パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

住生活基本法/中心市街地活性化法

2006-02-08 23:51:33 | 環境ネタ
実はというか、6日には都市計画法以外にも興味引かれる改正案が決定されていました。住生活基本法案と、中心市街地活性化法案がそれです。

1.住生活基本法案
 「量から質へ」住宅行政を転換します!ってことが柱らしい。んで、「質」の中身はというと、安全性、快適性、耐久性、省エネ性など(11条)。安全性には耐震性能が、快適性にはバリアフリー機能が含まれるはず。
 実は、かつて私はこの手の「基本法」に対して、単純な気合表明以上の意味がなく、美しい文章を並べる自己満足以上に意義がない(ばかりか、満足感によって危機感が喪失するマイナス効果さえある)と考えて非常にシニカルな態度を取っていた※のですが、行政ミッションを変える以上、法の委任(デリゲーション)を改めて頂くのはむしろ当然のことではないかと考えるようになりました(Separation of Powersの国に来たせいですかね)。そういえば、何年か前に省エネ住宅優遇策(税)を仕組もうとしたときに住宅の「質」を問うは住宅行政の変更につながるということでボツになったことがあったような(質の考慮は住居の広さや、バリアフリーといったような例外的な考慮だけという扱いだった)。期待した時期とはズレましたが大いに歓迎したい政策転換ですし、住宅金融公庫民営化なども踏まえての難しい決断だったでしょう、敬意を表したいです 建築基準法騒ぎとは別の議論として、粛々と成立させてほしいものです。

※シニカルだった理由の一つに、法定計画や、とりわけ法律事項を作る必要から組織or国会報告(白書)のような、いずれにしろ非生産的なものが副生されるってことがありました(ちなみにこれの法律事項って、住宅建設計画法の廃止(とそのハネ改正)だけですかね?)。同じ文脈での非難が当たりそうなのが、街づくり3法見直し対応として都市計画法等改正法と一括して議論されていた中心市街地活性化法です。

2.中心市街地活性化法経産省発表国交省発表
 今回の改正で何をするかというと、理念や協議会の法定化は置いておいて、中心市街地活性化本部の設置・内閣総理大臣の市町村計画認定とによる「国による選択と集中」、計画認定後の支援措置の拡充だそうです。これほど突っ込みどころ満載な法案というのも珍しいですね
①中心市街地活性化本部
 もう、この手の本部増やすのやめましょうよぉ~(半分贖罪を願う叫びでもあるのですが(笑))。法律事項がなかったわけでもるまいしわざわざ作る必要があるんですかね?
②選択と集中
 総花的な活性化振興策の反省の気持ちは分からないでもないのですが、その対応が「国による選択と集中」であり、その道具が「内閣総理大臣による認定」であるって目的も手段も賛成しかねます。
 そもそも「選択と集中」が実務的にきわめて困難であるとことは図らずも歴史が証明してきたことではないでしょうか。都市計画法施行後40年近く経ってなお線引さえ難しいのに。少数精鋭になるはずだった法科大学院の膨張は?あれだけ大騒ぎした高速道路で実際の凍結路線は?例えば高岡と富山から申請があって、富山だけOKにします、なんてことができるのか?鳥取と松江と米子だったら?一言で感想を言うと、「できるわけないじゃないか」(体験的官僚論p41参照)
 いや、この立案者はむしろこれを痛いほど分かっていて、内閣総理大臣の権威を借りることにしたのかもしれませんが、そうであればなおさら、政治イシューになりうることを十分認識していることになります。ならばそもそも政治イシュー化するようなスキームを作らなきゃいいのに、と思うのは私だけ?そこまでして国が支援する意義は何なの?と思っていたらこんな発言が- 「基本は、できるだけ国全体としての規制は無い方が良い」経済同友会代表幹事の発言(2/7) まちづくり3法について
これは次の点にも絡むのですが、
③支援措置の拡充
 そもそも「計画→認定→支援措置」という金太郎飴スキームが機能するには、支援措置のベネフィットが計画→認定にかかる申請者の事務コストを上回る必要があります。んで、当該事務コストは、オポチュニティーコストとロビイイングコストまで含めているとばかにならないのではなかろうか(計画作るの面倒くさいし、よく分かっている人じゃないと作れないから、よく分かっている人が町興しに尽力した時に比べて相当に町興しが遅れる。陳情の胡散臭さは言うに及ばず)。さらに言うと、実際の中身よりもロビイイングを効果的に行った者が支援措置を受けられる可能性があるわけで、その意味で市場を大いに歪めている気がしてなりません。もちろんダイエー(産業再生法の支援企業)が念頭にあるのですが、ろくすっぽな反省もせずに(それともどこかでしたのかな?)どうして金太郎飴スキームがパワーアップして再生産されるのか理解できません(本当にパワーアップしているかどうかも実は微妙ですが) これが選択した後の集中の結果だとしたら、政治イシュー調整コストとあわせて、結局コストがベネフィットを上回るのではないか→ない方がいいのではないかと思えてしまいます。

 全体として、市街地居住推進等見るべきものが皆無というわけではないのですが、都市計画法等改正案が素晴らしい内容だけに落差が激しいというか、国会審議は分けて議論した方がいいのでは、と思うのでした。