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運送業を営む会社において,残業代の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい。

2015-06-23 | 日記

運送業を営む会社において,残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点を教えて下さい。


 運送業を営む会社において,残業代 (割増賃金)の趣旨を有する手当を支給する際の注意点は,大きく分けて
 ① 残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にすること
 ② 残業代(割増賃金)とそれ以外の賃金とを明確に判別できるようにすること
の2つです。
 まず,①についてですが,当該手当が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが明確でない名目となっている場合,当該手当の支払が残業代(割増賃金)の支払として認められない可能性が高くなります。残業代(割増賃金)には見えないような名目の手当を支給しながら,残業代(割増賃金)請求を受けたとたんそれは残業代(割増賃金)だと主張しても,なかなか認められません。
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(割増賃金)であることが明らかな名目の手当を支給している場合には,それが残業代(割増賃金)ではないといった主張は滅多に出てきません。問題となるのは,「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった残業代(割増賃金)であるとは読み取れない名目の手当を支給している場合です。当該手当の全額が残業代(割増賃金)の趣旨を有することが労働条件通知書に明記してあったり,賃金規程に明記されて周知されていたりすれば,労働審判等になってもそれなりに戦えますが,そうでない限り,苦しい戦いを余儀なくされることになります。
 「業務手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」といった名称の手当を残業代(割増賃金)の趣旨で支払う旨の規定があったとしても,裁判では,実質的には残業代(割増賃金)の支払として認められないと判断されるリスクが残ることは否めません。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった名称であれば,実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当と認めてもらいやすくなりますので,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当は,できる限り「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった一見して残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当であることが分かる名目で支給すべきと考えます。
 次に,②についてですが,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(割増賃金)に当たる賃金を判別できるようにしておかないと,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。例えば,単に,残業代(割増賃金)込みの賃金である旨合意しただけでは,残業代(割増賃金)の支払があったとは認められません。
「業務手当には30時間分の時間外手当を含む。」といった定めも,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(時間外割増賃金)に当たる賃金を判別するためには方程式を使って計算する必要がありますので,リスクが高いものと思われます。残業代(割増賃金)の趣旨を有する手当は,基本給や何らかの手当に含むという形で支給するのではなく,項目を明確に分けて金額を明示して定めるとともに,給料日には給与明細書に金額を分けて明示して給与を支給すべきと考えます。
 まずは,残業代(割増賃金)に相当する金額が何円なのか,残業代(割増賃金)の金額についてははっきりさせて下さい。その上で,当該手当が実質的にも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨を有する手当であることを明確にするために,その金額が何時間分の時間外割増賃金,深夜割増賃金,休日割増賃金なのかを追加で明記するのであれば,より望ましいと考えられます。



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