夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

笹本稜平著「時の渚」(文春文庫)

2020-06-13 19:31:41 | 本と雑誌



出産時に妻が死亡
生まれた赤ん坊は助かったがー説明する医師の息に酒の匂いを感じた男は逆上し 医師を叩きのめした
男は極道 荒っぽい生き方をしてきた

夜の街を産まれたばかりの赤ん坊を抱えて茫然と彷徨う
男を逮捕しようと捜すパトカーの音も聞こえる

極道に子供が育てられるのか

そこに声をかけてきた女がいる
女はどうやら流産して落ちこんでいた

店の客にツケの集金に行って たまたま通った場所

女は赤ちゃんがほしくてたまらないーそんな心境で 

極道の男は その女に子供を託し 自分は逮捕された


それから35年 極道だった男はヤクザな道から足を洗い 商売で成功し

今は会社も手放して 余命いくばくもない

男ー老人となった松浦は旧知の警察の真田に紹介された探偵の茜沢に 人にたくした息子を捜してほしいと言った


茜沢は元刑事
妻子が逃亡する殺人犯の運転する車に轢かれての交通事故死
事件の身内は捜査に加われない

そこに憤りを感じて 茜沢は辞表を出した


しかし茜沢の妻子を殺した人間は逮捕されていない

茜沢の上司だった真田は ある人間こそ犯人とみていたが

その容疑者の人脈で 捜査に圧力がかかり閑職へと部署替えになる

真田の話を聞き その容疑者の駒井の動向をさぐりつつー松浦が息子を託した女性を捜す茜沢

調査は進み 駒井が松浦の息子かもーと

だがー納得できないものを茜沢は感じる

そしてとうとう事情を知る女性に会うことができた


似たような境遇にあった女二人

どちらも母となった


それから茜沢の身にも関わる昔の赤ちゃん取り違え事件

交差していた運命


実に内容盛りだくさんな物語です

茜沢を応援してくれる人々が温かく

2004年に文庫本が出て それから2019年7月には30刷
この作家の人気の高さが窺えます

2時間ドラマがお好きな方には「越境捜査」シリーズの作者さんといえば分かっていただけるでしょうか