弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

就業規則の再雇用基準を満たす高年齢者が再雇用を希望したにもかかわらず再雇用しなかった場合の法律関係

2011-08-16 | 日記
Q173 就業規則の再雇用基準を満たす高年齢者が再雇用を希望したにもかかわらず再雇用しなかった場合,再雇用されたことになってしまうのでしょうか?

 労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,労働者及び使用者が合意することによって成立するものですから(労働契約法6条),会社が再雇用を承諾していない以上,労働契約は成立せず,再雇用を拒絶された高年齢者は,会社に対し,損害賠償請求する余地があるというにとどまるのが原則です。
 しかし,東京大学出版会事件東京地裁平成22年8月29日判決,津田電気計器事件大阪高裁平成23年3月25日判決などの下級審判決は,再雇用の拒絶(労働契約申込みに対する不承諾)に関し,解雇権濫用法理を類推適用して,不承諾は権利濫用に当たり,不承諾を当該労働者に主張することができない結果継続雇用契約が成立したものと扱われるべきであるなどとして,継続雇用契約の成立を認めています。
 理論的には相当無理をして結論を導いているようなところがありますが,就業規則の選定基準を満たしているにもかかわらず,再雇用しないというのは,再雇用制度の誤った運用をしていることになりますから,そのようなことがないよう運用を改める必要があることはいうまでもありません。
 継続雇用基準を満たしているにもかかわらず,継続雇用を拒絶した場合,損害賠償請求を受けるリスクの他,継続雇用契約の成立が認められ,賃金請求が認められてしまうリスクがあることに留意する必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

最新の画像もっと見る