赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅲ.プーチンの面目(ウクライナ大決戦③)

2023-03-04 00:00:00 | 政治見解



Ⅲ.プーチンの面目(ウクライナ大決戦③):230304情報


昨日は、最終決戦の予兆として、「ハイブリッド戦争の戦略家として知られるゲラシモフ参謀総長がロシア軍の総司令官になった」とお伝えしましたが、もう一つの予兆がベラルーシのルカシェンコ大統領の動向です。

ロシアの「忠犬」とまで言われたルカシェンコ大統領が、いま「暗殺」に怯えています。これにより、ルカシェンコ大統領は圧力に屈し、ベラルーシ軍をウクライナに送るかもしれません。

そうなると、クライナ軍は、北と東で「二正面作戦」を強いられるので、ロシア軍はドネツク州を完全制圧しやすくなるという構図になります。これで、ロシア軍がルガンスク、ドネツク州を完全制圧できれば、プーチン大統領の面目が立つことになります。

ウクライナでの大決戦はすでに始まっているようです。専門家の解説をお伝えします。(本稿も1月時点での解説を再録しています。)



ルカシェンコは、プーチンの脅しに屈するか

もう一つ注目したいのは、ロシアの西、ウクライナの北の隣国ベラルーシの動きだ。ウクライナ侵攻後、旧ソ連諸国におけるロシアの求心力は、急速に低下している。

ウクライナ、モルドバ、ジョージアは、EUに加盟申請した。アゼルバイジャンは、ロシアから離れ、トルコに接近している。アルメニアは、ロシアを中心とする軍事同盟CSTOから脱退する意向を示している。そして中央アジア諸国は、ロシアと距離を置き、中国に接近している。

そんな中でも、ベラルーシだけは、ロシアと良好な関係を維持してきた。同国の大統領は、ルカシェンコ。彼は、1994年から現在まで29年間大統領の座にある。欧米は、ルカシェンコを「欧州最後の独裁者」と呼び、嫌悪している。

要するに、彼には「ロシアに引っ付く以外の選択肢」がないのだ。

昨年2月24日にロシア侵攻が開始された時、ロシア軍は、ベラルーシ領からウクライ北部に侵入し、キーウを目指した。だが、ベラルーシ軍自体はこれまで参戦していない。

ルカシェンコは、「国民の大部分は反戦で、ベラルーシが参戦すれば、政権は維持できない」とプーチンに言い訳している。

だが、ルカシェンコがプーチンに抵抗するのが困難な状況が生まれてきている。理由は、11月26日に、マケイ外相が急死したことだ。死因は、心臓発作といわれている。

2012年から亡くなった2022年まで外相を務めたマケイは、ルカシェンコの「側近中の側近」だった。しかもマケイは、ベラルーシでは珍しく、「欧米とパイプのある大物政治家」として知られていた。

ロシアや旧ソ連諸国で政治家、富豪、ジャーナリストなどが亡くなると、ほとんどすべての人が、こう尋ねる。
「クトーザカザール?」

直訳すると、「誰が注文した?」、あるいは「誰が予約した?」となる。だが、本当の意味は、「誰が殺しを注文したのか?」「誰が殺しを予約したのか?」だ。

ルカシェンコも、当然そう自問自答するだろう。「親欧米派の大物政治家が急死した。殺しを注文したのは誰だ?」

答えはすぐ出る。もっとも怪しいのは、プーチンだ。これは、「トンデモ陰謀論」に聞こえるが、そうではない。ニューズウィーク2022年12月1日を見てみよう。

〈 11月末に急死したベラルーシの外相は、西側との接触がばれて「ロシアに毒殺された」ともっぱらの噂だ 〉

〈 「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領といえば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の忠実な盟友として知られる。それが最近は、ロシア政府に暗殺されるのではないかと疑心暗鬼に陥っているという。11月末にベラルーシ政府No.2の外相が急死したからだ 〉

暗殺を恐れるルカシェンコは、プーチンの圧力に屈し、ベラルーシ軍をウクライナに送るかもしれない。そして1月16日、ロシア軍とベラルーシ軍は、合同軍事演習を開始した。

思い出されるのは、ウクライナ侵攻開始直前の2022年2月10日から20日まで、ロシアとベラルーシが合同軍事演習を行っていたことだ。軍事演習終了後もロシア軍はベラルーシ領内にとどまり、2月24日、キーウに向けて進軍を開始した。今回も同じことが繰り返されるのだろうか。


プーチンの目標は何なのか

ゲラシモフとベラルーシ、最終決戦の予兆を二つ挙げたが、大きな戦いが起こるとして、それはどこで起こるのか? どのような形になるのだろうか?

中央日報1月17日には、こうある。
〈 「3月までドンバス(ドネツク・ルハンシク)を完全に占領してほしい」。

ロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争の総司令官に新たに任命されたワレリー・ゲラシモフ露参謀総長に対し、このように命じた 〉

既述のように、ロシア軍は昨年7月時点で、ルガンスク州を制圧している。しかし、ドネツク州は50%程度しか支配できていない。プーチンはゲラシモフに、「3月までにドネツク州を制圧しろ」と命じたのだ。

ベラルーシ領からロシア軍(とベラルーシ軍?)がキーウに南進し、東の軍はドネツク州制圧を目指す。ウクライナ軍は、北と東で「二正面作戦」を強いられるので、ロシア軍はドネツク州を完全制圧しやすくなるということなのだろう。

思えばこの戦争は、「ルガンスク、ドネツクでジェノサイドされているロシア系住民を救済する」という大義名分で開始された。ロシア軍がルガンスク、ドネツク州を完全制圧できれば、プーチンの面目が立つということなのだろう。


(了)



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