この海岸は工業団地用に半分近くが埋め立てでなくなってしまった。
それでもテレビで湘南の夏の海の様子を見ていると田舎は恵まれている、とつくづく思う。
“一度泳ぎにおいでよ”と云ってあげたくなる。
団地の埋め立ての是非をめぐっては高裁までいった。しかし戦いをリードした地元の御老体も亡くなって久しい。
今は大きな工場が二つ建ち、威容を誇示している。少しは市の税収を押し上げたかも知れないけれど、もう自然は永遠に帰ってこない。
私たち六十代が泳いだり遊んだ砂浜は何十年も前に始めての工業団地になった。けれども現在では荒廃が進んで殆ど利用されていない。
戦後六十年の間に三つの海岸を経済優先の政治が我が物顔に美しい白砂の海岸を侵食していった。
果たして五十年先はどうなっているのだろう。
それでもこの海岸線は二つの川を跨ぎながらまだ何キロも白砂と松林の砂浜が続いている。
都会の人にも白い砂をさくさくと踏み付けて歩く足の裏の感触を味わって欲しい。