孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン・ホルムズ海峡の緊張 英新首相はアメリカとの連携へ? UAEはイランとの関係探る

2019-07-31 23:19:22 | イラン

(イラン港湾都市バンダルアバス沖に停泊する英船籍のタンカー「ステナ・インペロ」を監視するイラン革命防衛隊(2019721日撮影)【7月23日 AFP】)


【進まない米主導有志連合構想に、アメリカは圧力を強化 イギリスはアメリカとの連携の方向へ?】

アメリカ・トランプ政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想を進めていますが、実質的にアメリカ主導の「イラン包囲網」となるため、日本や欧州各国の対応は慎重です。

 

****米、有志連合協力要請強める=日本を名指しでけん制***

トランプ米政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想について、日本などの同盟国を中心に協力要請を強めている。「イラン包囲網」の色彩を帯びる米国主導の有志連合への支持が広がらず、焦りを見せているためだ。

 

トランプ大統領は26日、ジョンソン英首相、フランスのマクロン大統領と電話会談しイラン情勢について協議。有志連合への協力を求めたとみられる。

 

ポンペオ国務長官は25日、FOXニュースのインタビューで、日本や英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、韓国、オーストラリアの国名を挙げ、有志連合への参加を迫った。

 

トランプ政権は25日、各国に対して有志連合構想に関する2回目の説明会を行ったが、米主導の構想を敬遠する国も多いのが実情だ。ポンペオ氏は具体的な国名を名指しすることでけん制する狙いもあったとみられる。

 

岩屋毅防衛相が26日、「(説明会の)報告をしっかり聞いた上で、どう対応すべきか検討したい」と述べるにとどめるなど、日本政府は有志連合への参加を明言していない。【7月27日 時事】 

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欧州各国は、イランとの核合意維持を重視する立場にあり、アメリカ主導の「イラン包囲網」に加わることでイランを刺激することを避けたい思いがあります。

 

一方で、イランとのタンカー拿捕合戦を繰り広げているイギリスが提唱する「欧州による船舶保護」構想も具体化しておらず、イギリスは独自に軍艦をホルムズ海峡に派遣しています。

 

****米主導の「有志連合」 欧州は様子見 対話を重視****

中東ホルムズ海峡で米国がタンカー護衛の「有志連合」を呼びかけたのに対し、イラン核合意の維持を掲げる英独仏3カ国は様子見の態度を続けている。

 

英前政権が提案した「欧州主導の船舶保護」は具体化しないまま。3カ国は米国の圧力に加わってイランを刺激することを避けつつ、対話による緊張緩和を探っている。

 

英国のジョンソン新首相は、トランプ米大統領から「素晴らしい首相になる」と期待されたが、イラン問題では慎重だ。両首脳は26日の電話会談でペルシャ湾情勢に触れた。英政府は2人が「パートナー国を交えて共に取り組む」必要性で合意したと発表しつつも有志連合への言及は避けた。

 

ラーブ英外相も英紙タイムズのインタビューで「欧州による取り組みは米国の支持がないとうまくいかない」と述べたが、有志連合には触れずじまいだった。

 

一方、独仏両国はイランとの外交に専心する。マクロン仏大統領は23日、イランのアラグチ外務次官とパリで面談し、ロウハニ大統領のメッセージを受け取った。最近の米欧では、イランとの最も高位の接触になった。

 

「欧州による船舶保護」構想では、パルリ仏国防相が仏紙との会見で、英独と情報共有などを協議中だとした上で「緊張を高めるような仏軍派遣は行わない」と明言した。

 

ドイツのクランプカレンバウアー国防相も「現在、重要なのは軍事より外交だ」と発言。欧州の取り組みについても、参加検討は「中身が分かってから」と述べるにとどめた。

 

欧州側が慎重なのは、武力行使の示唆で威嚇しながら対話を探るトランプ政権の手法に戸惑っているためだ。ポンペオ米国務長官は26日、米メディアで「イラン国民に呼びかけるため、必要があれば喜んで訪問する」と述べたが、イランは米国の圧力に強硬姿勢で応じており、対話実現の見通しは立っていない。

 

欧州による船舶保護が実現しない中、英国は単独で英船籍タンカーの護衛を行っている。英国防省は28日、駆逐艦「ダンカン」のペルシャ湾到着を発表。フリゲート艦「モントローズ」と共に護衛に当たる。イラン政府報道官は28日、欧州による護衛船派遣は「敵対的なメッセージになる」として反対した。

 

イラン核合意に参加する英独仏と中国、ロシアの5カ国とイランは28日、ウィーンで高官協議を実施。ロウハニ師は同日の声明で、ジョンソン氏の英首相就任を祝福し、テヘラン訪問を呼びかけ、欧州との関係改善を図ろうとしている。【7月29日 産経】

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アメリカは欧州各国に働きかけを強めており、トランプ大統領が称賛するジョンソン英首相はアメリカと連携する方向に転じたようです。ドイツは国内に意見の対立があります。

 

****ペルシャ湾の安全確保・英国は米国との連携の意向****

米国はドイツに対して航行の安全確保への任務への協力を公式に要請した。


ホルムズ海峡は石油の海上輸送の要所ですでにいくつものトラブルが発生。

最新のトラブルは英国タンカーがイラン革命防衛隊に拿捕された事件で英国政府は当初、ヨーロッパ独自の護衛活動を求めていたがジョンソン新首相は米国と連携する意向。

米国はここにきてドイツへの圧力を強めている。
ドイツ連立政府内では海軍の派遣に対して意見が大きく分かれている。有志連合への参加要請は党にきており連立政府はこれを拒否してきた。

SPDはイランへの圧力を最大限に高めようとする米国の戦略に参加する意思はなく最終的に戦争に巻き込まれるとの懸念があるから。
CSUはヨーロッパによるミッションに賛成しておりドイツは海上輸送の安全確保に寄与すべきとの意見。【7月31日 NHK・BS1】

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もっとも、このジョンソン新首相の“米国と連携する意向”に関しては、他の記事ではまだ見ていませんので、詳細は知りません。まあ、トランプ大統領と似た者同士ですから、ありえる話ではありますが。

 

【湾岸諸国ではUAEがサウジとの連携を見直し、イランとの関係を模索する方向へ】

一方、「イラン包囲網」の一翼を担う中東湾岸諸国のなかで、サウジアラビアとともに主導的な立場にあったUAEがイランとの関係を模索する方向に転じています。

 

****サウジ・UAE連合に亀裂、転変する緊張のペルシャ湾****

(中略)

UAEの離反

トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。

 

サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 

湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。

 

今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 

こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。

 

例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 

そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 

だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 

UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。

 

レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。【7月21日 WEDGE】

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UAEとイランの関係調整については、下記のような動きも報じられています。

 

****イランとUAE、30日に海の安全保障協議を再開=学生通信****

イラン学生通信(ISNA)によると、イランは30日、伝統的に対立しているアラブ首長国連邦(UAE)との間で、海の安全保障に関する協議を再開する。明らかにペルシャ湾の緊張緩和の意図があるとみられているが、湾岸当局者は、協議は定例のもので技術的としている。

協議は2013年以来中断しているが、同地域でUAEは安全なビジネスハブとしての地歩を守りたい意向とされている。

ISNAは、「第6回協議は30日、イランを訪れているUAE沿岸警備当局者の代表7人とイラン当局者により、テヘランで行われる」と伝えた。

ISNAは情報源を明かさず、協議では国境や双方の市民の行き来、不法入国などの問題が議題になる見通しと伝えた。

湾岸当局者は、この協議は地域の緊張とは無関係と述べた。【7月31日 ロイター】

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イランとの関係改善に転じたUAEの“現実主義”については、以下のようにも・

 

****ホルムズ海峡の緊張****

(中略)
他方サウディと並んで対イラン最強硬派(何しろ彼らの立場からするとその島3つをイランに占領されている…勿論イランは自国領としている・・ことから当然か!しかし、そこは湾岸商人的というべきか、その様な建前とは別に、これまでもイランとの密輸で大儲けをしてきたのはドバイ商人等のUAE人。外貨及び貴金属等の密輸に始まり何でも密輸しているはず)のUAEに関して現実主義的というか、イランとの関係で興味深い記事があるので取り敢えず

・一つは、UAE沿岸警備隊司令官のイラン訪問で、同司令官は30日、軍事ミッションを率いてテヘランを訪問し、イラン沿岸警備隊司令官と会談した由。
両国は湾岸の安全航行問題について協議する由なるも、具体的な会議の日程は不明

・もう一つはal qods al arabi netの報じる両国間銀行(金融面)での協力です

記事はイラン金融連盟会長が30日、UAEの2つの銀行が、金融面でのイランとの協力の用意があることを表明したが現時点では実施に至っていないと語ったと報じています。

同会長は、UAEの銀行(複数)は対イラン制裁のために、西部アジアでイランが金融市場を利用できない問題で、イランと協力する用意があると語った由。またUAEに代えてオマーンを使うことも検討されたが、オマーンは国際社会でそれほどの信頼性がない由。

同会長は、イランの会社や両替商は、これまでの経験や関係から、UAEを使うことを希望しているとした由。
記事はさらに最近もイランとUAEが金融面で協力するとのうわさが流れていたとしてます(後略)【7月31日 「中東の窓」】
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イランはカタールとはすでに緊密な関係にありますので、UAEとの関係が改善すれば、湾岸諸国において「イラン包囲網」に大きな穴をあけることにもなります。

 

UAEの方針転換は、サウジ主導の大規模空爆にもかかわらず戦況が膠着しているイエメン情勢にも大きく影響しそうです。

 

サウジが米軍駐留を受け入れたのも、そうした危機感が背景にあります。

 

****イエメン内戦「泥沼化」 サウジ皇太子にもたらす危機****

イエメン内戦への軍事介入を主導してきたサウジアラビアのムハンマド皇太子が危機に直面している。サウジとともに戦ってきたアラブ首長国連邦(UAE)がイエメンの前線から撤収し始め、内戦での勝利が難しくなったからだ。

 

内戦はサウジなどがイランの影響下にあるイスラム教シーア派民兵組織、フーシ派と戦う構図。サウジが、皇太子の面目が傷つく形で撤退するとは考えにくく、米国にとってのベトナム戦争と同様、サウジの国力を衰退させかねない事態となっている。

 

サウジやUAEは2015年、フーシ派と敵対する暫定政権を支援し内戦に介入。ロイター通信は今月中旬、バベルマンデブ海峡に近いイエメン中部ホデイダ港周辺の軍事拠点2カ所の指揮権がUAEからサウジ側に移譲されたと伝えた。

 

サウジはイエメンと長さ1300キロもの国境を接し、無人機によるフーシ派の越境攻撃も続く。UAEと違い、内戦はサウジの安全保障に直結している。

 

こうした中、19日にはサウジが同国内への米軍駐留を承認したと報じられた。米軍のサウジ駐留は約16年ぶり。イランやフーシ派に対する米、サウジの強い危機感がうかがえる。

 

ただ、米紙ニューヨーク・タイムズは20日付で、皇太子が米国に特殊部隊や軍事顧問の派遣などの支援を求めてきたとの外交筋の見方を伝えた。地上戦を担ったUAE軍に対し、空爆が主任務だったサウジ軍の指導力には、共闘する民兵組織からも疑問の声が出ているという。

 

自尊心が高いといわれるムハンマド皇太子の性格からみても、サウジが“負け戦”の印象のまま内戦から撤収する事態は想定しがたい。半面、戦闘を継続すれば戦費がかさみ、原油依存からの脱却を図る構造改革の停滞は免れない。

 

皇太子はかつて改革の旗手として脚光を浴びたが、王族や富豪らを汚職罪で一斉摘発したり、反体制記者殺害事件への関与も疑われたりしてクリーンなイメージは失墜。泥沼化するイエメン内戦での勝利に固執し続ければ、石油大国サウジの国際的な評価を下げる結果にもなりかねない。【7月26日 産経】

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コメント
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トランプ大統領 パキスタンの協力を得てアフガニスタンでの和平、大統領選前の撤退を目指す

2019-07-30 22:56:40 | アフガン・パキスタン

22日、米ホワイトハウスでパキスタンのカーン首相(右)を迎えるトランプ大統領【723日 朝日】)

 

【トランプ大統領 カシミール仲介の見返りに、アフガニスタン和平交渉へのパキスタン協力を求める】

昨日まで10日間ほど中国を観光していましたが、その間に「オヤオヤ・・・」と思ったのは、トランプ大統領がパキスタン・カーン首相の会談で、カシミール問題仲介を申し出たとの報道。

 

中国、イラン、北朝鮮、ベネズエラと問題を抱え、中東では「世紀のディール」を打ち出すとも語っているトランプ大統領、この上更に・・・。なお、トランプ大統領は19日には、徴用工問題をめぐり貿易関係が悪化している日本と韓国の対立について、解決を手助けする用意があると述べています。【723日 AFP】

 

犬猿の仲の核保有国・印パ関係を仲介するトランプ大統領の狙いは、見返りにアフガニスタン和平交渉におけるパキスタンの協力を引き出すものとされています。

 

いかにも「ディール」好きなトランプ大統領の発想です。

 

ただ、これまたいかにもトランプ大統領らしく、「アフガニスタンで勝とうと思えば1週間とかからない。その場合、アフガニスタンは地球上から消え、1千万人が死ぬだろう」と表現が過激。存在を軽視された形のアフガニスタンは怒っています。

 

また、これまで第三国のカシミール仲介を否定していたインドは、突然に名前をあげられて困惑。

 

****米国が望めばアフガン消える…トランプ氏、問題発言連発****

米国が望めば、アフガニスタンは地上から消える――。トランプ米大統領が発した言葉が、アフガニスタンで波紋を広げている。紛争解決で連携すべきアフガニスタンの反米意識を、トランプ氏自らがたき付けている格好だ。

 

トランプ氏は22日、パキスタンのカーン首相との会談で「私が(アフガニスタンの反政府勢力タリバーンとの)紛争に勝とうと思えば、アフガニスタンは10日以内に地上から消えるだろう」「1千万人を殺す事態は避けたい」と述べた。

 

トランプ氏としては最悪の事態を例示することで、それを避けるためのパキスタンの協力が必要だと強調する狙いがあったとみられる。タリバーン人脈を持つパキスタンは、和平進展の鍵を握っている。

 

会談はアフガニスタンでも中継され、SNS上では「屈辱」「差別的」との声が広がった。カルザイ前大統領はツイッターなどで「アフガン人の命や尊厳を踏みにじるものだ」と抗議し、ガニ大統領は「国の運命を外国勢力には決めさせない。外交ルートを通じて発言の趣旨を問いただす」との声明を出した。

 

トランプ氏は今月初旬にも、米メディアのインタビューでアフガニスタを「テロリストの製造工場」と呼び、物議を醸した。

 

米軍と17年以上戦ってきたタリバーンは、22日の声明で「トランプ氏は無責任な発言をするよりも、和解へのステップを踏んではどうか」と呼びかけた。

 

歩み寄り、始まったばかり

アフガニスタン情勢をめぐり対立してきた米国とパキスタンは、和平実現に向けて歩み寄りを始めている。トランプ氏とカーン氏の22日の会談では、アフガニスタンの紛争の停戦を目指して連携することで合意した。

 

アフガニスタンの反政府勢力タリバーンと17年以上戦う米国は駐留米軍の撤退を模索している。カーン氏は「和解の日は近いだろう」と述べ、タリバーンへの働きかけを強め和平を後押しする姿勢を示した。

 

トランプ氏はパキスタンへの投資や貿易を促進する意向を示したが、凍結している軍事支援の再開には触れなかった。

 

トランプ氏はこれまで、パキスタンが巨額の軍事支援を受け取りながら、「タリバーンに隠れ家を与えている」と指摘。パキスタンの姿勢が紛争長期化の原因だと非難してきた。一方のカーン氏は「パキスタンをスケープゴートにしている」と反発し、両国関係は冷え込んでいた。

 

ただ、海外債務の返済にあえぐパキスタンにとって米国の支援凍結は大きな打撃で、米国とタリバーンの「仲介役」として動き始めていた。

 

パキスタン領内に暮らすタリバーンの強硬派に、米国との和平協議に加わるよう説得。タリバーンが公共施設への攻撃を自制することに合意するなど、仲介の成果が見えてきたため、トランプ氏がカーン氏に歩み寄った形だ。

 

ただ、米国とパキスタンの連携で和平が実現しても、アフガニスタンの政情が安定するかは不透明だ。タリバーンは現状でも国土の半分近くを影響下に置いており、米軍撤退後に発言力を強めることは必至だ。

 

パキスタンタリバーンを通じてアフガニスタンへの影響力を保持する狙いとみられる。【725日 朝日】

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もともと、本来の当事者であるアフガニスタン政府はアメリカ・タリバンの交渉の枠外に置かれ、面白くなかっただけに、怒るのも無理からぬところです。

 

****トランプ氏発言、印で論争に カシミール仲裁「首相が要請」****

ドナルド・トランプ米大統領が、ナレンドラ・モディ印首相からインドとパキスタンの間で続くカシミール紛争の仲裁を要請されたと発言したことを受け、スブラマニヤム・ジャイシャンカル印外相は23日、議会で猛反発する野党に対し、モディ首相からの依頼はなかったと述べ、トランプ氏の発言を断固として否定した。

 

数十年間にわたり数万人の命を奪ってきたカシミール紛争については、パキスタンが第三国による仲裁をたびたび希望してきたのに対し、インドは2国間でのみ解決できる問題だとして仲裁を拒否してきた。

 

トランプ大統領は22日、ホワイトハウスでパキスタンのイムラン・カーン首相と会談した際、モディ首相から2週間前にカシミール紛争の仲裁を依頼されたと説明。この発言が引き金となり、インドでは激しい政治論争が巻き起こった。

 

ジャイシャンカル外相は議会で「モディ首相がトランプ大統領に対しそうした要請はしていないということを、議会に対しはっきりと保証したい」と述べたが、同外相の声は野党の怒号によりほぼかき消された。

 

ジャイシャンカル外相は、カシミール紛争は2国間でのみ解決できると強調し、パキスタンは対話に先立ち「国境を越えたテロ」を終わらせなければならないと主張した。

 

米国務省も火消しを試みている。アリス・ウェルズ国務次官補代理(南アジア担当)はツイッター投稿で「カシミール紛争は両当事者で議論すべき2国間の問題ではあるものの、トランプ政権はパキスタンとインドの対話を歓迎し、米国には協力の用意がある」と表明した。 【724日 AFP】

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いかにトランプ大統領が平気で○○をつくとは言っても、インド首相の名前を挙げてねつ造することはないでしょうから、何らかの話はトランプ・モディ両氏の間であったのでしょう。

 

ただ、モディ首相としてはこんな形で公にされるとは思っていなかったのでしょう。

 

【トランプ大統領 再選に向けて、大統領選までにアフガニスタン撤退を目指す】

アメリカとタリバンの交渉は、地道な努力もあって、ようやく成果と言えるようなものも見え始めています。


トランプ大統領としては、そこに目をつけて、自分が乗り出す形で・・・という話のようです。


アフガニスタンの安定にとって、パキスタンの協力は不可欠です。ですからトランプ大統領の方向性は正しい向きにあります。

 

ただ、すべてのトランプ政権政策が「再選第一」につながっているように、今回のアフガニスタン和平へのパキスタン引き込みも、なんとか大統領選挙前にアフガニスタン撤退を打ち出したいとの思惑があるようです。

 

****米大統領選までにアフガン撤収=ポンペオ国務長官「トランプ氏の指示」****

ポンペオ米国務長官は29日、ワシントン市内で開かれた経済団体の会合で、トランプ大統領が来年11月の米大統領選までにアフガニスタン駐留米軍の一部撤収を望んでいると語った。

 

再選をにらみ、アフガンからの部隊撤収を外交成果としてアピールする狙いがあるとみられる。

 

ポンペオ氏は大統領選までに駐アフガン米軍を縮小できるかとの質問に対し、「それが大統領から受けた指示だ」と回答。「大統領(の指示)は『果てしない戦争を終わらせろ。撤収しろ。縮小しろ』と明確だ」と語った。【730日 時事】 

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わかりやすいと言えばわかりやすいですが、そうそう自分の都合どおりにいくものか・・・

 

【アフガン 依然として多い民間人犠牲者 注目度が低いような大統領選挙】

アフガニスタンの方は、あまり大きな扱いになっていませんが、大統領選挙に入っています。

 

****アフガニスタン 大統領選挙戦始まる 18人立候補の混戦****

和平の模索が続くアフガニスタンで、ことし9月の大統領選挙に向けた選挙戦が始まりました。反政府武装勢力タリバンなどが各地で攻勢を強める中、治安の回復が最大の争点です。

 

5年に1度のアフガニスタンの大統領選挙は、9月28日の投票に向けて、28日からおよそ2か月間の選挙戦が始まりました。

今回の選挙には、現職のガニ大統領や前回、接戦で敗れた政権ナンバー2のアブドラ行政長官のほか、ガニ政権で大統領顧問を務めたアトマル氏など合わせて18人が立候補し、混戦となっています。

アフガニスタンでは、駐留する国際部隊の大部分が2014年に撤退して以降、タリバンや過激派組織IS=イスラミックステートが各地で攻勢を強め、去年、テロなどに巻き込まれて死亡した民間人は、国連が調査を始めた2009年以降、最悪の3800人余りに上りました。

このため、主な候補は治安の回復を訴えて運動を展開しており、テロの警戒が続く中、激しい選挙戦になると予想されています。

一方、タリバンは軍を駐留させているアメリカ政府との和平協議を進めることで影響力の拡大をねらっており、選挙戦では各候補者が今後、タリバンとの交渉にどのように臨むのかも焦点となります。【728日 NHK】

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以前のアフガニスタン大統領選挙は、もっと大きな国際的注目を集めたように思いますが、今回はあまり国際社会・メディアは関心がなさそう。

 

もはやアフガニスタン政府に多くを期待していない・・・ということでしょうか。

 

治安の方は“選挙戦初日にテロで2人死亡 アフガン副大統領候補を狙う”【729日 共同】と相変わらずです。

 

攻撃はタリバン側からだけでなく、米軍および政府軍による空爆の民間人犠牲者が増加しています。

 

****アフガニスタン、今も「衝撃的で受け入れ難い」数の民間人死傷 国連****

国連アフガニスタン支援団(UNAMA)は30日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと米国による和平協議が続いているにもかかわらず、18年にわたるアフガニスタン紛争で現在も「衝撃的で受け入れ難い」数の民間人が死傷しているとの報告を発表した。

 

UNAMAの報告によると、201916月の民間人死者数はこれまでで最大の死者数を出した昨年の同じ時期と比べておよそ30%減少したものの、死者数は1366人、負傷者は2466人となった。うち子どもの死者数は327人、負傷者数は880人で、全死傷者の3分の1近くを占めた。

 

UNAMAは死傷者の減少については評価したものの、「依然として民間人に対する危害の度合いは衝撃的で受け入れ難いものだと考えている」と懸念を示した。

 

また、米国と親アフガニスタン政府部隊による攻撃で死亡した民間人の数は、タリバンやその他の反政府勢力の攻撃によって発生した民間人死者数より多かったとも指摘。米国を含む親アフガニスタン政府側部隊の攻撃による201916月の死者数は717人で、昨年同時期から31%増加した。

 

駐留外国軍の撤収を目指す和平協議が数か月にわたって進められている一方、アフガニスタン紛争の死者数は増加している。また、その多くは地上部隊を支援する米軍および政府軍による空爆の犠牲者だという。

 

国連の統計によると、同紛争による昨年の死者数は過去最多となり、子ども927人を含む少なくとも3804人が死亡した。 【730日 AFP】

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【軍と蜜月のカーン政権 イスラム過激派指導者や野党幹部を逮捕】

一方、パキスタンは、かねてより影での支援・癒着が言われていたイスラム過激派への対応が厳しくもなっているようにも見えます。

 

****2008年ムンバイ同時多発攻撃の首謀者を逮捕、パキスタン****

パキスタン当局は17日、同国を拠点とするイスラム過激派組織「ラシュカレトイバ」の創設者で、2008年にインドのムンバイで発生した同時多発攻撃の首謀者とされる扇動的イスラム教指導者、ハフィズ・サイード容疑者を逮捕した。治安筋が明らかにした。

 

パキスタンに対しては、同国内で活動する武装勢力への取り締まりを求める圧力が高まっている。

 

米国と国連はサイード容疑者を国際テロリストに指定。米国は1000万ドル(約10億円)の懸賞金を懸けていた。パキスタンのイムラン・カーン首相は来週、就任後初めて米国を訪問する予定で、米側は今回の逮捕を歓迎している。

 

事情を知る匿名の治安当局者によると、ザイード容疑者は東部グジュランワラでのテロ対策部隊による強制捜索の後、身柄を拘束された。(中略)

 

サイード容疑者をめぐっては、長年にわたり身柄の拘束と釈放が繰り返されてきた。拘束形態には自宅軟禁も含まれ、拘束施設に収容されてからすぐに釈放されることもあった。

 

その大半の期間、サイード容疑者はパキスタン国内を自由に動き回ることできたため、インドは強い怒りを表明。160人以上が死亡したムンバイ同時多発攻撃で果たした役割をめぐり、同容疑者を起訴するよう繰り返し求めてきた。

 

攻撃をめぐっては、インド、米両政府がラシュカレトイバが主謀したと非難する一方、サイード容疑者は関与を否定している。

 

ドナルド・トランプ米大統領はツイッターへの投稿で、サイード容疑者の逮捕を歓迎すると表明した。(後略)

718日 AFP】

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冒頭で取り上げたカーン首相の訪米直前でもあり、アメリカの意向を意識した対応でしょうか。

 

イスラム過激派との関係については、“パキスタン軍、テロリストと2度の戦闘 兵士10人死亡”【730日 CNN】といった報道も。

 

“パキスタンのカーン首相は襲撃を非難し、軍と軍による治安維持の取り組みに敬意を表した。”【同上】とも。かねてより、カーン首相は軍都の強い“関係”が取りざたされています。

 

****パキスタン、野党幹部の逮捕が相次ぐ 政権と軍部の意向か****

パキスタンのカーン政権による野党幹部の逮捕が相次いでいる。同国は財政難に苦しんでおり、物価上昇や度重なる公共料金の値上げなどで国民の不満が高まる。逮捕は汚職容疑だが、捜査にはカーン政権や政権と蜜月と言われる軍部の意向が働いているとの指摘もあり、政権批判を強める野党の勢いをそぐ狙いがありそうだ。

 

地元メディアによると、最大野党のパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派に所属するアバシ前首相は18日、液化天然ガス事業に絡む汚職容疑で逮捕された。また先月10日には、野党第2党のパキスタン人民党のザルダリ元大統領も資金洗浄の疑いで逮捕された。

 

パキスタンは巨額の対外債務に苦しむ。2015年以降、中国が進める経済圏構想「一帯一路」に伴うインフラ整備事業などで、貿易赤字や債務負担が急増。通貨下落や物価上昇も深刻になっている。

 

パキスタンは中国やサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)からの財政支援に加え、国際通貨基金(IMF)からも今月初め、約60億ドル(約6500億円)の支援を受けることが決まった。IMFは財政再建を求めており、パキスタン政府はカーン政権下で3度目のガス料金の値上げなどを決めた。

 

パキスタン人ジャーナリストは「国民は、カーン首相は軍部の操り人形で、国民の意見に耳を貸さないと思っており、不満は高まっている。このタイミングでの野党幹部の逮捕は、政権と軍部の意向以外考えられない」と指摘する。【719日 毎日】

***************

 

ザルダリ元大統領やシャリフ前大統領の時代のパキスタンは、アメリカやタリバン・イスラム過激派への対応で、政権と軍の意向が異なり分かりずらいこともあったのですが、カーン政権は軍との蜜月ということで、操り人形云々はともかく、方向性はわかりやすくなったようにも。

 

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中国 桂林・張家界観光 変わる中国 「双魚」と「おひとりさま」レストラン

2019-07-29 15:22:34 | 中国

(中国・広州の天環広場 上空からの画像 【728日 レコードチャイナ】)


【双魚】

現在、中国・広州の空港で帰国便のフライトを待っています。

 

広州は人口1270万人の大都会ですが、その広州に関して、面白い記事を昨夜目にしました。

 

****まるで泳ぐ2匹のコイ!上空から見た天環広場―広東省広州市****

天環広場は広東省広州市の中軸線上に位置し、天河体育センターの隣にある。上空から見ると天環広場全体の地上建築物はまるで2匹のコイが泳いでいるような形をしている。中国新聞網が伝えた。

建物の屋上部分は銀色の網状鉄骨構造で覆われており、魚の鱗を彷彿とさせる。魚の形の建物の外壁は透明なガラスのカーテンウォールとなっており、巨大な「開放型ショッピングパーク」となっている。【728日 レコードチャイナ】

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上空からの写真を見ると、まさしく二匹のコイです。

建物自体は20163月のオープンとのことのようです。

 

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空間構成の先端をゆく個性的なデザインで、モール全体を俯瞰すると、巨大な二尾の魚が天河を飛び跳ねているように見える。

 

建物の外殻である網状構造物が魚の形にデザインされているためで、二尾は頭と尾で互いにつながっているような構造になっている。

 

中国では「双魚」が富と繁栄を象徴する縁起物とされており、それを広州の新しい中軸線上に配置することで、「如魚得水」(水を得た魚)、広州がますます繁栄するようにとの願いが込められている。

 

限られた空間を有効活用する面でも、双魚のフォルムは実用的で、店舗面積をより多く確保できるようになっている。【201654日 PPW
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デザイン的な趣味の良し悪しは別にして、中国で奇抜さを競うような建築物が多々あることは周知のところですが、この「双魚」は随分とましな部類ではないでしょうか。

 

いずれにしても、こうした大きな目新しいもの、人目を引くものを作ってしまうあたりに、中国の”勢い“を感じた次第です。

 

【「おひとりさま」レストラン】

中国も経済的成長に伴って、若者を中心に、ものごとに対する考え方も日本とも共通する部分も目立つような社会に変化しつつあるようです。

 

****中国でも「おひとりさま」レストランが増加、寂しさより自由を重視****

パーティションで区切られた小さなこだわりのスペースに、お碗と箸、小さめのお玉が並べられている。これが今増えている「おひとりさま」レストランでよく見られるレイアウトとテーブルセッティングだ。

 

草の編み細工のクッション、バラの花、レストラン専属歌手のパフォーマンス、かわいらしい陶磁器の人形など、シンプルで温かみのある内装の店内でさまざまなグルメも食べられるこうしたレストランでは、1人でもまったく決まりの悪い思いをしなくてすむ。中国新聞網が伝えた。

先日、武漢のある「おひとりさま」レストランを取材したところ、この日本風の鍋料理店では、レストランを「島区」、「隠区」、「尋区」、「無界」の四つのエリアに分けている。

 

そのうち、「おひとりさま」エリアは主に「尋区」にある。計12席で、どの座席の前にもすだれが取り付けられており、店員は出来上がった料理を運んでくると直接すだれを上げて料理を出す。

入店から着席、注文と、ほんの少し待つだけで、お気に入りの料理が目の前に届く。すだれを下ろせば完全に自分だけのプライベートな食事空間だ。食べている格好を気にすることもなく、周りの客が投げてよこす奇異なものを見るような視線もお構いなしに、静かに「一人ごはん」を楽しめる。

郝菁さん(40)は、カナダで17年間飲食業に従事していた。20185月、郝さんは2人の共同経営者とともに、武漢に「おひとりさま」をコンセプトにしたレストランを開いた。

開店の動機について郝さんは、「食事をする時には何人か連れ立って行くものだったが、社会の発展に伴い、独身層が徐々に増えてきた。

 

ただ、大勢でにぎやかにしているのと比べると、外で1人で食事をするのはどうしても孤独だと見られてしまう。それで孤独な人に静かな場所を提供しようと思った」と語る。

郝さんは、「『おひとりさま』の食事を体験しに来る客は若者がメイン。ほとんどの人にとって『おひとりさま』はまだ物珍しく、受け入れられるまで一定の時間が必要だ」と説明する。

 

郝さんによると、レストランは経営面で試練に直面したこともあり、対応策として調整も行ったという。しかし郝さんは、「時間がたつにつれて、『おひとりさま』の受容度は次第に上がっていくだろう。一番重要なのは品質とサービスをしっかりやることだ」と語った。

韓笑さん(23)は東北出身で、武漢で学校に通い、就職して6年がたつ。「おひとりさま」レストランの常連で、1カ月に少なくとも6-7回来店するという。

 

韓さんは、「鍋料理や麻辣燙(ピリ辛風味の煮込み料理)が好き。でも彼氏とは遠距離恋愛だし、周りには友達も少ないので、鍋を食べたくても一緒に食べてくれる人がなかなかいない。1人で鍋料理の店に行って近くににぎやかなグループ客がいたら、決まりが悪いし、落ち込んでしまう」と言う。

 

「おひとりさま」用のミニサイズの鍋料理はちょうど韓さんのニーズにぴったりだった。どの具材も食べたい彼女にとっては、少な目の量なので無駄にする心配もない。

王楽さん(34)は、企業の広報プランニングを担当するワーキングマザー。勤務中は顧客対応と仕事で忙しく、ハードワークと頻繁な出張のために、時間通りに食事ができないこともしばしばだ。

 

仕事が終わって帰宅すれば全身全霊を子供に注がなければならず、王さんは自分の生活がすべて仕事と育児に「しばりつけられている」ようだと感じている。

 

王さんは、「毎日の食事時間は貴重な休息の時間。静かにスマホを見たり、ぼんやりしたりできる。『おひとりさま』レストランでは料理を食べるのは二の次、短い時間だけれど、煩わしい生活から離れて、頭を空っぽにしてぼんやりできることのほうが大切」と話していた。【728日 レコードチャイナ】

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生活の単位が、共同体→大家族→核家族→個人と次第に小さくなっていくのは、生産性の向上、利便性の向上に伴う日本・中国を含むすべての社会に共通する必然の方向性だと思いますが、ワイワイ騒がしい中国人と「おひとりさま」というのは似つかわしくなく、変われば変わるものだ・・・との感も。

 

個人的には、毎回一人で旅行していますので「おひとりさま」スタイルの拡大は大歓迎ですが、それと同時に、中国の料理の量も「おひとりさま」的に考慮してもらうと助かります。

 

大勢で一緒に食べることを前提にしているせいか、中国で料理を頼むと、おおきな皿に山盛りされた形で出てきます。

 

とても一人では食べきれない量で、残す分が無駄にもなりますし、いくつかの料理を頼むことも難しくなります。

 

今回のようにガイド氏、ドライバーが同行している場合は、都合のいい中国料理のスタイルですが、夜一人で食事するときなどは困ります。

 

なお、余った料理をもったいないのでパックに入れて持ち帰るといったことは、メンツ重視の中国ではあまりないのかと思っていましたが、張家界のレストランで食事して男性が、そうした持ち帰りを店員に頼んでいましたので、中国でもやっているようです。

 

【ハンドマイク解説のグループガイド】

ワイワイ楽しみながら食事するのはいいとして、観光地でワイワイ騒々しいのは困りものです。

 

中国の街は昔に比べるととてもきれいになりました。トイレ事情も格段に改善されています。

外国人として、もうひとつ改善を期待するとしたら、観光地で団体客を率いるガイドが拡声器を使用しており実に騒々しいことです。

 

もっとも、騒々しいと感じるのは日本人だけではないようで、中国人ガイド氏の話では拡声器使用を規制する方向にはあるとか。(詳しい話は忘れましたが)

 

あと数年もすれば、「おひとりさま」レストランで適量の中国料理を楽しみ、静かな観光スポットを見学できる・・・・ようになるのでしょう。

 

といったことを書いているうちに関西空港に着きました。

ただ、関空で5時間待ち・・・まだ先は長いです。

 

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中国 桂林・張家界観光 ロープーウェイ乗り場で従順に待つ人々を見て思うこと

2019-07-27 21:43:55 | 中国

(張家界のロープーウェイ乗り場で順番を待つ人々 写真に写っているのは、長蛇の列のほんの一部です。)

 

【中国ショーにおける伝統文化】

現在、中国南部を旅行中です。

一昨日の寝台列車で桂林から移動し、昨日・今日は映画「アバター」の舞台とされる張家界を観光しています。

 

昨日、例によって夜に少数民族文化をモチーフにしたショーが開催されているということで、「まあ、せっかくここまで来たのだから、ホテルの部屋でパソコンをいじっているよりよかろう」と思って、鑑賞してきました。

 

結果は、“銭失い”でした。

東南アジア各地に伝統芸能を外国観光客に見せるエンタテイメントはあります。カンボジアのアプサラダンスや、インドネシア・バリ島のガムラン演奏やバロンダンス等々。

 

それらはもちろん、観光客用にアレンジさえていますが、程度の差はあれ、一応、伝統文化のスタイルは維持されています。

 

しかし、中国で「少数民族のショー」と言うと、要するに少数民族風の衣装を着用した出演者が繰り広げる、創作ダンス、雑技、コント、ファッションショーの類です。

 

そこには、微塵も少数民族固有の文化は存在しません。

 

改めてそのことを確認したショーでした。

漢族から見た少数民族世界・・・という問題は、陽朔の超大型ショー見学の際にも書きましたので、今回はパス。

 

それ以外に、今回目に付いたのは、外国人用にスクリーンに解説が表示もされるのですが、それが英語・ハングル・ベトナム語で、日本語はないという点。

 

数年前に見たショーでも同様でした。

これは単に、日本人観光客の数が少ないということの現れなのか、それとも、日本語を表示することに躊躇するものが中国側にあるのか・・・・そのあたりはわかりません。

 

【良い席目指して我先にと殺到する人々】

ショーは最初屋内で1時間ほど行われ、その後に劇場前の屋外にステージを移動して行われる形。

屋内は指定席ですが、屋外は自由席。

 

そうなると、屋内ショー終了時点で、屋外ステージのいい席を確保したいという観客が殺到するだろう・・・・ということは容易に想定できます。

 

実際、そのような展開になりましたが、別にこれを嗤うつもりもありません。

私も、本音ではいい席が欲しいとは思っていますが、ただ、我先にと殺到するのは見苦しいという意識で抑制しているだけです。

 

よく中国人はメンツを重視すると言われますが、いい席を求めて殺到するような見苦しいまねはしたくないというのは、一種の日本人のメンツでしょう。

 

何に対してメンツを考えるかの違いです。

 

【ロープーウェイ乗り場の順番待ちで異様に従順な人々】

いずれにしても、我先にいい席に殺到するように、中国の人は自分の利益を確保することに躊躇がありませんが、その一方で、日本人からすると異様に従順というか、長いものに巻かれるようなところも。

 

今日、観光中にロープーウェイの順番待ちで長蛇の列ができていました。

 

中国の観光地は、今や大勢の中国人民が押し寄せていますので、バス乗り場等でこうした長蛇の列ができることは、ごく普通のことです。

 

そうした状況に対応して、文字通りのピストン輸送が行われますので、長蛇の列とは言いつつも、10分、15分待てば乗り込むことも可能です。

(もっとも、一昨日は気温37℃ そんな状況で大勢の人ごみのなかで順番を待つのはとても大変。そのせいもあって昨夜から風邪気味で体調を崩しています)

 

でもって、今日のロープーウェイ順番待ちの列ですが、これがまったく動きません。

20分ほども止まったまま。

 

先頭で様子を見ているガイド氏に電話して確認したところ、「点検作業が実施されている」とのこと。

 

どういう理由で点検作業が行われたのか知りませんし、安全のために必要なことであればやむを得ないことです。

 

でも、暑い中を並んでいる者の本音としては「こんなときに点検なんかするなよ!やるなら営業時間外にやれよ!」というのが本音。

 

この間、どういう理由でストップしているのかの説明もありません。

 

でも不思議なぐらい中国人民は文句も言わず、並び続けています。

日本なら「どうなっているの? あとどのくらいかかるの? 早くしてよ!」といった苛立ちの声が上がるところです。

 

あとで、そのあたりをガイド氏に聞くと、「中国ではこういうことはよくあることなので、誰も文句を言いません」とのこと。

 

大げさに言えば、中国4千年の歴史のなかで培われた、権力に逆らわずに暮らすことが生き延びるために不可欠であるという、長いものに巻かれやすい意識でしょうか。

 

歴代王朝を引き継ぐ中国共産党支配に対しても、政府や当局・金持ちのやることに文句を言っても自分が損するだけだ・・・という意識でしょうか。

 

人民レベルで他人の足を引っぱってでも自分の利益を目指すという風潮と、「お上」のやることに従順な風潮が対照的ということで興味深い光景でした。(結局、ロープーウェイに乗るまでに50分かかりました)

 

もっとも、中国では土地強制収用などを巡って、超頻繁に住民抗議が起きており、ときに暴力沙汰になることも珍しくありません。

 

おとなしく文句も言わず順番を待つ人民と、頻発する過激な抗議行動・・・・これがどう関係するのかは知りません。

従順に従っているように見えても不満が鬱積しており、抗議行動を主導するような核になる存在があれば、その不満が一気に噴出するということでしょうか。

 

*****共産党の会議会場で爆発、幹部ら20人けが 中国・四川*****

中国内陸部・四川省綿陽市石馬鎮で26日、住宅地にあるビル1階で爆発が起きた。中国メディアによると、現場のビルでは当時、地元の共産党幹部が会議を開いており、20人が重軽傷を負った。警察は容疑者の男を拘束したという。

 

共産党四川省委員会の機関紙、四川日報などによると、爆発は26日午前11時50分(日本時間同日午後0時50分)ごろに発生した。

 

この地区では再開発事業に関連した住民の強制立ち退きが進められており、爆発があったビルには事業の拠点事務所が入居。党幹部らは立ち退き絡みの会議を開いていたとみられる。

 

これまでも、立ち退きに反対する住民らによる暴力事件が起きていたという。【727日 朝日】

************************

 

そういうことであれば、習近平国家主席もおちおち枕を高くして寝ることはできないかも。

そのあたりが、共産党が体制維持のための取り組みに躍起になる所以かも。

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中国 桂林・張家界観光 当然ながら、感じの良い人も、悪い人も

2019-07-26 23:37:50 | 中国

(「八角寨」の低い位置にある展望所からの眺め 頂上からはまた景観も変わります)

 

【日中文化 似ているようで違いも】

日本と中国 共通の文化も多く、漢字もそのひとつですが、当然両国間では差異も。

そんな微妙な関係が「誤解」を生んだとか。

 

****「京アニ」火災、中国から寄せられた声 「加油」めぐりすれ違いも*****

「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)で起きた火災は、中国でも注目され、ネット上では「眼涙止不住(涙が止まりません)」、「不要再有人去世了(これ以上の犠牲者を出てほしくない)」など多くのコメントが集まっています。一方、中国語で励ましを意味する「加油」を巡っては、ちょっとしたすれ違いも……。(中略)

 

「お祈りには国境はない。平安を祈ります」

事件は、CCTV(中国中央テレビ局)が報道したほか、中国版ツイッター微博(weibo)をはじめとしたSNSや、動画サイトでまたたくまに広がりました。

微博では「#日本京都動画発生爆炸」のハッシュタグがついた記事は7000万近いページビューを集めており、コメントなどをしたユーザーは12千人を超えています。犠牲者が33人に上ったニュースに対しても、1万以上のコメントが集まりました。

京アニのファンだけではない、多くのユーザーがコメントをしており、「這是恐怖襲撃(放火事件はまさにテロ事件)」といった声も多く寄せられています。(中略)


そして、こんな言葉も。
「祈禱不分国界!願平安(お祈りには国境はない。平安を祈ります)」

 

「加油」をめぐるちょっとしたすれ違い

京アニへの中国からの励ましについては、ちょっとしたすれ違いも起きました。

中国語で、「頑張れ」を表す際には、「加油」(ジャーユー)といいます。語源について諸説ありますが、清王朝の時代、科挙試験に参加する受験生を励ますため、受験生らに照明用の灯に油を加えた学者がいたことから、「加油」が使われるようになったとも言われています。

一方、今回は火災事件なので、「加油」を「油を加えよう」と受け止めてしまう日本人もいたようです。

漢字が共通しているからこそ起きたトラブルに気づいた人の中には、ツイッターなどで「加油」の中国語の意味を日本語で説明するアカウントも生まれています。

「『加油』という単語に対して、いくらどう思っても『頑張って』の意味しかない。どんな事件があっても中国人は善意を持って『加油』で被害者に応援します」(後略)【720日 withnews

*******************

 

中国語コメントに目をとおす日本人なら、「加油」の意味は当然に知っているはずで、「本当かね・・・」という感もありますが、まあ、大きく「加油」と書いてあったものが、中国語を全く知らない日本人の目に触れたということでしょうか。

 

【ロープーウェイに、人生を考える】

現在、中国を観光中で、昨夜の寝台列車で桂林から張家界に移動しました。

 

昨日は桂林方面での最後の観光ということで、世界遺産「八角寨」(818m)に登ってきました。往復で約3時間、気温はおそらく三十数度、普段体を全く動かさない虚弱体質高齢者にはきつかったですが、なんとか山頂までたどり着きました。

 

八角寨がどういう場所かは本旨ではないので省略します。

写真のような、奇妙な形(桂林でよく食べられるタニシみたいに見えます)の山々が見られるところです。

 

前述のように結構苦労して登ったのですが、この山は桂林がある広西チワン族自治区と湖南省の境にあって、私が登った反対側、湖南省側からはロープーウェイで頂上付近まで上がれます。

 

楽したい私も「じゃ、湖南省側に回ってロープーウェイで」という話をガイド氏に相談したのですが、回り込むには相当に時間がかかることと、省をまたいだ営業はなんだか不都合があるみたい(詳しい事情はわかりません)で却下。

 

山道を登る間は人も少ないのですが、頂上にはロープーウェイでやってきた大勢の観光客が。

 

湖南省側に伸びるロープーウェイを複雑な思いで眺めていました。

 

考えてみれば、今回「八角寨」だけでなく、人生の多くの場面で、苦労して実現したのに、別の楽な方法で達成したが大勢・・・・という場面はよくあることです。

 

これを「骨折り損」「要領が悪い」と考えるか、それとも苦労することに何らかの意味をもたせるか・・・・見解も多々あるでしょう。

 

中国の山奥で、そんな人生について(ちょっとだけ)考えた次第です。

 

【非常に面倒・厄介だった乗り換え なかには感じの悪い駅員も】

「八角寨」を下りてから、いったん桂林にもどり、桂林から三江まで高速鉄道、三江から在来線の寝台列車で張家界に移動しました。(この移動は、基本、一人です)

 

と言えば簡単そうですが、この乗り換えが結構面倒。

 

高速鉄道の三江の駅と在来線の三江の駅はかなり離れています。

その移動もさることながら、在来線三江で、どういう形で待てばいいのかも不安だったので、移動を補助する現地の方を手配してもらい、その方の車で移動。

 

行けども行けども在来線三江駅にはつきません。

もし、一人でタクシー移動していたら、「どこに連れていかれているのだろうか?」とパニックになったことでしょう。

 

3040分ほどかかったでしょうか、ようやく到着。

 でも駅舎には鍵がかかっており入れません。

どうやら、この駅に停車する列車は数本しかないので、列車が来る時間だけ駅員がやってきて業務をするようです。

 

それまで駅舎の外にある待合場所で待つことになります。

 

以上のような事情を理解するのに、中国語しか話さない現地の方との間で、いろんなやり取りがありましたが、なんとか了解。とても感じのいい方でした。

 

このあたりも、一人でやってきていたら途方にくれたところです。

 

待ち時間が3時間以上ありましたので、外の椅子で蚊と戦いながら、眠気とも戦いながら待ちます。

 

2時間後ぐらいに駅員が数名やってきて業務開始。

 

中国は乗車前に荷物のセキュリティー検査や、身分証確認がありますが、この三江駅の係員がまた横柄な感じ。

中国語で何だか言っていますが、どうやらパスポートのことのようです。

 

中国人の多くがまったく英語を解さないことは今も昔も変わりませんが、身分確認の担当官なんだから「パスポート」という単語ぐらい覚えておけよ・・・とも。

 

もっとも、あえて「パスポート」という英語を使用しなかったのかも。「ここは中国なんだから、外国人が中国語を理解するのが筋だ」ということでしょうか。そんな底意地の悪い横柄さを感じさせる駅員でした。

 

もちろん、全員がそういう訳ではなく(むしろごく少数でしょうが)、たまたまの個人的資質の問題です。

三江でも、親切に乗車位置を教えてくれた駅員もいました。

 

普段は眠れない寝台列車ですが、「八角寨」で疲れていたので、よく眠れました。

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中国 桂林・張家界観光 現金払いは? 「北京ビキニ」は恥ずかしい トイレ事情など

2019-07-25 00:19:25 | 中国

(陽朔の電動カート乗り場 現金払い窓口も)

【中国で現金払いは?】

21日(日曜日)から中国を観光旅行中です。

今回は、桂林・張家界方面。

 

昨日(23日)はチワン族が多いエリアの「龍脊棚田」を、今日はトン族の美しい木造建築(風雨橋、鼓楼など)が見られる三江の「程陽八寨景区」を観光しました。

その詳細は旅行記サイトにアップするとして、旅行中に感じたことをいくつか。

 

周知のように、中国ではスマホでの決済が一般化して、現金を持ち歩かない習慣もできつつあるとのこと。

 

現金しか使えない外国人は迷惑がられるのだろうか・・・・との不安もありましたが、別に現金で支払っても支障はないようです。

 

駅のお店で見ていると、現金払いの人も若干名はいるようです。(ざっとの感じでは10人に一人・・・・といったところでしょうか)

 

冒頭写真は、漓江下りの到着地・陽朔での電動カート乗り場の様子ですが、手前のスマホ決裁窓口の隣には現金払い窓口もあって、そちらも混雑していました。(実際に現金で支払っているのか知りませんが)

 

便利だと、中国人が大得意のスマホ決裁ですが、確かに、使う方はポイントなどもたまるし、集まったデータは貴重な資源ともなりますので、やがては日本でも普及するのでしょう。

 

もっとも、私などは財布を持たず、ズボンのポケットに現金を入れている人間ですので、スマホ決裁より現金での支払いの方がずっと簡便のようにも思うのですが。

 

中国でも、スマホ決裁に慣れていない人は結構いるようで、中年・高齢女性がレジでスマホのアプリを立ち上げようとしてモタモタしている場面も時折見かけました。(現金でも、非常に時間を要するおばちゃんや高齢者が大勢いますので、その点では同じですかね)

 

【「北京ビキニ」は恥ずかしいという意識も】

最近、上海のゴミ分別開始と同じころに話題になった「北京ビキニ」禁止の動き。

 

****風物詩「北京ビキニ」で物議 女性のオシャレに飛び火****

中国・北京市内の公園には、作業員の男性のように、おなかを出して休んでいる人が大勢いた。

中国では、ほぼ当たり前とされてきた、暑さ対策のための上半身の露出。

誰が呼んだか、「北京ビキニ」。

 

これが今、問題となっている。

(中略)恥ずかしいとは思っていないようで、夏の最高気温が40度近くに達することもある中国では、昔から存在する納涼スタイル。

 

水着のビキニと似ていることから、「北京ビキニ」とも呼ばれる夏の風物詩なのだが...

 

街では、「すごく非文明的だと思います。年齢問わず、街の景観に悪い影響がありますよ」、「もっと意識を持つべきです。マナーに気をつけないと。このままじゃダメでしょう」などの声が聞かれた。

 

「腹出しスタイル」は、文明的ではないとして、条例によって規制する動きが拡大。

北京に近い天津市は、公共の場で上半身裸になることなどを禁止する条例を施行。

もし、警察の改善命令に従わなければ、日本円で最高3,200円の罰金が科される。

 

さらに7月に入ると、山東省の済南市が、過度な露出の改善に取り組むよう、関係機関に通知。

条例には、公共の場で北京ビキニや上半身裸などをやめない違反者の実名を公表することも盛り込まれている。

 

公園で本を読む北京ビキニの男性に話を聞いた。

男性「規制に反対はしないよ。直せと言われたら直すけど、時々、暑くてしょうがないんだもん」

暑さしのぎの「知恵」として定着する北京ビキニの規制をめぐっては、インターネット上で、「行き過ぎた規制」、「エアコンを使うより環境に優しい」などと反対意見も噴出している。

 

その結果...

ウェイボより「ちょっと矛盾してる。女性は見せていいけど、男性はダメだなんて」

論争は、女性のへそ出しファッションに飛び火。

 

確かに似ていなくはないが、当然、「女性のへそ出しは、服のデザインが関係してるかもしれないけど、おじさんのへそ出しは、少し非文化的よ」、「“美しい”と“見苦しい”は違います。男性のおなかは見苦しいけど、女性の細い腰はいいと思いますよ」などの声も。

共のマナー向上が叫ばれる中国。熱い論争は、まだまだ広がりを見せそう。【715日 FNN PRIME

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ガイド氏に尋ねても「どこの話ですか?中国?」と全く知らない様子でした。少なくとも桂林方面には及んでいないようです。

 

もっとも、「北京ビキニ」自体、目にすることが少なりました。

今回旅行で目にしたのは一人だけ。

 

ガイド氏(30代?女性)が暑がるご主人に「暑いなら、おなかを出したら?」と「北京ビキニ」を勧めたところ、ご主人は「そんなの恥ずかしいじゃないか」とのことだったそうです。

 

中国の人々の意識も急速に変わりつつあります。

昔は頻繁に見かけた路上での「痰吐き」も、最近ではまったく見かけなくなりました。

 

【食器の「消毒済みパック」を信用しない中国人】

中国の飲食店で出される皿やコップ、箸が非衛生的だとの話は昔からありますが、近年では、どこの店も消毒済みのビニールパックされたお椀・コップ・スプーン(一人分ずつセットでパックされています)を使用するようになっています。

 

衛生的だし、業者が回収するので、お店は洗う必要もない・・・という訳です。

 

それでも中国人は「消毒済みパック」を信用していないようで、パックから取り出したお椀・コップを熱いお茶で熱湯消毒してから使用します。

 

熱湯消毒に使ったお茶を捨てる洗面器が店に用意されています。

 

【ホテルのシーツにマイクロチップ トイレには電光表示】

一時期、ホテルの「手抜き清掃」が話題になりましたが、こんな対応も。

 

****ホテルのシーツなどにマイクロチップ、洗濯時期の表示サービス人気 中国****

中国・湖北省武漢の複数のホテルとシーツやタオルなどのクリーニング契約を結んでいる企業がこのたび、リネン類がいつ洗濯されたかを確認できるマイクロチップサービスを導入した。

 

誰しもホテルのベッドでダニやノミの被害には遭いたくないとあって、インターネット上で好評を集めている。

 

このサービスは、シーツ、枕カバー、タオルに非常に薄いマイクロチップを埋め込み、宿泊客がQRコードをスキャンすれば、最後の洗濯の正確な時期を確認できるというもの。ホテル側も、カバーやタオル11枚を追跡調査することが可能になる。

 

この背景には、最近発覚した高級ホテルの不衛生問題がある。上海の「リッツ・カールトン」や「ウォルドーフ・アストリア」、北京の「ザ・ペニンシュラ」といった五つ星ホテルで秘密裏に撮影された動画で、非衛生的な清掃の様子が捉えられていた。

 

映像には、清掃員がシャワーやトイレを清掃するのに使用したタオルやスポンジで室内に置かれたコップなどを拭いている様子が映っていた。オンライン上でたちまち数千万回視聴され、これらの高級ホテルは昨年11月、謝罪に追い込まれていた。

 

ソーシャルメディア上には武漢で始まったこのサービスを歓迎する声が集まり、多くのユーザーが全国展開に期待を示している。

 

この技術を開発した北京の企業「藍天」によると、埋め込まれたチップは180度の高温に耐えられ、200回まで洗えるという。 【715日 AFP

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もちろん、問題の根底には、非衛生的な清掃をする従業員の意識の問題がありますが、それはそれとして、これは使えるアイデアかも。

 

こうした取り組みが広がることで、ホテルのシーツ・毛布が清潔になるのなら旅行者としては大歓迎です。

 

昔は中国のトイレというと、仕切りがない「ニーハオトイレ」だとか、異様に汚いとか、非常に評判が悪く、このために中国旅行を二度とリピートしないという方もいました。

 

そのトイレも最近は大きく変化し、ほとんどは水洗式(もちろん個室)になっています。

昔ながらの「ニーハオトイレ」は、昨年、貴州省の田舎町の公園で遭遇したのが最後。(ガイド氏も「まだありましたか!」と驚いていましたが)

 

ちゃんと、ジェンダーを問わない多目的トイレが設置されているところも多くなりました。

ただ、温水便座の普及はこれからのようです。

 

個室が使用中かどうかは、鍵をかけた際に、ノブのところが赤色が表示される・・・という形式が日本では一般的ですが、躍進目覚ましい中国では、下記のような電光表示トイレも。(日本でも大都市ではあるのかもしれませんが、田舎者の私は国内では見たことがありませんでした)

 

明日は「八角寨」という奇妙な形の山が見渡せる場所に行きますが、山登りする必要があります。

暑い中の山登りですから、汗だくになります。まあ、普段不健康な生活をしているので、たまにはいいかも。

 

 

 

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中国 桂林・張家界観光 変わる中国 変わらぬ中国

2019-07-23 14:32:26 | 中国

(高速鉄道の広州南駅)


【消えた? 中国南方航空名物「ワサビ」】

中国を観光しています。若い頃から、10回目ぐらいの中国旅行です。今回は桂林・張家界方面が目的地。

 

21日に中国南方航空で関空から広州へ。

実を言えば、このフライト、ちょっと期待はずれでした。

 

別に中国南方航空に問題があった訳ではありません。


以前、中国南方航空を使用した際に機内食で出てきた、蕎麦に付いている小袋入りのワサビが殺人的に辛く(不用意に口にすると、間違いなく咳き込み、呼吸困難にもなるという危険な代物)、今回も出会えるかな・・・と、かなり期待していたのですが、今回フライトではごく普通の(むしろ気の抜けたような)ワサビがすでに蕎麦に乗っかっていました。残念。

 

中国南方航空のある種「名物」にもなっていたのに・・・・。このワサビは、別に“いいもの”でなくても、印象付けることができれば効果があるという「広告」の基本を改めて示すものでした。

 

【消えた「漓江下り」のキャンディー】

広州着後、高速鉄道で桂林に移動。

冒頭写真は広州の駅構内の様子。とにかく圧倒的な人、ひと、ヒトです。

中国という国の日本とは異なる姿を感じさせてくれる光景です。

 

22日は桂林で、定番「漓江下り」を楽しみました。

桂林には29年前にも一度来たことがあり、「漓江下り」はその際にも。

 

当時の中国は、現在の目覚ましい成長以前の段階で、多くの街は素朴な感じでしたが、さすがに中国有数の観光地・桂林は外国からの観光客が多く、よく言えば華やかな、悪く言えば少し浮いたような感じの街でした。

 

今は中国の他の都市と似たような現代的な街です。

 

当時は、3回目ぐらいの海外旅行、初めての中国旅行で、見るもの、聞くものがすべて珍しく、よく“墨絵のような山水画の世界”と形容される「漓江下り」はとても印象深いものでした。

 

ただ、ちょっとこれは・・・・という場面も。

 

遊覧船のデッキのテーブルにキャンディーがたくさん置いてあり、川の岸辺から地元の子供たちが泳いでくると、欧米人観光客が船上からそのキャンディーをばらまく・・・という光景です。

 

終戦後の日本でもあったとされる「ギブミー、チョコレート」の世界です。

 

さすがに、現在はそういうものはなくなっています。これはよい変化でしょう。

だいたい、今どきの中国の子供たちは、両親から甘やかされ、そんなキャンディーには見向きもしないでしょうし。

 

船内の中国人観光客の子供たちは、親からもらったお菓子や果物をのべつ幕なしに食べています。

 

変化ということで言えば、基本的なこととして、29年前の観光客が欧米人であったことに対し、現在は圧倒的多数の中国人民に変わったということも。

 

【陽朔の壮大な野外水上劇「印象劉三姐」に感じる漢族歴史観 異様に高額な中国観光地】

「漓江下り」の終点である陽朔の市内を散策後、夜は壮大なショーを鑑賞。

中国を代表する映画監督で、北京オリンピックの開会式を演出したことでも知られる、張芸謀プロデュースの「印象劉三姐」ショーです。

 

内容は、この地の少数民族(トン族、ミャオ族、チワン族)をテーマにしたもののようですが、とくに物語性はそんなにないみたい。

 

とにかく“中国人好み”で、大規模・派手な舞台・演出の野外劇です。

 

ガイド氏が「舞台は2~3kmありますから・・・」と言っていましたが、そのときは「何言ってんだか」と思っていました。

でも、実際に入って納得。

陽朔の美しい山水画の世界をそのまま自然の舞台とし、さらにトン族の伝説の歌の名手「劉三姐」の話をモチーフとした大掛かりな水上ショーの舞台は2キロにわたる漓江水域とその背景にある12の山で構成されているそうです。

 

2kmぐらい先の桂林独特のカルスト地形の山々がライトアップされて舞台背景となっています。

観客は3000名ぐらいでしょうか。

(開幕前の観客席、水上舞台の様子)

演出は張芸謀らしく、大掛かりできれいですが、15年前からやっているショーで、その点では演出はやや“古い”ところもあるのかも。

 

内容・演出は別にして、ちょっと気になったことも。

 

ショーの中の少数民族は、おだやかに、平和的に暮らし、歌や恋を楽しみ・・・それを大勢の漢民族観光客が楽しみ・・・・でも、実際の中国の歴史は漢民族と少数民族の戦いの歴史でしょう。

 

ショーには、そうした現実世界は一切出てきません。

漢民族を頂点とする中華世界における調和的少数民族という世界観を反映したもののようにも。

 

日本人も、漢族にすれば、一種の少数民族でしょう。ベトナム、朝鮮、チベット、モンゴル、ウイグル・・・・も。

 

以前、西安の歴史博物館を観光した際に、漢や唐の時代、多くの少数民族がひとつの中国という国家のもとで強調し、文化・経済は大いに発展した・・・といった歴史観に違和感を覚えたことも。

 

そうした歴史観はあくまでも漢族中心の歴史観であり、漢・唐の統一は周辺少数民族にとっては侵略ともなります。

 

そうした世界観・歴史観の違いが、現在問題となているチベットやウイグルの問題の根底にあります。

 

****「ウイグルは空前の繁栄」中国政府が白書で反論 ****

中国政府は21日、新疆ウイグル自治区は「史上最高の繁栄の時期を迎えている」と主張する白書を発表した。

 

「社会は調和がとれ安定し、生活水準も改善が続いている」とした。100万人以上の少数民族ウイグル族が同地区で拘束され、欧米社会が「人権侵害だ」と批判していることに対し、白書を通じて反論した。

 

中国政府は今年3月にも白書を発表し、ウイグル族の拘束は「テロを予防するための職業訓練が目的だ」などと主張した。短い期間に2度も白書を出して反論するのは、習近平(シー・ジンピン)指導部が欧米社会の人権批判に警戒を強めていることの表れといえる。(後略)【7月21日 日経】

*****************

 

美しく演出された少数民族の世界を見せるショーに、漢・唐の時代から変わらぬ漢族中心の視点を感じた次第です。

 

もうひとつ気になったのは、もっと現実的かつ現代的な中国の問題。

ショーのチケット代が馬鹿高いということ。

 

2kmさきの遠方までを舞台として、数百名が織りなすショーですから、階段状の客席のなかで、全体を見渡せる最後部の一番高いところがVIP席(屋根付きの個室)になります。

 

ステージに近い席は、人物は見えても、全体がよく見渡せないので安くなります。

 

私の席は、VIP席直前の最後部に近い“いい席”でした。

お値段の方も480元(約7800円)と結構なお値段。

 

こうした観光ショーもですが、中国では観光地の入場料が非常に高く、ちょっとしたところに入場するにも2000円ぐらいします。有名どころとなれば3000円以上。

 

日本では国宝に指定されている場所でもせいぜい数百円、多くの観光地は無料、あるいは200円前後で入れることに比べると、中国観光地の高額は異常です。

 

そんな馬鹿高い観光地に大勢の中国人観光客が押し寄せているのですから、中国人の懐具合も随分とよくなったものです。

 

今、陽朔から龍脊に移動する車内です。

今日の観光メニューは龍脊の棚田見学です。

 

もちろん美しい棚田は日本各地にも、またバリ島などアジア各地にありますが、やはり中国となるとその規模も・・・・といったところだろうと期待しています。

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イラン問題で高まる緊張 各国はそれぞれの対応 イラン、イギリス、UAE、サウジそして日本

2019-07-22 01:13:24 | イラン

(ヘリコプターから英タンカーに降下するイラン革命防衛隊員の映像=19日、ホルムズ海峡付近(ロイター)【7月21日 産経フォト】)

 

【イギリス・イランのタンカー拿捕合戦でイランの孤立更に深まる流れも】

イランとイギリスの間でタンカー拿捕合戦がエスカレートしています。

 

事の起こりは、7月4日のイギリスによるジブラルタル沖でのイランタンカー拿捕

 

****英海軍、イランのタンカーだ捕 米は歓迎****

イギリス領ジブラルタル沖で、イランのタンカーがだ捕されたことについて、アメリカのボルトン大統領補佐官は4日、「素晴らしいニュースだ」と歓迎した。

ロイター通信によると、ジブラルタルの沖合で4日、イギリス海軍が、イランの原油を積みシリアに向かっていたとみられる大型タンカーをだ捕した。

イランの原油をめぐっては、アメリカが全面禁輸の経済制裁を科しているが、今回のだ捕はEU(=ヨーロッパ連合)がシリア情勢をめぐり科した制裁に違反した疑いによるものだとしている。

これに対しイラン外務省は、イギリス大使を呼び「アメリカの要請でだ捕されたのであれば、即時解放すべきだ」と抗議した。

一方、アメリカのボルトン大統領補佐官は、「素晴らしいニュースだ」と歓迎。「引き続き同盟国と共にイランとシリアの違法な貿易を阻止していく」と述べている。【7月5日 日テレNEWS24】

******************

 

一時は、イランとイギリスとの交渉進展をうかがわせるような報道もありました。

 

****英外相、イランに保証要求 「タンカーはシリア以外へ」*****

英領ジブラルタル当局によるイランの大型タンカー拿捕を巡り、ハント英外相は13日、イランのザリフ外相と電話会談し、「タンカーが(制裁対象の)シリアに向かわないとの十分な保証を得られれば解放を働き掛ける」と伝えた。ハント氏がツイッターで明らかにした。

 

ハント氏によるとザリフ氏は、対立の激化ではなく問題解決を望んでいるとの意向を示した。両国関係はこのところ急速に悪化しており、イラン側の対応が注目される。

 

ハント氏は、タンカーに積んでいる石油の出所ではなく、目的地を懸念していると伝えた。会談は「建設的だった」としている。【7月14日 共同】

********************

 

しかし、イラン・革命防衛隊は19日、「国際的な航行規則に従わなかったため」という理由で、実質的に報復と思われるによるイギリスタンカー拿捕を行ったことを発表。

 

*****イラン、「漁船衝突で調査」=英外相「危険な道」―タンカー拿捕****

イランの精鋭部隊「革命防衛隊」が緊張の高まるホルムズ海峡で拿捕(だほ)した英船籍のタンカーについて、地元港湾当局者は20日、「漁船と衝突し、漁船からの救難信号にも応答しなかった」と述べ、調査を開始したことを明らかにした。地元メディアが伝えた。

 

運航会社によれば、タンカーには船長を含めインド人やフィリピン人、ロシア人ら23人が乗っていた。ホルムズ海峡を望むイラン南部バンダルアバス港沖に停泊し、乗組員は船内待機を指示されているが、健康状態などに問題はないという。

 

一方、ハント英外相は20日、ツイッターで「イランは違法かつ不安定化を招く振る舞いによって、危険な道を歩んでいる兆候がある」と改めて懸念を表明。「断固とした対応を検討する」と強調した。英メディアによると、同国外務省はこの日、イランの代理大使を召喚した。【7月20日時事】

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拿捕されたイランタンカーに関する交渉の経緯、今回イギリスタンカーの関し、革命防衛隊が拿捕したとしとsいているのに対し、「漁船との衝突」云々の説明・・・・イラン内部における、ことを荒立てずに交渉で対処したい穏健派・ロウハニ政権と、あくまでも実力行使を誇示する強硬派・革命防衛隊との路線対立があるようにも見えます。

 

イギリス側は、対応を更にエスカレートさせる動きも見せています。

 

****英、イラン資産凍結検討 タンカー拿捕に制裁、英紙報道****

イラン革命防衛隊による英タンカー拿捕を巡り、英政府がイランへの制裁を検討していると、21日付の英紙サンデー・テレグラフが報じた。

 

イラン側が英国内に持つ資産の凍結などが案として浮上、ハント外相が22日に下院で公表する見通しという。制裁を実施すればイランの反発は必至で、緊張がさらに高まる可能性がある。

 

同紙によると、英政府は欧州連合(EU)や国連にも協調を呼び掛け、ホルムズ海峡を通過する船舶の保護をさらに強化するよう努める方針。【7月21日 共同】

*************

 

これまでイラン核合意維持の方向で努力してきた独仏もイラン・革命防衛隊によるイギリスタンカー拿捕を強く批判しており、イランは更に国際的孤立を深める状況に追い込まれる懸念があります。

 

また、イギリスをトランプ大統領主導のイラン包囲網の方向に追いやることにもなります。

 

*******************

英国はイラン核合意の維持を支持し、米国の制裁を受けるイランに同情的だったが、今回のタンカーの拿捕合戦でイランに敵対する方向に舵を切り、トランプ政権に同調する可能性もある。

 

そうなれば、辛うじて維持されてきた核合意は完全に崩壊し、イランは自分の首を絞めることになるかもしれない。【7月21日 WEDGE】

*******************

【サウジと協調してきたUAEはイランとの交渉で路線転換の可能性も】

一方、これまでアメリカに同調するサウジアラビアと、イエメン介入などで共同歩調をとってきたUAEには、ホルムズ海峡の緊張高まりを受けてイランとの関係改善を模索する動きも出ています。

 

*****サウジ・UAE連合に亀裂、転変する緊張のペルシャ湾*****

(中略)

UAEの離反

トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。

 

サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 

湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。

 

今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 

こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。

 

例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 

そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 

だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 

UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。

 

レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。【7月21日 WEDGE】

******************

 

UAEのイエメンからの撤収はひと月前ほどからの動きですが、今月13日にはUAEタンカーもイラン側に“えい航”されています。

 

****ホルムズ海峡でタンカー消息絶つ=イラン「支援要請受けえい航」****

米国とイランの緊張が高まる原油輸送の要衝ホルムズ海峡を航行していたアラブ首長国連邦(UAE)の石油タンカー「リア」(全長約60メートル)が現地時間13日深夜、イラン領海内に入った後で消息を絶った。米各メディアが16日報じた。

 

報道によると、タンカーはUAEのシャルジャに向かう途中で急きょ航路を変更。イラン南部ケシム島沖合を最後に位置情報の送信が途絶えたという。

 

米メディアは、イランがタンカーを拿捕(だほ)した可能性を指摘。これに対し、イラン外務省報道官は16日、地元メディアに「ペルシャ湾内で技術的問題が起きたタンカーの支援要請を受け、修理のためイラン領海へえい航した」と主張した。ただ、UAEのメディアは当局者の話として、タンカーは救難信号を発していないと伝えた。【7月17日 時事】 

********************

 

この件に関しても、革命防衛隊は18日に、ホルムズ海峡でイランから燃料100万リットルを密輸しようとした外国のタンカーを14日に拿捕したと発表しており、修理のため云々とするイラン外交当局と見解が異なっています。

 

こうしたタンカー拿捕が、UAEとイランとの交渉を加速させるのか、あるいは頓挫させるのか・・・・

 

【サウジのイランタンカー解放は何かのシグナル?】

イランとの対決姿勢を明確にしてきたサウジアラビアについても、下記のような報道が。

 

****サウジアラビア、イランのタンカー解放=航行中に故障、費用で対立*****

イランのエスラミ道路交通・都市開発相は21日、イランと敵対するサウジアラビア西部ジッダの港に留め置かれていたイランの石油タンカー「ハピネス1」が解放されたと明らかにした。現在イラン船舶にえい航されてペルシャ湾に向けて航行中という。国営イラン通信が報じた。

 

報道などによると、タンカーは4月下旬、紅海を北上中にエンジンの故障に見舞われ、浸水して航行不能になり、最寄りのジッダに寄港した。サウジが多額の修理費を要求し、イラン側が反発するトラブルが伝えられたが、エスラミ氏は「交渉の末、今月20日に問題は解決した」と述べた。乗員も無事という。

 イ

ランのメディアによると、ムサビ外務省報道官は「解放を仲介してくれたスイスとオマーン、必要な措置を講じたサウジの関係者に感謝する」と述べた。イランとサウジは2016年から断交している。【7月21日 時事】 

*********************

 

このイランとの緊張が高まっている時期に、イラン批判の急先鋒に立つサウジによるイランタンカーを解放というのは、何かのサウジ側のイランに対するシグナルでしょうか?

 

【「米主導の有志連合」に日本は?】

アメリカ・トランプ大統領が「米主導の有志連合」を目指しており、当然に日本も対応を迫られています。

 

****護衛艦派遣か資金拠出か*****

(中略)こうした中、トランプ大統領は海軍の強襲揚陸艦「ボクサー」が18日、ホルムズ海峡でイランの武装無人機を撃墜したと公表、米国が自国民を防衛する権利を行使したと強調するとともに、「自国の船舶は自ら守るよう」あらためて呼び掛け、米主導の有志連合に参加するよう各国に求めた。

 

イラン側が米無人機を撃墜した先月の事件では、大統領は直前になって撤回したものの、いったんは報復攻撃を命令した。

 

しかし、今回は激しい非難を避けた。大統領はこのところ、イランの聖職者支配体制を転覆させるような考えがないと述べるなど融和的な姿勢を示し、イランとトランプ政権の間を調停すると提案したランド・ポール共和党上院議員の仲介工作に期待する考えも見せている。

 

だが、米国のイランを締め付ける国際包囲網構築の動きは加速している。防衛の公平分担という大統領の持論に基づくペルシャ湾の有志連合構想について、トランプ政権は19日、同盟国ら約60カ国への説明会を開催した。

 

具体的には護衛艦の派遣や、それができない場合、資金拠出などを検討するよう要請した。25日に2回目の会合を開く予定。

 

米政府は今回、イランとの対決色ではなく、あくまでも船舶の「航行の自由」を確保することを前面に出している。これは反イランを強調すれば、有志連合の結成が困難になりかねないとの危機感を反映するものだ。

 

自衛艦の派遣に慎重な日本政府はとりあえず胸をなでおろしているようだが、トランプ大統領自身から個人的に求められた場合、安倍首相はやはり重大な決断を迫られることになるだろう。【7月21日 WEDGE】

********************

 

自衛艦派遣の問題に加えて、日本はこれまでイランとも独自の関係をいじしてきた事情もあって、今後のトランプ政権の出方によっては、日本も対応に苦慮しそうです。

 

 

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アメリカ  ポピュリズムの波を扇動する「テフロン・ドン」 共和党に問われる保守の矜持

2019-07-20 23:06:02 | アメリカ

21世紀アメリカで湧き上がる「送り返せ」コール】

トランプ大統領の演説に合わせて沸き起こった、民主党非白人女性銀4名に対する「送り返せ」コールの大合唱が人種差別的と物議を醸しているのは報道のとおりです。

 

****「送り返せ」コール黙認? トランプ氏弁明 「ちょっとひどいと...****

アメリカ・トランプ大統領の遊説会場で沸き起こった「送り返せ」という差別的な大合唱について、大統領が苦しい弁明。

 

17日、トランプ大統領が遊説先で、白人ではない女性議員4人に対し、「国へ帰ればいい」と演説したところ、聴衆から「送り返せ」とのコールが沸き起こった。

 

これに対し、トランプ大統領は翌日、「コールはすごく大きく、ちょっとひどいと思った。だから、すぐ演説し始めた」と弁明した。

 

しかし、実際のコールは10数秒間続き、大統領はその間、遮ろうとしなかったことから、人種差別的だとの批判の沈静化には至っていない。【719日 FNN PRIME】

******************

 

「送り返せ」コールを誘導したのも大統領自身ですし、大合唱を諫めるそぶりもありませんでした。

 

上記記事のような、ウソ、責任逃れを平気で口にできるのが、この人の精神的特徴です。

 

「送り返せ」コールの様子は、21世紀の、しかも、これまで人権・民主主義の守護者を自任してきたアメリカの光景とは思えないよう雰囲気にも思えました。

 

100年前の欧州で、ヒトラーなどの扇動演説に興奮する群衆のようにも。

 

今回標的となった白人ではない女性議員4人は、人種の問題だけでなく、移民を象徴する存在としても(3人はアメリカ生まれですが)憎悪の対象ともなっているように思われます。

 

人種差別であると同時に、移民排斥のうねりでしょう。

 

【ポピュリズムの大波に直面するリベラリズム】

これまで人種や移民に対して寛容な姿勢を示してきたリベラリズム、自由主義に対し、先月末、プーチン大統領が「時代遅れ」と断じたことが話題になりました。

 

****20を前に プーチン大統領「リベラルの理念は時代遅れ」****

ロシア大統領府は、G20大阪サミット開幕直前の27日夜、プーチン大統領がイギリスの経済紙とのインタビューの中で、欧米各国で移民の受け入れなど、いわゆるリベラルな政策が行き詰まっていることを指摘したうえで「リベラルという理念そのものが、もはや時代遅れだ」と批判したことをホームページで公開しました。

 

プーチン大統領は、イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、欧米各国で社会の分断が問題となっている背景について「移民問題が起きた時、多くの人々は、リベラルな政策が機能しないことに気付いた」と指摘しました。

そして、リベラルの理念に基づく政策として、移民の受け入れや多文化主義をあげたうえで、「これらは圧倒的大多数の国民の利益に反するもので、もはや時代遅れだ」と批判しました。(後略)【628日 NHK

******************

 

メディアによっては、プーチン大統領の発言を「自由主義は時代遅れになった」と訳しているものも。

 

リベラルと自由主義は概念としては別物でしょうが、イメージしているのは人種や移民に寛容な西欧的価値観でしょう。

 

プーチン大統領が指摘するように、寛容で多様性を重視するリベラルな姿勢は、現実面で大きな混乱を惹起したこともあって、人々の怒りに突き動かされたポピュリズムの大波に直面しています。

 

【ポピュリズムに浸食される保守】

しかし、ポピュリズムの大波に直面しているのはリベラルだけでなく、伝統的な保守主義においても同様でしょう。

 

攻撃されているのはリベラルでも、ポピュリズムによって浸食されているのは保守の基盤です。

 

****リベラルの退潮? 本当に危機に瀕しているのは保守主義だ****

冷戦終結から30年。あのとき世界を包んだユーフォリア(根拠のない幸福感)はどこにもない。世界は、ポピュリズムとナショナリズムが渦巻き、強圧的な政治指導者が国民の称賛を浴びている。

 

何が政治のこうした劣化を招いたのか。リベラルばかりが叩かれる昨今だが、実は、真に危機にあるのは保守主義ではないか。

 

(中略)そういう中で出会ったのが、保守主義の古典、エドマンド・バークの「フランス革命の省察」だった。

 

革命勃発の翌年1790年に出版されたこの本は、革命に対する根本的な批判の書である。だが、単なる伝統擁護、反動ではない。バークは、改革は否定しない。ただ、自由な人間が白紙から理想の政治体制を構築できるという急進思想は、社会に無秩序を生むと考える。

 

既存の制度や慣習が社会を安定させる機能を重視した。現実には、フランス革命はテロルに走り、最後はナポレオンの独裁を生んだ。バークの予言は当たったと言えよう。

 

保守主義とは、特定のイデオロギーではない。政治に対する一種の抑制された態度、経験を重んじるバランス感覚と言えよう。

 

バークが擁護したのは、伝統を尊重しつつ改革を重ねる、名誉革命以来のイギリスの政治体制だった。

 

そういうバークを読んだ私には、大きな疑問が浮かんだ。では、日本における保守主義とは何か。自民党が保守ならば、何を保守しているのか、という問いである。

 

よく知られているとおり、自民党の中には、憲法をはじめとする戦後民主主義の諸改革を占領軍の押しつけと捉え、「戦後体制からの脱却」を唱える有力な流れがある。戦後体制の「保守」ではなくて、「否定」なのだ。戦後体制を「保守」するのは、野党の護憲勢力のほうである。

 

このねじれは、今も消えていない。いや、現在の安倍政権が、予算委員会や党首討論での議論を避けて、国会の軽視する傾向をみると、「保守」の基軸は何なのか、ますます怪しくなる。

 

いまや保守の混迷は、世界に広がる。グローバリゼーションに伴う経済危機や格差拡大が、先進諸国で長らく政権にあった保守政党の基盤を崩しつつあるからだ。(中略)

 

いっぽうアメリカは、保守であるはずの共和党の大統領がホワイトハウスの主となった。しかし、トランプ氏は、「人種差別」と批判される発言を繰り返し、政策の積み上げなど無視して、ひたすらポピュリスト的なアジェンダを追及している。

 

その他の国の保守党も惨憺たるありさまだ。ドイツのメルケル首相のキリスト教民主党は支持率を大きく減らし、フランスでは、保守陣営の柱であった共和党の瓦解が止まらない。旧東欧のポーランドやハンガリーでは、保守主義を通り越して、法の支配を軽視する右派政権が政治を牛耳っている。

 

混乱を象徴する話がある。

628日付の英紙フィナンシャル・タイムズに驚くべき記事が載った。同紙のインタビューに答えて、ロシアのプーチン大統領が「リベラリズムは時代遅れだ」とこきおろしたのである。

 

プーチン氏によれば、多様性を重んじ、移民を受け入れ、性的マイノリティーに配慮するリベラル・デモクラシーは、諸国民の信を失い、もはやイデオロギーとして終わっている、というのだ。

 

これに反論したのが、欧米のエリート層に大きな影響力のあるエコノミスト誌だった。74日号の巻頭論文で、「西側で危機に瀕しているのは、リベラリズムではなく、保守主義だ」と切り返した。

 

同誌は、先ほど紹介したバーク流の保守主義観に立って、議論を展開した。伝統や権威を打ち壊す現在の右からの動きは、これは保守ではない。むしろ、保守を否定する「新しい右翼」だという。

 

グローバルに広がる保守主義のこうした混迷は、今後深刻な影響をもたらすだろう。

 

実務的なバランス思考の保守が退潮し、「新しい右翼」が跋扈するとき、何が起きるのか。保守が本来持っていた伝統や制度への信頼は消えてしまうだろう。

 

社会の絆を失った人々は、扇動的政治家に容易にあやつられる。そのとき、怒りの政治、憎しみの政治が現れる。

 

保守こそが、ナショナリズムとポピュリズムへの防波堤にならなければならないはずなのに、その役目が果たせなくなる。この危機から、日本は自由なのか。このまま政治への信頼が失われ続け、無関心が広がれば、日本もやがて同じ問いを突きつけられるだろう。【719日 GLOBE+】

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【良識的批判をはねかえす「テフロン・ドン」 問われる共和党の保守の矜持】

アメリカ共和党内にも警戒感はあるようです。

 

****共和党が警戒、トランプ氏集会で元難民議員「送り返せ」の大合唱****

元ソマリア難民のイルハン・オマル米下院議員(民主党)をトランプ大統領が支持者集会で攻撃した際に、聴衆の間で「送り返せ」と叫ぶ大合唱が広がったことに、共和党議員が警戒感を強めている。こうした扇動的な呼び掛けが2020年の大統領選に与える影響を心配している。

共和党保守派のマーク・ウォーカー下院議員は、「こうしたことでわれわれが特徴付けられることがあってはならない」と強調。下院の共和党指導部がペンス副大統領との朝食会で、政治リスクの可能性について協議したと明らかにした。

ウォーカー氏や他の共和党議員らは、トランプ氏の支持者らが集会で叫んだ言葉を非難しているが、こうした言葉は、週末のトランプ氏のツイッターに追随したものだ。トランプ氏はオマル氏ら非白人の女性民主党議員4人について、国へ「帰る」べきだと投稿した。

4人はいずれも米国市民で、オマル氏以外は米国で生まれている。

トランプ氏も18日、大合唱との間に距離を置こうとした。ホワイトハウスで記者団に「少し気まずく感じている。私としては気に入らなかったと言いたい。賛成もしないし、もう一度言うが私は言っていない。彼らが言ったのだ」と語って見せた。

18日時点で共和党議員250人のうち40人以上が、非白人議員への攻撃を巡ってトランプ氏を批判している。【719日 ロイター】

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共和党議員250人のうち40人以上が、非白人議員への攻撃を巡ってトランプ氏を批判しているとのことですが、下院での非難決議に賛同したのは4人だけ。

 

トランプ大統領は勝ち誇るように“「共和党がいかに団結しているか分かり素晴らしい」。トランプ氏は16日、「人種差別」発言を非難する決議が下院で可決された際、共和党の造反者が4人だけだったことを誇った。”【717日 共同】とも。

 

例によって、岩盤支持層はもはやトランプ大統領の言動の内容などは気にもしていないようです。

気にしていないというか、リベラルだろうが保守だろうが、既存の“良識”から批判を受けるほどに、既存の秩序を打破する存在として支持を強固にしていくようにも見えます。

 

****トランプ氏は「テフロン・ドン」か 差別的発言でも支持率不変****

(中略)ただ、トランプ氏の支持率は今回の発言以降、ほぼ動いていない。支持者の間では「度重なるスキャンダルでも傷つかない、テフロン加工のように丈夫なドナルド・トランプ氏」の意味を込めて同氏を「テフロン・ドン」と呼ぶケースも増えている。【719日 産経】

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既存秩序の破壊衝動に駆られたポピュリズムは、慎重で、経験・バランスを重視する保守主義とは別物です。

 

選挙に強いという理由でポピュリズムを扇動する「テフロン・ドン」を担ぎ続けるのか・・・・問われているのは保守の矜持でしょう。

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フィリピン  「超法規的殺人」が続くドゥテルテ政権 国際批判も意に介さず「王朝」へ

2019-07-19 22:41:56 | 東南アジア

(選挙キャンペーンで登壇した(左から)サラ・ドゥテルテ氏、ドゥテルテ大統領、セバスチャン氏=2019年5月、ダバオ、鈴木暁子撮影【627日 朝日】)

 

【いまや記録さえ残されなくなった「超法規的殺人」】

フィリピン・ドゥテルテ政権が警察および「謎の組織」による麻薬関連容疑者に対する「超法規的殺人」を進めていること、このような「強い姿勢」は国内的には多くの国民から支持されていることなどは、これまでも再三取り上げてきました。

 

ただ、国民の支持が高いとは言っても、「被害にあうのは麻薬に関係した連中(多くは貧困層)だけ。まっとうな市民には関係ない話で、それで治安がよくなるなら結構なことだ」という話でもあり、それでいいのか?という疑問がぬぐえません。

 

5000人とも、27000人とも言われる麻薬戦争犠牲者のなかには、相当数の“誤って殺害された者”あるいは“警察にとって都合の悪い者”も含まれていると推察されます。

 

****3歳幼女が撃たれて死亡、フィリピン麻薬戦争で新たな犠牲者****

ドゥテルテ大統領が主導するフィリピンの麻薬戦争で、また1人新たな犠牲者が出た。

マイカ・ウルピナちゃん、わずか3歳。1週間前、警察はマイカちゃんの父親に麻薬密売の疑いがあるとして自宅を急襲した。その際に撃たれて亡くなった。警察は父親が娘を盾にしたと非難した。

「発砲の基準だって― あるに決まっているだろう」

麻薬戦争開始以来、国家警察長官としてドゥテルテ大統領を支え、現在は上院議員に転身したロナルド・デラロサ氏は以下のように述べ、警察の対応を擁護した。「まず巻き添えが出ないように安全を確保することが先決だ。だが言ったように、完璧ということはありえない。」

その上でこう続けた。「子供を撃ちたいと思う警察官がいると思うかね。いるはずがない。彼らも子を持つ親だからだ。だが不幸な事態が起きてしまった。」

だが4日行われたマイカちゃんの葬儀で母親は、警察の説明はウソだと主張した。母親によると、自宅が警察の急襲を受けた際、家族は全員就寝中で、父親は一切抵抗しなかったと話す。また自身にも身の危険を感じるという。

「戦いたいけれど、相手がわからないから少し怖い」と母親。「どうやって戦えばいいのか自問している。危険が及ぶかもしれないから、子供たちから離れなければならないかもしれない。」

20以上の国々が国連に対して、フィリピンの麻薬戦争に対する調査をするよう申し入れている。また国連人権委員会に対し問題への対応が要請された。

フィリピンの警察は、これまでに5000人以上の容疑者を殺害したと公表。これらの容疑者は武装しており、逮捕に抵抗したためだと説明している。

だが活動家らは、実際にはこれより多い約2万7000人が殺害されたと指摘している。【78日 ロイター】

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「超法規的殺人」が日常化するにつれ、いまでは死亡事案に関する報告書すら作成されないほどに、感覚が麻痺しているようにも見えます。

 

****人目につかず殺せる郊外に拡大、フィリピン麻薬戦争****

(中略)「ドゥテルテ政権が発足して最初の2年くらいは、死亡事案に関する報告書が残されていたが、いまや記録さえ残されなくなった」とアムネスティのフィリピン支部長、オラノ氏は指摘する。「その結果、超法規的殺人や警察権力および法律の乱用、そして貧しい人ばかりが犠牲になることが日常的になってしまった。」

またアムネスティは8日、麻薬戦争が首都マニラから郊外に拡大しているとの報告書を公表した。これについてオラノ氏は「(郊外には)マニラよりも人目につくことなく人を殺せる場所がたくさんある。おそらく警察にとって、より自由に作戦を行えるだろう。マニラでは難しくても、郊外なら高速道路や田んぼに死体を遺棄することができる」と述べた。

一方、ドゥテルテ大統領の報道官は超法規的殺人の可能性を否定。調査要求は、フェイクニュースに踊らされた「外国政府の不当な干渉」だとしている。【710日 ロイター】

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国際的批判はもちろんありますが、ドゥテルテ大統領は無視・反発を続けています。

また、これだけの「超法規的殺人」が横行する結果として、多くの遺児が発生しており、社会問題化しています。

 

****比「麻薬戦争」あふれる遺児 国連人権理事会が調査要求****

国連人権理事会は11日、フィリピンドゥテルテ政権が掲げる麻薬犯罪対策の下での超法規的殺人といった人権状況について、調査を求める決議を初めて採択した。

 

フィリピンでは取り締まりで親を亡くした遺児の支援が社会問題化しているが、就任4年目を迎えたドゥテルテ大統領が対策を緩める気配はない。

 

国連人権理事会が任命する特別報告者は、ドゥテルテ氏が大統領に就任した2016年にフィリピンの状況調査に意欲を示したものの、フィリピン側が拒否していた。だが、今回は理事会が国連人権高等弁務官に対し、約1年後に報告書の提出を求めるという決議案が、47理事国中、賛成18票、反対14票、日本を含む棄権15票で採択された。

 

賛成が反対を上回った背景には、ドゥテルテ氏が始めた「麻薬戦争」に伴い、子どもを含む多くの命が失われている事実がある。

 

6月29日夜には、ルソン島リサール州で警察による銃撃を受け、3歳の女児マイカ・ウルピナちゃんが死亡した。国家警察の報道官は、捜査対象だった父親がマイカちゃんを盾に警察に抵抗したため発砲したと説明した。だが、母親は「警察は令状もなく就寝中に家に押し入って撃ってきた。夫は娘を盾になどしていない」と否定した。

 

同国政府は、16年7月~19年5月に麻薬犯罪の容疑者約6600人が警察官に殺されたが、麻薬犯罪は大きく減ったと主張。今回の人権理事会の決議に対しても「誤った情報に基づいてフィリピンを辱めようとしている」と反発している。

 

同国では取り締まりで親を殺された遺児の支援が課題になっている。

 

マニラ首都圏カロオカン市のカルメンシータさん(59)の長男(当時29)は16年12月、知人宅で警察官に撃たれて死亡した。警察は「麻薬事件の捜査中に抵抗したため」と主張。長男の妻(同26)も2年後、身元不明の男に射殺された。カルメンシータさんは「2人は麻薬常習者でも売人でもなかった」と言う。

 

カルメンシータさんには孫2人が残された。孫娘プリンセスさん(14)はショックで9カ月間、口をきけなくなり、学校も休むようになった。

 

殺し屋などに殺害された例を含めると、犠牲者は2万7千人に上るとの推計もある。アテネオ・デ・マニラ大学の調査では、17年9月までに3万2395人の子どもが、麻薬犯罪対策の下で親を失った。政府は遺児らの支援はしておらず、カルメンシータさんもキリスト教会から受け取る月約8千円の学費支援が頼みの綱だ。【713日 朝日】

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日本は棄権とのことですが、どういう判断でしょうか?

 

なお、国際刑事裁判所(ICC)がドゥテルテ大統領の推進する麻薬撲滅戦争をめぐって予備調査を開始したことを受け、フィリピンは317日、国際刑事裁判所から正式に脱退しています。

 

今回の国連人権理事会での決議案を主導したアイスランドに対しては国交断絶を検討しているとも報じられています。

 

****比大統領、アイスランドとの国交断絶を検討 麻薬撲滅戦争めぐり****

先週行われた国連人権理事会でアイスランドが、フィリピンの麻薬撲滅戦争について調査するための決議案採択の先鋒となったことを受けて、ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領がアイスランドとの国交断絶を「真剣に検討」していることが、報道官の話で15日、明らかになった。

 

ドゥテルテ大統領が率いる麻薬撲滅戦争では、これまでに数千人が殺害されている。欧米諸国は人道に対する罪に相当する可能性があると非難しており、ドゥテルテ氏はそうした批判にいら立ちをあらわにしている。

 

国連人権理事会では、麻薬取り締まりによる殺害を調査するための決議案をアイスランドが提出。同理事会がこの決議案を支持したことを受け、ドゥテルテ氏がアイルランドとの国交断絶を検討していると大統領報道官が明らかにした。

 

ドゥテルテ大統領は2016年から麻薬撲滅戦争を開始。警察はこれまでに5300人以上の容疑者を殺害したと発表しているが、人権団体は実際の死者数はこの4倍に上ると指摘している。

 

ドゥテルテ政権はしばしば、国際社会による非難は国家主権の侵害だと主権。一方で監視団体らは、同大統領の在任期間中に国内で公平な調査を実施することはほぼ不可能だとして糾弾してきた。

 

ドゥテルテ氏は先週にもアイスランドを罵倒し、「アイスランドの問題は何だ? 氷だけだ。これが君たちの問題だ。氷があり過ぎる」「こうした愚か者たちは、フィリピンの社会、経済、政治問題を理解していない」と述べた。 【716日 AFP】AFPBB News

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こうした強硬姿勢によってフィリピン・マニラの治安状況が改善していると擁護する考えもありますが、そのために現場の警官などが恣意的に殺害することを認めるのは、別の「暴力」を容認することでもあり、危険な考えであると思います。

 

【「政権対メディア」は財閥との権力争いの側面も】

ドゥテルテ大統領は、自身に批判的な報道機関に対しても圧力をかけていますが、このあたりには単に「政権対メディア」という話だけでなく、“フィリピンの社会、経済、政治問題”も背景にあるようです。

 

****大統領とメディアの戦い、本家は米でなくフィリピン****

「フィリピンのトランプ」との異名をもつドゥテルテ大統領の最大の政敵は、麻薬王でも、野党でもなく、本家と同様、同大統領や政権に批判的なメディアだ。

 

5月の中間選挙で圧勝したものの、中国船によるフィリピン船への当て逃げ問題や、人気を下支えしてきた経済成長の鈍化が表明化、メディアのドゥテルテ大統領に対する風当たりは一層厳しさを増している。

 

の急先鋒で知られるフィリピン最大の民放テレビ局、ABS-CBNの経営存続が危ぶまれている。

 

20203月が期限とされる同放送局の今後25年間の営業権更新を盛り込んだ下院法案が6月、議会下院審議で凍結されたからだ。

 

722日に再開される下院審議で法案が再提出されない場合、同放送局の営業認可は更新されず閉鎖が濃厚となる。(中略)

 

2022年の大統領選を目前に、ドゥテルテ大統領は連邦制導入、大統領再選を許可する憲法改正を目論む。フィリピン政界を長年牛耳り、現在は野党となったアキノ派の打倒、阻止を図る地固めの一環だ。

 

ABS-CBNの営業権更新問題の発端は、20165月の大統領選で、同放送局がドゥテルテ氏の選挙広告放映を拒否したこと。

 

その一方で、政敵のトリリャネス上院議員陣営の反ドゥテルテ広告を積極的に放映したためドゥテルテ大統領が同放送局への不満を募らせたとされる。(中略)

 

国家権力を振りかざしてテレビ局の営業権許認可を凍結、ドゥテルテ批判の急先鋒メディアに圧力をかけたわけだ。(中略)

 

そもそも、ドゥテルテ大統領は、マスコミ嫌いで知られる。特に、これまでも自分に批判的なメディアの一掃や閉鎖を進めてきた。

 

20166月に大統領に就任するまで務めたフィリピン南部のダバオ市長時代には、ドゥテルテ氏を痛烈に批判してきたラジオコメンテーターのジュン・パラ氏がドゥテルテ氏の自警団に射殺される事件が発生した。

 

その際、殺人を批判するどころか「悪質なジャーナリストは、死んで当たり前!」とあたかも殺人を容認する発言が飛び出し、物議を醸したこともある。

 

さらに、家賃未払いを口実に有力日刊紙「フィリピン・デイリー・インクワイヤ―」の株主一族が運営するビルを突然封鎖した。

 

このように、ドゥテルテ大統領に批判的なメディアを容赦なく弾圧、排除する政策を採り続けてきた。

 

独裁的だったマルコス政権崩壊以降、フィリピン政府はメディアとの激しい摩擦があっても、これまで直接的な強権介入は避けてきた。

 

しかし、マルコス元大統領を尊敬するドウテルテ大統領は、こうしたメディアとの関わりも、マルコス流を復活させようとしているわけだ。

 

しかし、表面的にはドウテルテ氏とメディアの「戦争」にみえる対立の裏には、マルコス時代から続く「政権側と財閥の権力争い」という因縁が隠されている。

 

実は、フィリピンでメディアを牛耳っているのは、ロペス財閥といわれている。

 

今回、ドゥテルテ大統領と免許更新問題で争うフィリピン最大のテレビ局ABS-CBNは、このロペス財閥の傘下にある。(中略)

 

その(中間選挙圧勝)勢いに乗って、マルコス時代のようにメディアに圧力をかけロペス財閥を崩壊に向かわせようとしているのが、ドゥテルテ大統領というわけだ。

 

歴史は繰り返すのか――。フィリピンにおける権力とメディアの戦いは血みどろの様相を呈してきている。【719日 末永 恵氏 JB Press

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マルコス政権以来の、ロペス財閥と政権の癒着・対立に関する記述ついては、ほとんどを省略しましたので、関心のある方は原文にあたってください。

 

要するに、単なる「政権対メディア」ということではなく、フィリピン政財界に大きな力を有する財閥との権力争いという側面があるとのことのようです。

 

【「ドゥテルテ王朝」に向けて始動】

いずれにしても、これだけ「超法規的殺人」を実行した以上、もし次期政権が反ドゥテルテになれば、間違いなく刑務所送りで終身刑でしょう。

 

したがって、ドゥテルテ大統領としては、次期政権も自陣営で確保する必要があります。

 

後継者として有力視されているのは、ドゥテルテ大統領以上にコワモテとして知られる長女だとか。

 

****ライバルはパッキャオだけ 「王朝」築くドゥテルテ一族****

フィリピンではこのごろ、「ドゥテルテ王朝」なる言葉がメディアなどでしきりに使われるようになっている。ドゥテルテ大統領(74)とその家族の政界進出ぶりをやゆしたものだ。

 

任期折り返しの今年、5月にあった中間選挙(議会上下院・地方選)では、個性的な3人の子どもが下院議員、ダバオ市長、ダバオ副市長にそろって当選。2022年の大統領選もみすえた動きがすでに始まっている、との見方も出ている。

 

イケメン次男、後継者の長女、問題児の長男

(中略)同じ選挙集会。(イケメンで、これまで政治と縁がなかった次男)セバスチャン氏と対照的に、堂々たる雰囲気で壇上に立ったのは、ドゥテルテ氏の長女で現ダバオ市長のサラ・ドゥテルテ・カルピオ氏(41)だ。

 

ダバオ市長職は、ドゥテルテ氏も通算22年間にわたって務めたキャリア。父の後継者の本命候補と目されている。

 

サラ氏は07年、同市長だった父のもとで副市長に当選。10~13年はドゥテルテ氏が副市長となり、入れ替わりでサラ氏が市長になった。13年からは再び父が市長に、サラ氏が副市長に。さらに16年、ドゥテルテ氏が大統領選に出馬すると、あらためてサラ氏が市長に当選して今に至っている。

 

こんなエピソードがある。

サラ氏の市長1期目の11年のこと。裁判所が命じた建物の解体現場で住民の反対運動が起きると、サラ氏は解体を数時間遅らせるよう求めたうえで現場に急行。話を聞き入れない裁判所の執行官にパンチを数発浴びせて、住民から喝采を浴びた。

 

その様子はテレビでも放映され、「庶民派でむちゃくちゃ強い市長」という人物像が確立した。「サラ氏と互角のライバルになり得るのはパッキャオ氏ぐらい」との声も上がる。国民的英雄であるボクサーで、上院議員でもあるマニー・パッキャオ氏のことだ。(中略)

 

22年の次期大統領選にサラ氏が出たら。フィリピン初の、2代連続した親子大統領が誕生する可能性はある。

 

だがもしも、死者が出てもお構いなしの麻薬犯罪対策も人権問題も、中国寄りの外交も経済政策も、父ドゥテルテ氏とそっくりの路線を進むのだとしたら……。世界中の注目は浴びるけれど、国力は大きく前進しない。そんなフィリピン政治が続くかもしれない。【627日 朝日】

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