頭痛持ちではあったが 50歳を過ぎてから随分ひどくなった
検査しても原因が分からない
血圧も普通 余病もない
その上 妙なモノを見ることがある
それは もう気のせいだと自分に言い聞かせる
頭がおかしいと思われたくない
エアコンの上の黒い人間
それはエアコンに跨るのが好きらしいのだ
時々笑っている
あと額縁から伸びてくる腕
腕がいない時に額縁をずらしてみるが 何もない
あの腕は何処からやってくるのか
奇妙なことも続くと慣れてしまう
むしろ変わったモノが見えないと どうしているのだろうーなどと心配になるのだ
ただ頭の痛いのは辛い
頭蓋骨の中から痛い
両のこめかみあたりが特にひどい
痛い痛い痛い痛い 痛い・・・!
吐きそうだ
首の上に頭を立てていられない
コンと机の上に頭を置く
耳に音が響いてくる
聴いたことが無い音だ
ああ痛い
もう死んだ方がマシだ
ーふっー
ひどい痛みが走り ぐわあああっと叫びたくなる
ーふっー
再び それが耳の傍から聞こえた
頭が痛くて動けない
何かがこめかみを伝って・・・
目の前に降りた
小さな黒い生き物 角が2本ある
ということは鬼なのか
小さいから小鬼か
ーやっと出られた お前の脳みそは不味いよ おいしくないよー
目もなくて口ばかりの小鬼
小鬼の口は伸び縮みするストローのような形をしていた
どうやって喋っているのか こんな形の口で喋れるのだろうか
ーああ それは ずっとお前の脳みそを啜っていたからね ある意味お前の体の一部だよ
オレはお前の頭蓋骨の中で孵化したのさ
オレたちは成長が遅くてね 出てくるのに半世紀かかるのさ
お前は俺の宿主だった
じゃあオレは行くよ バイバイー
黒い小鬼は去っていった
寄生小鬼に出ていかれたわたしは・・・自分の人生から去るようだ
もう・・・目も見えなくなった