孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ガザ市への食糧搬入で112人死亡 錯綜する情報 アメリカの対応への影響も

2024-03-01 22:56:45 | パレスチナ


(パレスチナ自治区ガザ市で、支援物資を積んだトラックの周囲に集まったガザ住民とされる人々。イスラエル軍提供の動画より(2024年2月29日公開)【3月1日 AFP】 
イスラエル側には“砂糖に群がるアリ”のようにも見える光景でしょう。ただ、そのアリにも極限状態で必死の思いがあることも考慮する必要があります)

【「ガザ住民の4分の1に当たる、57万6千人が飢餓の一歩手前にある】
パレスチナ・ガザ地区で、戦争の直接被害だけでなく、食糧事情が極めて懸念される事態になっていることは多くの報道のとおり。秩序が崩壊してガザ市など北部地域への国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の食料配布も滞っています。

****安保理、ガザ巡り米ロ非難の応酬 国連側「50万人が飢餓寸前」****
国連安全保障理事会は27日、戦闘の続くパレスチナ自治区ガザの食料危機を協議する緊急公開会合を開いた。

国連側は「ガザ住民の4分の1に当たる、57万6千人が飢餓の一歩手前にある」と説明し、即時停戦を訴えた。ロシアは「米国が停戦を阻んでいる」と批判。米国はウクライナ侵攻を取り上げてロシアを批判し、非難の応酬となった。

国連人道問題調整室(OCHA)の担当者は、ガザ北部の2歳未満の子どもは、6人に1人が栄養失調などの状態だと指摘した。【2月28日 共同】
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****生後2カ月の乳児が餓死 ガザ北部の人道危機が深刻化****
中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」は25日、パレスチナ自治区ガザ地区北部で生後2カ月の乳児が餓死したと報じた。ガザ北部では、治安状況の悪化などで国連による食料配給が中止されており、人道危機が深刻化している。
 
アルジャジーラによると、乳児は数日間、ミルクを飲めておらず、北部のシファ病院に運ばれたが間もなく死亡したという。住民によると、ガザ北部では食料が底を突きており、住民はロバのえさに使っていた大麦などを食べてしのいでいる。乳児用のミルクも市場でほぼ見つからないという。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリーニ事務局長は25日、UNRWAが1月23日以降、北部に食料を配給できていないと明かし、「(イスラエル側に)食料の配布を求めても、拒否されている。これは人災だ」と主張した。

国連世界食糧計画(WFP)が北部の避難所などで行った調査では、2歳未満の子供の6人に1人が栄養失調に陥っているという。一方、イスラエルは食料配布ができないのは、国連側の責任だとしている。(後略)【2月26日 】
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****雑草食べて生き延びようとする住民「間もなく餓死する」…ガザ北部で飢餓が危機的状況、支援届かず****
イスラエル軍とイスラム主義組織ハマスの戦闘によるパレスチナ自治区ガザでの死者数が29日、3万人を突破した。ガザ北部では飢餓が危機的な状況になっており、食料や水の支援物資がほとんど届かず、家畜の餌や雑草を食べて生き延びようとしている住民もいる。住民からは「間もなく餓死する」と悲嘆の声が上がっている。

「このまま人道支援が来なかったら私たち一家は餓死するしかない」――。ガザ北部のガザ市中心部リマル地区に身を寄せる主婦ラジャ・ラマダンさん(35)は、本紙通信員の電話取材に力なく答えた。

2歳から10歳の4人の子どもと両親ら16人で暮らすが、備蓄していた食料と水は既に尽きた。市場に行っても食料は手に入らない。最近は汚れた水に塩と雑草を入れたスープを食べている。全員、やせ細った。ラマダンさんは「戦闘が止まり、支援物資が来てほしい」と願う。

ガザ北部の住民の多くは戦闘が始まった昨年10月上旬、イスラエル軍の命令で南部へ避難したが、10万人以上が北部に残っているとみられる。軍はその後、ガザを南北に分断しており、行き来ができない。人道支援物資のトラックは南部のラファとケレム・シャローム検問所から入るため、北部にはほとんど到達しない。

国連は、ガザの全人口220万人のうち4分の1が餓死寸前と報告する。ガザ保健当局は2月27日、飢餓による死者の集計を始めた。

ガザ市ザイトゥーン地区に住むイサック・ハーシムさん(30)は1週間前、支援物資のトラックが久しぶりに到着したと聞き、駆けつけた。しかし、数千人がトラックに殺到し、何も受け取れなかった。ハーシムさんは「誰もが空腹で殺気立っている」と話す。

ガザでは、飢えた住民が支援物資を載せたトラックを襲撃し、略奪する事件が相次いでいる。世界食糧計画(WFP)は20日、援助物資の搬入を一時停止した。

イスラエルの戦時内閣は26日、北部に支援物資を直接入れることを容認したが、実際に搬入が進むかどうかは不透明だ。

ガザ市リマル地区のモアーズ・アハマドさん(26)の一家は、ロバの餌の大麦を1キロ150シェケル(約6200円)の法外な値段で手に入れ、パンを作った。「ひどい味」だったという。アハマドさんは「国際社会はガザの惨状をどうして見過ごしているのか」と憤りをあらわにした。【3月1日 読売】
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【食糧搬入で112人死亡 錯綜する情報】
その北部ガザ市への食糧搬入が行われましたが、少なくとも112人が死亡、760人が負傷という悲惨な事態を引き起こしています。

パニック状態の群衆に何が起きたのか・・・情報は錯綜しています。

****ガザ住民「112人死亡」 攻撃か事故か ハマスとイスラエル対立****
パレスチナ自治区ガザ地区北部で、食料を積んだトラックを待っていた多くの住民が死亡した事件で、ガザ保健当局は2月29日、少なくとも112人が死亡、760人が負傷したと発表した。

イスラム組織ハマスは、イスラエル軍による「住民を狙った意図的な攻撃」と主張。一方、イスラエル軍は多くの住民が一斉にトラックに集まったため、人の下敷きになったり、トラックにひかれたりして死亡したとしており、双方の見解が食い違っている。

ガザ北部では治安悪化などのため、国連による食料搬入が滞っており、市民が飢えに苦しんでいる。イスラエル軍によると、状況改善のため、29日早朝に38台のトラックが北部ガザ市に入り、海岸沿いを走行していたところ、待機していた住民がトラックに一斉に集まり、「略奪」を始めた。

米CNNによると、住民がトラックに向かうと同時に、イスラエル軍が銃撃を始めたという。中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」に証言した住民によると、イスラエル軍は戦闘機や戦車で攻撃を実施し、物資を積んだトラックはまるで「(イスラエルの)わなのようだった」と話している。ハマスは「頭を撃たれた住民もおり、住民が標的にされたことは明らかだ」と主張する。

一方、イスラエル軍は大勢の住民がトラックに群がる姿を映した動画を公開。イスラエル軍はトラックの安全を確保する役目を負っており、戦車による砲撃は住民を追い払うための「警告射撃だった」と主張する。

その後、トラックに集まった住民が押し合いになったり、トラックが動いて住民をひいたりして、多くの死傷者が出たとしている。

イスラエル軍のハガリ報道官は29日、「我々は支援を求める市民に対し、空からも地上からも攻撃していない」と述べた。負傷者らは近くの病院に運ばれたが、病院は医療物資が不足しており、応急処置しかできない状態だという。

国連のグテレス事務総長は29日、今回の事件を非難する声明を発表した。声明は、イスラエル軍が包囲するガザ北部では国連が1週間以上も支援物資を届けられていないと指摘。「絶望的な市民は緊急の援助を必要としている」と述べ、大規模な人道支援の受け入れを保証する即時停戦の必要性を改めて訴えた。

事件を受け、国連安全保障理事会は同日、非公開の緊急会合を開いた。安保理では、人質の解放を前提にした「一時停戦」を求める米国提出の決議案についての交渉が続いている。

イスラエルとハマスは仲介国を通じ、6週間の休戦と人質解放を巡る交渉を継続しているが、ハマス幹部は29日、今回の事件が交渉に影響を与えるとの見方を示した。

イスラエルのネタニヤフ首相は29日の記者会見で、交渉妥結の前提条件として「解放される人質のリストが必要だが、(ハマスから)リストは提供されていない」と述べ、交渉妥結を「引き続き希望するが、約束はできない」と話した。【エルサレム三木幸治、ニューヨーク八田浩輔】
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****イスラエル軍が食料支援に殺到した住民に発砲、100人超死亡 ガザ保健当局****
(中略)イスラエル軍は、必死になったガザ住民が支援物資を積んだトラック38台を取り囲んで「群衆事故」が起き、トラックにひかれるなどして、数十人の死傷者が出たと発表した。

ただし、あるイスラエル関係者は、同軍が群衆に「脅威を感じた」ため群衆に発砲したと認めた。

夜明け前に起きたこの事態をめぐっては情報が錯綜(さくそう)している。
匿名で取材に応じた目撃者によれば、ガザ市西部のナブルシ環状交差点で、群衆数千人が支援物資を積んだトラックに殺到。戦車に「近づきすぎたために」、イスラエル兵が群衆に向けて発砲したと語った。

イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、同軍はトラックを待ち受けていた群衆を解散させるため「数発の威嚇射撃」を行ったと説明。群衆が増えすぎたためトラックの車列が後退しようとしたところ、「不幸な事故でガザ住民数十人が死傷した」と語った。

イスラエル軍が公開した空撮画像には、ガザ住民とされる大勢の人がトラックを取り囲む場面が写っている。 【3月1日 AFP】
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イスラエル軍戦車による砲撃もあったようですが、イスラエル軍は住民を追い払うための「警告射撃だった」と説明しています。

イスラエル軍の群衆への銃撃はあったのか? どのような原因で100名以上の死者がでたのか?

病院に運び込まれた負傷者・死者の状態を見れば、おおよそのことはわかると思いますが、未だ判然としていません。

パレスチナ側が言うように“イスラエル軍が「意図的に」起こした”(パレスチナのマンスール国連大使)というのも考えにくい話ですが、仮にイスラエル軍は数発の威嚇射撃程度しかしていない・・・ということでも、群衆パニックを引き起こしたこと、何よりも、そういう状況が生まれるような極限状況を作り出してきたことで、イスラエルに対する国際世論が増すことが予想されます。

【バイデン再選戦略の足かせとなりつつあるパレスチナ情勢・アメリカのイスラエル支持】
バイデン米大統領は「何が起こったのかについて二つの説が対立している。まだ答えがない」と述べていますが、TVニュースでは「イスラエルに説明を求める」とも。

アメリカ国内において、パレスチナ情勢、アメリカのイスラエル軍事支援が、バイデン再選戦略の足かせになりつつある状況もありますので、バイデン大統領としても慎重な対応を考えているでしょう。

****米民主党員、過半数がイスラエル軍事支援に否定的=世論調査****
ロイター/イプソスの世論調査によると、民主党員の過半数がイスラエルへの軍事支援を支持しない大統領候補が望ましいと答えた。

バイデン大統領とトランプ前大統領の支持率はともに36%で互角。残りの回答者は「分からない」「別の候補に投票する」「誰にも投票しない」と答えた。

調査は28日までの3日間に実施。イスラエルへの軍事支援に賛成する大統領を支持する可能性が低いと答えた民主党員は全体の56%、支持する可能性が高いと答えた民主党員は40%だった。

バイデン大統領はパレスチナ自治区ガザの軍事衝突でイスラエル側を支持しており、そうした姿勢が大統領選で致命的な弱点になる可能性がある。

27日のミシガン州民主党予備選では、バイデン氏のイスラエル支援に抗議する10万票を超える「支持者なし」票が投じられた。

今回の調査では共和党員の62%がイスラエルへの軍事支援に賛成する大統領候補が好ましいと回答。34%はそうした姿勢を支持しないと答えた。

調査は全米の成人1185人を対象にオンラインで行った。【2月29日 ロイター】
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【国際的にもウクライナと絡めて米に「二重基準」批判】
国際的にもアメリカのイスラエル支持は、ウクライナ侵攻のロシアを批判する対応と「ダブルスタンダード」だとの批判が強まっており、そうした雰囲気を受けて、ウクライナはロシアに対する非難決議案の国連総会への提出を見送る事態にもなっています。

****国連総会でロシア非難決議案の提出見送り、米に「二重基準」批判…イスラエル擁護に関係国反発****
ロシアのウクライナ侵略開始から2年に合わせた国連総会と安全保障理事会の23日の会合で、ウクライナはロシアに対する非難決議案の提出を見送った。

ウクライナの最大支援国である米国がパレスチナ自治区ガザ情勢を巡ってイスラエルを擁護し続け、関係国の反発を招いたことが影響したとの見方が出ている。

ロシアの侵略開始以降、国連総会で採択された対露非難決議などは6本に上る。決議案は主にウクライナが提出してきたが、文案の作成や各国への根回しでは「ロシア非難を主導してきた米国が大きな役割を果たしてきた」(安保理筋)のが実情だ。侵略1年に合わせた昨年の国連総会では、露軍撤退などを求める決議案への賛成は全193か国のうち141か国に上った。

イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が始まった昨年10月以降、状況は一変した。米国は、ガザで犠牲者が増え続けても戦闘継続にこだわるイスラエルの意向を受け、即時停戦に反対し続けてきた。この結果、アラブ諸国などから反発を招き、苦境に立たされた。

米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は23日の演説で、「ロシアが国連憲章に違反し、侵略を続けている」と非難し、即時撤退を求めた。

しかし、演説を聞いたアラブ圏の外交官は読売新聞の取材に対し、「ロシアの侵略は許せないが、米国の主張は『ダブルスタンダード(二重基準)』だ」と批判した。米国は露軍撤退を要求する一方、ガザで即時停戦を求める決議案には拒否権を行使しているためだ。

国連外交筋は「ガザでの停戦決議を米国が容認しない限り、ウクライナの決議案に賛同できないという国が増えてきた」と明かし、「仮に対露非難決議案が採択されても賛成票は昨年より大幅に減り、ロシアに誤ったメッセージを送るリスクがあった」と分析した。【2月25日 読売】
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今回事件を受けて、アメリカのイスラエル支持はますます国際的に容認されがたくなることが予想されます。

【パレスチナ人の命を全く考慮しないイスラエル極右閣僚 それに引きずられるネタニヤフ首相】
一方のイスラエル・ネタニヤフ政権ですが、政権の極右閣僚からは「(イスラエル軍は)ガザ地区で暴徒に対して素晴らしい対応をした」との発言が。

****<カタール・アルジャジーラ>イスラエル国家安全保障相“支援物資の搬入をやめるべき”****
イスラエルの新聞、マーリブの報道によるとイスラエル・ベングビール国家安全保障相は「ガザ地区で暴徒に対して素晴らしい対応をした。
イスラエル軍の英雄である兵士たちに完全な支援を与えるべきだ。【3月1日 JCC】
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「支援物資の搬入をやめるべき」というのは、人質をとっているハマスを利する「支援物資の搬入をやめるべき」という主張です。

こういうパレスチナ人の命を一顧だにしない極右勢力の支えでネタニヤフ首相は政権を維持しています。
ベングビール国家安全保障相は、政権がハマスとの戦争終結を決めた場合、自身は政権から退くとの意向を示唆して(その結果、ネタニヤフ政権は崩壊し、ハマス襲撃を許したことなどの政治責任を問われるネタニヤフ首相の政治生命は終わります。)、ネタニヤフ首相の選択肢を狭めています。

ネタニヤフ首相が極右勢力をとりこんで組閣した際に、「いずれ、極右勢力の発言・行動は問題になるだろう。老獪なネタニヤフ首相は時間をかけて野党勢力を懐柔して、極右勢力を切り捨て、より安定した政権をつくるつもりだろう」とも予測する見方がありました。

しかし、そうした対応の前にハマス襲撃事件が起きて、ネタニヤフ首相としてはこの時点で極右を切れず、その主張に引きずられるように戦争遂行にのめり込む事態ともなっています。

【今一番重要なことは】
最後になりましたが、今回事件でおそらく食糧搬入は再びストップするのでしょう。
それによって「ガザ住民の4分の1に当たる、57万6千人が飢餓の一歩手前にある」という事態がどうなるのか?
そこが、一番気掛かりなところ・・・と言うか、国際社会として緊急に対応すべきところでしょう。


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