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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

若竹七海著「火天風神」光文社文庫

2007-01-24 22:39:50 | 本と雑誌

若竹七海著「火天風神」光文社文庫
管理人つきのしらぬいハウス そこへ様々な事情から集まった人々

しかも台風の通り道

勝手に入り込んだ逃亡者

キレかかっている管理人

不倫のカップル

映画研究会メンバーの大学生

甥を連れたフリーライターの青年

離婚を考える人妻

釣りの好きな妻に死なれた男

火事 台風 人災

それらの中で人は死に助かり 自分を見出だす

小説は終わっても まだ続きを読みたくなる 想像してしまう そんなお話です


「恋模様―珠洲香―3」

2007-01-24 09:43:21 | 自作の小説

「何すかしてるんだ 野獣の親玉が!」 二人がかりで橋本を取っ組み合いに巻き混む 「いっそたたんじまえ!」 砂の上 で 大きな男達が暴れている しかも楽しそうに― 早智子は言った「ガキはほっといて帰ろうか?」

「お弁当食べてからにしない?」と美智留

珠洲香の家に前日から泊まり込み 三人で頑張って作った絶対に二度とは作れない超絶弁当である

「それもそうね」 空揚げだけでも洋風和風中華タンドリー・チキン 竜田揚げと5種類 卵焼きはだしまき ひと口ミニオムレツ 普通の卵焼き フライ 天ぷら 煮物 肉団子甘酢あん 肉のたたき 色々な具の見た目も鮮やかなおにぎり 巻鮨 いなり寿司

さつまいもあんの寒天 ゆで卵

もう作った人間も何をどれだけ作ったか覚えていない

「エビチリ~ ひと手間かかったけど美味しい~」 美智留が悲鳴を上げる 「でしょぉ~料理には省いちゃいけない手間もあるの」 「うんうん うわ~シアワセ」これは早智子

と背後から情けない声の三重唱 「あの~俺たちのお弁当は~」

「あ ほっしい~」と美智留が見せびらかす 「う~ワン!」仁慶が吠える

美智留はずっこけた 「あの・・・」

「うん?」輝く頭むき出しで黒のサングラスかけた仁慶に 美智留は確認した「本当にお坊さんなのですか」

「ギャハハ!もっと言ってやって」 高倉が笑い転げる

「あ・・・傷ついた わたし わたしは 明るく健全な青年なのに」

「そうそう明るいのは頭を見れば分かる」と橋本

「お前達は~~~」 拳をふりあげかけ 「それ何?」

今にも口に運ぼうとしていた美智留は やや焦りつつ「かぼちゃを裏越しして生クリームたしてオーブンで焼いただけ・・・だけど」 仁慶は美智留の手からソレをひったくった

みんなの注目を集めながら ひと口で飲み込む

「う・・・うまい!」 「おっもしろい人~~~」ウケまくりの早智子

しっかり食べたその後はスイカ割り

ビーチバレー

またたく間に時間は過ぎていく

残ったお弁当は男三人へのお土産に

「ああ楽しかったな 又行きたいな 泊まりがけもいいな~」

高倉は誰にともなく言う 帰りの車内は高倉が運転 横に早智子

二列目に仁慶と美智留 三列目に橋本と珠洲香が座った

美智留は何となく仁慶が気になり それで気付いてしまった

で珠洲香の様子を伺うのだが― 彼女は疲れたのか 黙りがちで やがて瞼が落ち その頭は隣りに座る橋本の肩の上に

そして橋本は彫りの深い顔に優しい微笑を浮かべる

見てはいけないものを見てしまった気に 美智留はなった

橋本と珠洲香 二人はお似合いだった

どうも感情が見えにくいところもある珠洲香だが 信用していない男の横で無防備に眠ったりはしないはず

珠洲香の家の前で女三人を降ろし 男三人は帰って行った

「疲れったね~」「うん」「早く寝よ」 迎えた母の淹れてくれたお茶を飲み 海水浴での様子を少し話して 交替でお風呂に入り部屋へ引き上げる

海に入った後のだるさが 体に残っていた

珠洲香は起こされた時を 入浴中も布団に入ってからも 幾度も思い返した

肩にかかる大きな手に軽く力が入り そうっと珠洲香の体を揺り動かしながら 「着いたよ 珠洲さん」

開けた瞳の前に男の唇が見えた

もし あの時まわりに誰もいなかったら 二人きりだったら どうなっていただろう

自分の唇に指で触れ 珠洲香は男の唇を想像する

何か焦れて自分の指を噛む