山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

ライブドアとマードック ―球界再編騒動に思うこと

2004年07月29日 | 社会時評
このところ、テレビは球界再編の話題で持ちきりである。球団売却で2リーグ制維持か、球団合併による1リーグ制移行か―。そのどちらにも反対論が根強いから、野球ファンの扱いは難しい。いずれにしても、今のままではパ・リーグの経営は成り立たないことだけは間違いなさそうだ。

ここまでのゴタゴタで批判の対象となったのは、読売ジャイアンツのオーナーで読売新聞会長の渡邉恒雄氏だ。どうやら1リーグ制への移行は渡邉オーナーが敷いたレールのようである。

頭脳明晰で東大在籍中は日共細胞として活躍した経歴を持つ渡邉氏。その後転向し、保守言論界の重鎮にまでなりあがった。魚住昭氏の著書『メディアと権力』に描かれたその半生は、映画「市民ケーン」を地で行く波乱万丈ぶりである。

人をあっと言わせる構想力と、言い放しで終わらせず、構想を実現する意欲、決断、実行力は、確かに「ワンマン」の名に値する。構想力と実行力の両方を備えたリーダーは、しかしながらこの国では極めて稀な存在である。憎まれ口もあわせて、吉田茂や小沢一郎にも通じるところのある人物かも知れない。

そうした人物を動かすものは、実は内に秘めた並みならぬ「責任感」でもあるのだが、何故かこの国では、平凡な庶民から猛烈な反発を買う宿命にあるようだ。現状を変える構想には感情論で反対し、実現に動けば「独断先行」「議論がない」と非難する―。「野球ファン」という人種は、憲法改正に反対する人々とどこか似ている。

ライブドアの堀江社長が「救世主」扱いされているが、それも「ナベツネ」という悪役と1リーグ制構想があればこその話で、IT企業が突如、伝統ある近鉄バッファローズの買収に名乗りをあげたら、ファンは断固反対したのだろう。

そんなことを考えながらテレビ朝日系「報道ステーション」を眺めていたら、キャスター氏とコメンテーターの朝日新聞編集委員が今日も「ナベツネ批判」で溜飲を下げていた。

野球は経営者でなく、ファンのもの―。うーん、ご高説ごもっともだが、ちょっと待ってほしい。かつて、メディア王マードック氏と孫正義氏によるテレビ朝日株取得話が持ち上がったとき、経営側の論理で闇に葬ったのはどこの新聞社だったか。

自民党内の権力闘争を批判し、「政権のたらい回しは国民の理解を得られない」と訳知り顔でコメントしていた人達が、今では「参院選で国民は小泉政権にNOを言った。なのに自民党内で小泉降ろしが起きないのは情けない」と平然と言ってのける。

反省のない首相を批判するのも結構だが、したり顔のコメンテーターたちは、過去の言動との整合性をどう取るのか、説明責任を果たしてほしい。自分たちのことを棚に上げて他人を批判すること。それを日本語でギゼンというらしい。

・・・などと書いていると「そんなに気に入らないなら、チャンネルを変えればいいではないか」と言われるかも知れない。しかし・・・その通りである。(了)



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