赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

続報:日経新聞の印象操作

2023-03-21 00:00:00 | 政治見解



続報:日経新聞の印象操作 :230321情報

昨日のブロで、日経新聞記事の「迫真 台湾、知られざる素顔」という連載記事に、印象操作と言える内容がいくつもあることをお伝えしましたが、その続報が入ってきましたのでお伝えします。


■腕が上がった日経の印象操作

日本経済新聞は2023年2月28日から台湾に関する、シリーズ記事を連載開始しました。初回や2回目の中には明らかな印象操作があったことはすでにお伝えしましたが、3回目の連載は、1回目、2回目と比べると腕が上がっていました。

3回目の見出しには「政治の理想で飯食えない」と書かれていました。内容を細かく見ていくと、4つの部分で構成されています。
1.台湾人は金のために会社を裏切る
2.台湾は中国に依存している
3.アメリカは信用できない(アメリカ懐疑論)
4.台湾経済が危ない、TSMCが危ない
日経新聞は今回も印象操作をしているので細かく見ていきます。


■1.台湾人は金のために会社と国を裏切る

「中国半導体大手のSMICだって、台湾が一から育てた。中台は元々、ズブズブの関係だ」

こう書かれていますが、中国半導体大手のSMICは元TSMCの社員が作った。ここは真実です。ですが、TSMCを裏切って中国のSMICに渡った人の話を、あたかも台湾のビジネスマンの代表かのように紹介しているのです。日経の書き方では、まるでTSMCが協力してSMICを作ったかのように印象誘導していますが、実はTSMCは被害者なのです。

2003年12月19日にアメリカでSMICが不当な手法でTSMCの技術を盗んだとTSMCがSMICに対して訴訟を起こしています。SMICはかつてTSMCで勤めた人を300名以上を誘致して、強制的に技術供与を要求したという訴訟の内容でした。

また日経によると、2/2、春節に合わせて帰省した台湾商人に対して、蔡英文総統が祝辞を送ったと書いています。「台商の皆さんの発展を心からお祈りします。(中国との)交流は発展の基礎となります」

この(中国との)という部分は日経新聞が意味が分かるようにと付け加えた部分ですが、蔡英文総統の実際の発言を見ると全く意味が違うことが分かります。

あえて原文のママを紹介すると、“推動疫後健康有序的交流、也是鞏固両岸和平穏定発展的重要基礎。”(蔡英文総統が語った言葉)、“疫病後の健康的かつ秩序のある交流を推進することが両岸の平和と安定発展の重要基礎を強固にするものとなる。”

蔡英文総統のスピーチでは「台湾と中国の交流は平和の基礎」と話しているのに、日経新聞では「中国との交流は台湾発展の基礎」と捻じ曲げて紹介しているのです。蔡英文総統としては、中国との交流がなければ台湾経済が発展できないという意味ではなく、台湾と中国の平和のために交流しましょうと言っているだけなのです。これは明らかに悪質な印象操作です。

台湾経済がいかに中国に依存しているのか、という印象付けはまだ続きます。


■2.台湾は中国に依存している

「台湾からの輸出は中国向けがいまや4割」こう書かれていますが、これだけ見ると、まるで徐々に中国への依存が上がっているかのように聞こえます。2割、3割…と増えてきてとうとう4割になったというように。しかし、実際の対中貿易依存は、
・2020年 43.9%
・2021年 42.3%
・2022年 38.8%
と確かに4割近いのですが、段々と下がりつつあるのです。さらに内訳を見てみると、対中輸出の65%は半導体・精密機械でしかも、対中貿易では台湾が黒字なのです。なので、実態を見れば、台湾が中国に依存しているのではなく、むしろ中国が台湾に依存していると解釈した方が正しいのです。

また蔡英文政権の税制優遇などの政策もあって、2019年-2022年9月までに中国から台湾に戻ってきた企業は1244件です。この投資額は日本円に換算すれば約8兆円です。2022年前半の調査によると、台湾製造業では、
・台湾に投資すると答えた台湾企業は8割。
・中国に投資すると答えた台湾企業は17.4%
(中華経済研究院の調査)

これからも中国への依存が減りつつあることが分かる。台湾企業の一番の投資先は台湾。その次がシンガポール、ベトナムやインドなのです。


■3.アメリカは信用できない(アメリカ懐疑論)

アメリカは台湾とFTA締結をしてくれない、台湾を門前払いと日経は書きますが、2022年6月からアメリカと台湾との間で、21世紀米台貿易イニシアティブが締結されています。また2023年中には米台の新たな貿易協定が結ばれる予定なのです。


■4.台湾経済が危ない、TSMCが危ない

「唯一の外交カード、TSMCさえ絶対的なリードはあと3年ほど」TSMCは台湾唯一の外交カードでまたそのリードはあと3年だけと紹介されています。ですが、この日経新聞の同じ記者2人は2022年6月にこんな記事を書いています。

「TSMCに対する世界への依存度は高まり、世界は台湾を見捨てることができない」と紹介。わずか8か月で全く逆の立場になって書いているのです。台湾は、TSMCがなくなったら外交カードはゼロになるのでしょうか。

台湾が持つ、地政学的な重要性や民主自由の普遍的価値観はどうなるのか…。これらは全く考慮しないということのようです。


どのような状況でこのような記事が生まれのか分かりませんが、事実と大きく異なる点を紹介しました。




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