今の歌声は

ohtaと申します。M!初演の中川晃教さんに感動してこのブログをはじめました。ゆるゆると更新中。よろしくお願いします。

あのひと

2008-01-31 21:26:13 | takarazuka
シャーロック・ホームズにとって、彼女は常に『あのひと』だった。

女性に対してほとんど心を動かされないシャーロック・ホームズが唯一心を動かされた女性。
それが「ボヘミアの醜聞」に出てくるヒロイン、アイリーン・アドラーです。
男勝りの毅然とした勇気を持ち、大胆な行動力があり、知的で聡明な美しい女性。
ホームズは単にその美貌に心を動かされたのではなく、彼をまんまと出し抜いた、彼女の大胆と言えるまでの行動力と頭脳に敬意を持ったのです。

ホームズものは大好きですが、この話は特に好きなもののひとつ。
どちらかといえば女性に対して冷淡な感情をを持つホームズが、一人の女性に出し抜かれてしまう、というストーリーだけど、彼の失敗ぶりというより、アイリーン・アドラーの女としての魅力が読者をひきつけます。

事件の依頼をしたのはある国の国王です。
最後に褒美として、何がいいか、ホームズにたずねます。高価な宝石がいいか、私のいま身に着けているこの指輪でもいいぞ、と。

-いえ、陛下はもっと貴重なものをお持ちです。-

と、ホームズは言って、アイリーンの写真をもらうのです。
そして、彼は大事にその写真を鍵のかかる引き出しにしまうのでした。


ストイックな感情表現だけど、ホームズを愛するものにとっては、最大級の驚きです。
彼のアイリーン・アドラーへの気持ちの寄せ方は。
まあ、小説のなかでのお話ですけどね。
でも、ホームズ大好き人間にとっては、彼は生きてますから(爆)


なんで、この話を出したか、というと、宝塚で「エル・アルコン」を見て、主人公のティリアン・パーシモンとギルダ・ラヴァンヌの関係を考えてたから。
ティリアンにとって、女性もただ単に出世の道具のひとつとしか見ていない。
‘恋’なんて絶対ありえないんです。
このあたりがどうしてもホームズと重なる。
人殺しはしないまでも、ホームズだって事件解決のためともなれば、法律違反もやる人ですから。
第一、コカイン中毒者だからねぇ
って、関係ないか(笑)


フランス貴族の称号を持つ女海賊ギルダ・ラヴァンヌに対するティリアンの気持ちは単純な恋愛感情では毛頭なくて、同じ海に生きるもの同士の一種の「絆」のようなものだと思う。
宝塚仕様とするために、二人の関係をかなり変形させてしまっているのが惜しい。
最後もギルダをティリアンの腕の中でどうしても死なせたかったみたいだし。さいとーくんは(爆)
私の思いからすると、ギルダは海で死なせてあげたかった。
ティリアンと戦って。
原作のギルダの最後はとっても哀れだけど、ティリアンに海に生きるものとしての最大級の敬意をもって葬られていくんだから、それはそれで幸せなはず。
宝塚ではそこまではできないまでも、海に生き、海に還ったものとして、ティリアンと同等の描き方でもよかったんじゃないかと思っています。

で、最後に天国の白い場面で二人で歌えばいいのだ(笑)

まあ、ないものねだりはできないし、斉藤先生には座付き作家としての諸々の事情もあるのだろう…
って、随分理解のあるファンですね、私も(爆)