夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

愛なき世界

2016年09月29日 | 音楽


ピーターとゴードンに提供されたこの楽曲、コード進行と流れるようなメロディラインがいい
ポールが当時付き合っていた女優の弟さんがピーター・アッシャーであったと思う

ビートルズ向きでないとされた理由は感傷的で、ありきたりという判断なのだろうか
オリジナル・デモという音源を聴いてみるとバッキングの演奏が素晴らしい

スタジオに入るとそれだけで緊張感が増して堅苦しい演奏になるもの
うまく見せようとしてよそ行きのフレーズを弾いてみたり音質は良くてもいつもと違う出来になってしまう

一方でラフスケッチというスタンスで弾いたものは完成度が低いとしても聴きやすい
デモ音源は、ボーカルが淡々としてコーラスもオーバーダブなのか力が入ってないところがいい

ドラムスが垢抜けている、ピーターとゴードン版の重たいようなバスドラの響きが当時の定番だとすると、こちらの方が数段勝っている
ジョンが弾いているのかポールか、サイドギターが爽やかだし、ジョージのつっかえつっかえながらのリードがまた味わい深い、彼らが演奏しているとしたらあの若さでスタジオミュージシャンばりの仕事をしているという観点から感心してしまうのだ

ビートルズらしくないという理由でオミットされたならそうかもしれない
いわゆる「ひとひねりがない」ということかもしれない

ファンからすれば「Sgt.Peppers」のようなインパクトも好きだが、イージーリスニング風もいい
こうした楽曲ばかりのアルバムもまた聴きたいものだ


閑話休題、柿の葉が紅くなり金木犀が辺りを芳香で包むこの季節、日本料理の老舗Hさんへ向かった
板さんはまだ御健在かしらとネットを見れば美味しいランチの食べログが並んでいるではないか

よしランチ時のピークが終わる頃に出かけて女将と板さんのお顔を見に行こう、と
そして現地に着くと、閉店していた、、、、お休みではなくてどうやら廃業のようだった

改めてネットで近隣のファンの方のブログを見れば今年の2月で閉店されたらしい
明治創業の老舗もこの長引く不況で伝統の味を引き継ぐことはできなかったようだ

老朽化したビルを建て直すことも、バブル期のような好景気が訪れない限り無理だったろう
商談や接待、会社の宴会を期待する飲食業のビジネスモデルはもはや過去の遺物かもしれない、が、老舗名店が廃業する経済危機は大問題だ

円安誘導で輸出関連産業は潤ったが、経済全体が底上げとなるような施策は行われていない
女性の社会進出とか非正規社員の待遇改善とか、長期労働時間の抑制とか、美辞麗句の裏側にある政治家の手抜きを国民はちゃんと見ている

飲食業に限らず、作る技術と販売し経営する能力は別物で両方を兼ね備えた人ばかりではない
起業し、経営を安定化させて生き延びることの難しさはそこにある

与党も野党も政策論争や言葉の応酬だけでなく具体的にどこに金と力を注ぐのかを示してほしい
そしてその施策が日本経済にどのように実効をあげられるのかが論拠ではないか

ビートルズらしい楽曲、日本らしい政策、付加価値を高めるという意味で同じこと
日本の活力の維持を企業任せ、人任せにして欲しくないと政治に言いたい、いや人任せでいいのだけれど政治は何をするのかを明確にしてほしいのだよ



The Beatles - World Without Love (Original Demo)

フェンダーの耐久性

2016年09月26日 | 音楽


フェンダーの魅力は沢山あるけれど一つに耐久性というメリットがある
ボディとネックがジョイントされているだけという構造で、ネックが簡単に交換できること

大量生産するための合理性と何よりネックのトラブルが起きやすく交換できるメリットは大きい
ピックガードの下にピックアップ、ポット、配線類が収まる構造もメンテナンス上都合がいい

50、60年以上を経てなお定番モデルが君臨しているのは、デザインが優れていることとシンプルなシェイプだからか
スティールギターしかりで、様々なメーカーからあらゆるデザインが発表されてなおフェンダーの四角い板状のシェイプが定番になっているように思う

ミュージカルアンプの堅牢性と音質のクリアさにも定評がある
70年代までのオールチューブアンプは重いという欠点があれど相当持ち運んでもビクともしないし、修理すればまた使える

ビルトイン型アンプはちょうど上部の裏側に逆さまに配置されたシャーシーの上(下)に綺麗にトランスやチューブが配置されている
チューブは落ちないよう針金のクリップでガードされ熱を放出するためバックはオープンになっている

リバーブやトレモロは当時のミュージシャンに重宝されたであろう
スプリング式のリバーブユニットが割と壊れやすいのはそれだけ使用頻度が高いせいかもしれない

ベースアンプに関してはアムペグのようなウルトラ・ローを期待してはいけない
ふわーっと包み込むようなうるさくないベース音、ギター類との親和性に富むというべきか、いやギターアンプとして使う人も多い

ジャズ・ベースのネックの細さはプレイやビリティに優れている、プレシジョンのそれがやや太い形状であるため交換する向きもあった
同じようなボディから出る音は、ジャズベの繊細さに比べプレシジョンからは野太い低音が出る

フロントとリアのピックアアップの調整で音にヴァリエーションが出せるのはジャズベース
ボリウムとトーンしかないスプリット・ピックアップ一個のプレシジョンに敢えてリアのピックアップをつける人もいた

この堅牢さはもともと電気屋さんであったレオ・フェンダーの設計理念かもしれない
ストラトキャスターをデザインしたフレディ・タバレスがハワイ出身だということもハワイ好きには嬉しい

フェンダーベースアンプの出る幕はほとんどないが、40年以上使っているジャズベースはコンスタントにクリアサウンドを出してくれる
量産メーカーの楽器であっても、手に馴染み信頼関係ができるまで何十年か時間がかかるということか




The Mavericks & Flaco Jiminez - All You Ever Do Is Bring Me Down [1996]

Dwight Yoakam, Buck Owens & Flaco Jimenez live in Austin TX 1988

ファミリー・ミュージック(1)

2016年09月23日 | クラフト


ハワイ音楽はファミリー・ミュージックなのだよ
お父さんがギターを弾いて歌い、お母さんが娘たちとフラを踊る、ご近所の人が集まってパーティーは続く

日本ではなかなか見かけない光景だが、彼らにとっては餅つきを楽しむくらい日常的のようだ
だから職業ミュージシャンはいなかったし、観光向けミュージックがハワイ音楽だという誤解が長く続いた

英国国王から贈られた牛が繁殖してしまい、その管理のためにテキサス、メキシコあたりのカウボーイがやってきた
彼らはギターを携えて来ていて故郷を懐かしんだという

やがてカウボーイたちは帰郷したが、ギターは置いていった
ギターを手にしたハワイの人々は緩んでしまったチューニングを思い思いの調弦で演奏する

オープン・チューニングのスラック・キー・ギター奏法はこんな経緯からハワイで生まれた
個々に開発された調弦と奏法テクニックは家伝となって他人へは教えなかった

レイ・カーネ先生が少年の頃、ビーチで弾いている老人に教えを乞うと断られたのはこういう歴史があったからだろう
レイ少年は海に潜って魚を獲って老人に渡したがそれでもダメだった、これを何回も繰り返して根負けした老人がついに教えてくれた

ギャビィ・パヒヌイのレコーディング「Hi'ilawe」を聴いて音楽の道へ向かった人は多いようだ
サニー少年は母に連れられてギャビィを訪ねる、キングストン・トリオのデーヴ・ガードも感化され後年ギャビィのインタビュー、ソロアルバムを作ることになる

スティーブ・シーグフリードによるパニニ・レコード創設に至る意気込みもすごい
米本土にてスーベニール音楽のレコーディングに駆り出されて十分なギャラも得ずプライドを傷つけられたハワイのミュージシャンの地位と名誉回復を打ち立てたのだから

ハワイにバカンスにやってきたライ・クーダー夫人はお土産にギャビィのセピア・アルバムを買う
これを聴いたライは「ぶっ飛んだ」、ライは米本土へギャビィを呼んで、聴いてまたぶっ飛んだ



The Pahinui Family & Friends1

感性という個性

2016年09月23日 | 音楽


「すべての人の心に花を」は好きな楽曲でこれまで随分演奏してきた
この曲ばかりを集めたCDアルバムがあるくらい、様々なアーチストがカバーしている

秀逸なのはハワイでレコーディングされたライクーダーが参加しているもの
以来私の中ではこれがお手本として最上位に君臨している

テレサ・ブライトのハワイ語バージョンは独特の爽やかさを持ってアレンジされ、まるで別物のような仕上がりだ
スラックキーギターで弾いていると思われるギター一本のバッキング、独特のタメで歌うハワイ語になんの違和感もない

コードの進行を見ればこれが日本サイドの常識から外れてくる
小節の半分で変えてみたりすんなり循環コードですませるわけではない

以前にも書いたが、フィリピンの少年たちがガットギターで弾いて歌ってくれた「君といつまでも」
「A C#m」が我々の常識だが、これを「A C#7」とやって平然と歌っている

いや、単純に間違えて覚えただけかもしれないが、これが実にエキゾチックなアレンジとなって聴こえた
朝日の爽やかな日光でなくて、真っ赤な夕焼けの空を思わせるような広がりがある

楽曲の捉え方が民族性によってこんなに変わるとしたらそれは魅力になる
感性の違いと片付けてはいけないと思うのだ

クロード・ルルーシュが、「歌詞とか音程とかでなくてその人の内面が出る歌」と言っていた
とかく声量や絶対音感を求める日本にあって、感性という個性は重要だ

 

Hana(花)Hawaiian Version(すべての人の心に花を)Pua Ka Ipo-Teresa Bright

急がば回れ

2016年09月21日 | 日記・エッセイ・コラム


音楽イベントで訪れた琵琶湖、つい郷里の浜名湖と比較してしまう
日本最大の湖は折からの風と雨で波が立って海のよう、美しい日本にはこうした風光明媚な地が沢山ある

都に近い琵琶湖が「近淡海(ちかつあふみ)」で、遠い浜名湖が「遠淡海(とほつあふみ)」近江と遠江の語源という
浜名湖は15世紀の地震と高潮で海とつながり、淡水と海水が入り混じる湖になった

滋賀県の六分の一を占めるという琵琶湖は交通輸送路としてまた京都の取水源として機能した
高度成長時代に運河を作って日本海、太平洋、瀬戸内海を結ぶ構想があったという、これが実現したら船で瀬戸内海から琵琶湖を経て日本海に向かうクルーズが可能になったかしら

湖畔を散策するとサイクリングロードが続き、稲の刈り取りが終わった水田が周囲に広がる
山系に囲まれて水資源に恵まれた地は豊かで美しい、民家には石造りの屋根に覆われたお地蔵様が鎮座し、土蔵が残っている

さてハワイで生まれたギター奏法スラック・キーをキーワードにして各地からファンが集う
70年代には誰も聴いてくれなかった、「スティールギターが入っていないのはハワイアンではない(?)」くらい日本のハワイアンイメージは強固だった

九州のホテルに招かれたマカハ・サンズ・オブ・ニイハウがハワイアンらしくないということで一週間でハワイに帰されたエピソードも今では懐かしい
我々もあの頃米軍の基地を回り、ハワイアン達のイベントで演奏したものだ

北九州や四国、名古屋そして東京からやってきたフリーク達は思い思いの出で立ちで演奏を楽しみ、再会を祝す
湖を背景に設定されたステージは降り続く雨対策のテントとビニールの中で大変だったが、与えられた時間を精一杯楽しんでいた

東京から駆けつけてくれたHさん、Iさんには充分な演奏がお届けできなくて申し訳なかった
それでもあのロケーションで各地の様々な方と話ができてよかったと言ってくれて救われた

「急がば回れ」は琵琶湖の渡し船が度々欠航するので急ぐなら遠回りでも、、として生まれた言葉だそうな
あれから40年、回り道ばかりしているが、それでいい

音楽には人間性が如実に出る、性急に結果を求めようとすればそれなりに、素直に音楽に浸ることができれば空間が広がる
いいお手本、よくないお手本も、何かを得て帰ってくれたならそれでいい

お泊まり保育は、初めてお会いした方たちと色々な話をすることができた
たった数曲の演奏をきっかけにしてベースやスティールの音楽談義をする、、音楽の話ができる人とは話が続く

いい人と出会って、いい音楽をやる
人生、急がば回れ、か


The Seldom Scene “Wait A Minute” | Jubilee | KET


Billy Hew Len-How'd Ya Do

Jerry Byrd - Kawohikukapulani - Steel Guitar