念願だった新しい歌舞伎座で「歌舞伎座新開場柿葺落~八月納涼歌舞伎」を観に行った。
歌舞伎は今年の三月以来である。新しい歌舞伎座は以前入口までは行ったものの、中には今回初めて入る。まだ新築の匂いが残る館内。舞台の幅と奥行き、そして座席は広くなっているものの、館内の配置はエスカレーターやトイレが増設された以外はほとんど同じのように思えた。今回の席は2階の前から2列目のど真ん中で非常に見易く、舞台が非常に近く感じた。
【画像は三階席から】
歌舞伎座での八月歌舞伎は四年ぶりである。本公演は三部制なので従来の二部制(午前11時・午後4時開演)とは異なり、遅く(18時20分)始まり、早く終わる(21時過ぎ)。この時間設定も嬉しい。
一幕目の「狐狸狐狸ばなし」は1961年に東宝で森繁久彌の亭主、山田五十鈴の女房、17代目勘三郎の間男で初演され、後に18代目勘三郎が歌舞伎に写し、爆笑劇の側面が強調されたそうで、話が二転三転し、そして最後の最後にどんでん返しがあったりとまあ~面白い。館内が笑い声で溢れるような非常によく出来たお話で、扇雀がお茶目にのびのびと「幽霊」を演じる。勘九郎はますますお父上に似て来て、七之助の女形はますます磨きがかかっている。アドリブもいくつもあり、出演者全員が楽しんでいるような約1時間40分であった。
30分の休憩後、二幕目の「棒しばり」。酒を盗み飲みさせないように両腕を縛るって設定自体が面白く、滑稽な動きと軽妙な踊りが笑いを誘う。私の好きな彌十郎も出演。「二つの桶を担う形で両腕を棒に縛られて、能「融」の一節を舞う姿が、能の格調を写すと同時に、見事に能のパロディーになっているその表裏一体の面白さ」と後日朝日新聞の記事に書かれていたが、残念ながら私には何のことか・・・とにかく今回は非常に解り易くて面白い演目ばかりだったな~と満足げに歌舞伎座を出ると、まだ気温は30℃もあった。暑い・・・ビールを飲みましょう
【みどころ】
一、狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)
◆男と女が繰り広げる虚々実々の駆け引きの行方は!?
元は歌舞伎の女方で手拭い染屋の伊之助は、女郎だった女房のおきわと、いささか愚鈍な使用人の又市との三人暮らし。しかし、あばずれで家事も一切やらないおきわは、粘着質な伊之助に嫌気がさしており、浮気相手のなまぐさ坊主重善に首ったけ。伊之助を殺せば夫婦になるという重善の言葉を真に受けたおきわは、伊之助を殺してしまいます。その後、弔いを済ませたおきわと重善の前に、死んだはずの伊之助が現れ…。
北條秀司の傑作喜劇を歌舞伎に移した、抱腹絶倒間違いなしの〝狐〟と〝狸〟の化かし合い。どうぞご期待ください。
二、棒しばり(ぼうしばり)
◆腕を縛られた従者二人が大奮闘するユーモラスな人気舞踊
太郎冠者と次郎冠者は無類の酒好き。ある日、主人の曽根松兵衛は、外出中に酒を盗み飲まれないよう、太郎冠者はうしろ手に、次郎冠者は両手を棒に縛ってしまいます。両手の自由を奪われた二人でしたが、苦心惨憺しながらも何とか酒にありつき、さらには興に乗って、ほろ酔い気分で踊り出します。
可笑し味に溢れながらも格調高い、松羽目物の人気舞踊をご堪能ください。
【配役】
江戸みやげ
一、狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)
伊之助 扇 雀
おきわ 七之助
おそめ 亀 蔵
おうた 歌 江
福造 巳之助
又市 勘九郎
重善 橋之助
二、棒しばり(ぼうしばり)
次郎冠者 三津五郎
太郎冠者 勘九郎
曽根松兵衛 彌十郎