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**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

生きる気力

2006年05月28日 | 病棟
Kさんが夜中にひっそりと旅立ちました。
ラウンドの合間のたった一時間の間に
誰にも世話をかけず 静かに逝ってしまいました。
エコヒイキはいけないのですが
いつも穏やかな空気を纏ったKさんが わたしは大好きでした。

Kさんは昨日まで元気に畑仕事をしていたのに
急に寝たきりの状態になったのに気持ちが付いていけませんでした。
それでも最初は 若かった頃の話を不自由になった言葉で話してくれたり
大相撲の取り組みを楽しみにTV観戦しました。
それが嚥下反射が極端に悪くなり食事が取れないことが分かって
胃婁を造らなければならなくなり
家族が 自宅では介護できないのでどうしようか と相談を始めた頃から
Kさんは話すことをやめました。
TVを勧めても首を振り、一日中目を閉じたまま。
でも寝ているわけではないのです。
心配して助手さんは
 「Kさんは私のお父さんによく似てるの。
  Kさんがいるこの部屋に来るとほっとするの。
  いつまでもお世話させてくださいね」と話しかけ
胃婁になってからグンと生きる気力を無くしたように感じていた私は
マウスケアに濃く出したお茶を使って
せめて味わうことを楽しんで欲しいと願ったりしていたのでした。

10日ほど前、久しぶりにKさんの声を聞きました。
「・・・イ、イエ・・・カエリタイ・・・」
目尻に溜まった93歳の男の涙の重さに
もう少し元気になったら、とついた嘘は
あれで良かったんだろうかと悔やまれます。
正直に現状を伝え、それでも残された可能性を目指して
がんばれっていえばよかったのか・・・。

受け止めた気持ちに最善を返すなんて、未熟な私にはできない。
最善ってなんだったんだろう。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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切ない・・・ (モネ)
2006-05-31 22:11:24
バラの季節ですねぇ。

マムさんが手塩にかけて育てたバラが、

一気に花開いていってるんですね。

こちらでもバラをよく目にして、

そのたびにマムさんを思い出しますわ。(o^-^o)



マムさんのお仕事は、精神的にも大変ですね。

今回の記事のようなこと、日常的にあるのでしょう?

急に寝たきりになって・・・食べられなくなって・・・

家に帰れなくて・・・うーん、切ないです。

今そのときを、がんばるしかないんですね。



マムさんの優しい気持ち、きっと通じたと思います。

そう思いたい。
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モネさんへ (マム)
2006-06-01 22:42:18
命は結局、医者や看護が決めるのではなく

神様が与えた寿命を前にして

本人がどれくらい気力を振り絞るか、に

大きく左右されるような気がします。

自分はどのように生き、どのように終わりを迎えるのか

いつも心の隅っこで考えていようと思っています。

今日は元気でも、明日は分からない。

儚いものですから。



薔薇、やっとピークを過ぎたところ。

今年は雨が多くて、うなだれた姿ばかりなの。

天候不順というか、もしかして地球規模で

破滅へ向かっているのでは・・・なんて

映画の観過ぎですね。

あははっ!
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