夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

コードワークとカッティング

2017年07月20日 | 音楽


レコードで聴いて来たミュージシャンの演奏を真近に見るのは心躍る
モノトーンのホテルのイベントルームに置かれたウッドベースとオベーションの12弦ギター

12弦ギターの音色がきらびやかな上に、なんとステレオアウトだった
オベーションに装備されたステレオアウトは各弦ごとに左右のスピーカーに振ることができた

ピータームーンのサンディマノアにカジメロ兄弟が参加していた頃、ピーターのソロはバッキングに支えられてより自由を得たように思う
ロバートの安定したベースのグルーヴとほとばしり出るようなギターのカッティングとコードワーク

やがてピーターはピータームーンバンドを、兄弟はブラザースカジメロとして活動していくことになる
そしてそれぞれの世界をまた築いていくのだが、サウンドの嗜好は少しばかり離れていったように思う

二人でライブをやるのは大変だ
リズムを刻みながら、メロディーを奏で、ベースも入れたいし、歌にはコーラスをつけたい

ギターをダブルネックにするのは、音の幅を広げたいためで、6弦と12弦のダブルネックが一般的に行われて来た
ハワイではスラックキーというオープンチューニング奏法など異なる調弦を並べるために使われる

単調な曲調が多いためか、転調を頻繁にしたり、新しいリズムを取り入れる
ジャズでいうツーファイヴのようなコードワークもオープンコードを多用すると流麗になる

演奏中に一言二言、言葉を交わしながらライブを進めるのも彼らの特徴だった
聞き取れないが「転調するよ」とか、「曲を変える」てなことを肩を叩いて眼で合図する

そうして生まれるベースとギターのグルーヴはなかなか簡単に真似できるものではない
ベースの安定感とシンコペーション、ギターのコードワークとカッティングの凄まじさ

ローランドの訃報に接し、瞬時にアラモアナ・アメリカーナのコンサートルームを思い出した
チケットを手配してくれて案内してくだすったKさんご夫妻と、同行した若いNくんと

ギターを弾かなくては
合掌



Roland Cazimero - "I Am, I Am" Video

The Brothers Cazimero "No`eno`e Maika`i Ke Aloha"

The Brothers Cazimero "Ku`u Ipo I Ka He`e Pue One"

夜が明けて

2017年07月14日 | 音楽


音楽には表情が要る、悲しかったり、楽しかったり
コケティッシュとか妖艶という要素は練習したり努力で手に入るものではない

音楽を志すものは何かしら変わった人種が多いのだが、不思議なおどろおどろしさを身上とする人もいる
天才か、変わり者か、摩訶不思議なものには興味をそそられるものの近寄るのが怖い

心地よい世界に浸りきっていると少し緊張感のある空間が懐かしくなる
イージーリスニングばかりではつまらないのでロックを加えたりする

激しいビートのものよりスローで美しい楽曲の方が難しいもの
アップテンポやリズミカルなものはごまかしが効くような気がするのだ


閑話休題、ナットキングコールが歌った曲をアレンジしたハワイの達人
ハワイ生まれのボーカリストを使って爽やかなアレンジを、さりげなく表現していた

1955年には世に出ていた佳曲にハワイの砂と海をまぶして遠くを見ている
シナトラも歌ったらしいこの曲を知らなかった

メジャーセブンやディミニッシュ、マイナーセブンやセブンスを上手く使ってとりとめのないアレンジ
元気でいてほしいハワイの達人


戸川純 夜が明けて はにわオールスターズ版

ゲルニカ「蘇州夜曲〜復興の唄」

Nat "King" Cole - The Sand and the Sea

ハワイアンウェディングソング

2017年07月12日 | 映画


学生時代アルバイト先で知り合ったU君からは随分影響を受けた
田舎者の劣等生の私からは都会生まれの彼は常に前向きで眩しい存在だった

競馬、麻雀、パチンコ、トランプ、将棋、と何をやらせてもそつ無くこなし一家言持っていた
アルバイトで貯めたお金で二週間ほど白馬へ一人で旅するのが若い都会人の息抜きだった

そんな彼が部屋に置いていく大人向けの漫画雑誌に「釣りバカ日誌」が連載されていて、いつしか私もファンになっていた
鈴木建設の平社員ハマちゃんと社長スーさんの釣りを介しての痛快破天荒なドラマが当時のサラリーマンにウケた

やがて映画化されてみれば漫画のオリジナルとは別物ではあるもののこれはこれで面白い
西田敏行演じるハマちゃんはもとより三國連太郎のスーさんが映画の魅力を押し上げている

尾崎紀世彦さんがシリーズのどれかに出演していることは知っていたが、これまで映画を見たことはなかった
16作2005年の作だそうだが、動画配信サービスのおかげで今になって繰り返し見ることができた

ミュージシャンが映画に出ると大方歌っておしまい、みたいなことが多いのだが、これはストーリーの中にきちんと入っているではないか
基地の町佐世保のバーのマスター、歌うこととお店しかできない人という設定が尾崎さんにはまっている

尾崎さんが二階から降りて来てLPレコードに針を落とし、タバコをくゆらすシーンがある
LPレコードから流れる曲はどうやらハワイコールズあたりのコーラス「Old Plantation」だ

お店でバンドと歌うシーンがいい、テンガロンハットやカントリー風の衣装はもちろんウエスタンギターが似合う
お約束のハマちゃんや娘さん役とのデュエットもさりげなくコーラスをつけていて素晴らしい

開店前のお店でギターを爪弾きながら歌うのが「Hawaiian Wedding Song」、尾崎さんはこの曲をキー「E」で歌う
一般には「C」で歌うことが多いので2音高いことになる

キー「E」はギターの鳴りがいいオープンコード、確か「Pupu Hinuhinu」でも使われていたと思う
私の好きな彼の歌う「サマーラブ」はキー「F」だった

ネットで見つけた尾崎さんのインタビュー記事に寄れば「九州弁を五線譜に落としてメロディとして覚えて演じた」という
まさに尾崎さんらしい発想ではないか、少年のようにコメントしている姿が眼に浮かぶようだ

稀代のボーカリストが場末の酒場を経営しているという皮肉な設定は、彼が一曲歌えばどこかへ吹き飛んでしまう
娘の結婚を象徴する「Hawaiian Wedding Song」が長崎の海を背景に流れるシーンを見て、大阪のスタジオでの尾崎さんを思い出してしまった

嗚呼、「Hawaiian Wedding Song」

釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪

あぶくみたいなもの

2017年07月05日 | 日記・エッセイ・コラム


「あたしたちの生活って、普通じゃないよね。なんていうかさあ、あぶくみたいな、、、」
「そうさなあ、風呂の屁みたいなもんで、背中に回って二つに割れて、、あぶくみたいなもんだな」

  若い頃世話になってたある企業のことを話題にした翌日、同期のNくんから何年ぶりかで電話があった
  以心伝心というのか、こうした説明のつかないようなことって案外あるものだ

そしてTVで映画「男はつらいよ」シリーズの放送があり、寅さんとリリーの絡みが見たくなった
北海道へ向かう寅さんが夜汽車で見かけたリリーは港でレコードを売る寅さんと出会う

ドサ回りの売れない歌手とテキ屋の寅さんは実にスムーズな会話で波長が合う
「ところで兄さん、名前なんていうの?」「日本のどこかでまた会おう!」

登場するマドンナの中でリリーが特別なのは、相思相愛だからだろう
リリーの初恋、惚れるってことは素晴らしい、一生に一度の恋がしたい

  今度はKくんから電話があった、若い頃から世界を駆け巡ってビジネスをしてきた敬愛する猛者だ
  テレックスを打つために飲み会を中座して海外に通信した時代だった

そして鶴瓶さんの番組に浅丘ルリ子さんが登場していた
渥美清という人はさておいて、キャメラが回る瞬間寅さんになりきる役者は後にも先にも、、と

「リリー、俺と所帯を持つか?」
堅気の人たちを勘違いさせてはいけないと言い続けたんじゃ、こちとら涙を誘われるではないか

最終作品の撮影で寅さんとリリーを結婚させてくださいと浅丘さんが監督に進言したというエピソードがある
そう、リリーが寅さんに恋したんであって、それは寅さんもよくわかっていた

物語という仮想の世界でヒロインがヒーローに恋する
わかりきった話を何回も見てしまうのは、真夏の猛暑のせいだろうか




車寅次郎らしさ 第11作 男はつらいよ 寅次郎忘れな草

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 HDリマスター版(第49作)