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試用期間満了前の本採用拒否(解雇)の有効性判断基準

2011-12-20 | 日記
Q26 試用期間満了前の本採用拒否(解雇)の有効性判断基準は,どのように考えるべきでしょうか?

 使用者の立場からすれば,試用期間を設ける意味は,採用決定後も社員として雇用し続けるか否かの判断を留保し,試用期間満了時までに社員としての適格性を審査して,社員として相応しくないと判断した場合に本採用を拒否して雇用を打ち切ることにありますので,試用期間満了前であっても社員として不適格であると判断した場合は,早期に本採用拒否(解雇)して雇用を打ち切りたいところかもしれません。
 しかし,労働者からすれば,少なくとも試用期間中は雇用を継続してもらえると期待するのが通常であり,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)が容易に認められてしまうと,このような労働者の期待が裏切られる結果となってしまいますから,採用後間もない時期の本採用拒否(解雇)等,試用期間満了までの期間が長期間残っている時点での本採用拒否(解雇)は,客観的合理性,社会的相当性を欠くものとして無効(労働契約法16条)と判断されるリスクが高いものと考えられます。
 仮に,使用者から,労働者に対し,試用期間満了前であっても本採用拒否(解雇)することがある旨明示し,労働者がそれに同意して採用されたような場合であれば,労働者がそのような期待を持つことはないとも思われますが,試用期間満了時まで本採用するかどうかの最終判断を留保していることに加え,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)まで容易に認められてしまうと,使用者の「いいとこ取り」となり,労働者の立場があまりにも不安定となってしまいますから,やはり,試用期間満了までの期間が長期間残っている時点での本採用拒否(解雇)は,客観的合理性,社会的相当性を欠くものとして無効(労働契約法16条)と判断されるリスクが高いものと考えられます。
 試用期間満了前の本採用拒否(解雇)は慎重に考えるべきであり,試用期間満了時まで社員としての適格性を審査しても適格性がないという結論が出ることが明らかな場合に限り行うべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎
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