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日々、暮らしの中で考える。・・・・・・木もちeー暮らし

普通の暮らしの中で気がついたこと、考えたこと。またこのような生活の視点を通し、仕事で出合った方々のお話を綴っています。

江戸から続く「天然灰汁醗酵建藍染」という染色技法 ~岩野市兵衛 草木灰越前生漉奉書《薄藍》

2012年05月29日 23時59分04秒 | 仕事_越前生漉き奉書
今日は、岩野市兵衛氏が漉く 草木灰越前生漉奉書(くさきはい えちぜん き すき ほうしょ)の《薄藍》の商品紹介紙面づくりをしました。

先日、岩野さん奉書を藍に染めていただく工房さんへ電話をし

藍染についてご教授いただきました。

いまひとつ自分の中で租借していないので、

染め屋さんの薦める「藍染めの歴史図鑑」のような本を

会社で購入してもらうことになった。




この染め屋さんでは、藍染のことを「天然灰汁醗酵建藍染(てんねんあくはっこうたてあいぞめ)」という

江戸時代から続く製法で染めています。

話を聞けば聞くほど藍という染料をつくるまで、計り知れない手間と時間がかかっていることがわかりました。




藍の品種はたくさんありますが、ここでは[蓼藍]という藍を使って染めます。

▲蓼藍

藍の葉は、日本では漢方薬として、親しまれていたそうです。

そのため、藍の葉を天日乾燥の状態で保管しており

日本では乾燥した藍の葉に水をかけ、醗酵させ [すくも]をつくるそうです。

ちなみに外国や沖縄では生葉の藍を醗酵させます。


▲天日干しした藍の葉に水をかけ醗酵している状態

藍の葉を収穫して乾燥させた後、蔵の中で寝かせ、

これに水を打って良く湿らせながら上下に撹拌し、発酵させたものを再び乾燥させると

無色の物質であるインジカンが酸化されて青色のインジコへと変化して、

その色が濃くなることで黒色の土塊状の物質が出来る。これが蒅(すくも)と呼ぶそうです。

この工程だけで約100日かかります。




すくもは、水にも油にも溶けないので

堅木灰(アルカリ物質)を入れ溶かします。

溶けた藍の染料に、酒(糖質)を入れ醗酵させます。

次に 石灰 ふすま 芋など入れ、

醗酵の力を強くするというのでしょうか?菌を繁殖させます。

これは藍という染料が自ら生きる力を持たせ

生命力の強い染料として育てていくのです。(この辺りはまだ勉強不足で表現が若干違うかもしれません)


▲醗酵が進むと、染料がプクプク泡をふいています!これを藍の華 といい藍が健康で元気な状態かみるバロメーターになるそうです。




▲中西社長は藍の状態を舌でチェックし、芋が足りないのか?石灰が多いか? などわかるそうです。
 私には神業のようにみえます。


藍とひとくちにいっても、醗酵の状態など様々な要素により、仕上がり具合が変わるので

岩野さんの奉書に合う藍を、何パターンもつくられ、どの藍が良いのか研究され、

ようやく岩野さんの奉書にあう藍ができ、岩野さんからもOKを頂きました。

岩野さんの奉書を藍の壷に入れ、何度も染めます。


▲岩野さんの奉書を染めた状態


この様な染め物は、日本ならではの技術だそうです。

私は、はじめて草木灰越前生漉奉書《薄藍》をみたときに

心が洗われるような気がしました。

そして、色は育てるもの!ということを知りました。

藍という植物を育てすくもをつくる生産者さんや

すくもから藍を建てる染屋さんの

手間暇かけた仕事ぶりに、ただただ圧倒されます。

自然に従い、自然を最大限活かすことを最優先とする生業は

自然に対し謙虚な姿勢がなければ、なかなか出来るものではありません。頭が下がる思いです。




染められた奉書を、市兵衛氏の工房へ送られ、藍に染めた奉書を水につけ漉きなおします。
私は「えーなんで!これで充分じゃない」と思っていましたが
漉き返すことにより、奉書の繊維の奥まで藍色が入っていくそうです。これを藍の漉き返し と呼びます。


▲仕上がりの奉書を検品します。


このように染められた藍染めは退化による劣化がなく、経年とともに味わい深い色へ変わっていくそうです。
また漉き直すことにより、更に劣化が防げます
桂離宮の茶室「松琴亭」はこのようにつくられた藍の奉書を、襖や床の間に貼っています




私はこの藍色のような深さを持つ人間になれるだろうか?
難しいだろうな~
何が違うんだろう?謙虚さが足りないのだろうか


染色について勉強しなくては!
租借しないで文章やレイアウトを考えると、どうしても紙面が浅くなってしまう。

 
▲秋に発刊する山SUN通信の絵コンテになります。





2つのお土産 ~藍の苗を植える~

2012年05月01日 09時05分20秒 | 仕事_越前生漉き奉書
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
地域によっては、自然災害により大変なことになっておられるかと思います。
心よりお見舞いをお祈り申し上げます。


我家は、ゴールデンウィーク前半は、
近場の動物園へ行き&空手教室に通う子ども達と一緒にバーべキューをしました。


4月中は、主人は長期出張で留守にしており、ゴールデンウィーク前にようやく帰り、珍しいお土産を頂きました「。



▲お土産の「藍の苗」です。


▲ゴールデンウィーク前、主人は人間国宝 岩野市兵衛氏の工房へ行き、薄藍の漉き返し作業を見学してきました。これが、小川耕太郎∞百合子社で取り扱う草木灰越前生漉き奉書の薄藍です。
主人は和紙工房の帰りに、和紙を藍に染めてもらう藍染め工房へ寄ったところ、藍の苗を頂きました。
染め屋さんのお話では、「藍は40cmくらい離して植えないとダメ」だとか。

私「そんなことしたら、夏野菜植えられないじゃない!毎年トマトやキュウリが成るのが楽しみなのに。」

夫「でも藍はプランターは向かないっていってたぞ!」

私「じゃーどうすんの!野菜をプランターで育てるの?」

ということで、動物園の帰りにホームセンターへより野菜専用の大型プランターを購入しました。
帰宅後、すぐにハーブやお花も、植え鉢やプランターへ移し変えました。
大きく張った根は、なかなか動かず
結婚して尾鷲へ嫁いだときに、主人がプレゼントしてくれた開墾用鍬を使い、根っこを掘り起こしました。



▲2年前に母の日に娘からプレゼントしてもらった黄色のミニバラが目茶目茶大きくなりました。(元々は手のひら程度の身にバラでした)


▲夏野菜を植えたミニ菜園。


▲余った植木鉢へ、葱やニラを移し変えます。


▲ハーブもプランターへ移し変え

しかし、どうレイアウトを考えても、野菜のプランターを置く場所が日影になってしまいます。
トマトは日があたらないと赤くなりません。
「藍は日影でも大丈夫っていってたから、大型プランターでやってみるか。」
と主人が変更案をだし、藍のプランターを置く場所をつくるために、犬小屋を撤去しそのスペースに置くことになりました。



そういえば以前舅さんが「○○牟婁郡、地名に牟婁がつく地域は、湿度が高く、藍染めの工房が多い。なぜなら蒸し暑い地域は発酵に向いているからな~。
(藍染めは藍という植物を発酵させて染料をつくります)確か賀田町の隣町 曽根町にも藍染め工房があったぞ。
余談じゃが、昔は50年生の杉の葉を水車で砕いて、線香をつくっとった。これも水を動力としてつくられるから
地名に○牟婁郡とついているところが多いそうじゃ。賀田町も尾鷲と合併する前は牟婁郡だったからな~」
と教えて頂いたことがあります。




今日、主人は雨の中・・・・・・会社の玄関前のところに
頂いた藍の苗を4/5ほど植えました。
我家はプランターで植えます。
地植えだったら少々水をやらなても育ちますが
藍も花もハーブもプランター&鉢に移し替えたので
さてさて一体誰が日々の世話をするのか?結局育てるのは私とならないよう・・・
娘&主人の担当になっていきますように
娘にとって初めての夏休みの自由研究は「朝顔&夕顔日記」と「藍の観測日記」になりそうな気配。
朝顔では染物ができないので、藍は夏と秋と2回収穫できるとのことなので
夏休みに藍染めも体験できるかも。
素人なので、まずは藍を発酵させず、生葉で染めようと思います。







ということで我家のゴールデンウィーク前半は、近場のレジャー&藍の苗床つくりに追われました(笑)
娘が産まれてから、こんなに行動したゴールデンウィークは始めてかも(笑)
今までだったら、貯まった家事に追われていましたが(笑)
小学生になり主人も出張続きでしたが、娘も成長したのか、以前よりは家事も貯まらず
我家にもレジャーの余裕がでてきました




  
▲もうひとつのお土産 其々の名前の一文字が彫られたハンコ。
(日本の思想家&哲学者 岡倉天心展で購入したそうです。)

▲岡倉天心の本。


ぶらーり建物散策

2012年02月16日 11時10分58秒 | 仕事_越前生漉き奉書
随分前の話になりますが

奉書を漉いていただいている岩野市兵衛氏の工房へ訪ねたとき

朝早くおきて、娘と街をぶらぶら歩き、建物をみながら散歩していました。

武生市は歴史ある建物が多く興味を惹かれる建物が多かったです。

中でもお寺と幼稚園が一緒になった建物(多分、お寺が幼稚園を経営しているのでしょう)
 

▲幼稚園へ行くまでは、石畳を歩きます。


▲お寺の門をくぐります。


▲幼稚園へ到着


石畳を歩き、通園なんて浪漫チックですよね。

幼稚園は古い洋館の建物を修復しており

ペパーミントのガルバ(壁材)を使っています。多分予算の関係でガルバで修復したのでしょうが、

瓦屋根と丸みおびた洋館風の窓が上手に生かされ良い感じでした。

ペパーミントのガルバという思い切った色使いも、周囲とも違和感なく良かったです。


▲二宮金次郎がピッタリの空間でした。


他にもガルバを使った庇+鉄のドアのcafeなど・・・・
武生市は刃物制作が有名だそうで、
ちょっとしたところに鉄を使った
建具が多かったです。


武生市の街並みでは、あたりまえのように建具た装飾に
鉄を使われていましたが
最近の住宅は「鉄」いう素材を使うことが減ったように思います。
鉄を使った装飾は、赴きがあってよかったです。






紀伊半島の話に変わります。

尾鷲から車で1時間ほど走ると

和歌山県新宮市にある文化学園創設者 西村伊作 の自宅があります。

結婚して、すぐに西村伊作記念館を訪ね、すごく感動したのを覚えています。

そこの家の床材(フローリング)の張り方も面白いです。

▲西村伊作邸

主人の話では主人が子どもの頃、こういった張り方が流行ったそうです。

主人の叔父の家も似たような床の張り方です。




▲自宅のドアを制作していただいた幾何楽堂の自宅の床は、正方形に張っています。




張り方ひとつでこうも印象が変わるなんて!

今の住宅は規格サイズにあわせて合理的につくられているので

あまりないかも知れませんが。



▲そういえば、紀伊長島のお寺の天井の張り方は格子絵天井になっています。

そう考えてみると、今の住宅は床の張り方にそんなに工夫した感じは無いです。
まー非合理的といえばその通りですけど。
でも張り方ひとつで
ここまで空間の印象が変わると面白いですよね。










余談ですが紀伊半島には、

ゆっくり歩いてみるととてもに情緒ある建物物が多く

散策には最高です。

個人的にチェックしているブログが、建物散策のブログ
                             紀伊半島ぶらり
私も九鬼町の郵便局の建物っていいなーと思っていたら、

やはりこのブログでも紹介されてました。

曽根町の旧郵便局の建物も素敵です。今度また写真で紹介します。

繭のように ふぁふぁ 。岩野市兵衛氏の草木灰越前奉書。

2012年01月13日 11時01分52秒 | 仕事_越前生漉き奉書

▲岩野市兵衛氏が漉いた 草木灰越前生漉奉書の見本紙を兼ねた名刺ができました。
 紙の表は主人の連絡先が書いてあるので、紙裏を撮影しています。
 印刷は主人の友人の奥様が、活版印刷をはじめ、そこで印刷してもらいました。

うーん素晴らしい!美しい。




岩野さんの和紙は、楮から一本一本の繊維についた塵や節などを
すべて手作業でとります。なんども繊維を洗い出します。
薬品をつかわない製法なので、この色は「楮のもつ繊維」そのものの色になります。



写真のように、和紙を契ってみると「ふぁふぁ感」がお解かりいただけるかと思います。


▲草木灰越前生漉き奉書のH.P(画像をクリックすると、ご覧いただけます。









余談ですが・・・・・尾鷲のお花屋さん「べっとう」で売っていた 金菊です。
ここのお花屋さんは、店頭は売れ筋の洋花をおいてありますが、
「庭木や雑草と併せて活けたい」と相談すると、裏から色々な花をだしてくれます。


この金菊と和紙を組み合わせたら、良いだろうな~。



▲岩野さんが、自身で漉いた和紙をつかって、菓子受けをつくりました。

気候風土から生まれる色 ~ 岩野市兵衛さんが漉いた奉書 ”薄藍”の試作品ができました。~

2012年01月12日 10時24分49秒 | 仕事_越前生漉き奉書

▲岩野市兵衛氏が漉く 藍の漉きかえし 《薄藍》




▲飛び出す絵本 蓮と菖蒲

▲サンフランシスコの飛び出す絵本。クリスマスにお爺ちゃんが娘にプレゼントしてくれました。


外国の人からみると、日本の風景や文化ってエキセントリックにみえるんだろうな。

でも、色使いがどこか明るくて、サンフランシスコの「青」を感じます。

きっと侘びの世界って、気候風土がつくりだす自然によって生まれてきたんだろうな~と思います。


BS NHKの連載番組「アートビート」をご覧になったことありますか?。

私はこの番組が大好きで、ずいぶん前に放映された、ニューヨークのタップダンサー セビアングローバーが出演していました。

身震いがするほど凄かったです。

昨日は、3代続いている絵の具屋「セヌリエ」 の絵の具職人さんのお話。

フランスってこういう絵の道具が指示されているから、凄いですよね。

この絵具屋さんは、あのパブロピカソも常連さんだったそうです。

そこの絵の具やさんに尋ねた、北野武さんが自身の好きな色「灰色かかった色のブルー」をオーダーすると

その場で絵の具を配合し、絵の具をつくっていました。

職人さんは「自然界の微妙な色を、肌で感じ取り、調合していくかがとっても大切です」と話されていました。

絵の具づくりは、化学的知識がないとつくれないそうです。





そういえば、小川耕太郎∞百合子社のweb紙芝居「山とミツバチと農家」は

イタリアの土と日本の土を中心に配合し、絵の具からつくって描いた紙芝居です。

日本の土だけだと、どうしても明るさがなくなってしまうので、イタリアの土を使っています。

この紙芝居は、子どもを対象にしているので、色の明るさに重点を置いています。

先日、この紙芝居を描いてくれた麻理ちゃんと話しで

「素材のもつ力って、すごく大きいよね。あの紙芝居はあの絵の具がなかったら描けなかった」と話していました。

「岩野さんの奉書をみていると、
 なんでホッとするんだろう?と考えてみたんだけどね・・・・・、
 電子的な色に慣れつつある現代人でも、本能的に自然に近い色に
 ほっとするというよりか、深層的な部分まで入ってくる色なんだろうな~。
 と思ったよ。」



▲人間国宝 岩野市兵衛さんが漉く「藍の漉きかえし」

ちなみにパブロピカソは、岩野市兵衛氏の先代の漉く奉書を使い木版画を制作していたようです。

・・・・色って本当に奥が深い。

ふっと、自分の本棚を 日本の色や造形についての本が 結構多かった。

意識してなかったけど・・・・やっぱりどこかで自分のルーツの色や造形を求めているのかな?


▲自分の本棚にあった「日本」について書かれていた本





話が次々飛びますが、

一年以上の歳月がかかってしまいましたが

奉書を藍に染めていただく工房から「薄藍」の試作品が送られてきました。

試作品は全部で6種。

その中の一枚
(写真と実物の色は多少異なります。)

驚くほど手間がかかるけど「心の深層まで入っていく色」だと思います。

小川社のスタッフで話し合い、送られてきたサンプルの中から「どの薄藍」にするか決定します。






少しでも職人さん達の仕事が、おきゃ様にご理解いただき

なによりもお買い求めいただいたお客様が、心の底から和んでいただければと思います。

岩野さんの奉書が、現代の住空間や暮らしの中で、どんな風に使われていくのか楽しみです。

H.Pにしていきたいと思ってます。

主人がよく話すのですが「技術は、自然や命と同じように 一度なくしてしまったら取り返しがつかない

という言葉の深さを実感する毎日です。

私も頑張らないと。