

田沼意次失脚後 松平定信による改革が進められたが 贅沢を禁止する人々の自由な生活への圧迫は かえって迷惑なものであった
浮世絵 芝居 絵草紙 洒落本
作者も版元も いつお咎めがあるかわからない
江戸を大嵐による高波が襲ったあと
一人の女がさして被害もなかった家から姿を消した
泥棒なぞの警戒に町を巡回中の仙波一之進は 女のいなくなった家の中を見て不審に思う
消えた女は おりよ
評判の絵師 歌麿の妻だった
おりよは無惨な姿で見つかり 間もなく死ぬ
乱暴され ひどい傷を負わされていた
事件を追う一之進に 上からの制止がかかる
同心ゆえ 上役には従わねばならぬが
一之進は面白くない
火盗改めの長谷川平蔵の影もちらつく
背後にいるは老中
余りにも大きな敵と戦う為
謹慎中 味方なしの一之進は 味方を作る賭けに出る
さばけた父親 左門の励ましもあり 覚悟を決めるのだ
同心は一代限り
武士と町人を 人の字のように繋ぐもの
頼まれて一之進に連絡をとる為 芸者のおこうは 大胆な手段に出る
女湯に浸かる一之進の前に 風呂ゆえ当然のことなれど裸で現れるのだ
後にも 互いに憎からず思い始めた二人に 好きなの惚れたのって言葉はない
千に一つ後悪事も見逃さぬと噂され堅いばかりに思われている男
三十六 七 までも独り者
女の影もなく
物語のクライマックス近く 謹慎とけて女湯に浸かる一之進を箱根から戻ったおこうが訪ねるが この時おこうは着物を着たまま 入り口から声をかけ
一之進の裸を見るのを恥ずかしそうにするのである
おこうは 伸びた一之進の髭をあたってやる
「ここを凌いで生き残れたらの話だが・・・・・」
と 命をかけたやりとりを前にして おこうに言う
「おめえ 決まった男は居るのか?」
「返事次第では 旦那が貰ってくれるとでも」
「俺じゃ苦労しよう あの親父が一緒だ ー」
少し略すが 短いやりとりの後 一之進は言う
「だから苦労はかけたくねえと言っただろうに 俺の方にゃ文句はねえさ」
芸者の身 過去にも色々あっただろう 「私でいいんですか」
おこうは泣きそうな目で質した
「文句はねえと言ったろ 二度と言わせるな」
耳のほてっていくのが自分にも分かる
物語はこの後 おりよ殺しの犯人と一之進の戦いへ続くのだが
次のシリーズ作では 脇役に転じてしまう一之進の 何とも言えず美しい場面だと思う
痩せ我慢のー
恋女房を殺された歌麿の反撃
その血筋の設定も楽しい
お茶目な北町奉行 初鹿野
一之進の手足となり いい仕事をしてくれる後の葛飾北斎の春朗
この一之進を 中村橋之助さんがドラマで演じるそうです
ドラマでは歌麿が主役となり水谷豊さんが演じるとか
しっかりした原作であるだけに ドラマ化の際に 余りへんにいじって変えてほしくないなと思います
読み応えのある一冊
今シリーズ四作目「蘭陽きらら舞」まで出ております
http://www.tv-asahi.co.jp/utamaro/
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