赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

アフガンの混乱から学ぶ国際的な支援の在り方 コラム(363)

2021-08-24 22:16:08 | 政治見解




コラム(363):
アフガンの混乱から学ぶ国際的な支援の在り方

アメリカとタリバンの合意(米軍の撤収とタリバンの米軍攻撃中止)を契機に、タリバンは予想外の速さでアフガニスタン全土を掌握しました。大量の政治難民が出てくるだけでなく、タリバン政権の背後には中国の影がちらついていることから、国際社会は事態の推移を深刻に受け止めています。

NATO(北大西洋条約機構)諸国は、これまでの約20年間アフガニスタン国軍の装備を拡充したにもかかわらず、アフガン国軍はタリバンに抵抗も示さず、国民を置き去りにして逃げ出しました。

結果的に、軍事的支援は時の政権と軍幹部の権力と利益を拡大させ、彼らを腐敗に向かわせただけで国民を守るためではありませんでした。攻撃にさらされている友好的な政権を助けることと、国民の命を守る意思のない政権に軍事援助を与えることとは別問題なのです。

同様に経済援助も、被援助国の自立を促すものでなければ意味がありません。決して依存する体質や政治家たちの欲望の温床になってはいけないのです。

被援助国の政権が国民に支持されているうちはいいのですが、反対勢力が政権に就いた時には援助していた国そのものが否定されることがあります。

アメリカは、かつてケネディ大統領が中南米への開発援助(進歩のための同盟)を提案しましたが、結果は反米国家を量産しただけでした。また南ベトナムはでは当時の政権の腐敗を促進させただけでなく、アメリカを泥沼の戦争に引きずりこみました。

さらに、アメリカの石油利権のもとで庇護されていたイランのパフラヴィー王朝は、イスラム教シーア派による革命で倒され、いまではイランが反米国家の代表となっています。しかも、9.11アメリカ同時多発テロを起こしたウサマ・ビンラディンと、イラク戦争でアメリカと戦ったフセイン大統領は、アメリカから武器の援助を受けて勢力を拡大してきたという経緯があります。

アメリカが支援した国家が反米になっているところを見ると、軍事支援や経済支援が逆効果になっていることがわかります。

日本の対外支援でも、韓国への経済援助が反日意識を高めるきっかけとなっていることはご承知の通りです。日韓基本条約後の5億ドルの経済支援をはじめ、その後のODAが韓国の対日依存に火をつけました。また、日中国交正常化以降のODAが中国を軍事大国にするきっかけを与えただけでなく、江沢民政権以降の反日政策を苛烈なものにさせてしまいました。

援助の相手国もそうですが、日本の政治家も与野党を問わずODA利権に群がっていました。現在に至っても欲望に操られている政治家も多く存在する理由です。

ところで、欧米諸国は中国とタリバンの急接近を懸念していますが、以前から反米という一点で密接な関係が築かれていました。

現在では、アフガンを掌握したタリバンにとって中国の軍事的、経済的支援をたのみにしたいという思惑と、中国にとってはアフガンの豊富な地下資源を手に入れたいという思惑が一致しています。

しかし、前述のように、依存と欲得の関係である以上、実際には不幸な結果を生むことになりそうです。


日本の役割とは

国際社会では有効とみられている軍事的、経済的な援助は双方にとって厄介な結末をもたらしています。

食糧援助が実際には必要とする人には届かない理由は、援助する側には権力が生じ、援助される側は依存により国力を弱められているからです。

つまり、依存を高めるような援助や、援助を通して被援助国を支配下に置こうとする傲慢な考え方を排して、被援助国の政府や国民を自立に導くための人材育成、技術や技能、知識の移転を主眼にする考え方にシフトしていくことが大切です。

こうした観点から日本は、地球上のすべての人びとがより豊かになっていくように導いていく、ここに日本の新しい国際貢献の在り方を見出す必要があるように思います。これが本当の意味で国際紛争を解決させる方策ではないでしょうか。



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東京五輪で気がついたこと コラム(362)

2021-08-10 20:51:07 | 政治見解



コラム(362):東京五輪で気がついたこと

コロナ禍の東京五輪が閉幕しました。選手たちの真夏の競演を見ていて、従来の価値観が時代とともに変わってきているという事実に気が付きました。


歴史的転換点となった東京五輪

五輪はいかなる国家であっても愛国感情を燃え上がらせる一大イベントになっています。それゆえに、選手たちも全てと言っていいほど国家を背負って競技に臨まねばなりませんでした。

しかし、今回の五輪で採用された新しい種目を見ていると選手たちに従来のような悲壮感はありません。スケートボードでは成功や失敗を一緒になって喜んだり悲しんだりして楽しく演技していました。ボルダリングではライバル関係にある選手たちがみんなで攻略法を協議していました。今までに見たことのない光景です。新種目の選手たちには、人種や国境の壁などは存在せず、互いを仲間と認め合っているからだと思います。

この新鮮な光景は、これまでの国威発揚の五輪にこだわっている人には受け入れがたいものであったようです。国家の栄光を背負って戦う野球のような高揚感を味わえる団体競技とはまるで異なる新種目は、メダル獲得数以外は、評価の対象外であるように見えました。

一方、ナショナリズムの高揚を嫌って五輪の開催反対を叫んでしていた人たちにとっても新種目は意外に受け入れられなかったようです。人種や国境に壁がない選手たちの姿が、逆に五輪反対の口実をつくれなかったためだと思います。それは彼らの口から「新競技が国際社会に平和をもたらすモデルになる」といった意見が一言も発せられなかったことが証明しています。

そして、何よりも五輪によるナショナリズムを煽って売り上げや視聴率を稼ごうとするメディアにとっても、国家を背負っていない選手たちには話をプライベートに振るしか方策はなく、極めて扱いづらい素材であったと見て取れました。

これらのことを逆説的にとらえれば、新種目が五輪に革命的な息吹を吹き込んだといえると思います。とりわけ、自と他を峻別することなくすべてを仲間として受け入れる考え方が、人種や国境の壁を乗り越えさせる原理になりうることを人びとに示唆したことの意味は極めて大きいと思います。

先年のラグビーワールドカップでも、国籍は違っても、心を通わせ互いの文化伝統をよく理解することによって、人種や国家というわけ隔てる考え方が自然になくなることが示されました。若い世代の成長とともに、あと10年もすれば国という枠組みはあったとしても人種とか国境の壁は遺物に扱われてくるように思われてなりません。

学生時代からナショナリズムの運動に携わってきた私自身にとっても新たな視点を与えられた出来事でした。


自分のために五輪を利用してきた人たちへの挽歌


IOCにとっていま一番頭が痛い問題は2022年2月の北京冬季五輪が開催できるかという問題です。コロナ禍が収まっていなくとも東京五輪のように無観客で開催したいという意向を持っているのですが、問題の焦点は中国の人権弾圧をめぐって、欧米諸国がどう判断するかということに気が気ではありません。

現に、五輪のスポンサー企業に対して「中国の人権弾圧に加担するな」というメッセージが続々と寄せられ、五輪と企業イメージを天秤にかけはじめています。IOCが現状の既得権益に固執して対策を実施しない限り、これからは企業が五輪から撤退を始めることは確かで、五輪存続にIOCは苦慮することになりそうです。

その上、独占放映権を持つアメリカのNBCの五輪視聴率が低飯し、IOCを慌てさせています。IOCの金儲け主義がスポーツとしての魅力を半減させたことに対する反発と言えると思います。

一方、日本国内においてはメディアに逆風が吹いています。コロナ禍を理由に五輪開催に反対したメディアの本音は中止後の混乱を期待していたからですが、その煽り行為が企業の広告を激減させる結果をもたらしました。

同様に、五輪中止を求めていた政治家も本音はナショナリズムの高揚を恐れていたからですが、五輪が開催されたことでその恐れが現実のものとして引き寄せてしまいました。

結局、今回の五輪を見て言えることは、自分の利益のために五輪の開催(非開催を含む)を利用してきた人にとってはつらい結果がもたらされそうにあることに注目すべきだと思います。



今回のコロナ禍での五輪は従来の価値観を大きく変える転換点であったと言えるのではないかと思います。

なかでも、新種目で示された人種や国境の壁を乗り越えようとする考え方は多くの人に新鮮な共感を与えたと思います。この考え方を大きな現実に拡大していけばよりよい未来はきっと来るはずです。

このことを考えるとき東京五輪の意味は極めて大きいと言わざるを得ず、困難のなかにあって東京五輪を開催した日本国政府と東京都知事に感謝せずにはいられません。




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