「歌舞伎座新開場柿葺落~壽初春大歌舞伎」を歌舞伎座で観た。
新しくなった歌舞伎座へは昨年8月以来二回目である。まだ正月の雰囲気が残る銀座は何とも気持ちがいい。
一幕目「仮名手本忠臣蔵」で最も重い「山科閑居」。坂田藤十郎の戸無瀬の示すゆるぎない古典芸輝き。幸四郎の本蔵、吉右衛門の由良之助、魁春のお石、梅玉の力弥。休演の福助にかわり扇雀の小浪。これほどの大顔合わせは今後いつ見られるか・・・と後日新聞記事に掲載されていたが、入場前に軽く飲んでしまった上に、非常にまったりとしてゆるやかな展開についつい私は気を失いそうになる。プログラムであらすじを必死に追っかけながらの鑑賞でどうにかついて行った。そして二幕目は舞踊「乗合船」。華やかな舞台と正月らしい演目が心地良い。
この時期の歌舞伎は何ともいいものだ。(1/26まで)
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居
◆重厚で緊張感あふれる義太夫狂言の傑作
加古川本蔵の妻戸無瀬と先妻の娘小浪が、山科の大星由良之助宅を訪れます。戸無瀬は出迎えた由良之助の妻お石に、由良之助の一子力弥と許嫁である小浪との祝言を望みますが、今は浪人であることを理由に、お石は輿入れを拒否します。絶望した戸無瀬と小浪が自害を決意するところへ、虚無僧に姿を変えた加古川本蔵が現れます。本蔵は、塩冶判官が高師直を討とうとするのを自分が妨げたことを深く後悔し、わざと力弥に討たれます。由良之助は、我が身を捨てて娘の婚礼を懇願する本蔵の心根に感じ入り、仇討ちの志を明かします。手負いの本蔵から聟引出として師直邸の絵図面を受け取った由良之助は、虚無僧の衣裳を借り、仇討ちに向けて出立するのでした。
古典の名作『仮名手本忠臣蔵』の中でも、特に名作の誉れ高い一幕です。初芝居にふさわしい大顔合わせの一幕をご堪能ください。
二、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)
◆江戸の正月の風俗を楽しめる賑やかな常磐津舞踊
新年を迎えた隅田川のほとり。大勢を乗せた渡し船がやって来るところへ、萬歳と才造の二人連れがやってきます。その場に居合わせた人々は、白酒売の言い立てを皮切りに順番に踊り始め、それぞれの芸達者振りを披露します。そして、萬歳と才造が柱立ての祝いに始まる三河萬歳のご祝儀を軽妙に踊るところ、雨が降ってくるので、皆は船へと乗り込むのでした。
江戸の正月の風物詩、三河萬歳を巧みに取り入れたご祝儀舞踊です。
三、東慶寺花だより(とうけいじはなだより)
◆人情の温もり溢れる待望の新作歌舞伎
井上ひさしの同名小説を原作とする新作歌舞伎です。江戸時代、幕府公認の縁切寺として知られる鎌倉の東慶寺には数多くの女性が離縁を求めて駆け込んでいました。医者見習の信次郎は、そういった女性たちの身柄を預かる御用宿柏屋に間借りをしており、滑稽本の作者として物書きに興じています。そこで信次郎が巡り合う、明るく朗らかなおせん、臆病者の惣右衛門とその妻お陸、柏屋の主人源兵衛、院代の法秀尼たち。信次郎が様々な出会いを通して、人々の心の機微、人情の温かさ、そして新しい一歩を踏み出そうとする女たちの強い想いに触れながら、成長していく物語です。
心温まる新作歌舞伎にご期待ください。
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居
戸無瀬 | 藤十郎 |
大星由良之助 | 吉右衛門 |
お石 | 魁 春 |
小浪 | 扇 雀 ※ |
大星力弥 | 梅 玉 |
加古川本蔵 | 幸四郎 |
二、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)
萬歳 | 梅 玉 |
通人 | 翫 雀 |
大工 | 橋之助 |
田舎侍 | 彌十郎 |
芸者 | 児太郎 |
白酒売 | 孝太郎 ※ |
女船頭 | 扇 雀 |
才造 | 又五郎 |
井上ひさしの小説を新作歌舞伎に!
三、東慶寺花だより(とうけいじはなだより)
信次郎 | 染五郎 |
法秀尼 | 東 蔵 |
柏屋主人源兵衛 | 彌十郎 |
おぎん | 笑 也 |
堀切屋三郎衛門 | 松之助 |
美代 | 虎之介 |
おせん | 孝太郎 |
惣右衛門 | 翫 雀 |
お陸 | 秀太郎 |
※中村福助休演につき、配役を変更しております。