東京地検特捜部の強制捜査着手以来、マスコミのライブドア叩きはすさまじいものがある。一方、解説報道を通じて捜索の容疑も漠然とながら見えてきた。偽計取引。風説の流布。微妙な気もするが、確かに違法なのかもしれない。
私個人は堀江貴文ライブドア社長を道徳的に持ち上げたことはないが、「参加型の時代」というエントリーで、無数の個人に株を持ってもらう手法を、無党派主導の政治の在り方と重ね合わせ、やや肯定的に取り上げたことがある。
株式分割で時価総額をつりあげる手法自体は適法のようだが、その背景に「犯罪」があったとしたら私自身に見通しの甘さがあったと言わざるを得ない。
衆院選最中にあげた「政権評価を二分する『直感力』」というエントリーでは、堀江社長の政局を見抜く直感力を評価した。彼が選挙に出た動機については、私は当時も今も懐疑的だが、計算高さも含めて「頭のいい人だ」と書いた。違法行為に手を染めていたのなら、それほど賢明ではなかったのかもしれない。
ニッポン放送株争奪戦の頃に書いた「資本家のジャーナリズム論」では、堀江社長について「『新世代のヒーロー』のごとく必要以上にもてはやすのは危険ではあるが、あたまから排除すべきでもない」と書いた。
このスタンスは、関連エントリー「ライブドアの代理復讐―『弱肉』が応援する『強食』」や「メディアの将来像」にも通じる。選挙に出た後も、私の中の「マネタリストとしての堀江社長」に対する基本的評価は変わっていない。
プロ野球参入やニッポン放送株をめぐる騒動の頃は、政財界、言論界の保守勢力が、堀江社長を「アダルトサイトを運営するなど不道徳」「いつでもTシャツ姿で礼儀知らず」「経営手法が脱法的」と批判し、逆にリベラル陣営が「新しい世代を拒む老害こそ問題」「合法ならとやかく言うべきでない」と擁護する構図が一般的だった。
昨年9月の衆院選で、堀江社長が民主党でなく、小泉自民党に接近したことで、この構図は崩れたように思う。「ホリエモン」は、小泉政権の規制緩和政策が生み出した「弱肉強食のマネタリズム」を象徴する怪物にされた。
そして、証券取引法違反容疑での強制捜査。球界再編騒動の頃は堀江社長を擁護し、巨人や読売を批判していたリベラル派のオピニオンリーダーは、ここにきてライブドア批判の急先鋒になってしまった。
「NEWS23」の筑紫哲也キャスターは、ライブドアのような経営手法がまかり通ることは「子供たちの教育に悪い影響を与える」と言い切った。それは、自民党の森喜朗前首相や巨人の渡邊恒雄オーナーの、かねてからの主張である。
今さら言うまでもないことだが、ナベツネの「1リーグ化」構想に対抗し、ライブドアの近鉄買収や新規参入をはやし立てたのは、朝日新聞だった。そうした姿勢に疑問を投げ掛けた「ライブドアとマードック~球界再編騒動に思うこと」を書いた頃はまだ、ライブドアがフジテレビ「支配」に乗り出すことなど予想だにしていなかった。
「マネーゲームを展開し『経済が良くなっている』とみられているとすれば、虚構の上の経済回復だ」(18日、前原誠司代表)――。このところの株価回復で小泉政権の「経済失政」を追及できないでいた朝日新聞や民主党は、今回のライブドア事件で勢いを取り戻したようだ。
先の衆院選で負けた民主党は、堀江社長を選挙で推した自民党の「道義的責任」を厳しく追及している。「ライブドアの価値観を認め、社会に薦めた責任は重い」と。分からないでもないが、そうした論理での批判は、同党にとって「両刃の剣」だと思う。
私が自民党議員なら、こう言い返すだろう。「それでは民主党さんは、ヤミ弁護士を使って示談ビジネスをやったり、右翼団体とつながりを持つような議員の価値観を、日本社会に薦めたことになるではないか」と。
〔了〕
私個人は堀江貴文ライブドア社長を道徳的に持ち上げたことはないが、「参加型の時代」というエントリーで、無数の個人に株を持ってもらう手法を、無党派主導の政治の在り方と重ね合わせ、やや肯定的に取り上げたことがある。
株式分割で時価総額をつりあげる手法自体は適法のようだが、その背景に「犯罪」があったとしたら私自身に見通しの甘さがあったと言わざるを得ない。
衆院選最中にあげた「政権評価を二分する『直感力』」というエントリーでは、堀江社長の政局を見抜く直感力を評価した。彼が選挙に出た動機については、私は当時も今も懐疑的だが、計算高さも含めて「頭のいい人だ」と書いた。違法行為に手を染めていたのなら、それほど賢明ではなかったのかもしれない。
ニッポン放送株争奪戦の頃に書いた「資本家のジャーナリズム論」では、堀江社長について「『新世代のヒーロー』のごとく必要以上にもてはやすのは危険ではあるが、あたまから排除すべきでもない」と書いた。
このスタンスは、関連エントリー「ライブドアの代理復讐―『弱肉』が応援する『強食』」や「メディアの将来像」にも通じる。選挙に出た後も、私の中の「マネタリストとしての堀江社長」に対する基本的評価は変わっていない。
プロ野球参入やニッポン放送株をめぐる騒動の頃は、政財界、言論界の保守勢力が、堀江社長を「アダルトサイトを運営するなど不道徳」「いつでもTシャツ姿で礼儀知らず」「経営手法が脱法的」と批判し、逆にリベラル陣営が「新しい世代を拒む老害こそ問題」「合法ならとやかく言うべきでない」と擁護する構図が一般的だった。
昨年9月の衆院選で、堀江社長が民主党でなく、小泉自民党に接近したことで、この構図は崩れたように思う。「ホリエモン」は、小泉政権の規制緩和政策が生み出した「弱肉強食のマネタリズム」を象徴する怪物にされた。
そして、証券取引法違反容疑での強制捜査。球界再編騒動の頃は堀江社長を擁護し、巨人や読売を批判していたリベラル派のオピニオンリーダーは、ここにきてライブドア批判の急先鋒になってしまった。
「NEWS23」の筑紫哲也キャスターは、ライブドアのような経営手法がまかり通ることは「子供たちの教育に悪い影響を与える」と言い切った。それは、自民党の森喜朗前首相や巨人の渡邊恒雄オーナーの、かねてからの主張である。
今さら言うまでもないことだが、ナベツネの「1リーグ化」構想に対抗し、ライブドアの近鉄買収や新規参入をはやし立てたのは、朝日新聞だった。そうした姿勢に疑問を投げ掛けた「ライブドアとマードック~球界再編騒動に思うこと」を書いた頃はまだ、ライブドアがフジテレビ「支配」に乗り出すことなど予想だにしていなかった。
「マネーゲームを展開し『経済が良くなっている』とみられているとすれば、虚構の上の経済回復だ」(18日、前原誠司代表)――。このところの株価回復で小泉政権の「経済失政」を追及できないでいた朝日新聞や民主党は、今回のライブドア事件で勢いを取り戻したようだ。
先の衆院選で負けた民主党は、堀江社長を選挙で推した自民党の「道義的責任」を厳しく追及している。「ライブドアの価値観を認め、社会に薦めた責任は重い」と。分からないでもないが、そうした論理での批判は、同党にとって「両刃の剣」だと思う。
私が自民党議員なら、こう言い返すだろう。「それでは民主党さんは、ヤミ弁護士を使って示談ビジネスをやったり、右翼団体とつながりを持つような議員の価値観を、日本社会に薦めたことになるではないか」と。
〔了〕