パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

国連条約 - A Threat to U.S. Sovereignty?

2007-04-12 23:58:08 | ロースクール
 昨日の話ですが、United Nations Association of USAという怪しさ満点の団体などの主催で"U.N. Treaties – A Threat to U.S. Sovereignty?"と題する講演会を大学でやったので聞いてみました。コロンビア・ローのアルバレス教授(American Society of International Lawのプレジデントでもあるらしい)がメイン・スピーカー。
 感想はぁ・・・(期待)ハズレ。この手のって違う意見の人が混じってないと話しが盛り上がらないというか何と言うか、他はモデレータ-しかいなくて、「講演」とモデレーター含めた質疑応答セッションで終わっちゃうのは話しの面白さを割り引いても正直物足りない。こっちでよく見るフツーのパネル・ディスカッション形式(モデレーターがいて、パネラーが3人ぐらいいて、順にプレゼンして、その後ディスカス)で対立する意見とのコントラストが見たかったなぁ。

講演自体は冗談交じりで面白かったんですが、内容はこんな感じ↓
○条約、特にUN条約はBounded Rationality(というよりIrrationality)に基づく批判にさらされてる
 ・条約はCommunist, Third World (& Hollywood) Conspiracyだ
 ・条約はGlobal Bureaucratsの主権侵害
 しかし、そんなことはない、条約形成過程でアメリカが影響力がないことはない、彼らが批判しているのはむしろ自国の外交官達。
○例えば190カ国*が締結しているConvention of Rights of Childrenは、締結によって「親の権利を破壊する」とか、「親を訴追され、子が外国Enforceチームに取り上げられる」とか、ひどいのは「母の死を喜ぶことになる」という批判まである。 (注:国連加盟国は192国。未締結はアメリカとソマリア)
 しかし、基礎中の基礎だが、自動執行力のある条約でしか「訴える」ことはできない。反対者が批判しているのは条約ではなく自国の政治家。
○国際法のベネフィット(時間、郵便、車etc)は数え上げればきりがないのに、過小評価/無視されている。互恵的な観点からも理論的整合性からも米国は信頼性を失っている。
○「主権」は、何者にも支配されないという伝統的意義は現代社会では通用しない。国連を通じてしか国際法のベネフィットを得ることは困難なのであって、国際法は米国の主権の脅威ではなく、逆にどーしても必要なもの。

 細かい具体例は満載で面白かったけど理論的な部分は見てのとおりNothing Newだったのがちょっと不満だったのかな。本当に知りたいのはどーしてIrrationalityが発言力を持つかだったり、今や皆打ち揃って賛成するらしい(ネオコンのボルトン前国連大使まで)国連海洋法条約がなぜ上院でストップするのかとか、率直に言って米憲法のデザイン・デフェクトなのでは?とかなんですけどね。例えば環境ネタだと、まぁ実際に義務が生じるバーゼル条約や京都議定書はさておき、基本的にありがたーいテキストが続くだけの生物多様性条約を締結しないというセンスは理解できないわけで(これも未締結はアメリカとソマリアだけ)、ジェノサイド条約締結に40年かかったみたいな話もあったのですが、個々の政治局面のせい、例えばブッシュ大統領のユニラテラリズムのせいにできるレベルじゃないのではなかろうか? 
 質疑で米憲法のデザイン・デフェクトの話しにもなって、興味深いのはNAFTAやWTOは通常の上院2/3ではなくて、Congressional Executive Agreement(行政協定+両院それぞれ過半数の賛成)により(ギリギリで)締結されてるってこと。そう、皮肉なことに一番強力で、主権を侵害しているのはNAFTAやWTOなんですよね。「主権侵害」というのが丁度いいプロパガンダになってるいい証拠じゃないかという気もしますし、逆の見方をすると連邦憲法の正しさ!?が証明されてると言えなくもないような。


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