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付加金(労基法114条)

2014-01-22 | 日記

付加金(労基法114条)とは,どういうものですか?

 使用者が,
 ① 解雇予告手当(労基法20条)
 ② 休業手当(労基法26条)
 ③ 残業代割増賃金)(労基法37条)
 ④ 年次有給休暇取得時の賃金(労基法39条7項)
のいずれかの支払を怠り,労働者から訴訟を提起された場合に,裁判所はこれらの未払金に加え,これと同一額の付加金の支払を命じることができるとされています(労基法114条)。
 他方,①~④以外の基本給等の賃金について付加金の支払を命じられることはありません。

 残業代割増賃金)請求訴訟においても,付加金の請求もなされるのが通常で,例えば,未払の割増賃金の額が300万円の場合,さらに最大300万円の付加金の支払(合計600万円の支払)が判決で命じられる可能性があるということになります。
 使用者が残業代の支払を怠っている場合,付加金の支払も命じられることが多くなっていますが,付加金の支払を命じるかどうかは裁判所の裁量に委ねられており,全く付加金の支払が命じられないこともないわけではありませんし,未払割増賃金の50%相当額の付加金の支払が命じられるといったこともあります。
 私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件(労働判例1038号53頁)において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官)でも,「原告は,・・・本件割増賃金について労基法114条本文に基づき付加金の請求をしているところ,同条は『裁判所は・・・付加金の支払を命ずることができる。』と規定しているにとどまるのであるから,裁判所は,諸般の事情を考慮し,付加金を命ずることが不相当であると判断した場合にはこれを命じないことができ,また,これを命ずる場合であっても裁量により減額することができるものと解するのが相当である。」とされています。
 したがって,使用者としては,付加金の支払を命じるのが相当でない事情があるのであれば,その事情を主張立証しておくべきことになります。

 なお,付加金の請求は,違反のあったときから2年以内にしなければならないとされていますが(労基法114条),この期間はいわゆる除斥期間であって時効期間ではないと考えられており,労働者が付加金の支払を受けるためには,2年以内に請求の「訴え」を提起する必要があります。
 したがって,割増賃金等の消滅時効は中断している場合であっても,その時効中断が訴え提起によるものでない場合は,付加金については除斥期間を経過しているためその全部又は一部の支払を命じることができないというケースもあり得ることになります。

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弁護士 藤田進太郎