孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  金門周辺海域、南シナ海で台湾・フィリピンとの緊張 習主席「海上軍事闘争の準備」指示

2024-03-08 23:20:52 | 中国

(フィリピン軍がチャーターした民間船(中央)に放水銃を使用する中国海警局の船(右と左)。フィリピン沿岸警備隊公開の動画より(2024年3月5日撮影) 【3月7日 AFP】)

【中国 金門島周辺海域でのパトロールを常態化】
2月14日に台湾が実効支配する金門島近くの海域で、台湾当局の取締り中に中国の漁船が転覆し2人が死亡した問題をめぐって中国側の対応が硬化しています。

中国側は同海域でのパトロールを常態化させる動きを見せており、2月19日には、乗客23人を乗せて金門島周辺を航行していた台湾の遊覧船が中国海警局の巡視艇に制止させられ臨検を受けるという事態も。

****中台、金門周辺海域で緊張 巡視常態化、現状変更狙い****
中国本土に近い台湾の離島、金門島付近で発生した中国漁船の転覆事故をきっかけに、中国が周辺海域でパトロールを常態化すると表明した。中国はその後、台湾側水域での巡視や台湾船への臨検を実施するなど現状変更を図る動きを見せており、中台間の緊張が高まっている。

中国には独立派と見なす与党、民主進歩党(民進党)、頼清徳副総統の5月の総統就任を前に、民進党政権に圧力をかける狙いもあるとみられる。米国務省のミラー報道官も中国側の動向を注視していると述べた。

台湾当局は金門島周辺に、許可のない中国船の進入などを禁じる禁止・制限水域を設定。台湾海巡署(海上保安庁に相当)の船が14日、同水域に入った中国漁船を追跡した際に漁船が転覆、4人が海に転落し、うち2人が死亡した。

中国側は台湾の取り締まりを批判し、中国国務院(政府)台湾事務弁公室は17日、禁止・制限水域の存在を否定する談話を発表。中国海警局は18日、パトロール常態化の対抗措置を表明した。【2月21日 共同】
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2月26日には、金門島の規制水域に中国海警局の船5隻が進入したが、台湾側の警告を受けすぐに立ち去る緊張も。
中国側は今後も圧力を強める姿勢を見せています。

****中国の台湾政策担当トップ、漁船転覆事故受け「決して容赦しない」 台湾与党に圧力強める姿勢示す****
中国政府の台湾政策担当のトップが先月29日、台湾が実効支配する金門島付近で当局の追跡を受けていた中国漁船が転覆した事故について「決して容赦しない」と述べ、台湾の与党に対し、圧力を強める姿勢を示しました。

中国中央テレビによりますと、中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室のトップ・宋濤主任が先月29日、中国を訪れている台湾の最大野党・国民党の夏立言副主席と会談しました。

会談で宋主任は、違法操業の疑いで台湾当局から追跡されていた中国の漁船が転覆し2人が死亡した事故を受け、「台湾の民進党政権が中国の漁民の生命と財産の安全を無視した悪質な行為を決して容赦しない」などと述べ、台湾への圧力を強める姿勢を示しました。

一方、国民党の夏副主席は、「民進党政権を監督し、事実を早急に明らかにするよう促す」などと応じました。

中国は、5月に就任する民進党の頼清徳次期総統を「台湾独立勢力」とみなし対話に応じていません。
会談の様子を公開することで、中国に融和的な姿勢を示す国民党と、政権を担う民進党の待遇に差をつけ、台湾世論に揺さぶりをかける狙いがあるとみられます。【3月1日 日テレNEWS】
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中国側の主張はともかく、中国の意向を容認し、台湾側の非を認めるような台湾野党・国民党の姿勢は台湾国内ではどのように見られているのでしょうか?

台湾・蔡英文政権は中国に対し「現状維持」を求めています。

****金門島付近の「現状」維持を、台湾が中国に要求****
台湾で対中国政策を担当する大陸委員会は8日、台湾が実効支配する金門島付近に警備艇を送り込んで「現状」を変更しようとするのをやめるよう中国に要求した。

セン志宏・副主任委員兼報道官は記者会見で「(台湾)海峡を挟んだ現在の状況は管理可能なものであるべきだ」と述べた。(後略)【3月8日 ロイター】
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中国によるある程度の圧力は想定内ですが、今後中国側がどこまで対応をエスカレートさせるのか注目されます。

【中比艦船が衝突 中国側放水銃で比側に4人の負傷者】
台湾海峡以上に連日緊張が伝えられるのが南シナ海・アユンギン礁をめぐる中国・フィリピンの対立です。
領有権を主張するフィリピンは南シナ海のアユンギン礁に軍船を座礁させ軍拠点としていますが、スカボロー礁周辺やアユンギン礁軍拠点への補給任務をめぐって中国・フィリピン艦船の小競り合い・緊張が絶えません。

圧力を強める中国に対し、フィリピン・マルコス政権はアメリカ・オーストラリアとの関係を強化して対抗する姿勢を強化しています。

“中国、比巡視船を強制退去 南シナ海スカボロー礁”【2月11日 共同】
“フィリピン、「領土防衛」で米軍と合同巡回 中国反発”【2月20日 ロイター】
“フィリピン、南シナ海で「不法侵入」との中国主張に反論”【2月22日 ロイター】
“中国、フィリピン船阻止へ障害物 南シナ海スカボロー礁”【2月26日 共同】
“比大統領「1平方インチも譲らず」=南シナ海、対中国で豪と連携”【2月29日 時事】

****フィリピンは対中国海洋紛争の「最前線」 マルコス大統領、豪議会で演説****
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は29日、訪問先オーストラリアの議会で演説し、フィリピンは地域平和のための戦いの「最前線」に立っていると述べ、中国との海洋紛争に対する支援を求めた。

フィリピン沿岸で中国の軍艦が確認されたのを受け、マルコス氏はオーストラリアの議員に対し、「フィリピンは今、地域の平和と安定を損ない、地域の繁栄を脅かす行動に対する最前線に立っている」と発言。

自国の主権を断固防衛すると誓い、「いかなる外国勢力であれ、わが国の主権領域を1平方インチたりとも奪おうとする試みは許さない」と語り、拍手喝采を浴びた。

また「直面する課題は手ごわいかもしれないが、われわれの決意も同じくらい固い。われわれは決して屈しない」と述べ、「世界の大動脈である南シナ海の防衛は、地域平和、ひいては世界平和を守る上で極めて重要だ」と訴えた。 【2月29日 AFP】
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こうした緊張状態のなか、3月5日には両国艦船が衝突、中国側の放水銃でフィリピン側に負傷者が出る事態に。

****南シナ海で中国船と2度衝突=比沿岸警備隊の船損傷、4人けが****
フィリピン沿岸警備隊は5日、南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁近くで、同隊などの船2隻がそれぞれ中国海警局の船舶に針路を妨害され衝突したと発表した。2隻とも船体の一部が損傷したという。

衝突があったのは同日朝。比沿岸警備隊艇はアユンギン礁に物資を運ぶ船を護衛していた。2度目の衝突の際、中国海警局の2隻の船舶が放水銃を使い、運搬船に乗っていた比海軍スタッフ少なくとも4人が負傷したという。

一方、中国海警局は同日、比側が故意に衝突させたと非難する報道官談話を発表した。【3月5日 時事】 
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中国側はフィリピンのアユンギン礁軍拠点への定期補給任務について「1隻に限り容認する」との提案も。
フィリピンとしては中国側の許可云々は中国主権を認めることに他なりませんので当然これを拒否。

****中国、南シナ海の補給容認 1隻限定、フィリピンは拒否****
フィリピンが南シナ海のアユンギン礁の軍拠点に対し行ってきた定期補給任務について、中国が補給船1隻に限り容認する方針をフィリピン側に伝えたことが6日分かった。フィリピン軍西部方面隊のカルロス司令官が共同通信のオンライン取材で明らかにした。

フィリピン補給船団は5日の任務の際、中国側から無線で同じ通告を受けたが、拒否したという。

5日の任務には補給船2隻が加わった。カルロス氏は6日、記者会見も開き、中国側が放水砲で妨害した1隻は、初めて試験投入された大型の補給船だったと述べた。【3月6日 共同】
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****「最も深刻な事案だ」フィリピン政府が中国側に自制求める  南シナ海で中国艦船が放水砲****
(中略)そんな中、フィリピン外務省や海軍は6日、共同で記者会見を開きました。

フィリピン国家安全保障会議 ジョナサン・マラヤ報道官 「妨害行為や危険な操縦をしているのは誰なのか? それは中国だ」

フィリピン側は「中国が意図的に問題を引き起こしている」と改めて非難したうえで、「これまでで最も深刻な事案だ」として中国側に自制を求めました。【3月6日 TBS NEWS DIG】
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譲らないフィリピン側対応について中国は、アメリカがフィリピンを南シナ海における「駒」として利用していると非難しています。

****米国はフィリピンを「駒」として利用 中国****
中国は6日、米国がフィリピンを南シナ海における「駒」として利用していると非難した。南シナ海では、中国とフィリピンの領有権争いが過熱している。

中国海警局の船がフィリピンの補給船2隻に衝突し、うち1隻に放水銃を使用したのを受け、フィリピン側は5日、中国大使を呼び出した。

中国側は、フィリピン船が「中国領海を侵犯」したため措置を講じたと述べた。さらに、うち1隻は、「意図的に」中国船に衝突してきたと非難した。

中国外務省の毛寧報道官は会見で、米国が中国の行動を「挑発的」と非難したことについて問われると、「米国に対し、フィリピンを南シナ海で事を荒立てるための駒として使わないよう求める」「フィリピンは米国の言いなりになるべきではない」と述べた。 【3月7日 AFP】
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【習近平国家主席 中国軍の会議で「海上軍事闘争の準備」を進めるよう指示】
上記のような台湾海峡・金門島周辺及び南シナ海での緊張の高まりをうけて、全人代開催中の中国では習近平国家主席が中国軍の会議に出席し、「海上軍事闘争の準備」を進めるよう指示したとのこと。

****習近平国家主席 中国軍に「海上軍事闘争の準備」を指示「サイバーなど新分野での能力強化」も****
中国の習近平国家主席は中国軍の会議に出席し、「海上軍事闘争の準備」を進めるよう指示しました。

中国国営の中央テレビによりますと、習近平国家主席は7日、中国軍の幹部らが出席する会議に出席し、「海上での軍事闘争の準備、海洋権益の保護、海洋戦略能力を高める必要がある」と述べ、海軍力などの増強に力を入れるよう指示しました。

中国は尖閣諸島周辺海域や南シナ海での活動を活発化させており、今回の指示により、こうした威圧的行為がさらにエスカレートする可能性もあります。

中国は以前から台湾について、「武力による統一の可能性も排除しない」という姿勢を示しており、台湾への圧力を念頭に置いた指示ともみられます。

また、近年、安全保障をめぐり、重要性を増しているサイバーや宇宙空間、AIといった分野について、「強国建設に向け、前進するために重要だ」としたうえで、「新領域分野での戦略的能力を全面的に強化する」よう指示しました。

今年の全人代=全国人民代表大会で2024年の国防費として前の年に比べ、7.2%増の1兆6655億元、日本円でおよそ34兆円を計上する方針が示されています。

中国経済の先行きに不透明感が広がる中、軍事費の強化には、引き続き力を入れる姿勢が鮮明になっており、今回の習近平国家主席の指示も軍拡路線を堅持するものといえそうです。【3月7日 TBS NEWS DIG】
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習近平国家主席には、事態を穏便に・・・という考えはないようです。
台湾海峡・南シナ海での更なる緊張が懸念されます。
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