パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

RGGI ステークホルダー・ミーティング(2)

2006-03-29 23:37:34 | 環境ネタ
 昨日の続きです。中身に入ります。以前も申し上げましたが、RGGIの特徴は詰まるところ、Power Sector(電力業界)限定のCap&TradeのEmission Tradingで、Power Sector以外からオフセットを認めていること、これに尽きます。というわけで、
①どんな規制でも付いてくる検討事項
 1)内  容:規制対象、規制強度、履行監視、履行確保
 2)実態効果:環境面(改善効果&悪化効果)、経済面、社会面
や、
②Emission Tradingに付いてくる検討事項
 Allocation, Tradingのインフラ(account管理など)
だけでなく、
③RGGIの特有な検討事項として、
 オフセットの範囲、利用限度、Safety Valve
などを考えなきゃいけないわけですね ただ、キャップ外からクレジットをケース・バイ・ケースで取り込んでいく、という点は実は京都議定書のCDMそのものなので(Additionalityで引っかかっているのも同じ)、その成果(というか考え方)を相当に生かせるはずですけどね。

以下、上記の点を簡単にさらいます。
①どんな規制でも付いてくる検討事項
1)内  容:
 ・規制対象:
一口に「電力」といっても様々ですが、“Fossil Fuel Fired”で25mw以上の発電能力がある施設と定義されています。ややこしいのが、Biomassも50%以上利用していないと対象になっちゃうことですね。
 ・規制強度: もっともニュースになりやすい(というより記事にするのが簡単な)ところですが、
  2009-2014 現状(2005年末)で固定
  2015-2018 上記から10%減
ってことです。実務家からすると、数字は多くの要素の一部でしかないのですが、分かりやすいからしょうがないですね。
 ・履行監視:Monitor,Report,Record Keeping義務を課しています。Federal規制の5年保存を10年に延長しています。ちなみに、本当にキチンと減ったかどうか確かめる(Verification)手続がさっぱり決まっていません。昨日も質疑になりましたが、モデルルールでは決めないことになるのかな?
 ・履行確保: 違反分の3倍!を差し引き(§XX-6.5(d))
 ちなみに、いわゆる“経済的手法”を用いる場合は、強い履行確保措置を用いないと、ダメだ、と言われています。誰もが守らないと、規制遵守のインセンティブがなくなり取引市場が機能しなくなる、そうじゃなくて不履行のコストを明確にする&高めることで遵守のインセンティブを持たせるべき、だからAutomatic, Non-Discretionary, StrongなConsequenceが必要っていう議論ですね。といってもイマイチしっくりこないので(そんなのCommand & Control=従来型の直接規制でも、皆が守らなきゃ規制が空洞化するので一緒じゃないのか、Command & Controlと対比して「強い」措置が必要と言えるのか?)先学期環境法の先生にExact Reasonを聴いてみたのですが、価格下落(暴落?)を通じて他に与える影響が大きくなりやすいから、と言った程度のお答えしかもらえませんでした。そのうち(いつのことやら?)調べてみたいです。
2)実態効果:
 ・環境面―改善効果:
改善効果(というと語弊がありますね、排出削減効果)と規制内容がダイレクトにリンクしているのがETの特徴ですね。
 ・環境面―悪化効果(改善効果を相殺するのでリーケージと呼ばれる)実はここは白紙(!)です なぜ白紙かは後ほど。
 ・経済面:最も反対論に曝されやすいところで、逆に言うと人目を引きやすいところですね。電力価格が2割あがるとか、いや、0.3-0.6%にしか過ぎないとかワンワン議論しているようですが、コメントしようがないのであえてスルーします(スミマセン)。
 ・社会面:質疑の中で興味を惹かれたのが、African American Society(か何かの団体)の方が“Environmental Justiceへの考慮はしてあるのか?”と質問をしたことです。ちなみに、Environmental Justiceは、先週お話したEco Justiceと言葉は似ていますが中身は全然違っていて、「社会的な弱者が環境汚染の被害者になりやすい」というのがキモの言ってみれば社会運動です。金持ちは環境のいいところに引っ越していくのを考えれば頭の中でもそうだと言えますし、実際に多くの実証データがあります。
 担当者の回答は、「Auctionで集めたお金は環境投資に回す(リサイクル)するが、その中にEnvironmental Justice的な考慮をすることも可能だ、Specificな規定はないけどね」というなんともまぁ、通り一遍かつ見事なまでの模範解答でしたが、うっかり忘れてはいけない論点ですね。

②Emission Tradingに付いてくる検討事項
 ・Allocation:
どうやって排出枠を分けるのか、です。基本的には州ごとに定めるものの、MOUにもありましたが、最低25%はConsumer Benefit / Strategic Energy UseのためにAllocationしなきゃいけない、ということになっていて、その最低25%は実際はAuctionされることになるそうです。経済学者はほぼ一致してAuctionを支持しますが、実施されている排出量取引はまぁ大体Grandfathering(過去の排出量に応じて交付)なわけで(経済合理性はないのですが、「このまま操業を続けたければ金を払え、排出減らせば別だけど」か「排出を減らせば儲かりますよ」か、どちらか選べと言われたら受け容れやすい方は自明でしょう)、25%でもAuctionというのは珍しいですね。
 ・Tradingのインフラ:これは連邦のClean Air Actに基づくAcid Rainの排出量取引でも同様ですが(42 USC 7651b (f))、“A CO2 allowance (略)does not constitute a property right.”という規定があります(XX-1.5 (c)(7))。この宣言的規定にどういう意味があるのか、困惑し放題だったですが、担当者の解説によると、平たく言うと損害賠償の未然防止らしく、「RGGIは、Command & Controlの代替の規制」として導入したものですよ、という意図の宣言ということだそうです。な~るほど、例えば規制目的を達してRGGIプログラムを終了するときに、「オレのクレジットの価値がなくなるから賠償しろ」なんていわれると困りますものね。

というわけで、まだ続きます。


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