赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅱ.ロシアは有名戦略家を投入(ウクライナ大決戦②)

2023-03-03 00:00:00 | 政治見解



Ⅱ.ロシアは有名戦略家を投入(ウクライナ大決戦②):230303情報


昨日、「歴史の教科書に載るであろう“大きな戦い”が近づいている」との解説がありましたが、その根拠の一つが。ロシア軍の総司令官になった欧米でハイブリッド戦争の戦略家として知られるゲラシモフ参謀総長の存在にあると言えます。

専門家は「彼の後ろには、プーチン以外、誰もいない。ゲラシモフの敗北は、すなわち“ロシア軍の敗北”なのだ」と断じています。(本稿も1月時点での解説を再録しています。)



ロシア軍の「ラスボス」登場

ロシア軍が劣勢であることは、プーチンも知っている。そこで彼は昨年10月頃から、「停戦交渉する準備がある」と、発言するようになった。ただ、「ウクライナがロシアの新たな領土を認めるという前提で、話し合う用意がある」という条件がついている。

要するにプーチンは、9月に併合したルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州を、「ロシア領と認めれば、停戦交渉に応じてやる」と主張しているのだ。これをウクライナが受け入れるはずはなく、戦闘はつづいていく。

だが、既述のように、ロシア軍は戦闘で劣勢だ。では、どうするか?

プーチンは1月11日、ゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ軍事作戦の総司令官に任命した。つまり、「ロシア軍のトップ」、いわば「ラスボス」が、直接指揮にあたることになった。

日本人でゲラシモフのことを知っている人は、多くないだろう。日本ではむしろ、ショイグ国防相の方が知られている。しかし、実をいうとショイグは、「軍事の素人」だ。

彼は、1991年から2012年まで、21年間も「非常事態省」のトップだった。非常事態省は、自然災害や大事故の際に、国民を救出、支援する役割を担っている。つまりショイグは、「災害のとき助けにきてくれる頼りになるおじさん」ということで人気者になり、2012年国防相に抜擢された。だが、軍事の知識はない。

一方、ゲラシモフは、カザン・スヴォーロフ軍事学校、カザン高等戦車指揮学校、マリノフスキー機甲部隊軍事アカデミー、ロシア連邦軍参謀本部軍事アカデミーで学んだ生粋の軍人だ。実戦経験もある。

彼は、第2次チェチェン戦争で、チェチェン独立派鎮圧の指揮をとった。2012年にはロシア軍参謀総長に任命され、2014年にはウクライナ内戦で、「親ロシア派」を支援した。

ゲラシモフは、日本や欧米の軍人の間では、「戦略家」として知られている。彼は、ロシアのハイブリッド戦争理論「ゲラシモフ・ドクトリン」の提唱者だ。

2014年3月、ロシアは無血で、ウクライナからクリミアを奪った。これを、「ロシアハイブリッド戦略の大成功例」と見なす人は多い。別の表現を使えば、「ロシアは、ゲラシモフ・ドクトリンによって、クリミアを無血で奪った」ともいえる。

2016年5月、ゲラシモフはプーチンから、「ロシア連邦英雄」の称号を授与された。

劣勢のロシア軍では、総司令官が頻繁に代わっている。

一人目の総司令官は、2022年4月に任命されたドヴォルニコフ上級大将だった。彼は2015年、ロシアによるシリア内戦介入の指揮をとり、名を挙げた。西側メディアは、ドヴォルニコフを「シリアの虐殺者」と呼んでいる。

二人目は、ゲンナジー・ジドコ軍政治総局長。アメリカの「戦争研究所」が6月26日、ドヴォルニコフと交代したとの分析を明らかにした。

三人目。2022年10月、「アルマゲドン将軍」と呼ばれるスロヴィキン上級大将が、総司令官に任命された。クレムリンもロシア国民もスロヴィキンに期待したが、大きな戦果を挙げることができないまま、3ヵ月で交代になった。

そしてついに、「ロシア軍のラスボス」ゲラシモフが総司令官になった。彼の後ろには、プーチン以外、誰もいない。ゲラシモフの敗北は、すなわち「ロシア軍の敗北」なのだ。

当然彼は、ロシア軍の威信をかけて戦いを挑んでくるだろう。事実上の「最終決戦」の日が近づいている。


(つづく)


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