込み、アフガンを「テロの温床」にすることを図った場合、米政権は撤収方針そのものを見直す考えだ。
 
米政権は同時に、イラクで米国人が殺害されたのを受けてイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害に踏み切るなど、反米勢力に対し「米国人の殺害は、越えてはならない一線(レッドライン)だ」との立場を明確に打ち出している。
 
米軍の駐留将兵がタリバンのテロ攻撃で殺害されるような事態が起きれば、米政権が和平合意を白紙に戻す事態も想定される。
 
一方で、仮に和平に向けたタリバンとアフガン政府との対話が進んだとしても、米政権はただちに米軍の完全撤収に踏み切るわけではない。

対米テロ攻撃の芽を摘むため現地の情報を収集し、アフガン治安部隊と共同での対テロ作戦を実行する米軍特殊部隊の駐留は続ける方針だ。
 
また、アフガン政府の自衛能力の向上も、米軍の撤収を実現させる前提条件の一つだ。米政権は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などの駐留軍(約8千人規模)に対しても、性急な撤収の自制を促し、引き続き米軍と一緒にアフガン治安部隊の訓練と育成への協力を求めていく。【2月29日 産経】
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米軍撤退が予定どおり進むか否かは現地の情勢次第ですが、“引き続き米軍と一緒にアフガン治安部隊の訓練と育成への協力を求めていく”と、アフガニスタンお今後の安定にも留意している・・・ようにも見えます。


ただ、下記記事など見ると、まずは米軍撤退ありきで、トランプ政権がアフガニスタンの今後にどの程度配慮・留意していうるのかはやや疑問にも思えます。


****米タリバン和平、ドーハで29日署名 米最長の戦争、最終局面****
(中略)米国とタリバンは22日から和平の前提となる「暴力の削減」を開始。

アフガン・メディアによると、暴力削減の開始以降もタリバンは全土で政府施設などへの攻撃を続け、28日までに市民や警察官ら計20人以上が死亡した。

だが、米軍など外国部隊に被害は出ておらず、米国やアフガン政府は暴力削減はおおむね達成されたと判断している。
 
トランプ米大統領は25日、訪問先のインドで暴力削減が順調に推移しているとの認識を示した上で「米国はアフガンの警察ではない」と改めて主張し、米軍撤収に意欲を見せた。(後略)【2月28日 産経】
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そもそも、紛争の当事者であるアフガニスタン政府抜きで、タリバンとアメリカが進めている「和平」であり、アメリカのて撤退を実現するものであっても、アフガニスタンの和平を実現する保証はありません。


「暴力の削減」にしても、米軍への攻撃がなかったというだけで、アフガニスタン市民や警察官への攻撃は続いています。

この状況で“暴力削減はおおむね達成されたと判断”するアフガニスタン政府の心中は?


「米国はアフガンの警察ではない」・・・・オバマ前政権時代から言われていることですが、アメリカは別にアフガニスタンに民主的な政権が根付くことを目的としているわけでなく、テロリストとの闘いを行っているだけで、アフガニスタンがテロの温床とならないことをタリバンが約束するなら、米軍がアフガニスタンにいる必要もない。あとは当事者同士でお好きに・・・ということでしょう。

民主化とか、アメリカ以外のことに関心を示さないトランプ政権の場合、そうした考えがよりストレートにでてきます。

【米国社会に広がる厭戦気分と非介入主義】
そのあたりの「アメリカは世界の警察官ではない」という考えは、トランプ政権だけでなく、ベトナム、アフガニスタン、イラクと長年の戦争に疲れたアメリカ国内に共通する気分でもあるのでしょう。

それだけに、トランプ大統領としては再選に向けて、アフガニスタン撤退という「成果」を国民に示したいという話にもなるのでしょう。

****米国社会に漂う、非介入主義 米軍死者7千人超、対テロ戦争疲れ****
 QI代表のアンドルー・ベイスビッチ氏=米ボストン大ウェブサイトから 
 
 「クインシー研究所」(QI=Quincy Institute)が昨年12月、米国ワシントンに設立され、注目されている。

「終わりなき戦争を終わらせる」という目標を掲げ、リベラル派の投資家ジョージ・ソロス氏、右派の実業家チャールズ・コーク氏が共同出資する。

背景にあるのは、対テロ戦争で米国社会に広がる厭戦(えんせん)気分と非介入主義への支持だ。

「我々は米外交の根本的な方向付けをやり直す」。26日、米議会で開かれたQIのフォーラム「世界における米国の新ビジョン」で、QI議長のスザンヌ・ディマジオ氏はこう語った。
 
「(米国は)退治するべき怪物を探すために海外に出て行くことはない」がQIのモットー。名称の由来でもあるジョン・クインシー・アダムズ(1767~1848)の言葉だ。

アダムズはモンロー大統領のもとで国務長官を務め、米国の孤立主義を印象づけた「モンロー宣言」の起草者でもある。
 
「QIは米国が軍国主義化して外交手段を軽視している、と考える人々によって結成された。我々の目的は軍事力の抑制という考えを促進し、世界での米国の役割に関するワシントンの人々の考えを変えることだ」。代表を務めるアンドルー・ベイスビッチ氏(ボストン大名誉教授)は朝日新聞のインタビューでこう強調した。

歴史学者で元陸軍大佐でもあるベイスビッチ氏は保守派のリアリストとして知られ、軍事力を使う介入主義に反対の立場をとる。
 
ベイスビッチ氏は「QIは孤立主義と批判されるが、完全な間違い」と反論する。「我々は米国の国際的な関与を支持している。ただし永続的な戦争を行うのではなく、平和構築における関与だ」
 
主流派のシンクタンクでは国際主義の立場から米軍の前方展開戦略に肯定的な意見が多く、非介入主義を訴えるQIは異色の存在だ。

ソロス、コーク両氏という左右両陣営の大富豪が政治理念の相違にもかかわらず非介入主義で共闘したことが手伝い、ワシントンで衝撃が走った。
 
ソロス氏は民主党に多額の献金をするリベラル派である一方、コーク氏は共和党や草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」を支援したリバタリアン(自由至上主義者)。米メディアによれば両氏はQIの設立に計100万ドル(約1億1千万円)を寄付した。
 
同じ「戦争を終わらせる」という目標を掲げるトランプ氏に対するQIの評価は厳しい。前回の大統領選でトランプ氏が当選することで、介入主義に対する米国民の疑念が表面化した点をベイスビッチ氏は評価するものの、トランプ氏本人の政策については「一貫性がない。イランのソレイマニ司令官の殺害が良い例だ」と非難する。

 ■706兆円、第2次大戦超す支出
QIの主張を後押しするのは民意だ。

米シンクタンク「シカゴ地球問題評議会」の昨年6月の調査で「他国への軍事介入で米国はもっと安全になるか、それとも安全にならないと考えるか」と尋ねたところ、「安全にならない」が46%、「安全になる」は27%だった。
 
2001年9月11日の米同時多発テロをきっかけに始まった対テロ戦争は、米国社会に大きな影響を与えた。

米ランド研究所の調査によれば、アフガニスタン戦争やイラク戦争など一連の対テロ戦争には277万人(15年現在)の米軍人が派遣された。イラク戦争は11年12月に正式に終結宣言が出されたが、01年開始のアフガニスタン戦争はベトナム戦争を超える「史上最長の戦争」となり、今も1万3千人の米軍部隊が現地に派遣されている。
 米
ブラウン大ワトソン国際・公共問題研究所の「戦争のコスト」プロジェクトによれば、対テロ戦争での米軍の死者は7千人を超え、地元民間人などを含めた死者の総計は77万~80万1千人に上る。計6・4兆ドル(706兆円)の支出は第2次大戦を超え、史上最も高額な戦争だという。
 
同プロジェクトディレクターのキャサリン・ラッツ・ブラウン大教授は、米国社会を覆う戦争疲れの理由について「多くの米国人は一連の戦争に税金を払い続けることに飽き飽きしている。自分たちの手元には何も残っていないからだ」と指摘。

「トランプ氏も同様に金の無駄ととらえ、『なぜ我々の金をほかの国々のために使うのだ? これは我々の金だ』と本能的に感じているのだろう」と語る。(後略)【2月28日 朝日】
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「(米国は)退治するべき怪物を探すために海外に出て行くことはない」・・・・それはわかりますが、では国民を苦しめる怪物を誰が退治するのか、外交だけで実現できるのか・・・国際社会は難しい課題を担うことにもなります。

なお、アフガニスタン政府については、大統領選挙のゴタゴタが続いていますが、とりあえずはガニ大統領の大統領就任は、これ以上の混乱を避けたいアメリカの要請で延期されたようです。

****アフガン、大統領就任式を延期 米国が要請 タリバン和平への影響懸念****
米国務省は25日、アフガニスタン大統領選で再選したガニ大統領が、米国の要請で27日に予定していた2期目の就任式の延期を決めたと発表した。

次点のアブドラ行政長官が選挙結果に反発しており、米国は政局の混乱がイスラム原理主義勢力タリバンとの和平プロセスに悪影響を及ぼすことを懸念していた。
 
昨年9月実施のアフガン大統領選は今月18日に最終結果が発表されたが、アブドラ氏は選挙結果の受け入れを拒否して、独自の政権の樹立を宣言。既に自ら州政府知事を任命しており、ガニ氏とは別の自身の大統領就任式を計画している。(後略)【2月26日 産経】
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もっとも、ガニ氏側は、延期は新型コロナの関係と国内に説明しているようですが。

*****アフガン、来月に大統領就任式 肺炎で延期?*****
アフガニスタン大統領府は26日、再選したガニ大統領の就任宣誓式を3月9日に行うと明らかにした。当初予定していた今月27日から延期した理由について「アフガンでの新型コロナウイルス感染に関する情報」と、世界各国の指導者への通知が遅れたことを挙げた。ロイター通信が伝えた。
 
米国務省の報道官は25日、ガニ氏が米国の要請に応じて延期したと明らかにしていたが、矛盾する説明となった。アフガン大統領府は内政の混乱が延期の原因ではないことを国内向けに強調する狙いがありそうだ。【2月27日 共同】
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新型コロナウイルスの多方面への影響  オンライン教育、政治指導者の感染・隔離、ペット問題

2020-02-28 22:09:49 | 疾病・保健衛生

(中国で小中学生向けのオンライン教育が急成長している(図虫提供)【2019年7月18日 日経】)

【多方面への影響】
新型コロナウイルスの問題では、健康・生命の他、政治(対応が不十分な政府への不満など)・経済(部品調達困難による生産停止、株価急落など)だけでなく社会全般で多方面に影響が出ています。

****すでに1カ月 北京はweb授業 小6少女「みんなで勉強したい」****
日本中が小中高の一斉休校への対応に追われる中、すでに幼稚園から大学まで、1カ月近く休校が続く、中国・北京。

子どもたちの姿は、自宅にあった。パソコンに向かい、インターネット上での授業の真っ最中。

小学6年の児童が受けていたのは、漢詩の授業。
インターネット授業の音声「みなさん、こんにちは。前回の授業で勉強した漢詩の意義はまだ覚えていますか? 次の動画をご覧ください」

流れる音声に合わせて復唱したり...。
インターネット授業の音声「みなさん、作者は『石灰詩』という詩を書いたのですが、この詩が言いたいことは何でしょう?」先生の問いに対する答えをノートに書いていく児童。

北京市内の小学6年生「早く終息して、みんなが学校に戻り、また一緒に勉強したい」
地元当局は休校を延長し、ネット授業を続ける方針を示している。

今や南極大陸以外の全ての大陸に感染が広がっている、新型コロナウイルス。

感染者が確認されている中東イラクでは、イスラム教の礼拝堂「モスク」を消毒。その場の人にかまわず、容赦なく消毒を進める作業員。

死者が出ているフィリピンでは、愛の誓いもマスク越し。合同結婚式に参加した新郎新婦は、マスクをしながらのキス。

感染が急拡大するイタリアでは、マスクに手袋姿でカードゲームに熱中する人たちまで。

そして、イランでは、大統領に感染の危機!?地元メディアによると、エブテカール副大統領の感染が判明。26日に行われた閣議では、2人は挟んだものの、近距離にロウハニ大統領と感染した副大統領が座っていた。

そして、人間だけではなく、ペットにもコロナウイルスの魔の手が。
香港当局は、感染が確認された人と一緒にいたペットの犬から、弱陽性反応が出たと発表。今のところ犬に症状はなく、くわしい鑑定を進めているという。(後略)【2月28日 FNN PRIME】
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【日本ではオンラインスクールなどのオンライン教育が、中国や韓国ほど普及していない】
上記記事の冒頭に出てくる学校の問題。
日本でも、一斉休校が提起され問題になっています。

これについて中国メディアは以下のようにも。

****日本ではオンライン教育が中国や韓国ほど普及していない―中国紙****
中国紙の環球時報は28日、「日韓の学校が休校になり親たちが心配、『仕事は休めない、子どもの面倒を見る人がいないがどうする?』」と題した記事を掲載。新型コロナウイルスの影響によって臨時休校措置を取った日韓の現状を紹介した。(中略)

これを受け、環球時報の記事は、「この突然の政策は、多くの親を悩ませている。最大の悩みは『子どもの面倒を見る人がいない』ことだ」と説明。日本のメディアを引用して、(休校によって)子どもたちの面倒を見る必要があっても、会社で休みを取りづらい親がいることを紹介した。 

そして、「収入面の影響も親たちにとってもう一つの重大な問題だ」とし、「共働きの家庭では親のどちらかが“犠牲”になって(仕事を休んで)家で子どもを見なければならない。片親の家庭では、(親が休めば収入が無くなるため)さらに深刻だ」と伝えた。 

さらに、「中国ではオンライン授業が始まった一方、日本の親たちは、子どもの勉強が遅れることを懸念している。そのため、学校は勉強用のプリントを配布し、子どもたちに自主学習を奨励している。

しかし、日本ではオンラインスクールなどのオンライン教育が、中国や韓国ほど普及していない。そのため、多くの子どもたちはいまだに教室での授業や塾などの伝統的な勉強法に依存しており、自主学習の効果は心もとない」とした。(後略)【2月28日 レコードチャイナ】
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中国では、スマホを使った、AI技術を駆使したオンライン教育が急速に普及しつつあるようです。

****中国のオンライン教育利用者総数が2億人を突破****
このほど発表された第43回「中国インターネット発展状況統計報告」によると、中国のオンライン教育利用者総数は2億人を突破した。

このうち、微信(WeChat)などのアプリは、中国の学生がオンライン教育を受ける際の最も重要なツールとなっており、スマートフォンを利用してオンライン教育サービスを受けるユーザーの数は、前年比63.3%増加し、ユーザー全体の約96.5%を占めるまでとなった。人民日報が報じた。

報告によると、2018年12月時点で、中国のオンライン教育利用者数は2億100万人に達し、2017年末比4605万人増、オンライン教育利用者数の年成長率は約30%に達した。

オンライン教育業の急成長は、技術革新の駆動と密接にかかわっている。ブロードバンド速度がスピードアップし、AI(人工知能)やネットライブ配信番組などモバイルネットワーク技術が発展するのに伴い、オンライン教育業に巨大な変化がもたらされた。

「AI+教育」は、次第にオンライン教育業における技術面でのベースとなり、スマート宿題添削、顔認証技術、カスタマイズ化されたおススメ機能などのAI技術はすでに、オンライン教育におけるさまざまなシーンで応用され、ユーザーに多大な便宜をもたらしている。

また、音声認識やクラウドコンピューティングなどの関連技術でブレイクスルーが得られたことで、よりリアルで動きのある授業スタイルやより多様化された教学内容を学生に提供できるようになってきている。

今後、技術の発展によって、オンライン教育トレーニングの発展がさらに推進されるとみられており、「2018年中国オンライン教育業白書」の予測によると、中国のオンライン教育利用者は2020年までに2億9600万人に、市場規模は4330億元(約7兆1560億円)にそれぞれ達するとみられている。(後略)【2019年03月12日 人民網日本語版】
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もっとも、上記記事にあるスマホを使ったオンライン教育の内容がどんなものか、正規の学校授業との関係がどうなっているのか・・・よくわかりません。

そもそも下記記事によれば、全国の5歳児と小中高生(K-12)全体の人数が2億人ほどで、「オンライン夏期講習」のようなオンライン教育を受けているのはその10%といった数字もあるようです。

まあ、それでも膨大な人数で、一大産業になりそうです。

****中国オンライン教育加速、夏休み前集客合戦 ****
K-12(5歳児から高校生)を対象とした中国のオンライン教育企業各社は、夏休みシーズンを前に苛烈な広告合戦を繰り広げている。(中略)

スーパーユニコーンへの道のり
K-12を対象としたオンライン教育業界は、評価額1000億ドル(約10兆8000億円)を達成する企業を生むポテンシャルがある。

中国教育部の統計によると、全国のK-12世代は2億人。前出の「10%」(オンライン夏期講習の受講者数の割合)という数字を当てはめれば、オンライン学習サービスの潜在顧客は最低でも2000万人になる。

グループレッスンの受講料が年間3000元(約4万7000円)で、1人当たり1.5科目を受講すると仮定すれば、受講生1人で年間4500元(約7万円)の受講料を支払うことになる。全国で2000万人の受講生を集めれば、その市場規模は1000億元(約1兆6000億円)に迫るのだ。

すでに上場した企業のPSR(株価売上高倍率)を鑑みれば、将来的にスーパーユニコーンが誕生するという仮説は成立する。(後略)【2019年7月18日 日経】
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オンライン教育・・・日本社会の問題のひとつである不登校児童対策としても使えそうにも・・・。

【政治指導者の感染・隔離】
冒頭記事【FNN PRIME】のイラン副大統領のように政治指導者の感染も。イランでは、新型コロナウイルスの対策を説明する記者会見で汗を拭っていた保健省のハリルチ次官の感染が話題にもなりました。

感染地域で最前線に立てば、感染者との接触機会も当然に増えます。イラン・韓国と並ぶポスト中国の感染源の一つ北イタリアでは・・・

****伊ロンバルディア州知事が隔離状態に、側近が新型ウイルスに感染****
新型コロナウイルスの感染が拡大しているイタリア北部ロンバルディア州のフォンタナ知事は26日遅く、スタッフの1人が新型ウイルスに感染したことを受けて、自主的に隔離措置をとっていることを明らかにした。

同知事は過去1週間、ロンバルディア州の感染対策を説明するため、何度も記者会見を開いていた。

同知事はフェイスブックに「現時点で私は感染しておらず、仕事を続けることが可能だ。だが、2週間は一種の自己隔離措置の下で生活してみる」と投稿。外科用マスクをした自身の姿を映した動画も公開した。

ロンバルディア州では過去1週間で300人以上が新型ウイルスに陽性反応を示した。死者は10人。イタリア全体では400人以上が感染し、12人が死亡している。【2月27日 ロイター】
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一方、中国を訪問したモンゴル大統領。コロナウイルス騒ぎのなかでの外国指導者の訪中を中国側は喜んでいましたが、帰国後に2週間隔離されるそうです。

****訪中後のモンゴル大統領を隔離 新型肺炎対策で14日間****
モンゴル政府は28日、中国訪問から27日に帰国したバトトルガ大統領が病院での14日間の隔離措置となったと明らかにした。モンゴルは新型コロナウイルスの流入を防ぐため、中国からの入国者を全て隔離することにしている。
 
訪中に同行したツォグトバータル外相らも隔離対象となった。電話やインターネットを使って仕事を続ける。
 
バトトルガ氏は27日に日帰りで北京を訪れ、会談した習近平国家主席に「モンゴル国民の気持ち」として羊3万頭を贈ると表明。習氏は「新型肺炎の発生後、初めて中国を訪れた外国の国家元首だ」とたたえた。【2月28日 共同】
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【ペットも感染・・・遺棄・殺処分増加】
冒頭記事【FNN PRIME】の最後にあるペット問題は、ちょっと気が滅入る話です。

****「犬や猫も感染」中国の飼い主ら、殺処分や捨てる例も****
中国で、犬や猫なども新型コロナウイルスに感染するとの見方が広がり、過剰反応した飼い主らのペット忌避につながる懸念が出ている。
 
香港政府は28日、新型コロナウイルスに感染した住民の飼い犬1匹を検査したところ、口と鼻の検体から弱い陽性反応が出たと発表した。症状は出ていない。
 
動物保護当局は「現時点でペットが感染して発病したり、ウイルスを伝染させたりすると証明されたわけではない」との見解を示した。その上で、すべての感染者のペットを動物用の保護施設で14日間隔離すべきだと強調した。
 
ペットを通じた感染の可能性は、中国本土の専門家も1月末に指摘していた。中国紙・南方都市報(電子版)によると、感染拡大以降、中国本土の各地で犬や猫が飼い主に捨てられたり、殺処分されたりする例が出ているという。【2月28日 読売】
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韓国  検査態勢の拡充もあって感染者数急増 大邱封鎖には住民反発 日本では・・・

2020-02-27 22:46:57 | 疾病・保健衛生

(車に乗せたまま、乗員の新型コロナウイルス感染検査をする診療所の当局者=26日、韓国・世宗市【2月27日 産経】 “韓国で新型コロナウイルスの感染者が急増した背景には、検査環境の整備で検査総数自体が大幅に増えたことも指摘される”とも。逆に言えば、検査が十分に行われていない日本は・・・)

【韓国 1日で感染者500人超の増加】
昨日ブログでも取り上げたように、新型コロナウイルスの感染は、中国国内の状況が湖北省以外では一定に落ち着く一方で、世界全体に拡散する新たな状況となっています。

****新型肺炎で中国専門家「4月末には押さえ込める」「日本のクルーズ船対応は失敗」****
中国政府の新型コロナウイルス対策に強い影響力を持つ専門家グループトップの鍾南山氏は27日、「4月末には(中国国内の)感染をほぼ押さえ込める」と述べた。同時期に生産活動もおおよそ再開できるとの見通しを示した。
 
広東省広州での記者会見で語った。鍾氏は「現在は情勢が変化した。感染者の増加は国内よりも国外が多い」とし、中国政府による「空前の防疫措置」が国内の感染拡大を抑制したとの見方を示した。
 
また、感染者700人以上を出したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への日本政府の対応について「乗客を下船させず隔離したのは失敗だった」と言及。「船の狭小な閉鎖循環システムを通じて気体が広がり、(ウイルスの)伝染を極めて容易に促進した」と指摘した。
 
中国国家衛生健康委員会は27日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染者が中国本土で累計7万8497人、うち死者が2744人に上ったと発表した。いずれも27日午前0時(日本時間同1時)時点。感染者は前日から433人、死者は29人それぞれ増加した。【2月27日 産経】
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****新型コロナ、世界の新規感染が中国上回る 南米にも拡大****
世界保健機関は26日、中国国外での新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数が、同国内を初めて上回ったことを明らかにした。同日はブラジルで南米初の感染者が出た他、ギリシャ、ジョージア、ノルウェー、パキスタンでも初の感染者が確認された。
 
WHOによると、25日の新規感染者数は中国国内で411人、中国国外では427人だった。感染者はイタリア、イラン、韓国で急増しており、各国政府は感染拡大の阻止に奔走している。(後略)【2月27日 AFP】
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欧州での拡大の震源地はイタリア北部、イスラム世界の拡大の震源地はイラン・コムですが、もうひとつ爆発的に感染が拡大しているのが日本の隣国・韓国。

****新型肺炎、韓国の感染者500人増 1766人に****
韓国政府は27日、新型コロナウイルスの感染者が計1766人になったと発表した。新たな感染確認者は、この日だけで505人で、死者数も1人増えて13人となった。
 
新たな感染者のうち422人が感染者の多い南東部の大邱(テグ)で確認された。13人目の死亡者も大邱で、病院への搬送中に死亡した。そのほかソウルで56人、ソウルを取り巻く京畿道(キョンギド)で62人に上り、首都圏での感染も増えている。【2月27日 産経】
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韓国政府は、感染が拡大しているイランからら現地韓国人(約200人)を退避させる方策を準備しているとのことですが【2月27日 ソウル聯合ニュースより】、感染リスクではイランと韓国、どちらが大きいかはよくわかりません。

ただ、イランは米国など国際社会からの制裁で医薬品が非常に不足しており、感染した場合、十分な治療を受けられないという事情もありますので、退避措置検討ということでしょう。

【「空前の防疫措置」を誇る中国 封鎖措置がとれない韓国】
新たな感染者が1日で500人超となると、もはや「感染経路を特定して・・・」といった個々のケースに対応した封じ込め策は無理で、とにかく発症者の重篤化防止、医療体制崩壊防止が最優先課題となります。

感染拡大防止の方は大きく網をかけるような対応が求められる事態にも。
中国が「空前の防疫措置」と胸を張るような、1100万人都市・武漢封鎖のようなかなり強硬な対策も検討課題となります。

韓国の場合、感染拡大の中心地は周知のように南東部の大邱(テグ)です。
1日で500人超の新規感染者が出る状況では、1日前の数字は全く使えないませんが、昨日報道では感染者の9割を大邱が占めているとか。

****新型コロナ感染者1000人超 9割以上が大邱・慶尚北道=韓国****
(中略)感染者は、新興宗教団体「新天地イエス教会」の南東部・大邱にある施設での礼拝に参加した信者と慶尚北道・清道の病院の患者を中心に、大邱・慶尚北道地域に集中している。

新たに確認された感染者169人のうち、153人は両地域で発生した。このほかソウルで4人、釜山で8人、仁川で1人、京畿道で1人、慶尚南道で2名の感染が確認された。(後略)【2月26日 ソウル聯合ニュース】
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武漢の事例に倣えば、大邱の封鎖・・・という方策が浮かびますが、韓国国内(特に、地元大邱)では反発が強いようです。

****与党報道官がコロナ失言で辞任 「大邱など封鎖」で市民激怒=韓国****
新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、韓国与党「共に民主党」の洪翼杓(ホン・イクピョ)首席報道官は26日、感染者が急増している南東部の大邱市と慶尚北道に対し「最大限の封鎖措置を実施」すると発言をしたことを謝罪し、辞任した。

洪氏は記者団にメッセージを送り、「大邱市と慶尚北道の住民を傷つけ、国民の不安も緩和できなかった」として、「責任を取って辞任する」と表明した。

洪氏は25日の記者会見で、同日開催された新型コロナウイルスの対策に関する政府与党協議について「大邱市と慶尚北道を感染症特別管理地域に指定して、通常の遮断措置を超える最大限の封鎖措置を実施し、拡大を早期に遮断することにした」と伝えた。

だが、同地域の住民を中心に不適切な発言との批判が続出。同党は「最大限の封鎖措置を実施するという意味は防疫網を細かくし、新型コロナウイルスの拡大と地域社会への感染を遮断するための措置で、地域への出入り自体を封鎖する意味ではなかった」と釈明した。【2月26日 ソウル聯合ニュース】
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このあたりが強権的手法がまかりとおる中国と、(その合理性・正当性はともかく)住民の意向が尊重される韓国の政治体制の違いではありますが、今回のような危機管理においては、中国のようなシステムの方が有効に機能する面でもあります。

素人考えでは、ホットスポットとなっている大邱とその他地域を遮断しないと、韓国全体がホットスポットと化す危険があるように思えるのですが・・・。特に、1日に数百人の感染者が出る状況では、“大ナタ”をふるう必要があるようにも。

【感染者数急増の背景に検査態勢拡充も】
もちろん韓国も対応に最大限の努力を行っています。
昨日ブログでも紹介した、教会ミサ中止。

****韓国のカトリック教会 全てのミサを中止=新型コロナ対策で****
韓国のカトリック教会が、国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、信者が参加するミサを中止したことが26日、分かった。このようなミサの中止は韓国カトリック教会の236年の歴史で初めて。

韓国天主教(カトリック)主教会議によると、16の教区のうちソウル大教区など14の教区が25日までに一定期間のミサ中止に踏み切った。残る2教区も26日にミサ中止を決定した。【2月26日 ソウル聯合ニュース】
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検査を希望する者でも重篤症状がなければ検査を受けられないことが問題となっている日本に比べて、韓国の検査体制は数歩先を行っているようにも。

****韓国で「ドライブスルー検査」 新たに334人感染****
新型コロナウイルスが猛威をふるう中国では、新たにスーパーマーケットの混雑緩和を指示するなど、ウイルス対策の徹底が進められている。

一方、感染が急速に拡大している韓国で始まったのは、屋外で車に乗ったまま検体を採取する「ドライブスルー検査」。

ソウル郊外の診療所では、屋外に設けられたスペースに車が入ってくると、防護服を着た医療スタッフが運転手の問診を行い、発熱やせきなどの症状を確認する。

症状があった場合、車に乗ったまま、ウイルス検査のための検体を採取する。

室内に入らないため、患者の出入りにともなう消毒を行う必要がなく、待合室や診察室での感染を防ぐ効果も期待されている。

韓国では27日、新たに334人の感染が確認され、感染者は1,595人、死者は13人にのぼっている。【2月27日 FNN PRIME】
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一方、日本では加藤勝信厚生労働相は26日、国立感染症研究所や地方衛生研究所、民間への委託を合わせて最大で1日約3800件が可能と説明していたPCR検査について18~24日の実施件数は1日平均約900件と想定を大幅に下回っていることを明らかにしました。

****ウイルス検査依頼も拒否される事例 日本医師会が調査へ****
新型コロナウイルスをめぐり日本医師会は、医師が保健所にウイルス検査を依頼しても、対応を断られるケースが報告されているとして、全国の実態を調査し、政府と連携して改善に取り組む方針を示しました。

日本医師会の横倉会長らは26日の記者会見で、新型コロナウイルスの検査について、医師が感染が疑われるとして保健所に依頼をしても、人手不足などを理由に対応を断られるケースが報告されていることを明らかにしました。

そのうえで、医師会として全国の実態を調査し、政府とも情報を共有するなど連携し、改善に取り組む方針を示しました。(後略)【2月26日 NHK】
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もっと検査件数を増やすと、日本の感染者数は更に膨らむのかも。

こうした事情もあって、日本ではオリンピック開催への影響、医療崩壊防止などの観点から、意図的に感染者の発覚を小さい数字にとどめようとする「工作」が行われているのでは・・・といった疑念も。

限りある医療資源の分配について日本の重篤化防止優先の対応を是としつつも、“筆者は安倍政権と専門家会議がぐるになってPCR検査を怠っているという陰謀論には与しません。それこそパニックを引き起こすインフォデミックに他なりません。 
しかし陰謀論の根っこには森友・加計・桜を見る会問題など安倍政権の隠蔽・忖度体質があります。安倍政権は科学者主導の体制を構築して、もっともっと透明性を高めていかなければ新型コロナウイルスと闘うことはできないでしょう。”【2月27日 木村正人氏 YAHOO!ニュース「新型肺炎「日本は五輪のため感染者を少なく見せようとしている」PCR検査を巡る陰謀論に与するな」】との指摘も。

そうしたなかで、ようやく日本政府が動いたのが、学校の一斉休校措置。

ただ、先ほどのTVニュースを観ていて「なるほどね・・・」と思ったのは、学校を休校にすると子供の世話をしないといけないため、子供を抱えた看護師の多くが医療現場に出られなくなる、結果、医療体制が回らなくなる・・・といった問題もあるようです。

政府も共働き世帯のことを考慮してはいますが、現実を見据えた対応が必要とされます。

****保育所は一斉休園要請せず 働く親に考慮、厚労省****
新型コロナウイルスの感染拡大で政府が全国の小中学校、高校に臨時休校を要請すると表明したことに対し、厚生労働省は27日、保育所は一斉臨時休園の要請対象ではないと明らかにした。保育所は共働き世帯が多く利用しているため、保護者の就労状況を考慮した。(後略)【2月27日 共同】
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【日本 「安倍首相はどこに」との指摘も】
話を韓国に戻すと、感染者の増加に伴って、文在寅大統領の周辺にも・・・。

(25日、韓国・大邱で開かれた新型コロナウイルスの対策会議に出席する文在寅大統領(中央)【2月26日 共同】)

****文大統領も隔離対象に?出席の会議に新型コロナ感染者の接触者****
2020年2月26日、韓国・ニューシスは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が出席して開かれた大邱市の新型コロナウイルス特別対策会議に、感染者の接触者が出席していたことが分かったと伝えた。 

記事によると、25日に開かれた会議には、文大統領のほか、ユ・ウネ社会副総理兼教育部長官、クォン・ヨンジン大邱市長、イ・スンホ経済副市長などが出席。このうち、イ副市長の秘書がこの日、新型コロナウイルスの感染が確定したという。 

記事は「この秘書は同会議には参加していなかったが、患者の職務が秘書であるため、イ副市長と濃厚な接触があった可能性が高い」と指摘。「万一、会議の参加者を全て隔離しなければならないとなると、大統領はもちろんユ副総理、クォン大邱市長など、防疫責任者および決定権者全員が対象となる」と伝えている。(後略)【2月26日 レコードチャイナ】
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文在寅大統領の指導力への批判も多々ありますが、もともと大統領支持勢力と反大統領勢力が激しくやり合っている韓国社会ですから、批判があるのは、ある意味当然のことでしょう。

一方、日本では安倍首相の存在感が、この問題で薄い・・・という指摘も。

****「安倍首相はどこに」、新型肺炎対策で指導力に批判****
「安倍首相はどこにいる」――。日本が新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めに必死になる中、こうした批判の声が上がっている。

歴代最長の在任期間になった安倍晋三首相が、新型ウイルス対応策の代表者として陣頭指揮を執っておらず、その任務を部下の加藤勝信厚生労働相にほぼ丸投げしているという批判だ。

安倍氏のリーダーシップを巡る疑念は、既に支持率の低下につながっている。新聞報道によると、不支持率は支持率を上回った。これは2018年7月以来のことだ。(中略)

「リーダーシップはどこへ行った」と疑問を投げ掛けるのは、日本政治の専門家であるジェラルド・カーティス・米コロンビア大名誉教授だ。

「この期に及んでもまともに顔を出さず、国民に語り掛けず、人々を動員しようとしていない。この状態が長引けば長引くほど、彼の信頼は傷つくだろう」──。(中略)

12年12月に首相に返り咲いて以来、安倍氏はいくつもの難局を乗り切ってきた。

ツイッターには「国民の不安は日に日に募っているのに、彼(安倍氏)はまともな記者会見も開いていない」といった声。「要するに、頻繁に顔を出せば悪いイメージだけが残るから、そうならないように顔出しを最小限に抑えているわけだ」といった内容も。

<現実逃避>
英国船籍のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での新型ウイルス感染拡大への対処を巡り、日本は厳しい批判にさらされた。

国内感染者が増え、死者も出るにつれ、懸念はさらに高まっている。

政府は25日、国内でのさらなる感染拡大に備えた基本方針を発表した。安倍首相は新型コロナウイルス感染症対策本部会合で「今がまさに感染の流行を早期に終息させるために極めて重要な時期だ」などとする文書をさっさと読み上げると、記者への説明は加藤厚労相に任せた。(中略)

基本方針には、時差出勤やテレワーク、イベント開催の慎重な検討などの措置が盛り込まれた。

「彼(安倍氏)は現実に目をそむけているのだろう」と語るのは、上智大学の政治学の教授、中野晃一氏。「本当には信じていない最も楽観的なシナリオを、彼らは信じようとしている」と指摘した。

<経済に打撃か>
(中略)専門家らは、日本での感染拡大スピードを抑える上で、今後数週間が重要な時期だとしている。抑えられなかった場合、患者の数が急増して医療態勢が追い付かなくなり、経済に打撃が及びかねない。

日本の19年10−12月期の国内総生産(GDP)は昨年10月の消費税増税が響いてマイナス成長となり、年率換算の減少幅は約6年ぶりの大きさだった。新型ウイルスが経済活動に冷水を浴びせることで、景気後退のリスクも持ち上がっている。

中野教授は「経済が急減に悪化し、そこにオリンピックによる追い風も吹かなければ、悲惨なことになる」と述べた。【2月27日 ロイター】
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安倍首相への支持・不支持は別にして、最近TVで観る首相はなんだか覇気がないようにも。
また体調がすぐれないのでしょうか。

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中国はピークを越えて落ち着きも イタリア北部、イラン・コム、韓国・大邱で急拡大、周辺国へ

2020-02-26 23:49:08 | 疾病・保健衛生

(韓国南東部の大邱で25日、医療関係者らと会う文在寅大統領(左から2人目)=AP)

【ピークを越した中国】 
新型コロナウイルス肺炎の震源地・中国においては、感染拡大はようやくピークを越えて下降局面に入っているようです。

“WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長はスイスのジュネーブで記者会見し、中国での感染拡大は1月23日~2月2日の期間にピークに達し、それ以後の新規感染は「着実に減少している」と表明。

さらに「このウイルスは封じ込めが可能」との見解を示し、流行の中心地とその周辺地域で前例のない封鎖や検疫措置を取ることで感染拡大の阻止に貢献したとして、中国を称賛した。”【2月25日 AFP】

****湖北省除く新規感染者5人に=中国全土の死者、2715人―新型肺炎****
中国政府は26日、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、同日午前0時(日本時間同1時)時点で本土の死者が前日比52人増の2715人、感染者が406人増の7万8064人になったと発表した。

湖北省を除くと新たに確認された感染者は5人にとどまり、死者はゼロだった。
 
湖北省以外の新規感染者は減少傾向が続いており、2日連続で一桁となった。31省・直轄市・自治区のうち浙江省や広東省など26地域で新たな感染者が確認されなかった。
 
一方、中国本土の重症患者は前日比で374人減少したものの、依然として8752人に上る。大半が湖北省に集中し、このうち武漢市は7355人。【2月26日 時事】 
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この状況を受けて警戒レベルを緩和する地域が増えています。

****中国、新型肺炎警戒レベル緩和=広東省など15地域****
中国メディアによると、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎に対応するため最高の警戒度になっていた「緊急対応レベル」が26日までに、広東省など15地域で引き下げられた。

湖北省以外の地域では26日、新たに確認された感染者が5人にとどまるなど感染の勢いが弱まっている。
 
中国では感染症のまん延など公衆衛生上の緊急事態が発生すると、危険度に合わせて4段階で対応する。

新型肺炎の拡大後、全31省・直轄市・自治区が1月末までに最高の「1級」に指定したが、このうち広東省、江蘇省など7地域が「2級」、甘粛省、遼寧省など8地域が「3級」にそれぞれ緩和した。【2月26日 時事】 
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停止していた航空便の運航も再開に向けて動き出しています。

****中国、湖北省以外で航空便の運航を徐々に再開へ=規制当局****
中国民用航空局(CAAC)は25日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて運航を停止していた中国の航空便について、工場や事業の再開に伴い、徐々に運航を再開すると発表した。ただ、新型ウイルスの発生地である湖北省への便は運航停止を継続するという。

CAACは声明で、局長の24日の発言を引用し、他国の航空規制当局に対しても、中国が世界から遮断されないよう、中国行き国際線の運航を再開するよう要請する方針を示した。(後略)【2月25日 ロイター】

春節で地方に帰郷した出稼ぎ労働者が移動制限等で戻らず、経済活動再開のネックとなっていた問題についても、復調しつつあるようです。

****中国の製造業集積地、出稼ぎ労働者が徐々に戻る****
中国で多くの地域が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限を緩和する中、東部や南部の製造業の集積地では、地方からの出稼ぎ労働者が戻り始め、ラッシュアワーの道路の交通量が増えている。

(中略)中国の一部の地域は、新型ウイルスのリスクが後退したとして警戒レベルを引き下げ、移動制限を緩和したり、企業の生産再開を支援したりしている。

ロイターが交通運輸省のデータを基に算出したところによると、新型ウイルスの影響で延長されていた春節(旧正月)の連休が上海市などで終わった2月10日以降、およそ1億8000万人の労働者が都市部などで仕事に戻るため、郷里を離れた。

現在では1日当たり1400万人以上のペースで戻っていることを踏まえると、2月の最後の2週間には1億9200万人程度が仕事に復帰していることになり、政府が想定する1億2000万人を上回る。

ネット検索大手のバイドゥ<BIDU.O>がまとめたデータによると、南部の経済・輸出の中心地である広東省と、繊維や機械の生産が盛んな東部の浙江省では先週以降、出稼ぎ労働者の流入が大幅に加速している。(中略)

企業活動の再開は徐々に進んでいるが、サプライチェーンの混乱や需要減退、人手不足を背景に、生産水準は通常よりも大幅に低い状態だ。(後略)【2月25日 ロイター】
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【日韓からの逆輸入警戒も】
国内の状況改善とは逆に、日本・韓国などの中国以外での感染拡大が続いており、中国当局には日韓などからの「逆輸入」に警戒感を示しています。

****中国 一部の地方政府 日韓からの感染者の逆流入を警戒****
中国では、新型コロナウイルスの感染が深刻な湖北省以外では25日、3週間ぶりに死者が確認されず、感染の拡大が収まりつつあります。

こうした中、中国の一部の地方政府は、感染者が増えている韓国や日本からの訪問者に対する管理を強化するなど、逆に流入することに警戒しています。

(中略)このうち朝鮮半島に近く、韓国との直行便もある山東省威海の当局は、国籍にかかわらず日本と韓国から市内を訪れた人を14日間、ホテルに集中隔離する措置を取ると25日、発表しました。

また、朝鮮族が多い吉林省の延辺朝鮮族自治州の当局は、韓国からの団体旅行は一切受け付けないとしています。

さらに、日系企業も多い江蘇省の蘇州では、日本や韓国からの訪問者に対して、どのような経路で訪れたのかを報告させ、滞在先で14日間の経過観察を求める通知を出すなど、中国へ逆に流入することに警戒しています。(後略)【2月26日 NHK】
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武漢封鎖に乗り出したときには、すでに多くの人々が武漢から中国全土に移動しており、「手遅れ」ではないか・・・・と思ったのですが、現状からすれば武漢封鎖は感染拡大防止には奏功したようです。

感染の拡大が収まりつつある中国ですが、気になるニュースも。

****新型ウイルス 退院後14%が再び陽性に 中国 広東省****
中国南部の広東省政府は、新型コロナウイルスの感染患者で、治療を受け、退院した人の14%に再びウイルスの陽性反応が出たと発表しました。

発表によりますと、陽性反応が出ていても、すでに体に抗体ができていれば、ほかの人に感染させるリスクは低いものの、高齢者では、抗体ができるのに時間がかかるため、ほかの人に感染させるリスクがあるとしています。

そのうえで、再び陽性反応が出た人は完全に治ったとは言えないため、病院に対して、患者が退院してからも14日間は医学的に経過を観察できる場所に待機させるよう求めています。【2月26日 NHK】
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【パンデミックほぼ不可避」】
中国が湖北省以外で感染拡大に歯止めがかかってきた一方で、感染は中国以外で拡大しつつあります。

“世界保健機関(WHO)は24日、中国で新型コロナウイルスによる感染症の流行が「ピークに達した」との見解を示した。一方、同国外での感染者急増に「深い懸念」を表明し、各国に対しパンデミック(世界的な大流行)に備えるよう呼び掛けた。”【2月25日 AFP】

“新型コロナウイルスまん延、独専門家「パンデミックほぼ不可避」”【2月26日 レコードチャイナ】
“米疾病対策センター「パンデミックに近づきつつある」”【2月26日 FNN】

なかでも感染拡大の中心地となりつつあるのが、イタリア北部、イラン・コム、韓国・大邱(そして日本)です。

****イタリア周辺国にも感染拡大=死者11人、国境は封鎖せず****
イタリア市民保護局は25日、新型コロナウイルスによる死者が計11人となり、感染者は死者を含めて322人になったと明らかにした。ANSA通信が報じた。報道によると、ドイツやスイス、ルーマニアでも同日、感染が1件ずつ確認され、欧州での感染が広まりつつある。
 
ローマでは25日、フランスやスロベニアなど伊周辺国の閣僚会合が行われ、現時点ではイタリアとの国境封鎖は実施しない方針を決定した。

スペランツァ伊保健相は25日、会合後の記者会見で、国民に出国規制を設けないと明らかにした。その上で、感染防止対策は「どの国も単独では行動できず、協力しなければならない」と訴えた。
 
AFP通信によると、ドイツの患者は伊北部ミラノで感染した疑いが強いという。今月中旬に中国人旅行者1人が死亡したフランスでは25日、新たな感染者2人、スペインでも新たに1人がそれぞれ確認された。
 
仏環境省高官は地元ラジオに出演し、感染者数が多い伊北部への旅行を予定している国民に対し「可能なら延期を勧める」と述べた。

伊政府は、北部ロンバルディア州を中心に複数の自治体を封鎖して感染防止に努めたものの、25日には中部トスカーナ州や南部シチリア州でも感染が確認された。【2月26日 時事】
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オーストリアとクロアチアでもイタリアが関連した感染が確認されています。

イタリア国境は封鎖しないとのことですが、イタリア国内では感染が広がっている北部11自治体が「出入り禁止」の封鎖状態にもなっています。

****イタリアの11自治体、出入り禁じられ「封鎖状態」****
(中略)ロンバルディア州とベネト州内の計11自治体では、州政府により他自治体との出入りが禁じられ、事実上、封鎖状態となっている。観光都市のミラノやベネチアは含まれていない。

伊政府が22日の閣議決定で、感染の拡大防止に必要な対策を講じる権限を州政府に付与したことに基づく措置だ。
 
11自治体内での住民の移動は制限されていないが、州政府はレストランや商業施設の営業、イベントなどの開催を禁止する特別措置も取っており、多くの住民が外出を控えている。
 
ただ、11自治体以外でも、ミラノで午後6時以降の飲食店の営業が禁止されるなど、影響が広がっている。【2月25日 読売】
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イランでは感染拡大の事実を政府が隠蔽しているとの批判が国内で起きています。
また、汗をぬぐいながら記者会見した保健省次官が感染していた・・・との話題も。

****新型コロナ イランで感染拡大 「実態隠蔽」疑念と批判****
イランで肺炎を引き起こす新型コロナウイルスへの感染が急増している。ロイター通信によると、同国内で初めて感染が確認されたのは19日だが、25日までに16人が死亡し、中国に次いで最も多い国となった。

感染者は95人に増え、SNSでは多数の政府批判が出ているほか、周辺国の対応も本格化している。
 
イランでは24日、新型コロナウイルスの対策に関して記者会見した保健省次官が感染していたことが判明。中東のメディアは25日、次官が会見中に何度も額をハンカチでぬぐうなど、体調を崩していると思われる映像を放映した。
 
感染拡大の原因とみられているのが、首都テヘランに近い中部コムだ。イスラム教シーア派の聖地があり、巡礼や留学で多数の外国人がやってくる。コムの医療当局者はロイターに、感染者の人数に関する情報提供は保健省に禁じられていると述べた。
 
24日にはクウェートやバーレーン、イラクやアフガニスタンなどで感染者が初確認されたが、いずれもイランへの滞在歴がある人だった。シーア派の聖地があり、多数のイラン人が訪れるイラクのほか、トルコもイランとの国境を一時閉鎖。トルコやクウェートはイランとの航空便の運航を制限した。
 
テヘランに住む大学院生の男性は「多数の政府批判が連日、SNS上で展開されている」とし、1月にウクライナ旅客機を撃墜した事実を数日間隠したのと同様に、政府は感染規模の実態を明かしていないのでは−といった疑念も出ているという。
 
イランでは米制裁により経済低迷が深刻化しており、周辺国のヒトやモノの往来制限が長引けば、経済悪化がさらに進む懸念も強まる。ポンペオ米国務長官は25日、「イランは感染拡大に関する重要な事実の公表を抑えているとの情報がある」とし、強い懸念を表明した。【2月26日 産経】
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死者に比べて公表感染者数が異様に少ないことから、一昨日ブログでも触れたように、実際には更に多数の感染者が存在していることが疑われます。

イランのケースの難しさは、これも一昨日ブログでも触れたように、感染の中心となっているコムがイラン・イスラムにとって宗教指導部が集中する聖地であることでしょう。

“(コムは)何事につけ優遇されている聖地、宗教関係者が集中する宗教的中心都市、保守強硬派の牙城ですから、武漢のような当該都市に多大な犠牲を強いる封じ込め対策がとれるのか? 聖地コムで宗教施設閉鎖ができるのか? という問題も出てくるかも。”【2月24日ブログから再録】

****イラン 水たばこの提供禁止 新型ウイルスの感染拡大で***
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されているイランでは、伝統的なしこう品で社交の場には欠かせない水たばこの提供が一部で禁止されるなど感染を防ぐ取り組みが続いています。

イラン保健省は26日、これまでに新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは前日より44人増えて139人、このうち死亡した人は4人増え19人となったと明らかにしました。死者の数は、中国を除くと最も多くなっています。

こうした中、国営通信によりますと、首都テヘランの警察は、26日からレストランやカフェで、客に水たばこを提供することを禁止したということです。

水たばこは伝統的なしこう品で社交の場には欠かせませんが、吸い口やホースなどの器具が使い回しされることから今回の禁止は感染を食い止める措置とみられています。水たばこの禁止は国内の複数の州でとられたということです。

イランでは感染が確認されて以降映画館が閉鎖されたり、中には、結婚式を禁止にする都市も出てきていて、各地で人が集まることによる感染を防ぐ取り組みが続いています。(後略)【2月26日 NHK】
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素人考えでも思いつくのは、感染防止対策として禁止すべきは水タバコや結婚式ではなく、モスクでの金曜日の集団礼拝だろう・・・ということ。

しかしモスク礼拝禁止は、イスラムを基盤とする現体制にとっては“アンタッチャブル”でしょう。
コムも封鎖できず、モスクでの礼拝も続くとなると、イランの感染拡大は更に進むようにも。

一方、韓国では急ピッチで感染が拡大。、“26日1日で新たに284人確認したことを発表し、1日に増加した人数としては、これまでで最も多くなりました。これで感染者数の合計は、1261人となりました。”【2月26日 NHK】
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韓国での感染拡大の原因として挙げられているのが、大邱での新興宗教「新天地イエス教会」の集団ミサ。
それも踏まえてカトリック教会のミサが中止になっています。

****国のカトリック教会 全てのミサを中止=新型コロナ対策で****
韓国のカトリック教会が、国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、信者が参加するミサを中止したことが26日、分かった。このようなミサの中止は韓国カトリック教会の236年の歴史で初めて。

韓国天主教(カトリック)主教会議によると、16の教区のうちソウル大教区など14の教区が25日までに一定期間のミサ中止に踏み切った。残る2教区も26日にミサ中止を決定した。【2月26日 聯合ニュース】
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朴政権のMERS対応に関して、朴槿恵政権を誰よりも声高に批判したのが、野党代表であった文在寅現大統領でした。
その文在寅現大統領が今度は「新型コロナウイルス」で国民批判を受ける立場に。

****朴槿恵政権のMERS対応批判が、新型コロナで特大ブーメランに****
(中略)その彼が2016年大統領に就任し「攻守交替」、つまり、政府を批判する側から、政府の指揮を執る立場となった。そして2020年初頭に、新型コロナウイルス問題が急浮上してきた。

文大統領としてはMERS騒動の際の自身の発言や世論の動向を意識せずにはいられなかったはずだ。新型コロナに対する現政府の対応が、前政権のMERS対応と比較されることは間違いない。

首尾よくここを切り抜けなければ、かつて自分が前政権に対して投げつけた厳しい批判が、自身への特大ブーメランとなって跳ね返ってくることになりかねない。

しかも4月の総選挙を目前に控えたこの時期だ。何としても「朴槿惠政権よりはいい」という評価を受けなければならない――文大統領はプレッシャーさえ感じているのではないだろうか。【2月26日 崔 碩栄氏 JBpress】
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インド  モディ首相、トランプ大統領を熱烈歓迎  国内では国籍法改正への批判で大荒れ

2020-02-25 23:34:31 | 南アジア(インド)

(インド・アーメダバード近郊のサルダール・バラブバーイー・パテル・スタジアムに到着した、ドナルド・トランプ米大統領夫妻とナレンドラ・モディ首相(2020年2月24日撮影)【2月25日 AFP】)
両首脳の周りは防弾ガラスで守られているようです。)

【派手な演出で米印関係をアピールする両国首脳 ただ、両国間には利害の対立も】
インドにはトランプ大統領の像を祀る神殿をつくるほどの熱烈ファンがいるそうです。
入国拒否などで見せたトランプ大統領の対イスラム強硬姿勢が、インドの反イスラム右派勢力の琴線に触れたと思われます。

****インドに「トランプ神殿」、訪問心待ちにする熱狂的ファンたち****
トランプ米大統領は来週、2日間の日程でインドを訪問するが、現地では熱狂的な「トランプファン」が待ち受けている。自宅にトランプ氏を祭る神殿まで建ててしまったブッサ・クリシュナさんもその1人だ。 

クリシュナさんがトランプ氏を崇拝し始めたのは4年前のこと。不動産ブローカーのクリシュナさんはその後、自宅の庭に神殿を建てトランプ氏の等身大の像を設置。周囲の壁にはトランプ氏の名前がいくつも書かれている。 

クリシュナさんはロイターに対して「トランプ氏への愛は崇拝に変わった。それは私に大いなる幸福を与えてくれた。私は以来、他の神に祈るのではなく、トランプ氏に祈りを捧げるようになった」と語った。 

トランプ氏を崇拝するインド人はクリシュナさんだけではない。 
ニューデリーでは、右派系グループ「ヒンドゥー・セナ」のメンバーが、トランプ氏をたたえる歓迎の歌のリハーサルを始めたという。【2月19日 ロイター】
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インドのモディ首相も、トランプ大統領とは「波長」が合うよう。
ガンジー以来、イスラム系住民との共存を国是としてきたインド社会、多様な人種からなるアメリカ社会にあって、「寛容さ」を捨てて、多数派ヒンズー教徒、異人種の拡大を快く思わない白人社会の「本音」を代弁する政治家として熱烈な国内支持を受けることでも似通った政治家であることが背景にあってのことでしょう。

民主的な妥協より、強権的な強硬姿勢を好むこと、派手な演出が好きなことも似ていますし。

もっとも、トランプ大統領の国際情勢への疎さにモディ首相が落胆したという下記のようなエピソードはありますが・・・

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同書(米紙ワシントン・ポストの記者2人による新著「A Very Stable Genius(非常に安定した天才)」)によるとトランプ氏は、インドのナレンドラ・モディ首相との会談の席で、「あなた方は中国と国境を接しているというわけではないでしょう」と発言したという。

実際にはインドと中国は隣国で、1962年にはヒマラヤ山中の係争地をめぐって紛争も起きている。
 
このトランプ氏の発言と、インドが直面する中国の脅威を否定するような態度を受けて、「モディ氏は驚きに目を見張った」「モディ氏の表情は徐々に、衝撃から懸念へ、そして諦めへと変わっていった」と同書は記している。
 
この首脳会談の後、米国との外交関係から「インドは一歩引いた」とトランプ氏側近の一人は著者らに語ったとされる。【1月17日 時事】
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まあ、そのくらいでめげる両氏ではありませんので、今回のトランプ大統領訪印は両氏・両国にとって、格好のアピールの場となったようです。

****トランプ氏が訪印、モディ氏地元はスタジアムで歓待 ****
ドナルド・トランプ米大統領は24日から2日間の日程でインド訪問を開始した。ナレンドラ・モディ首相の地元であるグジャラート州では、昨年のモディ首相の訪米時を再現するかのような大規模集会スタイルでにぎやかな歓待を受けた。 
 
トランプ氏は完成前の11万人収容の大型スタジアムにメラニア夫人とともに登場し、インドの経済成長力を称賛した上で「間もなく世界最大の中間層を抱える国」になるだろうと語った。 
 
さらに、この訪印は自身とモディ氏の「大きな称賛と友情」の証しと受け止めてほしいと述べた。モディ氏の名前が挙がると、観衆からは名前を連呼する声と拍手が沸き起こった。 
 
トランプ氏は「皆モディ氏が大好きだ」とした上で、「これは言わせてほしい、彼はとても手ごわい」と付け足した。 
また両国間の連携強化にも言及し、インドが今後も米国製ミサイルやロケット弾、軍艦で軍備強化するよう促した。 
 
トランプ氏はその後、インド軍が購入を計画している30億ドル(約3320億円)相当の米国製ヘリコプターにも言及した。 
 
米世論調査機関ピュー・リサーチが先月発表した世論調査によると、インドでのトランプ氏の人気はほぼすべての国の中で最も高い。同氏の外交政策を支持しないと回答したのは15%で、調査を行った32カ国の中で最も低かった。支持するとの回答は56%と5番目に高く、アンゲラ・メルケル独首相、マニュエル・マクロン仏大統領に対する支持率の2倍だった。 

スタジアムでは24日、トランプ氏を乗せた飛行機が到着する数時間前、伝統的衣装を着た人々がバスで到着し、ボランティアのスタッフからスナックの入った箱を受け取ってスタジアムに入る列に並んだ。イベントの後にはミルクシェークとバターミルクの包みが配られた。 
 
スタジアムの外壁は塗りたてのトランプ、モディ両氏の肖像画で彩られている。作業を監督した画家のアショク・バジャーティヤ氏(50)は、両氏がこの絵に目を留めるだろうと述べた。

「我々は米国が、インドの豊かで多様な文化と伝統を目にし、理解し、称賛することを望んでいる」という。「今日は2人の指導者に声援を送るためにここに来た。トランプとモディが並んでいるところを見て、最高の気分だ」 【2月25日 WSJ】
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10万人だか、11万人だかの大観衆が見守る中での会談・・・ド派手な演出です。(メラニア夫人も同席)
もっとも、時期的に、インドは新型コロナウイルス肺炎の方は大丈夫なんだろうか・・・とも思ってしまいますが。

メラニア夫人と共に世界遺産タージマハルを訪れたトランプ大領は上機嫌だったようです。
(もっとも、モディ首相の進めるヒンズー至上主義に共鳴する人々の間では、イスラム王朝の遺産であるタージマハルは評判はよくないとも聞きますが・・・)

今回の階段をアピールする両氏の思惑については、以下のようにも。

****トランプ大統領 インド初訪問 モディ首相と密接関係アピール ****
・・・・インドとの間に多額の貿易赤字を抱えるアメリカのトランプ大統領としては、大統領選挙を控える中、今回の訪問をきっかけに防衛装備品やエネルギー分野などでの輸出を拡大することで、実績をアピールしたいねらいがあるとみられます。

一方のモディ首相としては、トランプ大統領との直接交渉で貿易赤字をめぐる対立を緩和の方向に導びきたい思惑があるとみられますが、アメリカからの輸入の増加は国内産業への打撃にもなることから、どの程度、市場開放に応じるかが焦点です。(後略)【2月24日 NHK】
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米印関係の中身を見ると、両国の関係はさほど順風満帆という訳でもありません。
貿易問題については、利害の対立があります。

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トランプ大統領とモディ首相の型通りの振る舞いと、芽生えを見せる親密さの裏には、トランプ氏が推進する「米国第一」のキャンペーンと、モディ氏が掲げる「メーク・イン・インディア」のスローガンとがぶつかり合う緊張関係が存在する。
 
両首脳は広範囲に及ぶ貿易協定ではなく、米二輪車メーカー「ハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)」のバイクや乳製品などについて、小規模な合意に署名するにとどまるとの報道もある。【2月25日 AFP】
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国際関係では中国への対応が焦点になりますが、トランプ大統領が演説で「アメリカはインドとの関係をより強固にしたい。自由で開かれたインド・太平洋の実現を目指していく」と述べ、安全保障面での関係強化を図る考えを示したように、アメリカとはしては、対中国包囲網にインドを取り込みたいところです。

ただ、中国との対立を抱えるのはインドも同じですが、経済的には中国との関係が重視されるインドとしては、いたずらに中国を刺激することがないように慎重に・・・といったところでしょう。

【国籍法改正への反発で死傷者も】
モディ首相がトランプ大統領との関係を大観衆にアピールするなか、インド国内では、モディ首相の進める反イスラム。ヒンズー至上主義施策への反発で大荒れ状態にも。

 

(24日、インドの首都ニューデリーで、改正国籍法を支持する人々から攻撃されるイスラム教徒の男性(ロイター=共同)【2月25日 共同】)

****インド、改正国籍法巡る衝突で死傷者多数-トランプ大統領の訪問中****
インドの首都ニューデリーの北東部で24日、宗教に基づく新たな国籍法に反対するデモ隊が賛成派と衝突し、多数の死傷者が出た。トランプ米大統領は同日から2日間の予定でインドを訪問している。
  
地元テレビによれば、賛成派と反対派が共に投石し、車両や店舗に放火する一方、警察は催涙弾などを使ってデモ隊を解散させようとしていた。インドの通信社PTIによると、警察官1人を含む7人が死亡、少なくとも50人が負傷した。
  
警察当局は平静を呼び掛け、「正常な状態を取り戻すためにあらゆる努力をしている」と声明で説明した。
  
近隣3カ国から流入したイスラム教徒以外の不法移民に国籍を与える改正国籍法は昨年12月に圧倒的多数で議会を通過。同法を巡り、反対派がインド憲法の非宗教主義を損なうと批判する一方、政府側は迫害された少数民族を保護することが目的だと主張している。【2月25日 Bloomberg】
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国籍法改正の問題は、これまでもしばしば取り上げてきましたので、下記記事の紹介だけ。

****イスラム教徒排除の動き?2つの政策に揺れるインド****
インドでは、先月(2019年12月)、国籍法が改正されたことに対して、各地で抗議が続いている。一部の州では治安部隊との衝突にまで至り、これまでに25人が死亡する事態に。インドで何が起きているのか?

インドの人口を宗教別に見ると、イスラム教徒は、ヒンドゥー教徒に次いで多く、インドの人口の14%程度、約1億7000万人にのぼる。

こうしたイスラム教徒たちが“イスラム教徒への差別だ”と抗議している理由は2つ。

1つは、先月、モディ政権が公約としてきた政策「国籍法の改正」が議会で可決、成立したこと。もう1つが去年(2019年)8月にインド北東部・アッサム州で公表された住民登録簿だ。これがイスラム教徒への差別だと受け止められているのだ。(中略)

混乱を生んだ政策(2)インド国籍法の改正
一方で、この4か月後の去年12月、モディ政権は移民を救済するとして「国籍法の改正」を打ち出した。この改正では、迫害を受けてインドに逃れたバングラデシュ、アフガニスタン、それにパキスタンの3か国の出身者に、インド国籍を与えるとする。

ところが、その対象は、ヒンドゥー教など6つの宗教の人たちだけで、3か国で多数派のイスラム教徒は対象外としたのだ。
住民登録簿によって「無国籍」になり、国籍法の改正でも、イスラム教徒だけが救済されずに排除されるのでないか、イスラム教徒の怒りが爆発した。

怒り、戸惑うイスラム教徒
連日、ニューデリーで、抗議活動に参加しているイスラム教徒のヌール・アンサールさん(44)。「政府は、さまざまな手段で、インドからイスラム教徒を排除しようとしている」と憤っている。

北部の農村部から12歳でニューデリーに働きに出て、洋服作りで生計を立てるアンサールさん。当時、農村部では戸籍が十分に管理されておらず、出生証明書もなかった。父親や祖父などとの血縁の証明もなく、以前からの居住を証明できる書類はないという。

そのため、仮にアッサム州と同じ条件で住民登録簿が全国に導入されれば、登録からもれ、無国籍になるおそれがあると心配している。「とても心配な問題です。友達と会っても、政府がこれを実行するのかどうかばかりが話題に。政府は憲法に従い、人間の心に寄り添い、この法律を廃止するべきです」(イスラム教徒 ヌール・アンサールさん)。

イスラム教徒に対する強硬姿勢の背景は
モディ政権はなぜイスラム教徒に対して強硬な姿勢を取るのか?背景にはヒンドゥー教の教えに基づいた国作りを目指すヒンドゥー至上主義がある。

インドでは、長年、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間で、対立が繰り返されてきた。支持基盤がヒンドゥー至上主義団体であるモディ首相はヒンドゥー教徒寄りの政策をとってきた。

去年(2019年5月)の総選挙で圧勝したことで、よりその傾向を強めていて、1期目に実現できなかった国籍法の改正など、イスラム教徒への圧力ともなるような政策を実行に移している。

インドの理念を守れ!ヒンドゥー教徒も反発
こうした政策はヒンドゥー至上主義者には強烈なアピールとなっている一方で、実はヒンドゥー教徒の間からも反発を招いている。取材を進めると、デモの参加者には、少なくない数のヒンドゥー教徒もいることがわかった。

ヒンドゥー教徒の大学生、リヤ・ドゥベイさん(22)は、授業の合間にデモに参加している。「メディアではイスラム教徒だけの抗議デモだと言われていますが、そうではありません。インドの世俗主義を守るために抗議しています」(ヒンドゥー教徒の大学生、リヤ・ドゥベイさん)。

“インドの憲法ではすべての宗教は平等”と小学生のころから教わるその理念が今、揺らいでいるとドゥベイさんは危機感を持っている。きっかけは、イスラム教徒の親友の存在だ。

「彼女が小学生のころからの親友のナイラです。私は彼女のためにデモに参加しています」。ドゥベイさんは国籍法の改正によってヒンドゥー教徒とイスラム教徒が共存できる社会が失われてしまうのではないかと危惧している。

「政府は社会を分断しようとしています。私は親友を支え、政府の間違った法改正に反対します」。

国際社会も厳しい目を向け始めている。国連人権高等弁務官事務所は、国籍法の改正イスラム教徒への差別だとして懸念を示している。

また国籍法の改正に反対する人たちは最高裁判所に法律の施行の停止を求めて訴えたのに対し、最高裁は今月、改正の是非には直接判断を示さなかった一方で、異議を申し立てる一連の請願に1か月以内に対応するようインド政府に求めた。

国の分断を招きかねない政策、当面、インドを揺さぶり続けるとみられる。【1月29日 NHK】
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イラン国会議員選挙  体制を支える保守強硬派圧勝 しかし記録的低投票率 さらには新型肺炎の脅威

2020-02-24 22:11:37 | イラン

(イラン・テヘランで、マスクを着用して道路を渡る人々(2020年2月22日撮影)【2月23日 AFP】)

 

【「全国の投票率は42.57%、テヘランは約25%だった」】
21日に行われたイランの国会議員選挙は、選挙前から予想されていたように、保守強硬派が圧勝したようです。

穏健派のロウハニ政権が核合意を進めたものの、アメリカ・トランプ政権の合意離脱・制裁によって経済は回復せず、改善しない生活苦への市民の反発・失望が示された結果です。

そのほか、「護憲評議会」の事前審査で穏健派・改革派候補が大量失格とされたことから、穏健派・改革派支持層が選挙そのものへの期待をなくしていたことも大きく影響したと思われます。

そうした選挙への期待の喪失は、記録的な低投票率となっています。

****イラン国会選、強硬派が圧勝 投票率は1979年以降最低****
21日に投票が行われたイラン国会選挙は最高指導者ハメネイ師に近い強硬派が圧勝した。ただイラン内務省の23日の発表では、投票率は1979年のイスラム革命以降で最低を記録。ハメネイ師はイランの敵が新型コロナウイルスの脅威を誇張し、有権者の投票を抑制したと主張した。

核合意を巡る米国との対立や国民の不満が強まる中、今回の国会選の投票率は政権への支持を占う試金石とみられていた。

イランの内相は、テレビ放送された記者会見で「全国の投票率は42.57%、テヘランは約25%だった」と述べた。2016年の国会選の投票率は62%、12年は66%だった。

強硬派は首都テヘラン市で30議席を獲得。ガリバフ元テヘラン市長がトップ当選を果たした。革命防衛隊の元司令官でもあるガリバフ氏は、新国会で議長に就任するとの見方が強まっている。

投票日の21日に「宗教上の義務」だとして投票を呼び掛けていたハメネイ師は23日、イランの敵が新型コロナウイルスに関する「ネガティブな宣伝工作」を仕掛けたことが投票率の低さにつながったと非難した。

イランでは投票の2日前に初の新型ウイルス感染者が確認された。これまでにテヘランを含む4都市で43人の感染が確認されている。また8人が死亡しており、震源地の中国以外では死者数が最多となっている。

イラン国会は外交や核政策に大きな影響力を持たないが、強硬派が圧勝したことで同派が来年の大統領選に向け弾みをつける可能性があるほか、外交政策の強硬化につながる可能性もある。【2月24日 ロイター】
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期待・関心の低さについては、以下のようにも。

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(中略)ハメネイ師は21日の投票後、「投票は宗教的義務だ」と呼びかけており、保守強硬派の多くは投票所に足を運ぶとみられている。

だが、前回選挙でロハニ派勝利の原動力となった若者や改革派・保守穏健派は、しらけムードだ。前回選挙では、テヘラン中心部の投票所の外には長い列ができたが、21日午前には投票を待つ人の姿はまばらだった。
 
米国の制裁で低迷する経済や、ガソリンを予告なしに最大3倍に値上げしたロハニ政権に不満の矛先が向かっている。
 
昨年11月の反政府デモの中心地となったテヘラン近郊のイスラムシャー。デモは、ガソリンの値上げをきっかけとして始まり、銀行などが焼き打ちにあうなどした。
 
「候補者たちの名前や顔を知らない。投票に行く気はないし、あれだけ激しいデモをしても何も変わらなかったのだから、選挙ではなにも変化はない」。タクシー運転手のサジャッドさん(36)は、焼け焦げたままの銀行の前でそう吐き捨てた。
 
テヘランの公務員ニコーさん(45)も「経済も悪くなったし、4年前に期待したことは何も実現されなかった。だから、投票はしない」。改革派の集会で手伝いをしていたアミールさん(33)すらも「投票には行かない。どうせ保守強硬派が勝つ」と肩を落とした。(後略)【2月23日 朝日】
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穏健派・改革派への締め付けに関しては、以下のようにも。

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テヘラン市内に掲示された候補者のポスターなどはほとんどが保守強硬派。改革派・保守穏健派のポスターは探さなければなかなか見つからないという状況だった。

ただ、そもそも、米国の制裁の影響で、紙の価格が昨年の5倍以上に跳ね上がり、ポスターの総数自体も少なかった。
 
選挙運動の関係者からは「大型のポスターは作製できず、チラシも半分の数にせざるを得なかった」と恨み節も聞こえてきた。各集会の盛り上がりに差異はなかったものの、その開催頻度は圧倒的に保守強硬派が多かった。ロハニ師と路線対立する保守強硬派が優位で、改革派などに逆風が吹いているのを肌で感じた。
 
今回の選挙には約1万6千人が立候補登録した。だが、イスラム教に忠実かどうかなどの基準で審査する「護憲評議会」が立候補を認めたのは7148人。7千人以上が失格し、そのほとんどがロハニ師を支持する人たちだったとされる。 

ロハニ師は「一つの政治勢力だけでなく、選挙では競争があるべきだ」と批判したが、最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会は「政治的意図はない」と一蹴した。
 
イランでは、選挙区の定数と同数の候補者の名前を書いて投票できる。つまり、例えば定数30の首都テヘランでは、候補者から30人を選んで投票できる。テヘランの各選挙陣営は、同じ政治勢力の30人のリストを作って選挙運動をするのが通例だ。だが、テヘランだけでも1300人以上が立候補しており、有権者は名前や顔もわからずにリストを見ながら投票している。
 
16年の前回の国会議員選では前年にイランが米欧と結んだ核合意を追い風に、ロハニ師を支持する改革派・保守穏健派が躍進。テヘランで全30議席を独占した。国会全体でも最大勢力となった。

だが今回は、立候補登録したものの失格した現職国会議員は75人に上り、多くが改革派・保守穏健派だったとみられる。有力候補者が失格になるなか、「30人集めてリストをつくれただけでも幸運だった」(選対関係者)という声ももれた。(後略)【同上】
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体制を積極支持する保守強硬派は圧勝しましたが、投票率が50%を割り込み、1979年の革命以来最低を記録したことで、高投票率で革命体制への国民の信任を内外に示したかった指導部のもくろみは外れた形にも。

指導部は新型コロナウイルス感染拡大や敵国の情報戦が投票率を下げたと主張、打撃を最小限に抑えようとしています。

今後については、保守強硬派圧勝でアメリカとの対立が更に先鋭化するとの指摘が多くなされていますが、市民不満が高まる経済状況では、体制側・保守強硬派としても、いたずらにアメリカとの対立にのめり込むのではなく、経済重視のスタンスは必要になるとも考えられます。

【“国内で12人が死亡し、47人が感染” もっと感染者は多いのでは? 聖地コムの封鎖は?】
選挙結果は予想された範囲内のものでしたが、むしろ注目されるのは、体制側が低投票率の要因ともしている新型コロナウイルス肺炎のイラン国内での急拡大です。

新型肺炎は中東全域に拡散しつつありますが、その震源地的な様相を呈しているのがイラン。
中東各国はイランとの国境を封鎖するなどの対応に乗り出しています。

****新型ウイルス、中東に広がる警戒感 イランの死者増加で国境封鎖相次ぐ***
イラン当局は23日、新型コロナウイルス感染による国内の死者が8人になったと発表した。

中国国外の死者数としては最多で、周辺国は自国への感染拡大を阻止するため、対イラン国境を封鎖するなど緊急措置を相次いで講じた。
 
中東での新型ウイルス流行懸念が高まる中、イランと国境を接するトルコ、パキスタン、アフガニスタン、アルメニアの4か国は23日、陸路の国境を封鎖すると発表。空路でのイランからの入国に制限を課す動きも相次いだ。
 
イラクとクウェートは、既にイランとの行き来を禁じている。
 
イラン当局は「予防措置」として、国内14州で学校や大学などの教育機関を閉鎖。展覧会やコンサート、映画上映も今後1週間は中止された。
 
中東では、レバノンでもイランのコムから帰国したレバノン人女性が新型ウイルスに感染していることが確認された。レバノンでの感染確認は初めて。

また、イスラエルは23日、感染者の韓国人観光客と接触のあった生徒約200人に対し、自宅待機による隔離を指示した。 【2月24日 AFP】AFPBB News
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感染はすでにイラン周辺各国に広がっています。

****イラン周辺国で感染=クウェート、バーレーンなど―新型肺炎****
新型肺炎による死者が増加しているイランの周辺国でも24日、感染者が相次いだ。国営クウェート通信(KUNA)によると、クウェートで3人の感染が判明。

バーレーンの国営通信もバーレーン人1人の感染が確認されたと伝えた。いずれもイランを訪れていた。【2月24日 時事】 
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****アフガニスタンで初の新型コロナ感染 イランとの国境****
アフガニスタンの保健省は24日、イランと国境を接する西部ヘラート州のアフガニスタン人男性(35)から新型コロナウイルスを検出したと発表した。アフガニスタンで感染が確認されたのは初めて。
 
保健省は23日、男性を含めたヘラート在住の3人に感染の疑いがあると発表し、ウイルス検査を進めていた。男性以外の2人からは、ウイルスが検出されなかったという。
 
また、アフガニスタン政府は23日からイランとの人の往来を当面禁止。イランのほか東隣のパキスタンからも卵や鶏などの輸入を止めるなど、地域経済に影響が及んでいる。【2月24日 朝日】
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イラン国内では死者数は更に増えて12人へ。

****新型ウイルス感染、イランで新たに4人死亡 死者12人に****
イランで、新型コロナウイルスの感染によって新たに4人が死亡した。同国の議会関係者が24日、明らかにした。同国内でのウイルス感染による死者数はこれで12人となった。
 
半国営イラン学生通信が伝えたところによると、国会で行われた非公開審議の後、保健相が国内で12人が死亡し、47人が感染したと発表したという。 【2月24日 AFP】
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発症者・死亡者数で見ると、宗教的な聖地で、体制を支える保守強硬派の牙城でもありコムでの犠牲者が多くなっています。

****イラン、新型ウイルスの死者5人に(23日時点) 学校や文化施設の閉鎖指示****
イランで22日、新型コロナウイルス感染による死者が東アジア以外で最多の5人となった。これを受けて当局は、学校や文化施設の閉鎖を指示した。
 
イラン初の感染者は19日に確認され、当局は首都テヘラン南部にあるイスラム教シーア派の聖地コムで高齢者2人が死亡したと発表した。中東で新型コロナウイルス感染による死者が確認されたのはこれが初めて。
 
保健省報道官は22日、新たに10人の感染が確認され、うち1人が死亡したと国営テレビに発表した。8人はコム、2人はテヘランの病院に入院したが、死者がどちらの病院で出たかは明らかにしなかった。
 
これで、イランで確認された感染者数は計28人となった。
 
国営テレビは、「予防措置」として、当局がテヘランやコムなど全国14州・都市の学校や大学などの教育施設を23日から閉鎖するよう指示したと報じた。
 
政府はまた、感染拡大を防ぐため「全国のホールでのアートや映画関連のイベントの開催が、週末まで中止となった」と発表した。
 
イランの人々は感染を避けようとマスクの購入を急いでいる。イランのインターネット通販大手ディジカラは21日、36時間以内でマスク7万5000枚が売れたと明かした。需要が闇市場での価格高騰を招くことへの懸念から、同社のマスク販売における手数料は請求していないという。 【2月23日 AFP】
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素人的発想ですが、疑問に思われるのは、“国内で12人が死亡し、47人が感染”という死亡者比率の高さです。

イランの医療水準がそんなに低いとは思われませんので、死亡者が12人でたということは、感染者数は47人ではなく、桁が一つ、あるいは二つ違うのでは・・・・という疑問が。

周辺国への拡散状況からも、イラン国内での感染が発表数字より相当に悪いのでは・・・とも推測されます。

当局が数字を隠蔽しているのか、あるいは、感染者の把握ができていないのか。

もし感染の震源が聖地コムだとすると、何事につけ優遇されている聖地、宗教関係者が集中する宗教的中心都市、保守強硬派の牙城ですから、武漢のような当該都市に多大な犠牲を強いる封じ込め対策がとれるのか? 聖地コムで宗教施設閉鎖ができるのか? という問題も出てくるかも。

閉鎖すべきは大学よりモスクでしょう。
モスクでの集団礼拝をやめないと、感染は一気に拡大するでしょう。(すでに、そういう状況が発生しているのでは・・・とも思えます) 

でも保守強硬派牙城・聖地コムでモスクを閉鎖できるのか? ロウハニ大統領では難しいでしょう。 宗教権威ハメネイ師の指導力次第でしょう。

また、周辺国の国境封鎖などは、苦境にあえぐイラン経済への更なる負担にもなります。

体制にとっては、選挙圧勝を喜んでいる場合ではありません。

低投票率に示される民意をくみ取ると同時に、新型肺炎という異質の脅威に緊急に対応する必要があります。
対策が遅れて感染がさらに深刻化すれば、もともと経済的困窮でくすぶっている不満が一気に表面化する危険もあります。

 

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アメリカ・民主党予備選  “本選では勝てない”とされる左派サンダース氏の躍進に困惑する民主党

2020-02-23 23:21:50 | アメリカ

(22日、テキサス州の選挙集会で拳を突き上げるバーニー・サンダース氏=AP【2月23日 朝日】)

【“フロントランナー”の地位を固めるサンダース氏】
アメリカ大統領選挙の予備選第3戦となる西部ネバダ州党員集会が22日に行われ、ニューハンプシャー州予備選に続いて急進派サンダース上院議員が圧勝したことは報道のとおり。

****サンダース氏が連勝=中南米系の支持圧倒―米大統領選民主指名争い第3戦****
米大統領選の民主党候補指名争いの第3戦、西部ネバダ州党員集会が22日(日本時間23日)行われた。サンダース上院議員(78)が2位以下に大差をつけて勝利を確実にした。サンダース氏はニューハンプシャー州予備選に続く連勝。今後の指名争いに大きな弾みをつけた。
 
サンダース氏は、今回カギを握った中南米系から圧倒的な支持を得た。22日夜、支持者の前で「ここネバダで世代と人種を超えた連合を築いた。この連合は全米を席巻する」と勝利宣言した。
 
CNNテレビによると、開票率23%の時点で、サンダース氏は得票率46.2%で2位にダブルスコアをつける勢い。バイデン前副大統領(77)が23.6%で、以下、ブティジェッジ前サウスベンド市長(38)が13.9%、ウォーレン上院議員(70)が8.9%と続いている。【2月23日 時事】 
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緒戦で一躍注目されたブティジェッジ氏は、マイノリティーからの支持を強みをとする民主党にあって、緒戦の白人系が多い地域と異なる人種的に多様な州でどこまで支持をのばせるかが注目されていましたが、ヒスパニックの多いネバダでは支持をのばせず、厚い壁に阻まれた形になっています。

一方、オバマ政権時代からのつながりで、そうしたマイノリティーからの支持が高かったバイデン前大統領ですが、マイノリティー支持層もサンダース氏に浸食され2位。まあ、2位ということで首の皮1枚でなんとかつながった・・・とも。

いずれにしても、「民主社会主義者」を自任するサンダース氏が、貧富の格差が拡大するアメリカ社会にあって学生ローンの重圧などに苦しむ若者らの熱烈支持を受け “フロントランナー”“本格候補”の立場を印象付けることになっています。

****(2020米大統領選 分極社会)若者が支える、78歳革新派 広がる貧富の差、怒り****
1月31日、米アイオワ州デモインのイベント会場。若者を中心に約2千人が集まるなか、声が響いた。
「収入にかかわらず、すべての米国民が高等教育を受けられるようにすべきだ。公立大学の無償化と学生ローンの免除をともに実現しよう」
 
話していたのは、民主党の大統領候補を目指すバーニー・サンダース上院議員(78)。音声のみの参加だったが、支持者からは大きな歓声が上がった。(中略)

サンダース氏の主張は、米社会では「極端」と受け止められがちだったが、ここに来て勢いを増す。支えるのは、若者だ。

米メディアが党員集会参加者に行った調査では、17~29歳の48%がサンダース氏支持と答えた。この世代でブダジェッジ氏の支持率は19%、同じく穏健派のバイデン前副大統領(77)はわずか3%。逆に、65歳以上では33%がバイデン氏を支持し、サンダース氏は4%。世代間で大きな違いが出た。
 
他州でも、若い世代はサンダース氏に期待を寄せる。ニューヨークのバーテンダー、カイル・デランシーさん(32)は「富裕層に高い税金を課す税制政策を最も評価している。ほかの候補は口だけ。ちゃんと実行できるのはバーニーだけだ」と語る。

金融危機直後の2009年、ペンシルベニア州の私立大学を卒業した。学費などをまかなうため、卒業時に背負った学生ローンは総額で7万3千ドル(約800万円)あった。
 
卒業後に初めて就いた仕事は年収3万ドル。ローンの返済が滞り、利息が加わって10万ドルにまでふくれあがった。現在も利息だけで年間の支払額が6千ドルにのぼり、元本が返済できる見通しはたたない。「今の米国社会には、持続不可能なことがたくさんありすぎる。貧富の差は広がるばかり」と憤る。
 
貧富の格差の拡大や多額の学生ローン。米国の若い世代には「将来に希望が持てない」との思いが広がる。こうした閉塞感(へいそくかん)が、大統領選の行方を左右する可能性がある。【2月9日 朝日】
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【若者だけでなく、広がるサンダース氏への支持】
若者らの熱烈支持だけでなく、その主張への支持も広がり、更に、マイノリティーの支持も拡大しています。

****【米大統領選】サンダース氏の党候補指名に現実味 国民皆保険への拒否感薄れる?****
11月の米大統領選に向けた民主党の候補指名争いの第3戦、西部ネバダ州党員集会でサンダース上院議員(78)が他候補に大差をつけて勝利を確実にしたことは、サンダース氏が「本格候補」として党候補指名を獲得することへの現実味が徐々に増してきたことを意味する。
 
ネバダ州でのサンダース氏の勝因の一つは、最大都市ラスベガスなどのサービス業従事者が加盟する「料飲業者組合」(組合員数約6万人)の組合員の多くが同氏の支持に回ったとみられることだ。
 
組合執行部は20日、「どの候補も支持しない」と表明し、サンダース氏の公約である「国民皆保険」に批判的な立場を示したが、実際には同氏の訴えは組合員らに浸透していた。
 
ラスベガスの高級カジノホテル「ベラッジオ」で開かれた党員集会に参加したホテル従業員、ホセ・アルバレス氏(57)は「組合は会社側から健康保険制度を勝ち取ったが、解雇されたり、会社が倒産したりすれば保険を失うことになる。国民皆保険は納得できる政策だ」と主張した。
 
ネバダ州での結果が、民主党を支える組合勢力の間でサンダース氏への抵抗感が減っている兆候であるとすれば、今後の指名争いで同氏が支持をさらに拡大していく公算は大きい。(後略)【2月23日 産経】
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****サンダース氏、黒人支持率でもバイデン氏に並ぶ=WSJ/NBC調査 ****
今秋の米大統領選に向けた民主党候補の指名獲得争いで、黒人有権者の間でジョー・バイデン前副大統領の支持率が大きく低下し、バーニー・サンダース上院議員とほぼ並んだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースの最新世論調査で明らかになった。 
 
民主党の予備選が人種的に多様性に富む州に移ろうとする中、バイデン陣営にとって懸念すべき結果となった。 
 
バイデン氏はこれまで黒人の支持率の高さを頼りにしていた。2019年のWSJ/NBC調査では、予備選で投票する予定だとした黒人有権者の半分程度が、バイデン氏を支持すると回答していた。だが今月の調査では、バイデン氏とサンダース氏は共に3分の1弱の黒人の支持を獲得した。 
 
今月29日に投票が実施されるサウスカロライナ州の民主党有権者のうち黒人は約6割を占める。代議員数の多い南部の保守的地域にも黒人有権者は多い。29日に開かれるネバダ州の党員集会が、初めて人種に多様性がある州での戦いとなる。(中略) 

この調査によれば、バイデン氏またはサンダース氏が民主党候補に決まった場合、トランプ氏の黒人支持率は1桁台高めで16年並み。一方、クロブシャー氏またはブティジェッジ氏が対抗馬になったと想定すると、黒人によるトランプ氏の支持率は15%以上に上がる。(中略) 

黒人有権者は、男女問わず大統領としてのトランプ氏の仕事ぶりを圧倒的に支持していない。ただ大統領の仕事ぶりを評価したのは黒人女性が6%、黒人男性が24%で、性別に開きが見られた。(後略)【2月22日 WSJ】
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サンダース氏であれば、バイデン氏と同程度に民主党有力支持基盤である黒人票をつなぎとめることができる・・・ということのようです。

【“本選では勝てない”サンダース氏躍進に困惑する民主党指導部】
しかし、急進的な左派サンダース氏では、無党派層をとりこめず、本選ではトランプ大統領に惨敗する・・・というのが一般的な見方であり、民主党指導部もサンダース氏の勢いが止まらないことに困惑しています。

****「左派ではトランプに勝てない」 米民主党の穏健派、サンダース氏に危機感 ****
(中略)サンダース氏のニューハンプシャー州での勝利を後押ししたのは、格差解消や医療保険制度改革などの大幅な「変革」を求める若者や低所得者層らだ。

米メディアが実施した合同出口調査によると、18~29歳の民主党支持者の53%がサンダース氏に投票した。また、同氏に投票した31%が「医療保険」を、35%が「収入格差」を候補者選びの際に最重要視する政策上の懸案に挙げた。
 
また、自身を「非常にリベラル」と位置付ける同党支持者の48%、「どちらかといえばリベラル」の26%がサンダース氏に投票。「民主社会主義者」を自称するサンダース氏は同じ左派のウォーレン上院議員を退け、党内左派の広範な支持を確保しつつある。
 
しかし、調査会社ギャラップが11日発表した全国世論調査では「社会主義者の大統領候補に投票しない」との回答が53%に上った。「投票する」は45%。また、当選に向け支持獲得に不可欠な無党派層の45%が「投票しない」としており、サンダース氏が本選に進んだとしても苦戦を強いられるのは避けられない。

実際、民主党の中道穏健派は、サンダース氏が本選候補に指名されればトランプ大統領に敗れる恐れが強い上、大統領選と同時に行われる上下両院選にも悪影響が出かねないとして危機感を募らせつつある。

下院民主党の中道派議連の代表を務めるブリンディシ議員はニューヨーク州の地元紙に10日、「サンダース氏が本選候補になっても支持しない」と明言した。(後略)【2月12日 SankeiBiz】
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特に、サンダース氏が代議員数で1位ながらも過半数は得られず民主党大会になだれ込んだ場合の大混乱も民主党内では懸念されています。

****米民主党内に広がるサンダース大統領候補への深刻な不安****
米大統領選民主党候補者争いで急進左派バーニー・サンダース氏(78)への支持が拡大するにつれて、同党主流派の間では、11月大統領本選でトランプ再選のみか、議会選挙でも、上院で多数を占める共和党に下院奪回も許すのではないかとの不安が広がり始めている。(中略)

しかし、かねてからその急進的主張ゆえに異端視され、立候補前までは「無所属」の立場をとってきた同氏だけに、党内主流派からは、警戒と懸念の声が上がり始めている。

このままの勢いを保ち多勢の各州代議員とともに7月党大会になだれ込むことになれば、大会そのものが大混乱を引き起こすのみならず、11月大統領選での大敗につながりかねないという不安だ。(中略)

公共放送PBSは去る1月8日のニュース番組で、オバマ前大統領の選挙参謀を務めたレーム・エマヌエル前シカゴ市長の以下のような批判コメントを伝えた:
 
「サンダース候補は『民主社会主義者』を自認し、国民皆保険への揺るぎなき支持を表明しているが、こうした立場では2020年大統領選のカギを握る不確定のスイング州swing statesの賛同を得られない。最後の“戦場”となるこれらの州の票を勝ち取るためのメッセージを持った候補が必要だが、サンダース民主党候補ではますますそれが困難になる」(中略)

主要メディアも懸念示す
2月12日付ニューヨーク・タイムズ紙は、「サンダース候補指名がもたらす下院選敗退を穏健民主党議員が懸念」と題する以下のような記事を掲載した:
 
「明らかに左傾化路線を歩むサンダースが指名レースの先頭を走り始めるにつれて、中道的立場の議員たちの間から、このままではホワイトハウス奪回のチャンスを逃すのみか、下院多数保持もできなくなるとの不安が増大しつつある。

とくに、前回2018年中間選挙で共和党議員を打ち破り初当選した1期生議員たち十数人は、11月選挙で手ごわい共和党候補から“社会主義政党”のレッテルを貼られ苦戦を強いられているだけに、サンダース候補の主張を支持にくい立場にある」
 
「上院選でも、民主党はこれまで、4議席上積すれば多数体制を奪回できるとして、勝算が高いとされるノースカロライナ、アリゾナ、コロラド、メーンの4州での選挙戦に力点を置いてきた。しかし、その後サンダース候補の存在が目立ち始めるにつれて、情勢は厳しくなりつつある。共和党から『民主党はサンダーズ党』と攻撃されることで、民主党候補による反撃を難しくさせている」(中略)
 
ではそのサンダース候補がこれまでの選挙戦を通じ、具体的に内外政策めぐり、どのような主張を続けてきたかを振り返る必要がある。
 
まず内政だが、①中間、低所得者層向け住宅建設支援②家賃統制③所得格差是正④最低賃金引上げ⑤新設富裕者税⑥公立カレッジ授業料の無償化ーーなど、徹底した弱者救済の経済政策が中心だが、これら以外に最も関心を集めているのが、オバマ前政権下でスタートした医療保険改革「オバマケア」を改め、国民全員が国の運営する保険加入を義務付ける「国民皆保険」制度の導入だ。
 
しかし、実現には莫大な資金を必要とし、中間所得者層の税負担増につながることから、ブティジェッジ、バイデン候補ら民主党中道派は、いきなり皆保険ではなく、現行制度の拡大や公営保険と民間保険のハイブリッド方式を提唱している。
 
一方、外交・安全保障面では、①国防予算削減②アフガン、イラク、シリアなどからの米軍撤退③TPP(環太平洋経済連携協定)、USMCA(米・メキシコ・カナダ貿易協定)などの多国間協定に反対―などを表明、トランプ政権以上に「アメリカ・ファースト」の色彩が濃厚な内容となっている。
 
これに対し、バイデン候補らは基本的に、対外コミットメントの維持、多国間貿易協定支持の立場であり、サンダース候補との間では大きな見解の相違がある。
 
民主党全国委員会が最も懸念するのは、かりにサンダース氏が代議員獲得数1位で党大会に臨んだとしても、それまでに過半数に達していなかった場合だ。

サンダース勝利を願うトランプ
その場合、“スーパー代議員”と呼ばれる各州の有力政治家、地名士など771人からなる別の集団、さらに2位以下の候補が抱える各州代議員たちを交え、最終的に誰を党候補にするかをめぐり様々な取引や“談合”が会場内で繰り広げられることになる。“brokered convention”と呼ばれ、大混乱を招き、党本部としては最も避けたいシナリオだ。
 
さらにその場で、サンダース候補では11月本選でトランプ氏に勝てないとみて党本部主導で中道派の他の候補を最終的に選ぶことになった場合、それまでサンダース氏を支持してきた代議員および全米の有権者がそのまま党方針に従うかどうか疑わしい。

サンダース氏もついに民主党を離れ、無所属候補としてトランプ氏相手に本選で戦いを挑む構図も否定できない。その結果、3者間の争いとなった場合、トランプ勝利がほぼ確実となる。(中略)

逆に、再選を狙うトランプ陣営としては、今後もサンダース氏の健闘を大いに期待したいところだろう。(後略)【2月18日 斎藤 彰氏 WEDGE】
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【サンダース氏の熱烈支持層・勢いを警戒するトランプ陣営】
“サンダース氏の健闘を大いに期待したい”トランプ陣営・・・ということですが、当のトランプ大統領はサンダース氏に警戒感を示しています。

****米大統領選 トランプ大統領 サンダース氏への警戒感示す ****
アメリカのトランプ大統領は11日、ホワイトハウスで記者団に対し、民主党の候補者選びについて「サンダースよりも、ブルームバーグが相手になったほうがよっぽどいい。ブルームバーグはカネで支持を広げているが、サンダースには本物の支持者がついている」と述べ、全米の支持率で首位に立ったサンダース氏への警戒感を示しました。(後略)【2月12日 NHK】
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おバカ候補、泡沫候補と揶揄されながら、熱狂的支持者をつかみ、予備選・本選を勝ち抜いた自身の姿がサンダース氏の勢いに重なるのでしょうか?あるいは(戦いやすい)サンダース氏勝利を導くための戦略的発言?

もっとも、トランプ氏だけでなく、トランプ支持層でもサンダース氏を警戒する声は強いようですから、あながち戦略的発言でもないのかも。

****サンダース氏の勢い警戒=「4年前より楽勝」予想も―トランプ氏支持者****
混戦が続く米民主党の大統領候補指名争いを、トランプ大統領の支持者はどう見ているのか。

第3戦の地ネバダ州で21日、トランプ氏の支持者約100人に聞き取りを行ったところ、「最も手ごわい」候補としてサンダース上院議員を挙げる人が最多だった。若者の強い支持で勢いに乗る同氏への警戒を浮き彫りにした。(中略)
 
サンダース氏を選んだのは38人だった。理由として「教育もタダ、医療もタダという現実離れした政策によって、政治の教養がない若者にうまく取り入っている」と女性(52)が指摘。一方で「トランプ氏に対抗できる支持基盤があるのは彼だけだ」と考える男性(50)もいた。
 
2番目はブルームバーグ前ニューヨーク市長で24人。女性(60)は「他の候補にない経歴があり、『トランプを止めろ』という党内の声を吸い上げる力がある」と警戒した。

一方、新星ブティジェッジ前サウスベンド市長は経験不足と同性愛者であることを懸念する声が多く、8人にとどまった。
 
「脅威となる候補はいない」という回答も目立った。左派と中道派の路線対立を念頭に女性(62)は「何を求めているのか民主党は自分たちでも分からなくなっている。(僅差で勝利した)2016年よりも楽な戦いになる」と予想した。
 
これに対し、無罪評決が下された弾劾裁判以降、トランプ氏がツイッターで司法の問題に口出しするなど尊大さが目に付くようになったと指摘する男性(70)もいた。トランプ氏にとって、民主党よりも「最大の敵は自分自身かもしれない」と語った。【2月22日 時事】 
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今後の注目点は、スーパーチューズデイから参戦する元ニューヨーク市長で億万長者のマイケル・ブルームバーグ氏がどれだけの支持を得られるか・・・ということですが、ヒラリー・クリントン元長官を副大統領候補として検討しているとも報じられています。

なお、この件に関しては、攻撃しやすいヒラリー登場は、トランプ陣営は大歓迎のようです。【2月17日 FNN PRIMEより】

 

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アフガニスタン  和平合意に向けて「7日間の暴力削減」期間が開始 米軍撤退後のアフガンは?

2020-02-22 23:42:55 | アフガン・パキスタン

(2019年7月9日未明、停戦に向けた意見交換を終え、手を取り合ったアフガニスタンの政治家(左から2人目)やタリバーン幹部(右)ら【2019年7月11日】 今回もこういう光景がアフガニスタン政府とタリバンの間で見られるのでしょうか?)

【タリバン内最強硬派も同意した「7日間の暴力削減」期間がスタート】
新型肺炎関連ニュース一色のなかで、国内大手メディアが報じている以上の情報はありませんが、長く続いた戦闘状態における「一つの節目」であることは間違いないでしょうし、これまでもさんざん取り上げてきた案件ですから、スルーするのもいかがなものか・・・ということで、アフガニスタンの和平合意の話。

****米とタリバン、29日に和平合意調印 暴力削減期間の終了後に****
米国とアフガニスタンの反政府勢力タリバンは、「7日間の暴力削減」期間が終了する29日に和平合意に調印する方針。双方が21日、明らかにした。

和平合意が実現すれば、2001年に米国主導の多国籍軍がタリバン政権を崩壊させて以降続いている米軍のアフガン駐留終了につながる可能性がある。

暴力削減期間は22日午前0時に開始。タリバン指導部が出した書面では、全戦闘員に対し防衛態勢を維持するほか、アフガン政府や国際部隊が警らに当たる地域に出ないよう指示した。

またタリバンの広報担当は戦闘員や司令官に対し、和平合意を調印した後の展開については、後日通知するとした。【6月22日 ロイター】
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タリバン内部には停戦を良しとしない勢力もありますので、「7日間の暴力削減」期間が無風という訳にもいかないようです。

****初日、小規模な戦闘も=米タリバンの「暴力削減」―アフガン****
アフガニスタンでは22日、政府軍と、政府の後ろ盾の米国などの駐留国際部隊、反政府勢力タリバンによる実質的な停戦に当たる7日間の「暴力の削減」が始まった。

都市部では市民が安心した様子を見せる中、一部地域ではタリバン兵によるとみられる攻撃が発生。米国とタリバンとの間で29日にも調印が見込まれる和平合意への影響が懸念される。
 
AFP通信が地元当局者の話として伝えたところによると、北部バルフ州でタリバン兵が行政庁舎を襲い、2人が死亡。他にも小規模な戦闘があったもようだ。

ただ、いずれもタリバンは戦闘を認める声明を出していない。タリバンは暴力の削減に同意したが、地方司令官や兵士の一部が指示に従わない恐れが指摘されていた。

一方、首都カブールでは武力行使の停止に対し、市民が喜びの声を上げた。タクシー運転手のハビーブッラーさんはAFPに「爆発や自爆テロで殺される恐れなく外出できる朝は初めてだ。ずっと続くよう願っている」と語った。【2月22日 時事】 
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この“7日間の「暴力の削減」”の意味合いについては、“タリバンの指導者の一人はロイター通信に対し、暴力削減は「停戦ではない」と強調し、自衛のための武力行使は排除しない考えを示した。”【2月21日 産経】とも。

ただ、タリバン内の最強硬グループ「ハッカニ・ネットワーク」を率いるシラジュディン・ハッカニ指導者が20日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に寄稿し、「米国との協定に署名しようとしている。全条項の順守に全力を尽くす」と明言。和平の成立に強い意欲を示していますので、概ね「暴力の削減」が維持されるのでは・・・と期待もされています。

****和平合意に賛同姿勢=タリバン強硬派幹部―米紙に寄稿****
アフガニスタンの反政府勢力タリバンの強硬派指導者シラジュディン・ハッカニ師は、20日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)への寄稿で、米国と和平合意に調印すれば「全条項を完全に履行すると約束する」と明言し、賛同する姿勢を見せた。
 
タリバンと米国は「7日間の暴力削減」が実行されれば、今月末にも和平案に調印する。「暴力削減」をめぐっては、タリバン主流派が強硬派を抑えられるかが焦点となっているが、ハッカニ師は寄稿で「アフガン人は間もなく、この歴史的合意を祝うだろう」と述べた。
 
米国が「最も危険な武装勢力」と称する強硬派「ハッカニ・ネットワーク」指導者のハッカニ師の発言は、和平プロセスの前進に向け大きな意味を持ちそうだ。【2月20日 時事】
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【和平合意で米軍は「名誉ある撤退」ができるのでしょうが、その後のアフガニスタンは?】
これで「7日間の暴力削減」期間が概ね無事にすぎれば、29日には和平合意調印ということで、トランプ大統領が望む米軍撤退はその実現に向けて動き出します。

背景には、例によってトランプ大統領の再選戦略があります。

****トランプ氏、最長の戦争終結急ぐ アフガン、米大統領選控え****
トランプ米大統領は、アフガニスタンで22日に始まった反政府勢力タリバンとの事実上の停戦を成功させて和平合意を締結し、2001年から続く「米史上最長の戦争」の終結を急ぐ方針だ。米国内で厭戦気分が広がる中、11月の大統領選を控え、公約に掲げる海外駐留米軍の大幅削減を実現し、外交成果とアピールする狙いがある。
 
トランプ氏は今月4日の一般教書演説で「米国は他国の警察ではない。米国史上、最も長期間にわたった戦争を終わらせ、部隊を撤収させるために努力している」と意欲を示していた。【2月22日 共同】
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トランプ大統領・アメリカにとっては「名誉ある撤退」ができれば、それでいいのでしょうが、その後アフガニスタンはどうなるのか?

今回の和平合意に向けた動きは、米軍撤退にとっては「重要な前進」でしょうが、アフガニスタンにとってどういう意味をもつものなのか?ということを考えると、なんだかもやもやしたものがあります。

そのあたりが、今回話題を取り上げるにあたって、「スルーするのもなんだし・・・」といった、あまり気が乗らない所以でもあります。

大体、話はタリバンとアメリカの直接交渉で進んでいますが、当事者であるアフガニスタン政府の立ち位置が見えません。

タリバンは、アメリカの傀儡にすぎないアフガニスタン政府など相手にしないというスタンスです。

29日の和平合意で米軍が撤退の方向で動けば、どうしてもその後のアフガニスタンをどうするのかということで、タリバンとアフガニスタン政府の間での合意が必要になりますが、そこはどうなっているのでしょうか?

****アフガン和平高まる機運 米タリバン、暴力行為停止で合意 「完全な履行」が焦点**** 
アフガニスタンで米国とイスラム原理主義勢力タリバンが7日間の暴力行為停止で合意し、和平実現に向けた機運が高まりつつある。ただ、タリバンが暴力の停止を徹底できるかなど乗り越えるべき課題は多い。2001年から続く“米国史上最長の戦争”に終止符が打たれるかはまだ不透明な情勢だ。
 
「私は慎重ながらも楽観的だ」
米国のアフガン和平担当特別代表のハリルザド氏は17日、訪問先のパキスタンで、暴力行為の停止は和平実現への大きな足掛かりになるとの見方を示した。

(中略)和平合意後、10日以内にタリバンとアフガン政府が将来的な国内の統治を話し合う「アフガン人同士の対話」も始まるもようだ。

(中略)最大の焦点はタリバンが暴力を確実に停止できるかだ。

(中略)タリバンとアフガン政府の対話が実現しても歩み寄れるかはさらに見通せない。旧支配勢力であるタリバンはアフガンの支配者を自任し、現政府の正統性を認めていないためだ。
 
トランプ政権とタリバンは昨年9月、和平の大筋合意を目前にしていたとされる。しかし、タリバンは首都カブールで米兵を殺害する爆弾テロを実行し、反発したトランプ大統領が協議の中止を表明した。【2月20日 産経】
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アフガニスタンの将来・平和にとって「アフガン人同士の対話」、これが一番重要ですが、そこが見えません。

【「二重権力」状態も危惧されるアフガニスタン政府の混迷 タリバンと交渉する能力は疑問】
一方、肝心のアフガニスタン政府が大統領選挙を巡って「予想どおり」紛糾・混乱しているのは周知のところ。

****現職ガニ氏の再選確定=政局混乱必至―アフガン大統領選****
アフガニスタンの選管は18日、大統領選(昨年9月28日実施)の最終結果として、現職のガニ大統領の再選が確定したと発表した。ガニ氏に対抗し出馬した次点候補で現政権ナンバー2のアブドラ行政長官の陣営が結果受け入れを拒んでおり、今後の政局の混乱は必至だ。
 
アフガンをめぐっては、反政府勢力タリバンが、アフガン政府の後ろ盾の米国と停戦を視野に入れた和平協議を行っている。タリバンが米国と停戦すれば、タリバンとアフガン政府の和平交渉が開始される可能性があるが、政府内が混乱していれば交渉に支障を来しかねない。
 
選管が発表した最終結果によると、ガニ氏は50.64%を得票し、当選に必要な過半数票を確保。アブドラ氏は39.52%だった。ガニ氏は「この勝利を国民にささげる。和平プロセスを前進させる」と演説した。アブドラ陣営幹部は「発表された結果に正当性はない」と批判した。

 選管は昨年12月22日、ガニ氏が50.64%を得票したとの暫定結果を公表。当局がアブドラ氏らの陣営からの6000件を超える不服申し立てを審査していた。【2月19日 時事】
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****アフガン次点候補が政府樹立宣言 「二重権力」、和平に影響も****
アフガニスタンの大統領選でガニ大統領の再選が決まったことを受け、次点だった政権ナンバー2のアブドラ行政長官は18日の演説で「勝者はわれわれだ」と反発し、自らの政府を樹立すると宣言した。双方が政治的に妥協できず混乱が続けば「二重権力」状態に陥り、反政府武装勢力タリバンとの和平プロセスに影響する恐れもある。
 
アブドラ陣営幹部によると、近く閣僚人事を発表し、州政府幹部なども任命する方針。アブドラ氏は、選挙管理委員会が不正票を完全に除外しないまま最終結果を発表したと主張し「民主主義に対するクーデターだ」と非難した。【2月19日 共同】
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「二重権力」状態・・・・これでは「アフガン人同士の対話」なんて成立しませんし、タリバンはアフガニスタン政府など相手にせず(あるいは形式的に合意するだけで)、実力(あるいは武力)で権力を掌握しようとするでしょう。

国内外の諸事に無知なまま権力を掌握したかつての“イスラム原理主義”タリバンと、現在のタリバンは違う・・・ということはあるかもしれませんが、所詮タリバンはタリバン、イスラム原理主義はかわらないという見方も。

そのあたりを考えると、あまり“もろ手を挙げて歓迎”とは言い難い、今回の合意への動きです。

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移民増加や新型肺炎で触発される外国人嫌い・差別感情

2020-02-21 23:43:18 | 人権 児童

(「corona virus」などと落書きされたパリ郊外の日本料理店【2月20日 朝日】)

【トランプ大統領の「アメリカ第一」の根底にあるもの】
トランプ大統領の非常識な発言なんて、もはやたいしたニュースにもなりませんが、今回のアカデミー賞に関する発言には、見過ごせないものが横たわっているようにも。

****トランプ氏「どういうことだ」 韓国のアカデミー受賞に不満****
トランプ米大統領は20日、今年の米アカデミー賞で韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が外国語映画として初めて作品賞を受賞したことについて、「いったいどうなってるんだ」と不満を表明した。西部コロラド州での支持者集会で述べた。
 
トランプ氏は「韓国とは貿易分野でさまざまな問題を抱えている。その上、今年最高の映画(である作品賞)の称号を与えるのか。そんなに良かったか?」と語り、選考に疑問を呈した。「外国作品賞を取ったのかと思ったよ。前代未聞じゃないか」とも付け加えた。
 
その上でアカデミー作品賞を受賞した1939年の米映画「風と共に去りぬ」や脚本賞などを受賞した50年の「サンセット大通り」を持ち出し、こういった作品が受賞すべきだと主張。「頼むから『風と共に去りぬ』を復活させてくれ」とも述べ、リメークを要望した。
 
これに対しパラサイトの米国配給会社はツイッターで「(トランプ氏が作品を嫌いなのは)理解できる。彼は(英語の字幕を)読めないからね」とやり返した。【2月21日 産経】
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トランプ大統領自身は、「パラサイト」は鑑賞していないようです。(私も観ていません)

「韓国とは貿易分野でさまざまな問題を抱えている」ことと、アカデミー賞の選考に何の関係かあるのか?
別に、韓国との関係は、駐留米軍の経費問題などもありますが、一触即発といった危機的状況にある訳でもありませんし。

要するに、外国映画が受賞したことが気にいらないようです。
もっと言えば、彼の言う「アメリカ第一」の根底には、こうしたエピソードに垣間見える「外国嫌い」があるようにも思えます。

これが欧州の映画だったら反応は少し違ったかも、アジア映画だったから・・・と考えると、「アジア嫌い」「異人種嫌い」があるのかも。

そして、かれの考える「アメリカ」とは、現在のアフリカ系・ヒスパニック、アジア系が多く暮らすアメリカではなく、「サンセット大通り」や「風と共に去りぬ」に描かれる白人社会なのでしょう。

配給会社の「(トランプ氏が作品を嫌いなのは)理解できる。彼は(英語の字幕を)読めないからね」というコメントは秀逸です。トランプ大統領が多くのリポートに殆ど目を通そうとしないこと、TVばかり観ていることは有名です。「小学生並みの理解力」との評価も。

ただ、他の政治家なら進退を問われかねない問題でも、トランプ大統領なら「まあ、トランプだからね・・・」ですまされてしまいます。

異人種への差別とか「外国嫌い」といったものは多くの人の心中にあったもでしょう。
ただ、これまではそうした感情は公言すべきものではないとみなされていました。

トランプ大統領の一番の問題は、そうしたネガティブな感情を大っぴらに発言し、「まあ、トランプだからね・・・」で済まされてしまうことで、他の多くの人々も、そういう考えを公言して何が悪い・・・と考えるようななったことでしょう。いわゆる「パンドラの箱」を開けてしまったことです。

【欧州で過激化・拡散する外国人排斥】
そうした本音と称する外国人・異人種への嫌悪感の吐露が認められる風潮と、欧州の移民に関する現状が重なれば、ドイツで起きた事件のようなことも起こります。

****相次ぐ極右犯罪に衝撃 ドイツ銃撃、中東などの民族一掃を主張****
ドイツ西部ヘッセン州ハーナウで19日、2軒のバーが相次いで銃撃され、中東出身の移民ら9人が死亡した。検察当局は20日、人種差別思想に基づく犯行との見方を発表。反移民勢力が台頭する中、近年最悪の極右テロが発生したことで、国中に衝撃が広がった。
 
メルケル首相は20日、事件を受けて演説し、「人種差別という毒が社会で犯罪を引き起こしている」と危機感を表明。事件の背景解明に努めると訴えた。
 
検察によると、容疑者は43歳のドイツ人の男。逃走した後、自宅で遺体で発見された。自殺したとみられている。自宅では、人種差別による犯行動機を示した手紙やビデオが押収された。容疑者の母親(72)の遺体も見つかった。
 
報道によると、容疑者は犯行前、イスラエルやアラブ諸国、インドなどの国名を挙げて民族の一掃を訴える声明を残していた。

米国人向けに英語で「あなた方は秘密結社に支配されている」と訴えるビデオもインターネット上に流していたという。

銃撃されたバーは中東で人気がある水たばこを提供しており、犠牲者にはクルド系移民のほか、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身者が含まれていた。ハーナウは金融都市フランクフルトの東方25キロにある。
 
ドイツでは極右犯罪が近年、多発している。昨年6月には、メルケル首相の与党「キリスト教民主同盟」(CDU)の地方政治家が射殺される事件が発生。容疑者はネオナチとのかかわりが指摘された。10月には東部ハレのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)前で銃乱射事件が起き、2人が死亡した。
 
背景には、移民流入を受けた排外主義の広がりがある。ドイツにはシリア内戦を受けて2015年以後、100万人以上の難民・移民が流入した。

ナチスやヒトラー礼賛は訴追対象だが、インターネット上ではメルケル首相の寛容な移民政策を攻撃し、極右犯罪をたたえる投稿が法をすり抜けてのさばった。
 
メルケル政権は昨年秋、ネット上のヘイト(憎悪)発言取り締まりや銃規制の強化など、極右犯罪の取り締まり策を発表。先週には、イスラム教徒や政治家への襲撃を画策したとして、極右集団の12人を一斉に拘束したばかりだった。 

今回の事件を受け、ベルリンでは20日、テロ犠牲者を追悼し、極右犯罪に抗議するデモ行進が行われた。【2月21日 産経】
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ドイツ政治の問題で言えば、「ドイツのための選択肢(AfD)」の反イスラムおよび反移民主義が外国人に対する憎悪を拡大させているという問題も指摘されています。

【新型肺炎のような危機的状況で噴出する差別感情】
一方、ゼノフォビアや異人種への差別感情は、今猛威を振るっている新型肺炎のような不安感を煽る状況では、“「ウイルス持ちは出て行け」、中国系青年に暴行―イタリア”【2月14日 レコードチャイナ】容易に表面化してきます。

****新型コロナウイルスの流行で露わになった「世界の人種差別」****
(中略)
差別対象がどんどん広がる
ウイルスの発祥地として当初、武漢という特定の町の名前が出てきたときから嫌な予感はしていましたが、案の定、数日後には温泉地の箱根で「中国人お断り」と貼り紙を掲げる駄菓子店が登場したり(現在、貼り紙は外されました)、札幌市でも「中国人入店禁止」の貼り紙を掲げたラーメン店が物議を醸しました。

いうまでもなくこれらの貼り紙は人種差別的であり、場合によって民放の不法行為が成立する可能性がありますし、国連の人種差別撤廃条約にも違反しています。

それにしても興味深いのは「中国国内では武漢出身者が差別され」「日本国内では中国人が差別され」「ヨーロッパではアジア人が差別されている」という点です。

つまり地域によって、差別される対象の人々はどんどんひろくなっていっており、もはや合理的なウイルス対策とはいえない類の「対策」が目立ちます。例えば、イタリア・ローマにあるサンタチェチ―リア国立音楽院は「すべての東洋人へのレッスン中止」を発表し物議を醸しました。

(中略)このようにコロナウイルスの登場によって、ヨーロッパではアジア人への差別行為が起きていますが、前述のMartin Ku氏は記事を「中国人に見えるからといって、中国人だとは限りません。また中国人であっても、直近で中国を訪れた人ばかりではありません。尚、実際に中国を訪れた中国人であっても、全員が感染しているわけではありません。やはりコロナウイルスの対策として一番有効なのは手洗いとデリカシーです」と皮肉たっぷりに締めくくっています。

問題は「元からあった人種差別」
この流れを見ると、コロナウイルスのせいで人種差別が起きていると思ってしまいそうですが、欧州での東洋人への人種差別は元からあったものです。

コロナウイルスの流行を受けて、フランスでは地方紙の「クーリエ・ピカール」が表紙に「黄色いアラート」というタイトルをつけ、批判を浴びましたが(同誌は後に謝罪)、とっさに「黄色」という言葉が出てかつ印刷してしまうのは、元から東洋人に対する人種差別的な考えがあったと考えて良いでしょう。

そんななか、フランスでは #JeNeSuisPasUnVirus (私はウイルスではありません)というハッシュタグがSNSで多く使われるようになり、ドイツ語#IchbinkeinVirusやイタリア語#NonSonoVirusでの投稿も目立ちます。(中略)

東洋人への差別意識は欧州の社会に元からあるものでしたが、現在は「コロナウイルスという大義名分のもと」堂々と差別行為が行われているというのが現状です。

ただ「大義名分」に関しては、日本においても「元から中国人を快く思っていなかったところを、コロナウイルスという大義名分ができたから堂々と中国人をお断りするようになった」という側面もあるようです。

歴史に学ぶべきこと
日本政府によるチャーター便で、武漢在住の日本人が4回に分けて帰国しました。チャーター機の第4便には、日本人と共に中国人配偶者や中国籍の子供も乗っていましたが、インターネットでは「なぜ中国の人も、日本政府のチャーター機に乗せるのか」という声も多く見られます。

しかし人道的観点から家族なら一緒に行動をするのは当たり前です。単なる「ネットの声」だとはいえ、国籍を理由に「家族であっても、引き離すべき」と考える人が少なからずいるということは、社会として危険な兆候ではないでしょうか。

日本では大正12年9月1日に起きた関東大震災の際「朝鮮人が井戸に毒を入れている」などと噂が飛び交い、これを真に受けた住民たちが自警団を結成し、多くの朝鮮人や中国人が殺されました。

14世紀にヨーロッパでペストが流行した際にはドイツなどで「ペストが流行っているのは、ユダヤ人が井戸に毒を入れていたからだ」との噂が飛び交い、これが各地でユダヤ人のポグロム(殺戮、虐殺)へと発展しました。

国と時代が全く違うのに、自然災害が起きた時や病気が流行った時に、それをマイノリティーのせいにし、「彼らが井戸に毒を入れたからだ」という展開になるのはなんとも恐ろしい偶然です。

いつの時代も、どの国でも人間の本質はあまり変わらないのかもしれません。だからこそ「博愛精神は平常時や平和な時だけ」なんていうことにならないように、非常事態の際の人間性が問われているのではないでしょうか。でも、何もそんなに難しく考えることはありません。ウイルスを憎んで、人を憎まず、ということです。【2月10日 GLOBE+】
****************

感染防止対策としては、感染拡大地域からの流入を制限する措置は必要にもなりますが、そのことが「差別」に結びつかないような配慮が必要でしょう。

【日本:制限する側からされる側に】
なお、日本は流入を制限する側から、制限される側に変わりつつあるようです。

ミクロネシア連邦、ツバル、サモア、キリバス、コモロ、ソロモン諸島が日本からの入国を制限しています。また、タイ保健省も17日に、日本からの渡航者に対し、空港での検疫を強化すると発表しています。

来月中旬にタイ・バンコクへの旅行を予定しています。「バンコクの感染状況はどうだろうか?」と考えていましたが、「タイに入れるだろうか?」ということを心配した方がよさそうです。

「ロシア“入国一時停止”日本に適用の可能性」【2月21日 日テレNEWS24】
「日本に「渡航注意」の情報=新型コロナで米保健当局」【2月21日 時事】

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船したオーストラリア人2人の感染が確認されたとのこと。
他国と異なり下船後の隔離措置をとっていない日本での広範な感染拡大の危険が増しています。(このあたりの日本政府の対応は理解できません。感染防止対策が十分にとれない船内での14日間がどういう意味を持つのか?)

そうなると、いよいよ日本人が「ウイルス持ちは出て行け」と暴行を受けるような事態にも・・・。
私のバンコク旅行もご破算です。

 

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シリア  政府軍のイドリブ攻勢で懸念されるシリア・トルコの衝突 カギ握るロシア

2020-02-20 23:07:31 | 中東情勢

(世界中で反響を呼んでいるシリアの父娘の動画=動画ニュースサイト「AJ+」より【2月18日 毎日】)

【強気な二人 アサド大統領とエルドアン大統領】
毎日、溢れんばかりの新型肺炎関連ニュースなので、敢えて他の話題を。

シリアの反体制派最後の拠点イドリブ制圧に向けた政府軍の攻勢が強まり、域内に監視所を設けて反体制派を支援するトルコとの間で死傷者を出す直接衝突も起きるなど、緊張が高まっています。

トルコのエルドアン大統領は、シリア政府軍が2月末までにイドリブ県外へ撤退しなければ実力行使も辞さないと警告していますが、シリア側はアサド大統領が演説で「(トルコがある)北方からたわ言が聞こえてくる」と述べるなど、反発を強めています。

アレッポも一部反体制派支配が残っていましたが、政府軍が制圧、さらにイドリブ制圧に向けて進軍する構えです。

****シリア大統領、拠点制圧は反体制派敗北の「前触れ」****
シリアのアサド大統領は17日、ロシアの支援を受けた政府軍が反体制派の拠点である北西部アレッポ県の大部分を制圧したことを受け、9年にわたる反体制派との紛争終結につながると述べた。

アサド大統領は国営メディアで「この解放は戦争や衝突、テロ行為の終結や敵の降伏を意味するものではない」と慎重な姿勢を示しながらも「いずれ起きる反体制派の最終的な敗北の前触れだ」と述べた。

さらに、アレッポ県やイドリブ県での作戦は今後も継続し、やがて全土を奪還すると強調した。【2月18日 ロイター】
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“人権団体「シリア人権監視団」(英国)の幹部、ラミ・アブドルラーマン氏は「アサド政権軍は、これまで8年間、1つの村さえも制圧できなかった地域をたった1日で掌握した」と指摘。政権軍は同地域で急速に軍を前進させていると述べた。”【2月17日 ロイター】というように、これまでの均衡が崩れ、流れは一気に政府軍側に傾いているようです。

これだけの内戦にもかかわらず、アサド大統領の言動がメディアに登場するのは不思議なぐらい少ないのですが、現在の戦局を受けて、アサド大統領も強気のようです。

一方の、トルコ・エルドアン大統領(こちらは年中メディアに登場していますが)も一歩も引かない構えです。

****トルコ大統領、シリアでの軍事作戦開始は「時間の問題」と警告****
トルコのエルドアン大統領は19日、シリアのアサド政権軍が反体制派の拠点である北西部イドリブ県に進攻するのを止めるため、トルコ軍が軍事作戦を開始するのは「時間の問題」だと警告した。

トルコ軍は既に、イドリブに多数の兵士を投入。追加の部隊をシリアとの国境に向けて移動させており、トルコ軍とアサド政権軍が全面衝突する可能性が高まっている。

ただ、アサド政権軍を支援してきたロシアは、トルコ軍とシリア政権軍との衝突は想定される「最悪のケース」で、ロシアは情勢の悪化を阻止するために取り組むと表明した。

シリア政権軍は12月以降、北西部のイドリブとアレッポの両県で、反体制派武装勢力を一掃し、支配地域を回復するため猛攻を仕掛けてきた。ロシアは空爆を行うなどして政権軍を支援した。

エルドアン氏は与党議員らに対し、トルコ政府はロシアとの協議を継続する間も、イドリブを安全な地域にする確固たる決意があると表明。これまでの複数回の協議で、合意はまとまらなかったと明らかにした。

「政権軍は数日内にイドリブでの攻撃を停止する必要がある。これは最終警告だ」と強調。

「トルコは自国の作戦計画を実施するため、あらゆる準備を進めてきた。いつでも作戦を展開できる。つまり、イドリブでの攻撃は時間の問題だ」と語った。

エルドアン氏は、シリア政権側がイドリブから撤退する期限を2月末に設定していたが、前週末に前倒しする構えを見せている。

ただ、アサド政権軍に撤退の兆しは見られず、アサド大統領はトルコを後ろ盾とする反体制派勢力などがゆくゆくは敗北すると予想している。【2月20日 ロイター】
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【カギを握るプーチン大統領】
当然ながら、事態のカギを握るのは、アサド政権を支援するロシア・プーチン大統領の動きです。
ロシアとしても、トルコと全面衝突する事態は避けたいところでしょうし、トルコ・エルドアン大統領もロシアの調整を期待しているでしょう。

****イドリブ情勢(ロシア・トルコ首脳会議?など)****
シリアのイドリブ地方を巡り、ロシアとトルコの関係が極めて緊張していることは何度か報告したところですが、al qods al arabi net とal sharq al awasat net は、トルコ外相がトルコのTVとのインタビューで、トルコはロシアとイドリブ情勢につて密接な協議を続けており、まだ満足すべき所まで話し合いは進んでいないが、近くエルドアンとプーチンがこの問題で協議をするだろうと語ったと報じています。

会談の場所や日時は不明の由。

更に後者の記事は、ロイター電によれば、トルコ責任者(氏名等不詳)が、3月初めにはテヘランでイドリブ問題を含めたシリア問題についてロシア、トルコ、イランの3者会談が行われる予定で、その前にはロシア代表団がトルコを訪問することになっていると語ったとも報じています

エルドアンの発言などを聞いていると、明日にもロシア・トルコの衝突か?などと思ってしまうが、矢張りトルコもロシアもそれは避けたいということで、外交努力を続けているのでしょう。

両者の話し合いが続いているうちはその軍事的衝突はないだろうと思いますが、戦場では種々の勢力が乱れて錯綜しているようですから、錯誤等からロシア・トルコ間の戦闘が始まらなければいいのですが・・・・【2月20日 中東の窓】
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勢いに乗るシリア政府軍がそのままイドリブに侵攻し、トルコ軍と衝突といった場面も十分にあり得る情勢です。

【人道上の大惨事が懸念される避難民の惨状】
こうした状況から、戦闘を避ける避難民が大量発生していますが、トルコは国境を封鎖し、避難民キャンプは満杯で入れず・・・という惨状にあるのは、2月11日ブログ“シリア イドリブをめぐりシリアとトルコの全面衝突の危機 プーチン氏は? 逃げまどう難民”でも取り上げました。

更に、冬の寒さも脅威となっています。

****シリア、反体制派への攻撃継続 90万人避難の人道危機 寒さで乳児も死亡****
シリア政府軍は18日、反体制派の最後の主要拠点がある同国北西部への攻撃を続けた。大量の民間人が避難を強いられており、人道上の大惨事になる懸念がいっそう高まっている。
 
シリアでは過去3か月足らずの期間に、およそ90万人が自宅や避難所からの退去を強いられている。冬のさなかに多数の人々が野宿を迫られている。
 
国連は、このうちおよそ50万人は子どもだとし、雪に覆われた避難民キャンプで厳しい環境にさらされ、死亡する子どもが出ていると指摘した。
 
国連人道問題調整事務所のデービッド・スワンソン報道官は、「直近4日間だけで、新たに約4万3000人が特に戦闘の激しいアレッポ西部から避難した」と述べた。
 
18日の攻撃では少なくとも2人の民間人が死亡。そのうち1人はロシアの空爆で、もう1人はシリア政権側の爆撃で亡くなった。
 
シリア政権側を支持するイランの国営メディアは、アレッポ県での砲撃により、イラン革命防衛隊の隊員1人が死亡したと伝えた。

国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」によると、凍えるような厳しい寒さと避難所の劣悪な居住環境が原因で、少なくとも子ども7人が死亡。そのうちの1人はわずか生後7か月の赤ちゃんだったという。 【2月19日 AFP】***************

下記のニュースも反響をよんでいますが、爆弾の音に笑い声をあげる女の子が痛ましい感も・・・。
いつこの父娘の頭上に爆弾が落ちてこないとも限りません。

****内戦続くシリア 空爆を「ゲームだから笑って」と父、笑顔の娘 動画が世界中で反響****
今も内戦が続くシリア北西部イドリブ県に住む父と娘の動画が世界中で反響を呼んでいる。

娘が空爆による爆音を怖がらないよう、父親がゲームだと言い聞かせ、娘は音が聞こえるたびに大声で笑う。動画から伝わる切ない戦地の現実が見る人の胸につきささる。
 
中東カタールの放送局「アルジャジーラ」が運営する動画ニュースサイト「AJ+」によると、動画に登場するのは、イドリブ県に住むアブドラ・ムハンマドさんと3歳の娘。反体制派の一部が残っているとされる現地で、アサド政権側の空爆が続く中、アブドラさんは娘が怖がらないように「ゲーム」を考案し、爆音が聞こえたら笑うよう娘に教えた。
 
動画では、アブドラさんが娘に「今度は飛行機かな爆弾かな」と問いかけ、娘は「爆弾よ」と答える。まもなく爆発音がして、娘は大声で笑い転げ、「ああ、面白い」と笑顔が止まらない。

「AJ+」は動画に解説を加え、「シリア北西部では2019年末以降、60万人が家を失い、紛争下で育つ子どもたちは精神面で問題を抱えるとみられる。アブドラさんは、これに対抗するためにこのゲームを思いついた。アブドラさんは3歳の娘に適切な教育を受けさせたいと願っている」としている。
 
他にも海外の多くのニュースサイトなどがこの動画を取り上げており、視聴者からは「女の子の笑顔に涙が出る」「胸がはりさけそうだ」「何て勇敢な父親なんだ。どうか2人が無事でいてほしい」などと書き込みが相次いでいる。
 
シリアでは11年以降、民主化運動「アラブの春」が起こり、これをアサド政権が弾圧。さらに過激派組織「イスラム国」(IS)も加わり、内戦が激化した。ISの勢力はほぼ掃討されたが、反体制派の最後の拠点イドリブ県で政権側との戦闘が続いている。【2月18日 毎日】
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