ジャズやロックのライブスポットは数多くあれど、ブルースを掲げたそれはあまり知らない。
私鉄沿線の駅前の小さなカフェ兼ライブスポットが開店十周年を迎えるという。
オーナー経営者Nさんの話を聞いていると自然体でいることが経営の極意かと思ってしまう。
十年前駅前の小さな店舗が借りられたのでカフェを始めたところ、順調に推移した。
ところがリーマンショック以来、景気後退を機に客足がパタッと止まってしまった。
駅前とはいうものの何万人もの乗降客が通る場所ではなくおまけに一階物件ではない。
珈琲とランチだけでは事業経営が危うくなり窮余の策でライブスポットを始めたそうだ。
特段音楽にこだわりがあったわけではなく、ブルースを売り物にしたところは少ないだろうと看板にした。
物珍しさに惹かれて音楽好きと酒好きが集まってきた。
良かれと思い紹介されたミュージシャンが開店前から酒を所望されて閉口したこともあったそうな。
あたりかまわず演奏する人や音楽へのリスペクトを持たない人などあらゆる客を迎えて苦労も多かったようだ。
しかし一流のミュージシャンはギャラとか客数とかにかかわらず素晴らしい演奏をしていく。
特段音楽に詳しいわけではなかったNさんが行き着いたところは月に数回のライブイベント。
ミュージックチャージはとらないで全て投げ銭スタイルだ。
ブルースといえばライ・クーダーの映画「クロス・ロード」のギターバトル・シーンを思い出す。
いやライが若い頃ミュージシャンを訪ねてお金を払って弾き方を教えて貰ったという伝説のほうが強烈だ。
それが歌であろうとギターであろうと「魂の叫び」なのか、天に訴える何かがほしい。
アフリカから奴隷としてアメリカにやってきた黒人たちの悲しみと祈り、ささやかな楽しみの世界。
ペリーの黒船来航時に演奏した白人たちはその黒人たちの演奏ぶりに憧れて顔を黒く塗ってバンジョーなどを演奏したという。
ここに音楽の持つ普遍性というか、強靭な強かさを感じる。
さてNさんの開店十周年記念にトロピカル・サウンドを届けに行こうか。
偶然知り合ったビオラの先生とのセッションも楽しい。
意気に感じて行動を起こすのが男だ、と思いたい。
江戸っ子のように、
McBride, Scofield & Sanchez playing the Blues at Montclair Jazz Festival
Lynn Seaton and Christian McBride
Christian McBride Trio - "I Guess I'll Have to Forget"