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新型コロナ 読売「地球を読む」田中明彦氏論説の限界

2021-06-06 07:19:24 | 日記
5月30日 日曜の読売新聞の一面の論説「地球を読む」はタイ
トルが「遅れたコロナ対応 日本、非常時体制に不備」とあっ
た。

執筆者は政策研究大学院大学長の田中明彦氏。初めて聴く大学
院大学なので、ネットを見ると、前身は埼玉大学で1977年に
政策研究科の大学院として開設したのが始まりで、1997年に
東京六本木に独立移設した国立の国際的な政策研究学府という
事のようだ。その学長が田中氏。

一段目の終わりに「最大の確認事項は、日本という国家には異
常事態に対応するための仕組みと能力が大きく欠如していたこ
とである。P CR検査の実施体制を迅速に強化できなかったこ
と、ワクチン開発を国が主導して実施できなかったこと、そし
て現在目の当たりにしているように、ワクチン接種にも長期の
時間を要すること。これらは皆、国家としての日本の体制不備
と能力欠如を示している
」と手厳しい。
しかし、「なぜできないのか」と問うたあたりからトーンダウン
していく。氏は「非常時には、平時には必要のない人が大勢必要
とされるからである
」と指摘しているが、失礼な言い方になるが
御用学者」には、これが限界であろう。
なぜなら、それ以前の問題があるからだ。
先ず官僚の意識改革が必要だ。明治以来の「富国強兵」の理念が
「富国経済」と形を変えて、いまだに官僚の意識の中に生きてい
るからだ。つまり、国を豊かにし、国民の生活を豊かにするには、
国の経済成長に力をいれなければならないという高度経済成長期
の理念だ。国民の健康や生活よりも国の経済を支える企業活動の
支援に重点を置いている。
だからサーズやマーズが他国で流行しても対岸の火事で対策対応
の研究を疎かにしてきた。それがアベのマスクのような1住所2枚
組1セットを届けるという馬鹿げたことしかできない状態として現
れている。普段、国民の健康など厚生労働省が真剣に考えていない
証拠だ。
本来ならば、新型コロナウイルスが流行し始めた昨年初頭から、
厚生労働省の次官あたりが、来るべきワクチン接種の体制づくり
のために省内にプロジェクトチームを作るか、さもなくば大臣が、
これを指示するか、それさえもできなければ官邸が主導して命令
すべきだった。オリンピックを控えているのに、それらのことが
策定されてこなかったがために、現在の政権の右往左往がある。

遅ればせながら、菅首相の「1日、100万回ワクチン接種」のア
ドバルーン以来、ワクチン接種のスピードが上がっているのは、
氏のいう「体制不備と能力欠如」が直接的な原因ではなかったこと
を図らずも証明している。

さらに付け加えると、菅首相はシンクタンクを擁していないよう
にみえる。安倍政権の時は、自らが官房長官として孤軍奮闘して
内閣府を切り盛りしてきたが、いざ自らが首相になると、内閣官
房を指揮できる者がいない。閣僚任せにしてきたが、その閣僚が
思うように動いていない。だからすべてが後手後手になる。

更に氏は「現実的なのは、非常時に有効に対応できる人材と資源
を政府が維持しつつ、非常時に市場と社会から人材や資源を『動
員』する仕組みを制度化しておくことである
」としながら「戦時
動員体制
」並のものが必要とし、米国の「国防生産法」を挙げて
いるが、現在の日本に、今それが必要だろうか。
例えば世界一、医療機関が多い日本でP CR検査やワクチン接種
が、なぜ進まないのかという議論がニュースで、幾度も流れた。
因みに2018年の日本の医療機関の数は8372と2位の米国6210
を大きく引き離している。そういう状況下にあって、例えば東京
都小金井市の65歳以上のワクチン接種率は5月25日の時点で
40%を達成したというニュースを耳にした。5月連休明けから
の接種開始だったはずだが、一瞬、耳を疑ったくらいだ。
このように優れたワクチン接種の知見は全国に、いくつもあると
いう。これらの知見を分析すれば、「戦時動員」並の体制づくり
など、現在、必要ないことを証明している。
ワクチン接種の計画が早ければ、全国からアイデアや知見を募集
して接種計画の策定を進めることが出来た筈だ。

故事に習うならば
「隗より始めよ」である