劇団夢桟敷 ☆2018.6〜山南ノート5

熊本アングラ万華鏡〜演劇とプライベートの徒然

週刊月曜日 第12号

2022-03-28 09:10:24 | 2020-2022 日記

劇団夢桟敷「週刊月曜日」
〈第12号 2022.03.28発行〉
https://yumesajiki.jimdofree.com/

■遊戯療法(9)play therapy
 Egg head man(卵頭の男)
 ト書 PARTⅡ

ボタン一つで〈世界〉は削除された。世界というよりタマゴアタマノオトコの〈個人〉といった方が正しいかも知れない。
〈世界〉と〈個人〉を比較することは途方もないこと。まして、正しいか間違っているかを判断できるものでもない。
ひとつ!削除したこと、削除されたことは確かだった。
今となってはタマゴアタマノオトコは「あたしだったのかアナタだったのか?」わからなくなった。「あたしとアナタ」の関係はどうでもよいことだったのだろうか?
私とあなたの関係は?
「どうでも良い」は寂しい。

卵頭の男は鏡を覗きながら、頭の皮膚のひび割れを発見した。
乾燥肌のようでもあり、皮膚はカルシウム化されているようでもある。
ひび割れは全身に広がっていく。全身の皮膚がカルシウム化されてきたのだった。
ひび割れを発見して1分もたたない凄いスピードで変わり果てていく。
私は倒れた。
倒れたのはあなたの方だったか?
記憶が曖昧なのだ。
記憶の糸を手繰り寄せる。
糸は一本ではなかった。…手繰り寄せると何本もの糸が絡まってしまう。
解こうとすると気が遠くなった。

白い世界だった。白い世界に包まれる。
白色は透明ではなかった。
恐ろしいほどの存在感がある。
白いものが密着してくると息苦しさを覚える。
息苦しさで手足をバタつかせる。
強く覆われると、強くリバウンドする。
小さな隙間に指が引っかかる。
白い物体は薄っぺらな皮でできているのだろうか?
両掌を広げると世界は大きく開いた。

「はじめまして、こんにちは」
大きな顔が迫っていた。
彼女は自分のことをママと呼んでいる。
卵頭の第一声は「ママ!」
ママは優しい笑顔で卵頭の男を抱きしめる。

※ドイツ映画「カリガリ博士」に登場したチェザーレという青年は映画スクリーンから抜け出し、20世紀の日記帳を読み返している。これはカリガリ博士が書き残したものか?
チェザーレは21世紀に入った今も眠り男だった。
眠り男の見た夢は…?
オーバーラップする「遊戯療法」。


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