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年金支給年齢引き上げと新賃金体系

2011-01-22 | 日記
今朝の日経新聞によると,与謝野馨経済財政相が,「人生90年を前提に定年延長を考えねばならない。それにより年金支給年齢の引き上げも考えられる。」と発言したとのことです。
支給年齢の引き上げは,少子高齢化の流れからは容易に予測できる話ですから,おそらく,与謝野馨経済財政相の言うとおりになるでしょう。
政治的な損得勘定を理由に,与謝野馨経済財政相の発言を迷惑に思っている政治家もたくさんいるとは思いますが,発言内容自体は何も間違っていません。

そうすると,定年退職後,年金支給年齢までの期間,無収入というわけにもいかないでしょうから,数年のうちには高年法が改正され,雇用確保措置を取らなければならない年齢が,現在の65歳から,67歳,70歳と,引き上げられていくことでしょう。
定年自体,例えば,65歳以上にしなければならないという義務付けがなされる可能性も十分あります。

企業としては,このような時代の流れを先取りして,賃金体系を構築していく必要があります。
従来,60歳まで,正社員としての高い年功序列賃金を支給してきた企業も,最低65歳,場合によっては67歳,70歳まで,労働者を雇用し続けなければならないことを前提に,賃金体系を考えていく必要があるわけです。
今後,顧客のパイが拡大する一部の業種を除き,従来,40代,50代の社員に対し支給してきた賃金の一部を減額し,60代の社員の賃金に充てざるを得ない事態になる可能性が高いように思われます。
例えば,50代になったら,幹部社員を除き,むしろ,賃金額が下がる賃金体系を構築するなどして対処しないと,会社倒産の憂き目をみることになるかもしれません。

日本国内での事業を拡大できるごく一部の業種を除き,日本国内においては,今後ますます,若い人の採用も抑制的にならざるを得ないと思われます。
海外の支社では,現地採用がますます拡大されるでしょうし。
日本国内において,新卒者の就職内定率が下がったり,若い人達の失業率が固定的に高くなったりしないといいのですが…。

どうして,社会保障の負担を,「全ての」企業が,「雇用」の問題として,「強制的に」転嫁されなければいけないのでしょうか?
皆様方は,その理屈について,考えたことがありますか?
経営効率の悪い企業であっても,存続させる価値があるという考え方を前提にした場合,「企業の社会的責任」の問題として,各企業の「裁量」に委ねるべき問題ではないでしょうか?
それを実行するだけの力のある立派な企業もあれば,経営効率が極めて悪く,従業員にも最低賃金ギリギリの賃金しか払えず,倒産間際で何とか持ちこたえているような企業もあるわけですから。
国の政策について来られないような弱い企業は潰れてしまっても構わない,その方がむしろ,経営効率のいい業種に人的資源が集中できて国が豊かになるからかえって望ましい,という発想ということであれば,考え方として首尾一貫していますが,日本ではそのように明言している政治家を見たことがありません。

弁護士 藤田 進太郎

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