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血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

血栓症の話:エコノミークラス症候群などに気をつけて欲しい人たち

2018-01-05 07:16:55 | 医学系

おはようございます。

 

昨日は大学同期と新年会をしておりました。短い時間でしたが、楽しく過ごせました。

 

今日は3冊目の本の打ち合わせがあります。この本は「僕がこんな教科書があったら良い」と思っている本を自分で作ろうと考えています。

 

僕が欲しい本であれば、多くの方の役に立つだろうと思っております。それを3月末くらいまでに形だけでも仕上げられれば、上々かなと思います。

 

さて、今日はとりあえずこの記事を紹介します。ダイアモンドオンラインです。

 

健康なのに急死も!「血栓症」は予防に勝る手立てなし

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180104-00154339-diamond-soci&p=1

1/4(木) 6:00配信

 

● 心筋梗塞や脳梗塞になる前に 「血栓症」が決め手になる

 「血栓症」とは何か? と尋ねられて即答できる方はそれほど多くはないでしょう。血栓という言葉はよく耳にするものの、それに関わる病気に関しては知っているようで知らないという方が少なくないと思います。

 一方で、加齢と共に発症する血管の病気としての「動脈硬化」は、生活習慣病の一つとしてよく知られています。そして動脈硬化は、高血圧、糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病が絡むとますます悪化して、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる怖い病気につながることも広く認識されています。

(中略)

血栓症は、AさんやBさんの(1)誰にでも発症し得るもの、Cさんの(2)生活習慣病が原因となるもの、そしてDさんの(3)加齢と共に発症しやすくなるもの、の3つのタイプに大別され、それぞれ予防法が異なります。

 (1)のタイプ:肺血栓性塞栓症の予防

 これは、下肢の深部静脈にできた血栓が飛んで肺動脈を詰まらせることによって生じる
ものなので、下肢に血栓が発生しないようにしなければいけません

 脱水になったり血液の流れが滞ると血栓ができやすくなるので、予防法としては水分の補充をしっかりと行う、下肢の筋肉を適宜動かす、座りっぱなしや立ちっぱなしを余儀なくされる際には足に適度な圧力のかかる弾性ストッキングを着用するなどが肝要です。

 罹患人口が多い下肢静脈瘤も血流の鬱滞(うったい)を促しますので、下肢静脈瘤は早期に治療をしておくことが大切です。

 (2)のタイプ:アテローム性血栓症(心筋梗塞、脳梗塞)の予防

 言うまでもなく、動脈硬化につながる生活習慣病の管理、すなわち高血圧、糖尿病、脂質異常症にならないようにすることが大切です。これら生活習慣病が改善されないと、動脈の内側にアテローム性プラークがどんどん汚くこびりついていくことが分かっています。

 内臓脂肪が生活習慣病の主原因とも言えますので、アテローム性プラークによる血栓症を予防するには、体重管理すなわち食事運動療法が極めて大切になります。過食、塩分摂取過多、喫煙、運動不足、野菜の摂取不足、ストレスなどを避けることが肝要です。

 (3)のタイプ:心房細動による血栓症(広範囲の脳梗塞)の予防

 年齢を重ねると一定以上の方に心房細動が発症することがわかっています。心房細動は大きな血栓を作ることが多いので、それが飛んでしまうと広範囲の脳血管が閉塞して高度の脳梗塞を来すリスクがあります。

 心房細動が発症しても自覚症状は殆どないので、定期検診などで心電図検査を毎年受けて心房細動が発生していないか確認することが大切です。もし、心房細動が発生していたら、抗凝固薬を適切に使用することで脳梗塞を来す血栓の発症をほとんど抑えることができます。

(以下略)


文章の書き出しから「何を書いているのか?」と一瞬思いました(笑

症状が出たから「血栓症」です。症状がない状況ならば「動脈血栓」「静脈血栓」がある・・・という書き方になりますので、最初の書き出しは「血栓」が決め手になる・・・でしょうか。

 

ということで、血栓症の話題ですが、少しだけ記事におまけを加えてみようかと思っております。

 

記載している血栓症。血栓というのは止血の最終段階です。それが起きなくて良いときに起これば、病気として「血栓症」と呼ばれます。

 

血栓症は動脈の血栓症(心臓から血液を送り届ける動脈が詰まれば、血液や酸素が来なくなり臓器が死んでしまう=脳梗塞、心筋梗塞、その他)と静脈の血栓症(有名なものは下肢静脈血栓症からの肺動脈塞栓症=エコノミークラス症候群など)に大きく分けます。

 

大きく分ける理由は起きるメカニズムが異なるからです。

動脈血栓は流速が早い乱流によって起きるため「血小板」が中心的な働きをします。そしてアテローム血栓が生じます。動脈硬化などによる動脈血栓の予防は「抗血小板薬」です。脳梗塞では低容量アスピリンなどで予防をします。血液疾患で脳梗塞が起こりやすい「真性多血症:僕の真性多血症の説明(患者さん向け、2017年版)」「本態性血小板血症:僕の本態性血小板血症に関する説明(患者さん向け、2017年版)」の血栓予防はアスピリンです。

 

動脈血栓が起きる原因としては記事の中にもありますが、動脈がダメージを受け、デコボコが生じると乱流が起きるようになります。その結果、血栓がじわじわできてきて最終的に詰まります。あるタイミングで一気に詰まることもあるので、注意が必要です。

 

だって、血管内皮が「血の詰まり(血栓)」が起きないようにコントロールしているのに、血管にダメージが起きてコントロールする能力は低下し、血栓の起きやすさは高くなるわけですから当たり前の話です。敵の攻撃力上昇、味方の防御力低下という「最悪パターン」です。

 

これに関しては「生活習慣病」が主因ですので、生活習慣の予防が重要です。ただし、先ほど書いた血液疾患や抗リン脂質抗体症候群(血管内皮細胞がダメージを受けるので、動脈や静脈の血栓症が起きやすくなります)など病気で起きるものもあります。

 

一方、静脈血栓症や心房細動による脳梗塞の予防は抗凝固薬が使用されます。静脈は流速が遅く、血流うっ滞と凝固系活性化が原因と考えられているからです。血流うっ滞が原因ですので、ずっと寝ている(長期臥床)やエコノミークラス症候群のように下肢をうごかせない状態、慢性炎症やがん患者さん(がんの患者さんも凝固が高まります)などリスクがいくつかあります

 

心房細動や下肢静脈などで血栓ができ、それが血流に乗って飛んだ先で悪さをするものを「塞栓症」と言います。塞栓症は血栓ができた場所と症状が起きた場所が違うものです。これは血栓ができても気がつかずに、大きなイベントが生じてから気が付かれるので怖いです。

 

この凝固系を抑えるものの中にプロテインSというものがあります。実はこの異常は日本人に比較的多く、1~2%(ある論文だと1.8%など)で凝固を押さえる力が弱い日本人がいます。

生まれた時から弱く、小児科領域で治療を受けている比較的重症の患者さんもいらっしゃいますが、全く気が付かれない「SNP(一塩基多型:病的な異常ではないけど、質の異常が起きてしまうマイナーグループだと思ってください)」の方が多いです。それを含めると1~2%になります。

 

下肢静脈血栓症の2割くらいの患者さんでこのSNPは見つかるとされ、要するに静脈血栓症が起きやすい人です。そんな方々が日本人には100人に1人くらいいるわけです。

 

そんなことを言われても困ると思いますので、僕が言いたいことはただ一つ。

 

明らかなリスクがないのに家族や兄弟で静脈血栓症(下肢静脈血栓症とか肺動脈塞栓症など)が起きた方(特に30〜40代とか若くして)がいましたら、私も少し他の人より静脈血栓のリスクが高いかもしれないと思って、

飛行機(足を長時間動かさない乗り物など)に乗った時は

「アルコールを避ける」

「水分を少し多めにとる(病気で数日寝込んだ時なども)」

「脱水などに気をつける(夏場も)」

「ふくらはぎなどを少し動かす」

など気をつけて欲しいというだけです。

 

おまけで・・・当たり前ですが心房細動の方はきちんと薬を飲んでくださいね。

 

と、この記事を見て少し加えたくなったので記事にしました。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 

 

コメント (2)
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