交通違反に対するサンクション(その2):交通反則通告制度

2017-06-30 21:21:15 | 交通・保険法

2023-03-21追記:反則金一覧表を最新の元に改めた。

【例題】Aは、自家用車を運転中に携帯電話を使用した。

点数制度

 

[交通反則通告制度の意義]

・道路交通法は、一定の行為に罰則をもって臨んでいる(道路交通法115条から123条の2まで)。これらの違法行為をおこなった者は、道路交通法違反の罪に問われるのが本来である。

・その一方で、道路交通法は、上記違法行為のうち比較的軽微なものを「反則行為」と定義し、ある反則行為を犯したとしても直ちに公訴提起(少年ならば審判開始)をせずに、法定の反則金を納付すれば手続を終了する、といったルートを用意している。

 

[反則行為と反則者]

・具体的な反則行為と反則金の額は、道路交通法施行令別表第6に列挙されている(道路交通法125条1項3項、別表第2、道路交通法施行令45条)。→反則金一覧表(2022年11月18日時点)

・反則行為≒一般違反行為:道路交通法施行令別表第6に掲げられる反則行為のうち、多くは同別表第2の1に一般違反行為としても掲げられている。

・交通安全と無関係な反則行為:反則行為のうちで交通の安全に影響しないものは、一般違反行為とされていない([例]泥はね運転、免許証不携帯など)。

・悪質な一般違反行為:一般違反行為の中でも悪質なもの([例]酒気帯び、無免許、無保険、速度超過40㎞以上など)は、反則行為と評価されずに直ちに刑事罰の対象とされる。また、酒酔いや無免許の者が別の反則行為を犯しても「反則者」とは扱われず(道路交通法125条2項)、反則通告制度の恩恵を受けられない。

・軽微な違反行為:この反対として、軽微な一般違反行為([例]座席ベルト装着義務違反など)は、点数制度の対象にはなるものの、罰則の対象とはならない(当然に反則行為にもならない)。

・反則行為の主体は運転者に限定される(道路交通法125条1項)。もっとも、違法駐車に限っては、運転者が反則金を納付しない場合(or公訴提起された場合)、その使用者も放置違反金の納付を命じられる(道路交通法51条の4第4項)。

 

[反則金の額] 

・同一の反則行為であっても、「大型車/普通車/二輪車/原付車」の違いで反則金の額に差が設けられている。

・反則金の最高額が「40,000円(大型車による高速道路速度超過35~40㎞など)」、最低額が「3,000円(免許証不携帯)」である。

[例]普通車による高速道路速度超過35~40km…35,000円(3点)

[例]普通車による一般道路速度超過25~30km…18,000円(3点)

[例]普通車による携帯電話使用…18,000円(3or6点)

[例]普通車による駐停車禁止場所違反…18,000円(2点)

[例]普通車による信号無視違反…9,000円(2点)

 

[反則金の納付]

・告知:警察官は、反則者があると認めたときは、反則者に「交通反則告知書(いわゆる青キップ)」(道路交通法126条1項、道路交通法施行令46条)と「仮納付書」(道路交通法129条1項、道路交通法施行令52条6項1項)を交付する。多くの反則者は告知書を受領するであろうが、受領を拒んで正規の刑事手続に臨むことも可能(道路交通法130条2号)。

・仮納付:告知を受けた反則者は、その翌日から7日以内に、仮納付書により、日本銀行歳入代理店に対して反則金相当額を仮納付することができる(道路交通法129条1項、道路交通法施行令52条6項2項4項)。

・公示通告:警察官は告知をした事実を県警本部長へ報告する(道路交通法126条3項)。これを受けて県警本部長から反則者への通告がされる建前であるが(道路交通法127条1項)、既に仮納付が済んでいる場合は、個別通告に代えて公示通告(=警察の掲示板に告知書番号等が書かれた公示通告書を掲示)で処理される(道路交通法129条2項、道路交通法施行令54条、道路交通法施行規則44条)。掲示開始から3日経過によって通告が効力をもつので(道路交通法施行令54条3項)、先の仮納付が反則金の納付とみなされる(道路交通法法129条3項)。

・事実上の例外としての個別通告:仮納付期間(=告知日を含めて8日間)を徒過すると、警察本部長から反則者に通告書の送付をもって通告される(道路交通法127条1項)。

・事実上の例外としての納付:通告を受けた者のうちで仮納付をしていないものは、翌日から10日以内に、納付書により、日本銀行歳入代理店に対して反則金を納付しなければならない(道路交通法128条1項)。

・納付の効果:反則金を納付した者は、「当該通告の理由となつた行為に係る事件」について公訴提起(or少年審判開始処分)を受けない(道路交通法128条2項)。この意味で反則金納付は公訴提起の消極要件と位置づけられ、もしこれに反する公訴提起がされた場合は、その手続が違反無効として公訴棄却判決が宣告される(刑訴法338条4号)。

 

[補足:違法駐停車への処置]

・運転者による駐停車違反や放置駐車違反は、「一般違反行為(1~3点)」かつ「反則行為(8,000~27,000円)」となる。

・レッカー移動等:警察署長は、違法駐車車両を適当な場所にレッカー移動することができる(道路交通法51条各項)。区間によっては、違法駐車車両に車輪止めを取り付けることも可(道路交通法51条の2各項)。これらに要した費用は、運転者or使用者運転者の負担となる。

・放置違反金:放置駐車違反をした運転者が反則金の納付をしなかった場合、使用者に放置違反金の納付命令が出される。放置違反金を納付しないと、車検拒否処分を受ける(道路交通法51条の4~51条の16)。

 

酒巻匡『刑事訴訟法』[2015]pp240,603-4

☆一般社団法人全日本交通安全協会『わかる身につく交通教本第6改訂版』[2016]pp118-9

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