山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

「ホリエモン逮捕」の居心地の悪さ

2006年01月24日 | 社会時評
なんだかすっきりしない」と、毎日新聞の磯野彰彦さんが書いている。ライブドアの堀江貴文社長が逮捕された。容疑は証券取引法違反。テレビ各社は空撮で東京拘置所への被疑者護送をライブ中継した。最近は「マスコミ最後の良心」とさえ思える磯野さんも、ここのところの報道に違和感をお持ちのようだ。

 まず、検察OBがテレビに出て、事件の構図をいろいろと解説してくれるのだが、なんだかヘンだ。昔はそんなことはしなかったように思う。
 ホリエモンは嫌いだ、ホリエモンはけしからん、と非難する人たちと、ホリエモンはすごい、ホリエモンはたいしたものだと称賛する人たちがいて、それはそれで価値観の違いというか、ものの見方の違いがあって、なんとなく陣営が分かれていたと思う。

 それが、検察が出てきて、エイヤッとホリエモン退治をして、ホリエモン擁護派はほとんど何も言えなくなる。いや、不正はいけないし、もちろん法律違反は悪いが、どう言ったらいいのだろう、ホリエモン的なものがすべて否定され、しかも、その主導権を検察が握っているというのは、何とも落ち着かない。

さて、塀の中の堀江容疑者はどんな扱いを受けるのだろうか。堀田力さんというロッキード事件を担当した元東京地検特捜部検事が、テレビ朝日系「報道ステーション」でこんな解説を披露していた。

「まず、することは安全確保ということですよね…中にはお尻の穴にタバコを隠していたりするのがいるので…堀江さんのような人は、これがすごいショックだと思いますね」

分かりずらい言い方だが、要するに「まずは素っ裸にして、プライドをズタズタにしてから取り調べを始める」ということ。

いくら何でも「安全確保のため」ってことはないだろう。「エリート頭脳警察」といったイメージが強い東京地検特捜部も、吐かせるためには戦前の特高と同じ手口を使うのだろうか。そういうことを穏やかな口調で言ってしまうところが、また恐ろしい。

前回エントリーで「NEWS23」の筑紫哲也キャスターのコメントを紹介したが、その筑紫さん。昨夜の放送では読売新聞・渡邉恒雄会長との対談で、すっかり意気投合してしまったご様子だ。一体どうしてしまったの。右も左もオテテつないで「ホリエモン批判」の薄気味悪さ。恐ろしい。

球界再編騒動の頃は「ナベツネ憎し」で「ホリエモン擁護」。今度は「コイズミ憎し」で「ホリエモン批判」。朝日新聞の変わり身の早さを見ると、渡邉会長の発言の一貫性がかえって印象付けられてしまう。

思えばライブドアは、既存メディアをすっかり敵に回してしまった。近鉄買収に手を挙げてプロ野球1リーグ化を阻止した頃は、怒っていたのは読売新聞だけだった。ところがその後、ニッポン放送株の大量保有が明らかになってフジテレビ、産経新聞が猛反発。

読売・産経の保守言論界から目の仇にされた堀江社長は、テレビに出まくって独自のメディア論で反論を試みたが、「新聞とかテレビをわれわれは殺していく」とか「皆さんが思うような報道は必要ない」とかの過激発言は、良識派ジャーナリストの不興を買った。毎日新聞編集局の山田孝男氏は、こうした発言を「頭にきた」(23日付「発信箱」)と振り返っている。

最後の援軍だった朝日新聞も、昨年9月の衆院選をきっかけに離れていった。読売、産経、毎日、朝日。既存メディアのライブドア包囲網が、こうして完成したのだ。「佐々木俊尚の『ITジャーナル』」は、業界内のあるウワサを紹介している。

ライブドアへの強制捜査にからんで、「フジサンケイグループが東京地検にネタを持ち込んだのではないか」という噂が、マスコミの中を駆けめぐっている。
 ある全国紙記者の話。「フジテレビと産経新聞は昨年春にニッポン放送問題が和解で決着してからも取材班を解散せず、ライブドアの不正を追い続けていた。その中で今回のライブドアマーケティングをめぐる疑惑をつかみ、司法クラブ記者を通じて東京地検にネタを持っていったという話が出ている」
(中略)

 テレビ業界関係者の証言として、以下のような話もある。「年末のパーティーでフジテレビの役員に会い、『ライブドアとの提携を進めるのはたいへんなんじゃないですか』と水を向けたところ、フジテレビの役員は『われわれはライブドアへの監視の目はゆるめていないですからね』と話した。何か含みのある発言に聞こえた」

(1月20日付 「ライブドアへの強制捜査にからんでのうわさ話」より)

こうした噂を裏付けるものかは分からないが、けさの毎日新聞は「関係者から詳細資料 堀江社長追い詰める」と題する記事で、「端緒はマスコミなどからの情報提供」だったと指摘している。

捜査とメディアの相互作用。ジャーナリストの魚住昭氏はかつて、「不良債権処理」という国策のもと「妨害者」排除に突き進んだ東京地検特捜部の危うさに、こう警鐘を鳴らした。

 どうやら主任検事は過大な債務を抱えた会社が、生き残りの道を模索すること自体がけしからんと思い込んでいた節がある。おそらく主任検事のそうした考え方は当時のマスコミが盛んに喧伝した「住専の大口借り手=悪玉」論にかなり影響を受けているのだろう。

 警視庁と東京地検はなぜこんな無茶な捜査をしてしまったのだろうか。一言でいえば、これが国策捜査だからである。目的は安田という「反社会的な存在」を抹殺することだ。
 それに、彼らには中坊公平が掲げた「正義」の御旗がある。刃向う者は「悪」だという危険な思い込みが杜撰極まりない捜査を生んだのではないだろうか。

 もともとカネ絡みの民事事件は狸と狐の化かし合いのようなものだ。関係者の利害は錯綜し、一筋縄ではいかない多様な側面を持っている。その一面だけを取り上げ、他の面を捨ててしまえば刑事事件にすることも難しくない。安田事件の捜査はその典型例だ。
(『特捜検察の闇』2001年5月、文藝春秋)

昨年来のマンション・ホテル耐震偽装事件では、捜査当局が「あらゆる法律を駆使してでも立件してみせる」と息巻いているという。頼もしくもあり、恐ろしくもある。法律とは、「不正」を未然に防ぐ「ルール」だろうか、それとも「不正義」を懲らしめるための「ツール」だろうか。

いや、耐震偽造は人の命がかかった重大事件であり、責任追及は当然だ。被害者が受けた苦痛も考慮されねばならない。では、東京地検が今回のライブドア強制捜査で救済しようとした「被害者」とは誰だったのだろう。強いて言えば、それは「社会正義」ではなかったか。

NHKが取材した専門家の解説によると、株式分割や投資組合を介した買収など、今回問題になったライブドアの手法は「一つ一つを取れば違法とは言えないが、それら全体を合わせて捉えると違法と言えなくもない」のだとか。実に微妙だ。

堀江社長らが「違法という認識はなかった」と主張しているのは、事実だろう。ただし、それは「違法かもしれないなんて夢にも思わなかった」という意味ではない。検討に検討を重ねて「立件は難しい」と判断したから実行に移したのだと思う。

堀江氏は言っていた。「証券取引法には不備がいっぱいある。不備は誰かが行動しないと直らない。もっと勉強しないと、ずる賢い人達にだまされちゃいますよ」と。

森喜朗前首相や筑紫キャスターから「こんなことがまかり通るようでは、子どもの教育に悪い」といわれたライブドアの経営手法。真面目に商売をしている人、実直に暮らしている人が馬鹿をみる世の中はおかしい。「正義」が馬鹿にされる社会に未来はない。

今回のライブドア事件は、東京地検特捜部による「世直し」の意味合いが強かったと思う。もちろん、粉飾決算などの法律違反は見過ごされるべきではない。それでも、かねてからライブドアに批判的だった論者から「正義が勝った」と勝ち誇られてしまうと、「何か違うよな」と思ってしまうのだ。

そんな言いしれぬ「居心地の悪さ」を代弁してくれる商業メディアは、今のところ見当たらない。マスコミも野党も「ライブドアや小泉流の市場原理主義に天誅が下った」と大はしゃぎである。再び、毎日新聞・磯野さんの溜め息―。

 私は、どちらかといえば、額に汗して働くほうが好きだが、だからといって、個人の才覚でビジネスチャンスをつかみ、資産を形成するのは、決して悪いことではないと思う。

 9000億円の時価総額が、あっという間に、3分の1、4分の1になる。あぶく銭であっても、それは経済の一部であって、こんな荒療治をせずに、ほかにやり方はなかったのだろうかと思ったりする。
 いや、ホリエモン一派を擁護するつもりはない。だが、検察に拍手喝采を贈る気にもなかなかなれない。

…せめてもの救いは、今回の捜査で打撃を受けたのが首相という最高権力者であった点か。もし今も朝日新聞や民主党がライブドア側についていたなら、実に後味の悪い事件になっていたと思う。〔了〕


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7 コメント

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Unknown (バンクリフ)
2006-01-24 18:07:12
会社を経営していれば道徳のまん中ばかりを進むわけにはいかないことが多々あるものです。

掘江氏野の件はその規模の違いです。

今の圧倒的な堀江潰しは、何なのでしょうか?

確かに彼の行動には反省すべき点も多々有りですが、

日本のマスコミの有り方には怒りを覚えます。

ことの真相の深い検討や洞察もなく、ただ圧倒的な批判を垂れ流すばかりです。

以前フジの買収の際社長が公的な価値もあるマスコミにライブドアごときが、と発言してました。

どこが?と聞きたくなります。

若いアナウンサーを鑑賞物のごとく使い、まったく知性の欠片もない番組を作成している自覚はないのでしょうね。

何か事件があればここぞとばかり同じ情報を繰り返すばかりで、まったく客観性がありません。

この事件を通して若者は思うのです。

やっぱり自分の意見をストレートに言ったり目だったりするとこうやって叩かれる訳ね。

いつまでたっても日本の美徳とされてることなかれ主義は変わらないし、それがこういう事件の温床になっていることに気付かないのでしょう。

堀江氏を子供的な発想だとコメンテイターが言ってました。

日本で大人になるとは自分の意見を隠して相手に気にいられるよう迎合することなのでしょうか?

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ごもっとも (山川草一郎)
2006-01-24 19:49:45
バンクリフさん、どうも。お怒りはごもっとも。悪そうな顔したオトナたちのホリエモン批判は、素直に受け取れません。何より、森前首相だけには「子どもの教育に悪い」といわれたくない。あれだけは堀江社長が可愛そう。早稲田にコネ入学して、新聞社に恫喝入社して、ドサクサで総理になったお方ですから。>森さん



で、いただいたコメントの内容とは関係ないかもしれませんが、少し思いついたことを書かせてください。



「ホリエモンは小泉政権が生み出した」という野党の批判は、その通りだと思ってます。小泉首相や竹中大臣がやってきた政策というのは、80年代のイギリスでサッチャー首相がとった政策と同じなわけです。



「新自由主義」とか「ネオリベラリズム」とか「マネタリズム」とか呼ばれる市場開放政策です。(新保守主義=ネオコンサバティズムと混同している人が時々いますが、まったく別物)



基本的には金融を自由化し、市場ルールを国際基準に合わせることで、外国からの投資を呼び込み、国内産業の活力を取り戻すのが狙いでした。



その過程では、投資によって生まれたベンチャー企業と既存産業界との摩擦や、外国資本によるメディア買収など、いろいろな問題がおきます。



当時のイギリスでも、「シティのウィンブルドン化」とかいろいろな問題が指摘されたわけですが、結果的には「英国病」と呼ばれた70年代の長期不況から脱し、ブレア時代の経済成長の基礎をつくったといわれています。



こういうことを書くと、「あいつは新自由主義者だ」と後ろ指を指されるのが昨今の日本社会なのですが、私は、不景気の時代に国内経済の活力を取り戻そうと思えば、新自由主義、マネタリズムという劇薬は必要悪だったと思っています。



ただし、いつまでもこの政策が続くのは問題。大手術を終えて、景気回復の芽が見えたら、国民は「ごくろうさん、さようなら」と政権を変えて、「機会の平等」から「結果の平等」へ政策の軸足を移すべきと思っています。



市場の開放と投資の活性化は、ベンチャー企業を生み出すと同時に、マネーゲームも派生させます。ベンチャーで成功した人や、ベンチャーへの投資で儲けた人たちは、華やかな生活を始めるでしょう。



決して美しい風景ではありませんが、「勝ち組」の登場は景気回復の兆しです。景気回復期は、勝ち組の羽振りの良さが目立ちますから、「生活実感としての所得格差」が喧伝されるようになります。



ライブドアと堀江社長は、間違いなく、小泉政権の新自由主義政策が生み出した「勝ち組」でありましょう。ただし、今回のライブドア事件が「新自由主義政策の結果」かというと、首相答弁ではありませんが、「それとこれとは別の問題」だと思います。



マネーゲームにはマネーゲームなりのルールがあるのです。雪斎さんという政治学者の方がいらっしゃいます。その方がブログ(http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/)に、ライブドア事件について、こう書いています。

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こういう時節に決まって浮上するのは、「額に汗して働かなければ…」という議論である。

 その議論には異論はないけれども、少し立ち止まって考えてみる。

 今、世界的な「マネーの戦場」で闘える日本人は、どれだけいるのであろうか。(略)こうした金融軽視の土壌の上では、「マネーの戦場」で闘う本物の人材は、登場しようもない。東京証券取引所の対応が批判されるのは、そうした「マネーの戦場」のまともな土俵を用意しようとしなかったことの反映なのであろう。「濡れ手に泡」という批判は簡単であるけれども、諸国の金融機関がその「濡れ手に泡」の戦争をやっている以上、日本人も、その「濡れ手に泡」の戦争に勝ち抜いていかなければならないのである。ホリえもんは、「マネーの戦場」で不正を働いたから放逐されるだけのことである。

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この分析に付け加えるべきものは、何もありません。
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Unknown (じろう)
2006-01-25 00:20:50
1月16日の強制捜査より前の世界観、すなわち人々がホリエモンの成功を羨望し、ホリエモンの金儲け論に耳を傾けていた状態を基準に考えるから、検察の捜査が強引に見え、マスコミ報道が極端に見えるのでしょう。



しかし、実は1月15日までの世界観そのものが異常だったと私は思います。ホリエモンを「100億稼いだ凄腕社長」と信じ、ライブドアを優良企業と思っていた人々の認識は間違っていた。なぜなら、国民は詐欺的手法の上に築かれた虚構の経営に欺かれ、それを賛美する(毎日新聞など)マスコミに洗脳されていたのだから。ある意味で、庶民が戦後になって戦前・戦中の思想の一部修正を迫られた状況に、少しだけ似た面を感じます(もちろん私は戦後世代です…不謹慎な例えと感じたならごめんなさい)



だから私は、検察の捜査や、報道のあり方よりも、ホリエモンが跋扈していた世の中の方に強烈な違和感を覚えます。「ホリエモン的なものがすべて否定され…」という磯野氏の主張は一見、もっともらしいですが、冷静に考えると、ホリエモンの言動なんてほとんどが否定されてしかるべきものです。磯野氏は現在の報道を否定するより、ホリエモン的なものを賛美してしまった1月15日以前のマスコミ報道を反省すべきでしょう。



まあ、誰でも自分の過去の思想を否定するのは困難なので、現状を否定してしまうのでしょうが…。



> それでも、かねてからライブドアに批判的だった論者から「正義が勝った」と勝ち誇られてしまうと、「何か違うよな」と思ってしまうのだ。



それは山川さんに森前総理とか守旧派の人々への反発心がある証左ですが、「正義が勝った」はおおむね真実であることを認めざるをえません。ホリエモンを通じて守旧派と対峙する思考はやめた方が得策です。だってホリエモンは、民主支持だったのに時流を見て自民に寝返った程度の存在です。今となっては、彼のキャラクターから幼児性以上の特徴を見出すのは難しい。まじめに考えるだけ損ですよ。



> 個人の才覚でビジネスチャンスをつかみ、資産を形成するのは、決して悪いことではない



磯野氏は、ホリエモン逮捕が個人の才覚や資産形成の否定につながるとみているようですが、それも誤りでしょう。ホリエモンにあるのはせいぜい売上げ10億円程度の経営者の才覚で、それ以上は詐欺師的な才覚だった。彼の資産形成は犯罪の上に成り立っていた。そう理解すれば、今回の事件は若者のビジネスを何も否定していません。
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堀江ファンではないけれど (山川草一郎)
2006-01-25 02:02:53
じろうさん、どうも。過去に書いたエントリーを読み返しても、マスコミがライブドアや堀江前社長を持ち上げてた頃は批判的というか、やや斜めに見ていた私ですが、なぜ今回の騒動には違和感を覚えるのか、自分でもよく分かりません。



別に堀江氏の人柄に好感を持ってるわけじゃないし、カリスマ性も感じてない。「森前総理とか守旧派の人々への反発心がある証左」といわれると、思い当たるフシがないでもない。そうなのかも。



ふと思ったのですが、この「意心地の悪さ」の正体は要するに、<ホリエモン批判は様々あれど、今回指摘された不正を指して批判してた人がどれほどいたのか>という素朴な疑問なのかも。



世間の反応が「前から嫌いだったけど、まさか法律違反までしていたとは」という驚きなら素直に聞けるのだけど、「ほれ見たことか。俺は前からホリエモンに批判的だった」と言われると、やはり「何か違うよな」と。



いや、じろうさんのように前から問題点を見抜いていた人もいるのでしょうが、みんながみんな本当にそうなの?と疑問に思ってしまうのです。



前からホリエモンを嫌ってた人って、



【1】ビジネスマンとしての常識がない(会合にTシャツ、サンダル姿で現れるなど)

【2】僕も知らんような奴だ(巨人オーナー)

【3】私生活がバブリーである(スノッブと呼んだ人もいたっけ)

【4】発言に品がなく不愉快(「人の心は金で買える」「新聞、テレビを殺す」など)

【5】記者の不勉強を馬鹿にする(何様のつもり?)

【6】「小泉改革」なるものを支持し、選挙に出た

【7】存在自体がバブルである(株式分割とデイトレーダーの投機で膨れ上がっただけで、経営に実体がない)

【8】敵対的買収を繰り返す「乗っ取り屋」である(しかも買収先の事業内容に関心なし)

【9】手法が脱法的(時間外取引での大量株取得など)

【10】証券取引法違反の疑い(偽計取引、風説の流布、粉飾決算)



…とまあ、さっと思いつくだけで、これだけ理由があったわけで、冷静に考えてみると【1】から【5】の批判は、今回の事件とは無関係。



確かに【7】から【9】を問題にしていた人も多かったし、それは本質を突いた問題意識ではあるのだけれど、今のところ違法とまでは言えない。



朝日新聞と民主党も、表向きは【7】から【9】を問題にしているけど、本音は完全に【6】でしょう。筑紫さんも。



で、去年の衆院選を境に、小泉政権のタカ派路線を批判する朝日新聞・民主党と、小泉政権のポピュリズム路線を批判する読売新聞・自民党とが手を組んだ。彼らは「ホリエモン批判」を通して、実際は小泉政権を批判したいのではないか。



人生いろいろ、批判の動機もいろいろの人たちが、今回のライブドア事件に「それ見たことか」と勝ち誇る。確かに彼らが前から堀江氏を批判してたのは事実だけれど、今回の容疑は【10】である(まだ粉飾決算は含まれてないが)。そこまで見抜いてた人は、どれぐらいいたのだろう。



いや、東京地検だって最初は【7】から【9】で立件しようと頑張ったのかもしれない。でも難しかった。苦労の末に【10】ならいけると踏んだのではないか。



うまく言えないのだけれど、なんかすっきりしない感覚というのは、この辺の「結論ありき」的な世間の雰囲気に起因しているような気がしている今日この頃です。



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Unknown (じろう)
2006-01-25 03:00:35
> ふと思ったのですが、この「意心地の悪さ」の正体は要するに、<ホリエモン批判は様々あれど、今回指摘された不正を指して批判してた人がどれほどいたのか>という素朴な疑問なのかも。



その気持ちは理解できます。私は以前から、ライブドアのサイトやサービスを仔細に眺めても儲かる仕組みがわからず、「この会社はこの程度のネット事業でどうやって利益を上げているのか」と疑問に思っていました。だからライブドアの決算短信で、ネット事業がわずかな利益を計上しているのを見て「ああ、これくらいなら付け替えられる金額だな」と直感した(報道によるとこの部分も粉飾決算だったらしい)。少量の株取引をしている親には「ライブドア系には絶対手を出すな」とクギをさしていた。



だから、いまは「やっぱりホリエモンも、ホリエモンを礼賛した奴らもおかしかった」と声高に言えるし、次々に転向する識者やコメンテーターを見て苦笑してます。



特捜部はスケジュール的に再逮捕・追起訴できるので、次の逮捕容疑に注目ですね。粉飾決算は確実でしょうが、それ以外にインサイダー取引、資産隠し、闇世界とのつながりなどの個人犯罪に捜査が切り込めば、また世論の見方が変わるかも?
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お見事 (山川草一郎)
2006-01-25 13:13:21
いやはや、じろうさん。あなたがどのような職業のお方は知る術もないし、詮索するのは無粋というものですが、お見事というほかないですね。



実際、問題になっているのはそういう財務会計上のカラクリなのであって、そこを見抜いていた人は心底、すごいと思う。結局のところ、ホリエモンの生き様とか言動とかはあまり関係がないのかもしれません。人格が破たんしたワンマン経営者は世の中にごまんといるけど、みんなが粉飾やってるわけじゃないですし。



わたしにはそこまで見抜けなかった。首相答弁じゃないが、「不明といわれればそれまで」です。



昔、有名になる前のオウム真理教が熊本かどこかで近隣住民と摩擦を起こしたとき、両者の言い分を聞いて「確かに周囲からは不気味だろうけど、ラディカルに原始仏教を追及すると、ああいう形になるのかもなあ」と納得したことを思い出します。



当時はまさか無差別大量虐殺事件を起こす犯罪集団だとは思ってもみなかった。異質なものを理解しようとする心理は、時に物事の本質を見誤らせるものだな、と後で自省したものですが…。そういえば麻原は事件前、選挙に出てましたね。

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じろうさんへ (上昇気流なごや)
2006-01-27 00:14:04
 じろうさんへ、一点だけ。あまり細かいところには入り込みたくはないのですが、毎日新聞はホリエモンを礼賛していたわけではないのです。例えば、昨年10月14日付朝刊の社説「TBS株大量取得 ホリエモンとの違いは・・・」では、三木谷氏とホリエモンを比較して「ニッポン放送株をめぐる攻防も結局、ライブドアが巨額の資金を得るというマネーゲームで終わった」と書いています。いうまでもなく「マネーゲーム」という言葉は賛美ではありません。もうひとつ、昨年3月29日の「牧太郎のキレの良いのが珠にキズ」では「例えば、ホリエモン騒動。彼のニッポン放送株の買占めを『M&A』と奇麗事に言うが冗談じゃない。権力奪取が目的の『乗っ取り』以外の何ものでもない」と書いています。他にいくらでも例があり、毎日新聞の論調が転向したわけではない。というか、新聞記者をやっているような連中は、もともとホリエモン嫌いが多いです。

 もうひとつ。私もブログで何回かホリエモンに言及しましたが、正直、ほめたことはない。嫌いでしたから。

 いやまぁ、そんなこともどうだっていいんです。おれ(もしくは毎日新聞)はこんなことを言っていた、というのは、あんまりかっこいいことじゃないですから。
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