こうした状況も、実際に戦争が始まると一転、どの新聞も紙面は戦況報道一色となり、今度は米英支持の新聞のほうが勢いづいた。中には「快進撃」と書いた記事まで現れたほどである。
さらに、予想より早く三週間でバクダッドが「陥落」し、フセイン像が引き倒されるという事態に、「やはり、われわれの主張は正しかったのだ」という趣旨の大社説を載せ、しかも「住民が米軍兵士を『解放者』として歓迎したことが、米英の決断が正しかったことを証明した」とまで書いたのだ。そしてさらに「侵攻と表現した新聞は責任をとれ」という識者の論文まで掲載したのである。
「新聞記者という仕事」柴田鉄治 集英社新書 2003年
富翁