劇団夢桟敷 ☆2018.6〜山南ノート5

熊本アングラ万華鏡〜演劇とプライベートの徒然

週刊月曜日 第36号

2023-02-27 21:03:35 | 2023年
劇団夢桟敷「週刊月曜日」
〈第36号 2023.2.27発行〉
https://yumesajiki.jimdofree.com/

「みなまた 海のこえ」
文○石牟礼道子
絵○丸木俊・位里
記録のえほん(2)★小峰書店
〜天と海のつながり、鎮魂と海のよみがえりを願って。

夢桟敷が学校での演劇公演に取りかかったのは1994年〜1998年の熊本市立武蔵中学校の演劇部で文化祭発表のためのコーチをしている頃だった。
演劇部顧問だった副島靖英先生との教育演劇との関わりとのきっかけにもなった。
アングラ劇団と教育の接点に不安を覚えつつ、実際にとりかかってみると不安は払拭された。
伝統や新劇、アングラ劇と言えど演劇は国語とは違う力があることを生徒たちより教えてもらえた。自家発電することを知る。
自ら表現する力が演劇にあること自覚できた生徒たち。美術や音楽、体育なども含めて総合的に関わるが能動が表現力である。
中学校文化祭での発表の一つに1995年終戦50年で沖縄地上戦をテーマにした絵本「星砂がくる海」(下嶋哲朗)を扱った。
これは前年に熊本パルコ(2020年2月で閉店)ルナホールにて「命どぅ宝」展で作家と絵本に出会ったことに始まった。
金城実氏の彫刻母子像、丸木俊・位里夫妻の「沖縄の図」も展示されており、この時に丸木夫妻の「原爆の図」や「水俣の図」と接することができた。
「水俣」については山南が高校時代の演劇発表会(1968-1971)でチッソと住民、そこに右翼やヤクザ、高校生の反戦運動と公害問題がごちゃごちゃに混じりながらの「高校生、私の主張」に終わって大恥をかいてしまった。デモのアジテーションかと笑われた。高倉健さんの任侠映画や社会主義リアリズムを知った時でもあった。
もう2度と演劇をするものか!と心に決めたのだったが…。情報としてのアングラ劇の刺激が気になって仕方ない時期でもあった。

ところで水俣の海。海の声。
沖縄の時もそうであったが、海に命の原始を感じる。
水と空気、光と闇。
海に足を運ぶたびに地球「命」の縮図を見て感じてしまう。観光ではない。海は、水俣の声は、命は強くて弱く、嬉しくて悲しい。
「怨」の旗に美しさを感じることをバカと笑えば笑え。

「みなまた 海のこえ」では「しゅうりりえんえん」で始まる。
何だろう?呪術か?神へつなぐ言葉か?

「海の上に火の燃ゆる。あっちの沖じゃ、あれは不知火(しらぬひ)。」
キツネのおぎんは孫(まごじょ)キツネに言う。
キツネは水俣地方の妖怪か神さまのお遣いか?
しゅり神山や井川の神さまの後ろは不知火の海じゃった。
けむりがえんえん、小さな村は町になった。いまに都になるかしれん。
町にはなったがしゅり神山は花がとける。墓にまいれば墓もとけておる。
チッソの会社が来てからのことだった。
赤ん坊は目をあけたまんま死んでしもうた。
キツネのおぎんにたずねる。
「どうして目をつぶらん。目をつぶれ。」
仏さんになったけん、目ぇつぶれちゅうてもつぶらんじゃった。母さんが、つづけて爺さまも父親も、びくんびくんと震えて死んでしもうた。我が家ばかりでなく、あっちこっちの村でも死人がつづいた。
猫たちもそうなって死んだ。

「水俣病の原因は有機水銀である。チッソ会社が不知火海、水俣湾に流した有機水銀が魚(いお)や貝にたまり、それを食べた人間が発病する。他にも毒はセレン、タリウム、マグンなど。」
どろどろヘドロの底。
死んでちっとはらくになったかい。

沖にゆこうぞ、魚(いお)とりに。
そういいよったなあ。
あの世でうたせ舟つくって、ゆこうやなあ。
しゅうりりえんえん、陽のひかり
けだかい空をおがんでおれば
天と海とをつないで
ひかりの滝がぼうぼうのぼる
ひかりの滝と舟がのぼる

※石牟礼道子さんの文を切り取り、独特の言葉リズム(方言)と水俣病の悲惨…。とにかく美しい不知火の神々や
ほんの一部でしかない「みなまた 海の声」ご紹介になったかどうか?
なっとらん!
死んでいった生き物たち、人間たちの鎮魂と不知火海のよみがえりをねがって、「苦海浄土」の石牟礼道子!「原爆の図」「水俣の図」の丸木夫妻がおくる「みなまた 海の声」走り書きメモに代えました。

リズムがあって素朴な不知火海の穏やかさが浮かんできます。
でも水俣病の原因を作ったチッソ会社が出てきてからは重く暗くなり悲惨な描写が出てきます。
ヘドロの底に生きたまんまで埋められた、赤ちゃんが目を開けたままで死んだ。

「この本を読むならば、水俣病についてある程度の知識を持ってからの方がいいと思います。
何も知らずに読むと衝撃が大きくて悪夢を見るかもしれません。
特にチッソ会社には強い怒りを感じます。
経済を発展させることは大切なことです。でも美しい自然や生き物たちの命を奪ってまでしなければならない経済の発展などあっていいはずがありません。
本書のラストで家族の中で一人だけ生き残ったおばあさんが彼岸花を持って墓参りをする挿絵が印象に残ってます。鮮やかな赤色から血の色を連想しますがとても美しいです。
もう二度とこのようなことが起きないことを切に願います。」(読者感想より)

チッソが来てからの水俣の地に生まれた「ちよちゃん」とその家族の物語である。水俣の地に息づいている、神の使いの狐「おぎん」らも並行して描かれる。

劇団夢桟敷MINAMATA PROJECT 2023の活動は「ひとり夢現芝居」と「不知火幻視行」Movieで製作を試みていますが、予定より長引いています。
3月は水俣をテーマにした声を出しての演劇ワークショップを予定しており、参加されたい方はお問合せください。ロケハンもありますが水俣行きは人数制限があります。
お問合せ👉夢桟敷
090-4581-5190
yumesajiki@ybb.ne.Jp