夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

ハンドメイド

2016年11月17日 | クラフト


あるウクレレのライブに出かけた折、手作りのウクレレを抱えた方お二人に居合わせて驚いた
もちろんそれを専門、職業としていない方たちで、近年こうしたビルダーが多くなってきた

長引く景気停滞は思いがけぬ才能を引き出し、稀有の製作家を生み出す
ウクレレが話題になりかけた頃か、一級建築士の方が仕事がないので暇に任せてウクレレ作りをやってみたという

拝見すると定規で仕上げたような完璧な出来で、つい「ウクレレってもうちょっとアバウトな作りですけどね」と余計なことを言ってしまった
「いやあ私の性格でどうしてもこうなってしまうんですね」と自嘲気味におっしゃっていたのが印象的だった

大手百貨店を早期退職された方も数ヶ月の専門学校での訓練を経て職業としてウクレレ作りを始めたという
もともと作ることがお好きだったわけではなくサラリーマンはもういいやということで思い立ったとおっしゃっていた

楽器のデザインやアイデアについては非常に興味がある私も、フル工程でウクレレを作ったことがない
インレイやフレット打ち、塗装など体験をした程度なので、木材から加工して塗装まで仕上げたお二人には頭が下がる

友人に専門家がいらっしゃるとは言え、バインディングやオイルフィニッシュの丁寧な仕上げは完成度が高い
もう一方は航空用ベニヤという特別な素材を使用して独特の構造をしていた

ネックの傾斜角度をつけない代わりにゼロフレット構造のダンパーで弦を押さえ、テンションが和らぐ効果を得ていた
どうしても鳴りが小さい点はピックアップでカバーする工夫がしてある

こうした作品を持って歩き演奏を披露する、好きな方がいれば話が尽きない
そしてその作品には人の性格やら趣味の傾向、人となりが出てくるから面白い

モノづくりには工具やらノウハウ、材料が必要だが、念じれば叶う
まだまだやり残していることが多い

38 Crazy Handmade Ukuleles

ファミリー・ミュージック(1)

2016年09月23日 | クラフト


ハワイ音楽はファミリー・ミュージックなのだよ
お父さんがギターを弾いて歌い、お母さんが娘たちとフラを踊る、ご近所の人が集まってパーティーは続く

日本ではなかなか見かけない光景だが、彼らにとっては餅つきを楽しむくらい日常的のようだ
だから職業ミュージシャンはいなかったし、観光向けミュージックがハワイ音楽だという誤解が長く続いた

英国国王から贈られた牛が繁殖してしまい、その管理のためにテキサス、メキシコあたりのカウボーイがやってきた
彼らはギターを携えて来ていて故郷を懐かしんだという

やがてカウボーイたちは帰郷したが、ギターは置いていった
ギターを手にしたハワイの人々は緩んでしまったチューニングを思い思いの調弦で演奏する

オープン・チューニングのスラック・キー・ギター奏法はこんな経緯からハワイで生まれた
個々に開発された調弦と奏法テクニックは家伝となって他人へは教えなかった

レイ・カーネ先生が少年の頃、ビーチで弾いている老人に教えを乞うと断られたのはこういう歴史があったからだろう
レイ少年は海に潜って魚を獲って老人に渡したがそれでもダメだった、これを何回も繰り返して根負けした老人がついに教えてくれた

ギャビィ・パヒヌイのレコーディング「Hi'ilawe」を聴いて音楽の道へ向かった人は多いようだ
サニー少年は母に連れられてギャビィを訪ねる、キングストン・トリオのデーヴ・ガードも感化され後年ギャビィのインタビュー、ソロアルバムを作ることになる

スティーブ・シーグフリードによるパニニ・レコード創設に至る意気込みもすごい
米本土にてスーベニール音楽のレコーディングに駆り出されて十分なギャラも得ずプライドを傷つけられたハワイのミュージシャンの地位と名誉回復を打ち立てたのだから

ハワイにバカンスにやってきたライ・クーダー夫人はお土産にギャビィのセピア・アルバムを買う
これを聴いたライは「ぶっ飛んだ」、ライは米本土へギャビィを呼んで、聴いてまたぶっ飛んだ



The Pahinui Family & Friends1

ホームメイド

2016年06月21日 | クラフト


日本ではピックギターという名称が一般的だったアーチトップ・ギター
ハワイアンバンドで当然のように使われていた時代が長かった

丸いサウンドホールではなくボディに「F」文字のようなスリットが空いていたので「F穴」ギターとも呼ばれた
生のギターに後付けのピックアップをセットして増幅したりしたものだ

作り方には、薄い板を重ねてプレスする方法と、削り出しする方法と大きく二通りあるようだ
映像はオランダの方、娘さんのために作ったという

スプルースの塊をドリルでざっくり穴空けして削り出していく
ヘッドのインレイには娘さんの名前のイニシャルを、、、

買った方が早いのだが、作る楽しみと喜んでもらえる幸せは買うことはできない
素人が木工をやれば、大体真っ直ぐに板が切れない、どこかで寸法が合わなくなったりする

完成度はさておいてもホームメイドの良さはわかる
作り続けるうちに自身のスタイルができていく

娘さんのためにここまでやるお父さんがいる

Building an Archtop Jazz Guitar 2012

ギターの革新 

2016年02月23日 | クラフト


オベーションというギターが出た頃、ボディにカーボン・ファイバーを使う発想に驚いた
ヘリコプター部材を作る会社の社長さんの道楽か、より大きい音量のギターを求めて開発されたという

確かにボディ・シェイプを自由に整形できることから音の反射を自在に設計できる
実際大きい音がするし、ネックやボディ・トップには木材を使用する配慮もあった

カントリー系のシンガーが使用して、やがて一つの世界を築いた
もう一つピックアップの性能が良かったのも普及に拍車をかけたように思う

以来、木材の資源保護の観点からも樹脂を使ったギターは各社から発売され続けている
「Blackbird」というメーカーのギター、ウクレレも同様の流れだろう

ただ表板を含めたボディからネック、ヘッドまで一体構造なのとネックが中空構造だという点が斬新だ
ネックが中空でヘッドまで空間が届くなら、音響的に悪かろうはずはない

強度が期待できて品質が一定するメリットが享受でき、なお音量が稼げる
オベーションのようなボウル状にしない形状もいい

一方でウィリー・ネルソンの穴あきギターのように持ち主の年齢とともに経年変化していく木製ギターがある
いたずら書きやらピッキングでできた穴、もちろんメンテナンスは行われているだろうが、年輪を感じさせる

木の良いところは経年変化で鳴りが良くなること
鳴りの良いギターは弾いていて気持ちが良い

単なる自己満足かもしれないが、自身と同い年の楽器は愛着が湧くし良い音がする
弾く本人もかくありたい、と思うのだ




Blackbird Guitar & Ukulele Shop Tour - Part 1

Willie Nelson and His Famous Guitar: The Tale of Trigger

大人の音楽

2016年02月14日 | クラフト


音楽に年齢はない、と思いたいのだが、時代時代の音楽を良しとする傾向は否めない
誰しも青春の頃親しんだ音楽を引きずって生きて行く

自分の心の中に深く入り込んだ音楽はそう簡単に忘れられるものではない
初恋の人をいつまでも胸に刻む馬鹿な男のように

音楽は聴いて素晴らしいと思うのだが、演奏してみると案外そうでもないケースもある
「なーんだつまらない」と思うのは今ヒットしている楽曲だったりする

消耗品的な楽曲が多くて耳に心地良いとしても飽きてしまう
宮川泰先生がいみじくも「後世に残る曲」とおっしゃったのはこのことだ

レコーディングよりもライブが良いとする人もいる
消え去ってしまうライブの一期一会的な瞬間がいいと言う

名うてのミュージシャンが集うセッションであってもなかなか常にそういう場面は少ないかもしれない
音楽は相互作用であるからして人をウキウキさせてしまう歌姫が現れたら時にそんな名場面が生まれる

歌姫に恋してしまう至福の時はものの数分で終わってしまうけれど、参加するミュージシャンの興奮が演奏に表れる
そしていつまでも心に残る

大人の音楽、いつまでも心に残る音楽
テクニックを超えた音楽の世界に浸りたい



Crusaders (feat. Reichii Guillory) - The Way It Goes (live, 1987)

? Street Life / The Crusaders feat.Reichii Guillory

David T. Walker - Lovin' You (Live) [Official Video]