インターネット関連大手の「ライブドア」(堀江貴文社長)に対して、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した。ライブドアPJニュースは、捜索開始直後に堀江社長に取材した際の様子を次のように伝えている。
テレビや新聞の解説を見聞きしても、直接の嫌疑が何なのか素人にはよく分からない。「Fireside Chats」さんは、令状に書かれた被疑事実は入り口に過ぎないとみて、ライブドアと広域暴力団の間の「黒い噂」を示唆している。
一般市民には「青天の霹靂」のように見えた強制捜査だが、業界関係者の間ではライブドアに関する悪い噂は、常識だったのかもしれない。18日付の読売新聞は「ライブドア 強制捜査の衝撃」と題した記事でこう指摘する。
報道関係者も、かなり以前からそうした特捜部の動きを察知していたようだ。マスコミ論で有名なブロガー3人の対話を収めた『ブログジャーナリズム 300万人のメディア』(2005年10月15日発行、野良舎)に、元新聞記者の次のような発言が出てくる。
東京地検特捜部が慎重に捜査を進めていたつもりでも、マスコミ関係者の間ではライブドアが標的になっているのは「当たり前」だったというのだ。
読売の記事が指摘しているように、電子情報は証拠隠滅の危険性が高く、特捜部が慎重に事を進めたのは当然といえる。しかし、そうした事実を新聞記者がメールで外部に通報し、通報を受けた第三者が着手前に堂々と出版物で公表している事実をどう受け止めるべきか。
人間だれしも、「周囲が知らない事実」は自慢したくなるものだ。取材活動で得た捜査情報を第三者にメールで知らせたという「全国紙記者」のモラルを疑う。報道関係者は、ネット時代における情報の扱いに、無頓着すぎるのではないか。
誘拐事件で報道機関が締結する「報道協定」に関しても、最近はネットに流出する危険性が指摘されている。毎日新聞記者が運営するブログ「上昇気流なごや」には、1月6日に発生した仙台市の新生児誘拐事件に関連して、こう書かれている。
自覚の浅い報道関係者が、外部に捜査情報を漏らし、その情報がネットを通じて世間に流通する時代になってしまった。ネットとは関係ないが、「H-Yamaguchi.net」さんは、広島での女児殺害事件について書かれたエントリーで、報道機関による事件現場周辺での「聞き込み」は捜査妨害ではないかと指摘している。
これに対し、「ガ島通信」さんも、「私もマスコミの「捜査機関」化は大変問題だと感じていました」と同意している。
確かに、事件の重要参考人に直接取材する行為は「あなた、疑われてますよ」と教えてやる行為に等しい。国民は報道機関に「捜査」権限を与えた覚えはなく、取材者は「探偵ごっこ」が及ぼす影響を常に頭に置いて行動すべきだろう。
もちろん、報道機関が独自の努力で事件の真相を突き止めようとする行為を、全面的に否定するつもりはない。しかし、そうした取材活動は、捜査妨害にならない範囲にとどめるべきだ。
捜査と報道の関係はいつも微妙だが、少なくとも、ライブドアに対する捜査当局の動きを、会ったこともない部外者にリークした「全国紙記者」の行動は、弁解の余地のない失態だろう。
強制捜査着手の2時間前に、NHKは「東京地検特捜部がライブドア本社を捜索している」と速報した。この報道が「証拠隠滅に手を貸す悪質な捜査妨害ではないか」と批判されても、反論はできまい。同じように、着手の3カ月も前に出版された本の中で「堀江社長は捜査当局から狙われている」と書かれてあった事実を、報道に携わる人々は一体、どう受け止めているのだろうか。〔了〕
ライブドアの堀江貴文社長は同日深夜、PJニュースの取材に対し「捜査は午後4時ごろのNHKのニュースを聞いて知った。午後6時40分ごろ捜査令状を見せられ、メーンのパソコン一台と関連書類を押収された」と語った。捜査内容についての詳細は不明という。
テレビや新聞の解説を見聞きしても、直接の嫌疑が何なのか素人にはよく分からない。「Fireside Chats」さんは、令状に書かれた被疑事実は入り口に過ぎないとみて、ライブドアと広域暴力団の間の「黒い噂」を示唆している。
特捜部の狙いは何なのだろう。
容疑は、ライブドアマーケティング(旧:バリュークリック)に関わる偽計取引と風説の流布だというが、強制捜査の力の入れ方から見て、敵は本能寺と見るべきだろう。
ダイナシティの買収にともなう広域暴力団とのかかわりをはじめ、黒い噂はいくつか耳にしている。
一般市民には「青天の霹靂」のように見えた強制捜査だが、業界関係者の間ではライブドアに関する悪い噂は、常識だったのかもしれない。18日付の読売新聞は「ライブドア 強制捜査の衝撃」と題した記事でこう指摘する。
「ライブドアの企業買収に不審な点がある」。特捜部は昨年、ひそかに捜査を始めた。
株式交換によるM&A自体は違法ではない。しかし、投資事業組合が絡む複雑な現金や株の流れを追うと、バリュー社を舞台にした不正が見えてきた。
特捜部にとって、大手IT企業への捜査は初めての経験。ライブドアは社内の連絡に電子メールを使っていた。「電子データを消去するのは簡単。少しでも捜査の動きを察知されれば、証拠隠滅される」(検察幹部)。捜査はライブドアに近い関係者の事情聴取を避け、慎重に進められた。
報道関係者も、かなり以前からそうした特捜部の動きを察知していたようだ。マスコミ論で有名なブロガー3人の対話を収めた『ブログジャーナリズム 300万人のメディア』(2005年10月15日発行、野良舎)に、元新聞記者の次のような発言が出てくる。
ライブドアがニッポン放送株を買って、騒動になっている最中に、全国紙の社会部記者だと名乗る匿名の人からメールが来ました。
ライブドアは、証券取引委員会とか金融庁とかの監督官庁から目をつけられているし、堀江貴文社長は検察庁や警視庁といった捜査当局から狙われている。そんなことは東京のマスコミ業界では当たり前で、多くの記者が知っている。
にもかかわらず、私が開設しているブログ「ガ島通信」では堀江社長を賛美している。なぜ犯罪者一歩手前の人間のバンザイ原稿を書くのかと文句を言ってきたのです。
東京地検特捜部が慎重に捜査を進めていたつもりでも、マスコミ関係者の間ではライブドアが標的になっているのは「当たり前」だったというのだ。
読売の記事が指摘しているように、電子情報は証拠隠滅の危険性が高く、特捜部が慎重に事を進めたのは当然といえる。しかし、そうした事実を新聞記者がメールで外部に通報し、通報を受けた第三者が着手前に堂々と出版物で公表している事実をどう受け止めるべきか。
人間だれしも、「周囲が知らない事実」は自慢したくなるものだ。取材活動で得た捜査情報を第三者にメールで知らせたという「全国紙記者」のモラルを疑う。報道関係者は、ネット時代における情報の扱いに、無頓着すぎるのではないか。
誘拐事件で報道機関が締結する「報道協定」に関しても、最近はネットに流出する危険性が指摘されている。毎日新聞記者が運営するブログ「上昇気流なごや」には、1月6日に発生した仙台市の新生児誘拐事件に関連して、こう書かれている。
2ちゃんねるでは、昨晩の早い時点で「報道協定が成立したようだ」という書き込みがあった。私は2ちゃんねるであれ、ブログであれ、そういう推測する自粛すべきだと思うが、協定に参加していない媒体まで拘束する力はない。
自覚の浅い報道関係者が、外部に捜査情報を漏らし、その情報がネットを通じて世間に流通する時代になってしまった。ネットとは関係ないが、「H-Yamaguchi.net」さんは、広島での女児殺害事件について書かれたエントリーで、報道機関による事件現場周辺での「聞き込み」は捜査妨害ではないかと指摘している。
報道機関が「聞き込み」って何だ?まるで警察ではないか。しかも逮捕後にやるならともかく、まだ逮捕前ではないか。いや別にやっちゃいけない法律はないだろうが、万が一そうした行動で犯人が警戒して逃亡したら、いったいどう責任をとるつもりだったのだろう。警察はそういう行動を容認していたのだろうか?
これに対し、「ガ島通信」さんも、「私もマスコミの「捜査機関」化は大変問題だと感じていました」と同意している。
確かに、事件の重要参考人に直接取材する行為は「あなた、疑われてますよ」と教えてやる行為に等しい。国民は報道機関に「捜査」権限を与えた覚えはなく、取材者は「探偵ごっこ」が及ぼす影響を常に頭に置いて行動すべきだろう。
もちろん、報道機関が独自の努力で事件の真相を突き止めようとする行為を、全面的に否定するつもりはない。しかし、そうした取材活動は、捜査妨害にならない範囲にとどめるべきだ。
捜査と報道の関係はいつも微妙だが、少なくとも、ライブドアに対する捜査当局の動きを、会ったこともない部外者にリークした「全国紙記者」の行動は、弁解の余地のない失態だろう。
強制捜査着手の2時間前に、NHKは「東京地検特捜部がライブドア本社を捜索している」と速報した。この報道が「証拠隠滅に手を貸す悪質な捜査妨害ではないか」と批判されても、反論はできまい。同じように、着手の3カ月も前に出版された本の中で「堀江社長は捜査当局から狙われている」と書かれてあった事実を、報道に携わる人々は一体、どう受け止めているのだろうか。〔了〕
フラリと遊びに寄らせて頂きました。
今、とても気になる記事なので細かに書いてあり
良い知識になりました。
確か、イーバンク銀行との告訴合戦や、メディア何とか社の架空取引事件の際に、検察はすでにライブドアを調べているんだとか。
それよりも、ガ島氏がトークで語った内容はどこまで本当なのか。差出人は知り合いじゃなくて匿名なんでしょ。社会部記者ってのはどうやって確認したの?
報道協定の2ちゃん書き込み事件にしても、例えば警察関係者が書き込んだ可能性を山川さんはなぜ排除しているのか、よくわかりません。年金の個人情報だって、社保庁職員が漏洩していたのだから。
「マスコミの捜査機関化は大変問題だ」ってのに同調してるけど、マスコミは調査報道が基本でしょ。過去には警察が捜査を放置していたケースだってある。マスコミ情報で捜査が進展することもあったとか。
ガ島氏は「マスコミ憎し」のポジショントークが過ぎるが、それに依拠した山川さんのこの論文も、足元が危ういね。伝聞を鵜呑みにしていて妄想的。文体はまあまあカッコいいけど。
誘拐事件の報道協定締結を書き込んでいるのが警察関係者の可能性も捨てきれない。(だとすると、もっと問題ですが)
いずれも「報道関係者がリークしているとしたら」という前提条件つきで書くべきでした。「伝聞を鵜呑みにしていて妄想的」とは、もっともなご批判。筆が走りすぎたようです。反省。
第三者さんさんの深読みは否定しません。ガ島さんが現役記者なら直接批判したでしょうが、もう辞めておられるから発言は自由です。やはり軽率なのは自称「全国紙記者」の方でしょう。
ちなみに私は「マスコミの捜査機関化は大変問題」との意見には同調しません。捜査と報道の摩擦は、そんなに簡単に総括できる問題ではないというのが実感。警察発表に頼らず、足を使って現場周辺で聞き込みを行うのは記者の基本でしょう。
ただ、明らかに怪しい人物に、例えば「ガスコンロの箱はどうしたのか」とか聞くのはまずいと思うのです。罪証隠滅につながりかねない。そこらへんの「一線」はよく考えらながら行動してもらいたいものです。
プラスさんさん、どうも。またどうぞ。
>国民は報道機関に「捜査」権限を与えた覚えはなく
>「探偵ごっこ」が及ぼす影響
こういう物言いは誤解されますよ。